ルイズ:ハルケギニアに還る   作:ポギャン

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 お待たせしまして申し訳ありませんね。

今回は加筆した文章に苦労して、時間がかかりました。次回からはスムーズに執筆できるようにしたいですね。

では今回もお楽しみ下さいね。




6話:ヴァリエール家に還ってきたルイズその一 A

 

 ルイズは一人のメイドが自分の存在に気づいて此方へ近寄ってくるほんの少しの間、さっきこのヴァリエール公爵家のこの池の畔に現れた時の光景と気持ちが心の中に蘇ってきていた。

 

~~此処はハルケギニア・トリステイン王国・ヴァリエール公爵家の城館内にある池の畔。

 

小鳥たちの囀ずる声がする。いつもと同じあさが始まるハズであったが、突然この辺り一帯を眩しい光が覆い隠したと思えるところへ。

バシュッと大きな音が鳴り響いたところから、忽然と光の中からハルケギニアではものすごく奇妙な形をしていた、後ろに大量の物を積み込んだ荷車らしきモノを繋いだ乗り物? が現れていた。乗り物には人が跨がっていて、その女性らしき人物の姿はというと。服装は薄い水色のシンプルなブラウスの上から淡いベージュの上着羽織り。雪のように真っ白な丈の短いスカートを穿き、白のニーソックスに赤のラインを施したピンクの紐の白い靴を履いている。髪はウェーブがかった流れるようなピンクブロンドの長い髪に、つぶらな鳶色の瞳とすーと整った鼻筋、小さな薄桜色の唇と凄くきれいな顔立ちに細い首筋。胸は標準よりかなり小さめ。しなやかそうな長い手足に少しクビレた腰、小振りなお尻と。

予想されるスリーサイズは

(T153 B76 W55 H79)

極上の部類に属する。歳は14か15さい頃と思われるフランス人形のような外見を誇る美少女だった。

 

「……此処は…………」

 

(10年ぶりだから、確信はできないけど……確かにこの場所には見覚えがあるわねえ……この池にはある想いでがあったのよね~)

 

ルイズは目の前にある池を眺めて小さい頃の事を思いうかべている最中である。

 

(まだ今もあるのかしら? 小さい頃まだ私が魔法を上手くできなくて、母様たちに叱られては上から毛布を被って隠れていた。あの小さな小舟は……そうやって隠れていると、必ずあの優しい笑顔をした男の人がベソかいて泣いていた私を捜しに来てくれて慰めてくれたのは今でもわりと覚えているのよねぇ~……………………………………………………………………………………………………………………………)

 

 

ルイズが昔の懐かしいいろいろな出来事を思い出して感慨に耽っていたところへ一人の若いメイドが近づいてくるのを確認したルイズは考え事を止めてメイドが声の届く範囲まで来たら事情を説明して、家族に連絡してもらおうと思っていた矢先……まさかあの様な事になるとはこの時は考えもしていなかった。

 

話は少し遡った頃。池の畔らへんに突如強力な光が輝き、そして直ぐに消えたことを訝った一人のまだ若いメイドが池の畔に近づいて様子を見てみると……そこには荷物を満載している荷車を繋いだ見るからに怪しげな乗り物らしきのモノに跨がって、辺りを見回している? 見知らぬ少女がいるのを気づいたメイドは大声で叫ぶ。

 

「だ、誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ここにぃぃぃぃぃ、怪しい者がいますぅぅぅ、誰かぁぁぁ、早くぅぅぅ、来てくださいぃぃぃぃぃ」

 

ようやくだれか人が此方へやって来たので、ふっと気が抜けて顔を俯いてリラックスしていたところに、突如近くから大声がしてびっくりしたルイズが声の聞こえてくる方角を見ると。件のメイドが自分を指差してものすごく失礼な言葉を大声で喚いているのを知ったルイズは、あまりの言い様に頭が沸騰するくらい怒りが込み上げてきて、大きな声でそのメイドに向けて力いっぱい大きく怒鳴っていた。

 

「ちょっと! そこのメイド! いうに事欠いて、なに失礼な事言っているのよ! こ、この私が誰だと思っているのかアンタ解って喋っているの! 」

 

きれいな顔が真っ赤になるくらい、こちらに向かって怒鳴っている少女にメイドは気後れして数歩後退り今にも泣き出しそうになりながらも、さすがは教育が行き届いていたヴァリエール公爵家の使用人の一人だったので、ここは気力振り絞って踏ん張り弱々しい声でルイズに何かを言い返す。

 

「そ、そそそうは、お、仰られましても、あ、あああ、あなたみたいな怪しい人。今まで見たことも無ければ聞いたことも、あ、あああ有りませんから! 」

 

ルイズは10年ぶりに自分の家にようやく還ってきて、まさか使用人であるメイドから例え自分の顔を知らないとはいえ、この様に悪し様な態度と言葉を投げつけられるとは思ってもいなかったから、怒りがMaxにまで上昇するくらいの状態になっており更にヒートアップした口調でメイドを怒鳴り散らしていた。

 

「な、何ですって! こ、ここここ、このメイドは! あ、あああんたなんて、話にならないから……あんた見たいなしたっぱじゃ無い! このお屋敷で一番偉い人を呼んできなさい! グズグズしてないで、さあ早く行きなさいよ! 」

 

そうしてルイズに物凄い剣幕で怒鳴られたメイドは、眼から涙をながして泣きながら館のある方へ走り去っていった。

 

「……まったく、10年ぶりに我が家に還って来たと思って喜んでいたら、いくら顔を知らないからと言ったって、母様と良く似てるって言われていた私をろくに確認もしないで、ふ、不審者扱いするなんて! ヴァリエール公爵家のメイドの質も下がったものだわねえ……」

 

ルイズが自分を不審者扱いしたメイドに憤慨していたその頃。ヴァリエール公爵家邸内では、今日もいつもと同じように朝早くから使用人たちが起き出してきて、邸内の清掃をする者と広大な庭を清掃する者に別れて各々がテキパキと仕事をこなしていた。

 

館の中ではメイドたちが邸内の各室をまわり、各種衣類などの洗濯物が入っているカゴを回収していたり。公爵夫妻を粗相がないように静に起こし身支度を整えていた頃に、何処から聞こえてくるのか解らなかったが若い女性が大きな声を出して助けを求めている事だけはこの声を聞いたすべての者たちが理解できていた。

 

その声が聞こえる範囲内に居た使用人及び家臣の警備隊員たちが何事がおきたのかと、すぐに声が聞こえてきた場所に向けて大勢の者たちが駆けつけていった。

 

先頭にたって池に向かって駆けつけているある若い警備隊員が前方からすごい勢いでメイドが此方へ走ってくるので、止めて事情を聞いてみると………。

 

「おい、何があったんだ! 」

 

若い警備隊員に凄むように問われて恐さのあまり、ひきつった表情でメイドは池の畔での出来事を話し出す。

 

「い、いい池の畔に、ひひ光が、大きな光が輝いていたので行ってみますと、そ、そそこに、変な荷車と見知らぬ怪しい少女が居たのです」

 

若い警備隊員はメイドが事情を話し終えるとみるみる間に怒りの形相になっていく。

 

「それでお前は何もせずに、にげてきたというのかぁ! 」

 

そう言って怒鳴る若い警備隊員にメイドは必死な表情で懸命に言い訳をするのだったが………。

 

「いえ、ただ逃げてきた訳じゃないんです。その少女に何者かと訊ねましたが、下っ端なんかに話す話はないからこのお屋敷で一番偉い人を呼んでこいと喚いていたので、私にはもうこれ以上は無理だと判断しまして執事長のジェローム様を呼びに行く途中でした……」

 

「何だと! この城で一番お偉い方と言えば公爵様ではないか! そんな誰とも解らない怪しげな者など逢わせられるわけなど、家臣の一人としていか無いだろうがぁ! 」

 

メイドにそう言って怒鳴った若い警備隊員はこの事態をどうするか思案していると、そこへ追い付いてきた警備隊副隊長が若い警備隊員と件のメイドから詳しく事情を聞くと直ぐ様判断を下して、指示をメイドに出して邸内にいる執事長のジェロームに事情を報せに行かせると、自身は若い警備隊員とようやく追い付いてきた他の隊員たちを引き連れて怪しい少女がいるはずの池の畔へ向かって行った。

 

警備隊副隊長の指示で邸内の何処かに居たジェローム執事長をようやく捜しだしたメイドは池の畔での出来事をあます事なく、すべて包み隠さずに話していた。

 

その話を黙って最後まで聞いていたジェローム執事長はいま聞いていた話の中に、何か気になる事柄があり。メイドにその部分について更に詳しく詳細を訊ねると………。

 

「……その少女は確かに外見上から見て歳は14か15で、容姿がピンクブロンドの髪を腰先まで伸ばしており、鳶色の瞳している華奢な美少女だったと言うのだね? 」

 

池の畔に現れた不審者と思える少女の容姿をメイドから詳しく聞いたジェロームは、何かを確信したような表情になってメイドに何事かを命じる。

 

「お前は今すぐにカリーヌ奥様の寝室にむかい池の畔での出来事を事細かに、特に少女の年齢と容姿について詳しく申し上げる様にな……では行きなさい」

 

そう言ってメイドを至急に公爵夫人の寝室へ遣わしたジェローム自身はヴァリエール公爵にこの重大事を報せるために、足早に公爵がいる寝室へと向かって行く。

 

一方その頃、池の畔ではルイズを遠くから『遠見の鏡』の魔法で確認した警備隊員たちは副隊長の指示の下、静に杖を抜いていつでもすぐに魔法を放てるように準備してゆっくりとした動作でルイズに向かって、近づいて行く。

 

(ようやく話の解りそうな人たちが来てくれたわね。これで父様や母様に姉様たちにようやく逢えるのよねえ………うん? ちょっとなんで、あの人たち杖を私に向けながら近づいて来るのよ……まさか何か誤解してるんじゃないでしょうね? )

 

メイド以外にようやく話が解りそうな者たちがきたと思っていたのも束の間で、よく観察すると近づいてくる者たち全員が杖を抜いて隙が無い状態で構えているのが解ったルイズはびくっと少し慌てるような態勢になりながらも、近づく者たちへ大きな声で呼び掛けていた。

 

「ちょ、ちょっと待って、な、 なな何よ、杖をこっちに向けて! わわ、私は決して、あ、ああ怪しい者じゃ無いわよ? だ、だだだから、杖をしまってくれないかしら……」

 

そう言って、穏便に話し合うためにルイズは警備隊員たちに杖を収めてほしいと言ったのだったけど………。

 

この場所へ一番先に駆け付けてきた若い警備隊員がルイズにむけて希望を打ち砕く酷い言葉を口にして、罵り始めた。

 

「何、戯れ言ほざいてやがる! 何処の世界に! 自分で怪しくないなどと寝言をいう奴の言葉を信じる者がいるんだぁぁぁぁあ! 馬鹿も大概にしとけぇぇぇぇぇ! このペッタンコ胸のぉ、チンチクリン! 小便臭い洗濯板平民小娘がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

そう大声でルイズを罵倒する若い警備隊員(実はこの男マザコンの上に大の熟女好きなのでルイズは全くの守備範囲外だから容赦がなかった大変態だった)の無礼千万で言いたい放題の言葉に怒りのあまり血が沸騰して、今すぐにも理性がぶちギレそうになるところを、何とかギリギリまで辛抱強く我慢して、自分に罵声浴びせていた若い警備隊員にむけてルイズは大きい声をだしてある言葉を言い出し始める。

 

(……このクサレ男!! よくも! サイトにだってケンカしても、こんな酷い事言われたことなんかないのに! 絶対に殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、ぶっ殺す! ………でも、それをしちゃうと母様たちに取り次いでもらえなくなっちゃうから……あんな人間として品性のかけらも無い下劣な奴に下手に出るのはとても悔しいけど……ここは我慢よ! ルイズ・フランソワーズ! ………でもコイツはいつか絶対にぶっ殺す!! )

 

「ああ、貴方、い、い今、わ、わわ私に向かって言った、し、失礼な言葉も、きょ、今日は機嫌がとても良いから、ゆ、赦してあげるわ……」

 

今日ようやく10年ぶりに故郷、ヴァリエール公爵家に帰還を果たして気分がすこぶる良かったルイズにとって物凄い無礼な言動をうけたからとはいえ、公爵家令嬢である3女が家に仕える家臣の一人が事情も知らない事も有って帰還初日から怒って偉そうな物言いで叱りつけるのもあまり良くないと考えてこの場面では寛大な心構えな気持ちで慈悲をみせることで、怒鳴り付ける心境なのをグッと我慢して赦す言葉をルイズは述べていたのだったが、それに対して若い警備隊員が口にした言葉は先ほど同様の口汚い罵りであった。

 

「お前は何を言ってやがるんだぁ! 何処の高貴な貴族のご令嬢様みたいな! 口ぶりでぇぇぇ言っている! この平民のイカレ小娘ごときがぁぁぁぁぁ! 我らを舐めるのも、いい加減にしやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 」

 

「アイツ! もう絶対に赦さないわ! 」

 

怒るところをせっかく我慢して、自分に対して暴言を吐いたことを赦すと述べたのにもかかわらず。再度の暴言を言われたルイズは今度こそ、我慢の限界を超えて眼は血走り髪は怒りのあまり波打ちそして身体全体からほの暗い蒼白い焔のようなオーラが轟音を響かせ、逆巻きながら立ち上ってポケットから万年筆の杖を出すと。今にも罵声を発していた無礼者に一喝浴びせて叩きのめそうとしていた時に………。

 

一方、この時。ルイズに罵声を浴びせていた若い警備隊員以外の何かを思案中の副隊長を除いた残りの警備隊員たちは(この者たちは代々のヴァリエール公爵家に仕えてきた譜代家臣の家の中から選抜されて警備隊員になっていた者たちだったから、一般的な常識や考え方は下級とはいえ貴族だったので選民思想な思考であったけども。護られる立場的なまだ若い女性に対しては平民の少女などに接する時の態度は紳士的に振る舞う者たちであったからか)例え平民の不審者とは解っていても、どう見ても十代前半にしか思えない少女に対し大声で罵声浴びせている。醜い同僚の姿に唖然となっていた。

突如、今まで何かを思案していた副警備隊長がルイズに口汚く罵声浴びせていた若い警備隊員に向かって大声で諌め始めていた。

 

「……いい加減にしないか、アラン! いつも俺が口が酸っぱくなるほど言っているだろう! 汚い言葉や不遜な態度はやめて改めろと! これはお前一人で済む問題では無いのだぞ! 我々警備隊全体の、いや、この大恩あるヴァリエール公爵家の品位が問われる事にもなることなんだぞ……もしも、この様な志儀が世間一般に伝わってみろ! 世間から笑われるのはいったい誰だと思っている! お前はヴァリエール公爵様に対して恥をかかせても、良いと考えているのかぁ! 」

 

「……しかし、副隊長、奴は唯の平民……」

 

警備隊副隊長に厳しく叱責されたアランと呼ばれていた若い警備隊員はこの期に及んでもまだ自身の醜い虚栄心のための言い訳言葉を口にしようとしていたけども、若い警備隊員に眼孔鋭く睨み付けながら

「お前は黙っていろ! 」

と怒鳴った。警備隊副隊長の更なる叱責により、がっくりと肩を落として他の警備隊員たちの後ろに廻りおとなしくしていた。

 

アランへの激しい叱責を終えると警備隊副隊長はルイズのいる方へ身体全体をむけて…………。

 

アランという馬鹿な若い警備隊員が副隊長に厳しく叱責されていた時のルイズは心内でいろいろな事を思考していた最中であった。

 

(……あの失礼な奴に、いい人らしい副隊長さんが私の代わりに言いたい事をいって、叱り飛ばしてくれたから何とか怒りが収まってきたけから良かったわ……あとはあの副隊長さんに私のフルネームを告げたら信じてくれそうよねぇ……)

 

ルイズがいろんな事を思案していると、ルイズに警備隊副隊長が優しく語りかけてきた。

 

「お嬢さん。先程は自分めの部下の隊員がそちらに対して、大変失礼な暴言を吐きまして誠に申し訳ありません。不肖の部下に代わりましてこの自分、“ポルトス・ド・レイノー”が、お嬢さんに心よりのお詫び申し上げます」

 

そう言って、“ポルトス・ド・レイノー”はルイズの正面にむけて、深々と頭を下げて真摯な態度で謝罪する。

「いえ、先ほどの事はもう私は気にしていませんから、お気になさらないで下さい」

 

ルイズは誠心誠意をこめて自分に謝罪してくれていた警備隊副隊長に好感を感じて、“ポルトス・ド・レイノー”が気にする事はないからという言葉を口から述べていた。

 

「そう言って下さると、こちらとしても有り難いことです。お嬢さん……大変失礼な事を頼みますが……お名前をこの自分にお教え願えますでしょうか? 」

 

「……私の名前をですか? ……ミスタ・レイノーになら、お教えしても宜しいですわ。私もこの正式な名前をハルケギニアで名乗るのは、10年ぶりですから……すこし緊張しますわねぇ……では今から名乗らせてもらいます………“ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール”と申します」

 

そう告げて、フルネームを名乗ってすぐに警備隊副隊長の“ポルトス・ド・レイノー”を含めた警備隊隊員全員にむけて、それは見事で完璧な一流の貴族たちがする(ルイズは日本で暮らしていた10年の間にルイズがハルケギニアに還った後に各種マナーで恥ずかしい思いをしないようにと。格式あるヨーロッパの上流階級者が使うあいさつを含めた全ての正式マナーを敷島博士から厳しく教え込まれていたのでした)正式で華麗なあいさつをルイズは披露していた。

 

ルイズがそれは見事なくらい、優雅にして華麗で鮮やかなあいさつしたのを見ていた警備隊員たちの中から称賛の声があがった。

 

「ほう、トリステイン貴族はおろかあの取り澄ましたガリア貴族の連中でさえも中々お目にする事も出来ないほど、見事なあいさつでは無いか! 」

 

名の解らない一人の警備隊員からの称賛の声にルイズは、思わず返事の言葉を述べだしていた。

 

「お褒めの言葉を賜りまして、このルイズ・フランソワーズ。大変うれしく思います」

 

そう言って、警備隊員たちに向けて極上の微笑みをして魅せたルイズであった。

 

それを見た、約1名を除く警備隊員たちを魅了させて虜にしたルイズ・フランソワーズお嬢様(これが後にハルケギニア中に変名を轟かせた、熱狂的な何処かのアイドル親衛隊も真っ青になる程。ルイズ・フランソワーズに絶対的忠誠を捧げる狂信的な警備隊が誕生してしまった瞬間であった? )なのであった。

 

ルイズの魅惑の微笑みにより、半分任務を放り出しかけている。警備隊員たち(1名を除く)をおきざりにして警備隊副隊長の“ポルトス・ド・レイノー”はルイズの前まで歩いてくると、急にひざまついて恭しく話し掛けてきていた。

 

「………や、やはり……ルイズ・フランソワーズお嬢様にございましたか! よ、よくぞ、い、生きて、ご無事でなによりでございました……このレイノーうれしく思いますぞ……先程ルイズお嬢様のご尊顔を拝見しました時には、まさかとは思いましたが……よく見ますとあまりにも幼いころの面影が有りましたので、それで失礼とは思いながらもお名をお伺いしたのでございます………」

 

そう言って、自分一人でレイノーは感極まり、涙ぐむ(美少女が涙ぐむなら絵になる場面だけど……見た目むさ苦しいおっさんが泣くのは正直誰も見たくはなかった)それを正面から間近で見てしまったルイズは顔がひきつり、身体がすこし後ろへ退いていた。

 

少し引きぎみだった表情を整えるとルイズはレイノーへむけて有ることを話し出す。

 

「……そんなに、小さい頃の顔立ちが残っていたの? それはちょっと複雑な気持ちだわ~ハァ………」

 

“ポルトス・ド・レイノー”にいま現代も小さい時と顔立ちがあまり違わないと言われたルイズはすこしだけ落胆する。

 

(本当はちょっとどころか大ショックなのよねぇ~顔立ちって、10年経っても変わらないモノなのかしら? 私としては母様みたいに立派なレディーに成長したと思っていたんだけど……人からみると違ったのかしらねぇ~)

 

口に出しただけでは足らず、心の中でも考えて落ち込むルイズお嬢様だった。

 

ルイズが自分の顔立ちについて、心中でいろいろな考え事をしているとレイノが何事かについて話しかけてくる。

 

「ルイズお嬢様がようやく10年ぶりにこのヴァリエール公爵家に還って来られ、お疲れになっていられるとは存じますが……いま暫くのお待ちを申し上げます。先程、使いの者を館へ送り出しましたので、すぐにジェローム殿がこの場所へ駆け付けて参りましょう……」

 

「えっ、ジェロームだけなの? 母様や父様は……それに姉様たちは来ないの………」

 

この10年逢いたくてしょうがなかった。愛しい家族に今すぐ逢えないと解ってルイズは寂しい顔をする。

 

自分の言葉によって、落胆したルイズをみて“ポルトス・ド・レイノー”はすこし慌てるような感じで励ましの言葉を述べ始めた。

 

「い、いえ、ジェローム殿ならすぐにルイズお嬢様の事に気がつきまして、公爵様とカリーヌ奥様に必ずやご連絡されているハズでございます。そうなればすぐに此処へ来られましょう………それから申しあげにくいのですが……エレオノール様は現在トリステイン王立魔法研究所(所謂魔法アカデミー)に土の主任研究員として王都のトリスタニアに在住しておりますので、至急梟便を送り出したといたしましても、勿論竜籠を手配したとしましてもご到着いたしますのは、どれ程早くとも今晩遅くになられると思われますので……残念ながら今夜の晩餐には間に合わないと考えられます………もうお一人のカトレア様は5年前に公爵様がお身体が弱いことをご考量なさり、他家に嫁ぐのはご無理だと判断を下しまして……せめてもの慰めとして、貴族の一代限りの措置としまして子爵家当主(現時点においてトリステイン王国の法律上、貴族の女性が家督を継ぐことは本来であれば出来なかったが、娘想いのヴァリエール公爵が現在事実上のトリステイン王国の宰相である、マザリーニ枢機卿に掛け合って、一代限りという条件付きで認めさせた……但しカトレアの身体が病弱から奇跡的に回復して婿養子を迎え入れた場合のみフォンティーヌ子爵家はそのまま存続を赦されることになってはいたのだったが……)として、フォンティーヌ子爵家を継いでおられます。それですから晩餐までには此方のお屋敷に来られますので、カトレア様にはお逢いできましょう」

 

レイノーが言うには自分がいなくなった、この10年間の一番上の姉、エレオノールと下の姉、カトレアの簡単な。いま現在に関するレクチャーをうけていたルイズは少し表情が明るくなっていた。

 

「………私がいない10年の長い間のヴァリエール公爵家には本当にいろんな出来事があったのね……でも、エレオノール姉さまがアカデミーの土の主任研究員になっているなんて……すごく似合いすぎていて逆に恐ろしいくらいだわ……ちい姉さまはまだご病気が治っていなかったのねえ………あぁ、早く姉さまたちに逢いたいわ……」

 

 

今のルイズの心中は自分がいなくなった10年のあいだのヴァリエール公爵家にあった出来事を“ポルトス・ド・レイノー”から簡単ながらも聞かされて、いろいろな想いが渦巻いていたのであった。

 

 

続く。

 





にじふぁんの時に投稿していた分がまだ後35話くらい有って、先はまだまだ長いなぁ……。

また次回でお逢いしましょう。



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