これからも頑張っていきたいと思います。
戦闘中の掛け声が意外とむずい。
「理、準備はいいか?」
「うん、いつでもいいよ。」
翌週、僕と一夏は第2アリーナにて向かいあっていた。
4月も終わりが近づき、1年生のクラス代表や専用機持ち、代表候補生といった者達は放課後のISのトレーニングが解禁されたのだ。
一夏は早速クラス代表決定戦の時に出来なかった僕との試合を申し込んできたのだった。
もちろん僕はそれに応じ、こうして一夏と向かいあっているわけだ。
「織斑君も神名君も頑張れ〜!」
「おりむ〜、かみなん〜、怪我しちゃだめだよ〜。」
「どっちを応援すればいいの!?
あたしには選べな〜い!」
と、観客席から1組の女子達の声が飛んでくる。
彼女達は僕達の試合を観についてきたのだ。
それだけなら別に構わないのだが……。
「あれが織斑君か、結構かっこいいよね?」
「それを言ったら神名君はクール系で素敵よ?」
「駄目だわ、どっちか選ぶなんて出来ないわ。」
何処から情報が漏れたか分からないが、なぜか他のクラスや上級生の人達も僕達の試合を観にきていた。
まあ、他クラスの人達なら1組の誰かが教えた等の検討がつくが、上級生達は何処から情報を……、あっ、黛さんがいる、凄いニヤニヤしてる、あんたのせいか。
「…なんでこんなギャラリー多いんだろうな?」
「…この学園において僕達のプライバシーはほぼ守られないと思ったほうがいいかもね。」
主にあの新聞部副部長の所為で。
「…まあ、とにかく始めよっか?」
「おう、そうだな。セシリア、審判頼む。」
「お任せ下さい。では、お二人共構えて下さい。」
セシリアの言葉に一夏は雪片弐型を、僕は竪琴を構える。
アリーナが静寂に包まれる。
「……試合、開始ですわ!!」
「うおおおおおおおっ!!」
セシリアの掛け声と同時に一夏が飛び出してくる。
やっぱり開始早々近づいてきたか。
「おりゃあ!!」
「よいしょっと!」
振り下ろしてきた剣に対し、竪琴で迎えうつ。
「くっ!!」
「そう簡単に攻撃させないよ?」
このまま近づけさせたままだと、防戦一方となるのは目に見えている。
「ハァッ!」
「のわっ!?」
下から切り上げるような打撃に一夏が少しのぞける。
「今だ!」
「うわぁっ!?」
隙が出来た一夏の懐に拳を叩き込み、そのまま前方へ吹っ飛ばす。
なんとか体勢を立て直した一夏は驚いていた。
「殴るってありかよ!?」
「そんな甘い事言ってちゃ駄目だよ。
いつ僕が
伊達に何度も死闘を繰り広げていない。
片手剣から両手剣、弓、突剣、拳、斧、槍など大抵の武器は扱える。
「くそっ!もう一度…!」
「おっと、そうはさせないよ、“アギ”!」
再び接近しようとしてきた一夏に対し、“アギ”を数発放つ。
「うおっ、あぶねぇ!?」
慌てて一夏は回避に入る。
僕は構わず“アギ”を撃ちつづけ、一夏を近づけさせない。
「どうしたんだい?避けるばっかりかい?」
「く、くっそ〜!」
と一夏を煽ってみるものの、実際この状態はあまり良くない。
“アギ”はそこまで早くないので躱されるのは承知の上だし、何よりこれ以上撃ちつづけてるとこちらの精神力が持たない。
ここは作戦を実行しよう。
ということで攻撃の手を緩める。
「っ!今だ!!」
攻撃の手が緩まったのを見逃さず、一夏が一気に接近してくる。
一夏のもつブレードが光輝いている。
『零落白夜』を発動しているのだろう。
「うおおおおおおおおお!!」
「………甘いよ。」
一夏は僕の思った通りに動いてくれた。
「“アギ”!」
向かってくる一夏に対し“アギ”を放つ。
「くっ、無駄だぁっ!!」
一夏は構わずそれを斬る。
斬り裂かれた“アギ”はシュッという音とともに消えてしまう。
だけど、それでいい。
一瞬でも一夏が
「なっ!?」
一夏が戸惑いの声を上げる。
なぜなら一夏の眼前に僕の姿が無かったからだ。
「こっちだよ。」
「!?」
上から聞こえてきた声に一夏は思わず動きを止める。
動きを止めてしまう。
格好の的となってしまうことに気づかず。
「…フィニッシュ!」
完全に固まってしまっている一夏に竪琴を振り下ろす。
………
……
…
「くっそー!負けたぁ〜!!」
一夏が大の字に寝転び悔しそうに声を上げる。
試合が終わり、観に来ていた人達も帰ってしまい、アリーナに残っていたのは僕と一夏、それにセシリアと箒だった。
「一夏さん完全に手玉に取られていましたわね。
わたくしの時もそうでしたけど、神名さんは戦略を立てるのがお上手なのですわね。」
「まあ実際、オルフェウス自体はそこまで強くないからね。
一夏が負けたのは、僕が弱点を突いたからだよ。」
「弱点?俺の弱点って?」
「一つ目に、まぁこれはどうしようもないかもしれないけど、近接武器しかないってところだね。
つまり接近させなければ攻撃される心配はない。」
「うーむ、でもそれはどうしようもないぞ?」
「そうだね、だからこれは保留で次に二つ目、動きが単調すぎるんだよね。
さっきの試合みたいに離れた状態からチャンスが出来たら『零落白夜』を発動して突っ込む。
うん、実に分かりやすい。」
「まじか〜、だからあの時火の玉撃ってきたのか。」
「うん、完全に僕の思っていた通りにうごいてくれたね。」
僕の言葉に一夏はガックリと肩を落とす。
「後は『零落白夜』の発動するタイミングかな。
突っ込んでくるところから発動してちゃその分エネルギーが無駄になっちゃうよ。
もしまだ上手くコントロール出来ないなら少しでも早く近づけるようにしないと。」
「そっか…、じゃあ俺の当面の目標はそれだな。
どうやって速くなればいいんだ?」
と、一夏は頭をひねって考え込んでいる。
そこからは僕もアドバイスは出来ない。
僕はそこまでISに詳しくはない。
誰かISのそういう技術関連に詳しい人はいないのか…。
「ありますわよ、方法が。」
あ、いたよ、結構すぐ近くに。
代表候補生という肩書きを持つ子が。
………
……
…
セシリアが一夏にその方法とやらを教えている間に僕は少し離れて立っている箒の元へと歩み寄る。
箒の顔はいつものムスッとした顔ではなく、なにやら浮かない顔をしていた。
「何を悩んでるの?」
箒に声をかける。
箒はチラリとこちらをみてポツポツと話す。
「私は一夏の助けになるのだろうか?」
「今はまだ箒はISを動かせないからね、それはしょうがないと思うよ。
でもその分、一夏の剣道を見てもらってるでしょ?」
「…それはそうだが…。」
「一夏はまだ基本の動きが出来ていないから、箒の力が必要だよ。
一夏もそうだと思うよ。
時間なら僕が出来るだけ作るようにするからさ。」
そう言うと、箒の顔が少し明るくなる。
「…ありがとう、理。」
「いいよ、だからその分箒も頑張りなよ。」
「なっ!?ど、どういう意味だ!?」
「もう少し箒は素直になるべきだとおもうんだよね。
じゃないといつまでたってもそれ以上接近できないよ?」
「な、何を言っているのか全く分からんな!」
箒は顔を赤くしながら怒っている。
なんだ?ここの人達は分かりやすい人ばっかだな。
「と、とにかく私と一夏の時間の事は任せたぞ!!」
「うん、わかったわかった。」
「…ふふっ、理は結構頼りになるな。
これから何か悩みが出来たらお前に相談してみよう。」
と、箒は笑っている。
かなり信頼されているようだ。
………っ!?
頭の中に声が響く。
“我は汝、汝は我…”
“汝、新たなる絆を見出したり…”
“絆の力は汝の旅の助けとなる…”
“汝に‘恋愛’の力を授けん…”
頭の中の声は聞こえなくなった。
「……なっ!?」
箒が一夏達の方を向いて声を上げたのでそちらを見ると、なんとセシリアが一夏の両手を掴んでいる。
大方、
『わたくしが手取り足取り教えて差し上げますわ!』
とでも言って手を握ったのだろう。
「な、何をしているんだお前達は!?」
と、箒が慌てて駆け寄っていく。
「あら、ただ今後のクラス対抗戦に向けての作戦を立てていただけですわ?」
「作戦を立てるのに手を握る必要があるか〜〜〜!!」
箒の声がアリーナに響く。
「…ようやく来れたわ。」
目の前にそびえ立つ建物を見つめながらあたしは呟く。
「待ってなさいよ、……一夏。」
思い人の名を口にして、あたしは門をくぐって入っていった。
「_____ここどこなのよぉ〜〜〜!!!」
10分後、迷っていた。
「校門の所に係員もいないし、地図ぐらい置いときなさいよ〜〜〜!!」
あたしの叫びも虚しく夜は更けていく…。
というわけで新しいコミュ発生!
最後に出てきた子は一体誰なんだ…(棒)。