ルイズ:ハルケギニアに還る   作:ポギャン

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 ルイズの地球での暮らしも、今回を含めてあと二回で終ります。

ルイズと才人の愛のゆくえはどうなるのでしょう。




3話:ルイズの地球での10年その三

 

 ルイズの地球世界での最期の誕生日を明日に控えた前日のとある街にあるごく普通のファミリーレストランの店内。

 

「なぁ、ルイズ。もう喰わないのかぁ~

 

「ちょっと食欲が無いのよねえ」

 

元々、ルイズはそんなに食べるほうでは無かったが、食欲が進まないのか今日は何時もより更に食べる量が少なかった。

 

「残すならそのパン、俺が喰っても良いか? 」

 

「もう、サイトたっら行儀悪いわよ! ……でも、私もう食べないから。食べても良いわよ」

 

才人は要らないなら自分がもらうと言って、ルイズから許可されてお皿にあったパンを二個手に取ると早速食べている。

 

「え~と、悪かったなぁ~ルイズ。パン美味かったぜ。有り難うな~」

 

「それにしても良く食べるわねえ~感心するわ」

 

才人の食べっぶりにルイズは感心するというより、呆れていた。

 

「そりゃ師匠に、あんだけコテンパンにやられたら、腹がへってもしょがないぜ」

 

師匠の早瀬 平八郎に稽古で激しい扱きをうけたら、お腹が空くのは当然だと宣っていた。

 

話が段々弾んできた二人は自分たちと師匠の早瀬 平八郎との間にある剣士としてのレベルの違いを検討していた。

 

「私たちだって決して弱くわないと思っているんだけどねえ……」

 

「それゃなぁ、俺たちのレベルは世界中の高校生のトップレベルとそう変わらねえからな」

 

二人は常日頃から早瀬 平八郎に

 

「お前たちの実力など、未々ひよこレベルくらいしか無いんだからな、相手を見下すなんて20年は早いと知っとけよ。そうすりゃあ、高校生トップレベルくらいなら何とか渡り合えるだろう」

 

と、そう毎回言い聞かされて稽古してきたから、二人ともまったく気づいていなかったが、実は才人とルイズの本当の実力は世界の剣士のトップレベルクラスと同等の力はあった。

 

「俺たちクラスの実力じゃ後10年経っても師匠に追いつけるって絶対に思えねえよな……」

 

才人が染々と自分たちと師匠の実力差を淡々と語っている。

 

「そうよねえ、先生が強すぎるのよ! 」

 

「あれは化け物だからなぁ……どう考えてもおかしいだろう。一瞬どころか気がついたら目前までに詰め寄ってくる足さばきなんて、全然動きなんて見えないしさ……剣速の速さなんて人間業じゃないぜ。正直これが実戦だったら自分の首が身体から切り落とされて初めて気づくほどの神業の技量持ってるからなぁ……」

 

ルイズと才人は二人で師匠の剣士としての技量から破天荒な性格についてまで、あれこれ話し合っていた。

 

「そうそう、この話知ってるサイト。先生って、若い頃あの国の特殊部隊を辞めたあと武者修行と称して世界中の危険地帯を放浪して暴れまわって、各地で伝説を遺してるらしいのよ」

 

敷島博士から仕入れた真実か冗談とも解らない、師匠早瀬 平八郎に関するとんでもない逸話をルイズは面白おかしく披露していた。

 

「とんでもない、オッサンだな」

 

「まったくそうようねえ、歩く人間火薬庫だわね。アレは」

 

二人して段々とエスカレートしてきたのか、話の内容が過激になっていく。そして最後にルイズと才人は大声で笑いあっていた。

 

(いま話題に出ていた。早瀬 平八郎先生は博士の古くからの親友で、私の秘密を博士以外で知っている唯一の人であり、また剣術の師匠である先生に5年間の稽古のお礼申し上げたあと、ハルケギニアに還る事を告げたの)

 

(私が今までの感謝の気持ちを伝えると先生は

『やっぱり還るのか……向こうに行っても剣術の修行は怠るなよ! …………あの馬鹿には何も告げずに行くのか……』

そう私に語ったときの先生の横顔はすこし寂しそうだったわ……)

 

「おおぉ~い、ルイズ。人の話ちゃんと聞いてるのかよ? 」

 

「…………えっ、何か言った、サイト? 」

 

先ほどから才人が呼んでいることを全く気がつかず。今ようやくルイズは気づいた。

 

「何だよ、俺の話聞いてなかったのかぁ! 」

「ごめんね、考え事していたから」

 

ルイズは才人の話を聞いていなかったから、片ほうの瞳を閉じて両手を胸の前でかるく合わせる可愛いしぐさで謝っていた。

 

「何だよ~せっかく明日はルイズの誕生日と俺たちの高校入学を祝ってどこかへ遊びに行こうかと思って、聞こうかと思っていたのに! 」

 

ルイズの態度に才人は俺は怒っているんだと、文句を言った。

 

「……話を聞いてなかった私が悪かったわ。そのお詫びにどうせ遊びにいくなら、お、おおおお、奥秩父に在る……は、博士のの、べ、別荘に来ない。土日の、と、ととと、泊まりがけで、ももも、勿論、二人きりっでよ! 」

 

内容がモロあれなのか、緊張のあまりテンパってルイズは自分でも何を喋っているのかよく解らなくなっていた。

 

「……ルル、ルイズさんそれって………もしかしなくても、あ、あれをコウシテ、ナ、ナニヲ、クンズ、ホグレツ、OKのアレの事ですか? 」

 

ルイズの言葉を聞いて才人は胸が思春期特有のエロ妄想少年みたいな感じになって、期待で膨らむような嬉しい気持ちで瞬間的にとある妄想に超短時間くらいの感覚で耽っていた。

 

(別荘にお誘いって事はルイズのあの小さい神秘の胸の先っぽにあるサクランボを好きにむしゃぶりついてなで回すことが出きるんだよなぁ………それに、ルイズのシークレットな場所もたっぷり拝めるんだよなぁ……それにもしかすると脱チェリー卒業出きるかも知れないし。にしし、こりゃあ、楽しみだな……)

 

「もう、声が大きいわよ、周囲に聞こえてしまうじゃ無いのよ! もう少し小さく喋りなさいよね」

 

ルイズはすこし眉を吊り上げて、才人の声が大きいから少しトーンを抑えろと言った。

 

「ほ、本気なんだな! 後で今更、“ダメよ”なんて事は無しだからなぁぁぁぁぁ」

 

いまの才人にはルイズの注意する言葉が全然耳にはいっていなかった。

 

「………ぅう、うるさいのよ! だから、大声で喋るなと言ってるでしょうがぁ! 」

羞恥心Maxのルイズが赤面の表情で才人に怒鳴り散らしている。

 

「……この! おお馬鹿エロ犬のクセにぃぃぃぃぃ」

 

そう叫び、全身から不死鳥さながらの紅蓮の炎のようなオーラを纏いしルイズが、物凄くテンションをあげて喜んでいる才人へ襲いかかり、先ずは空中に飛び上がってドロップキックを鮮やかに決めた才人を床に這いつくばらせ、そこを素早く四のじ固めに持ち込み更にその後はコブラツイストや果てはキン肉バスター、キン肉ドライバーにタワーブリッジなど多種多様な技の数々を繰り出し才人を阿鼻叫喚の地獄へと叩き込んでいる一人の修羅が悠然と獲物を叩き潰し立っていた(女の子を怒らせると怖いと いう見本のような出来事であった)。

 

~~翌日のとある街の駅前通りの広場~~

 

「………ぉぉおおぃぃ、コッチ、コッチ……」

 

ルイズが女の子特有の理由でイロイロ支度に手間取って、ようやくギリギリの時間で待ち合わせ場所に辿り着いて恋人の才人がどこにいるのかなと、顔をきょろきょろとさして辺りいったいを見渡していると。何処からか変な感じの弱々しい小さな声が聞こえてきた気がするから、声のした方を見てみると。両肩で担いでいたリュックを重そうにしていた、今にも倒れる感じの精気の欠片もないと思える表情の才人が弱々しく佇んでいた。

 

「……何よサイトったら朝早くから情けない姿で弱々しい声出して、男の子ならもっとシャキッとしなさいよ! シャキッと! 」

 

早朝からあまりにも情けない声を出しているサイトにルイズは呆れて、シャキッとさせようと叱り飛ばす。

 

「なに言ってやがる! 俺がこう成ったのは昨日お前が俺を地獄のフルボッコにしてくれた後遺症のせいじゃないかぁぁぁぁぁ」

 

直前まで精彩もない弱々しかった才人が、ルイズの理不尽さに怒りのあまり活力が活性化して昨日の出来事に対する文句を言い切った。

 

才人の鬼気迫るような物言いにルイズは内心ビビっていたけど、それを相手に悟られないように虚栄心を全面に押し出すみたいな感じで、言い返す。

 

「な、何よ、あれはサイトが私を怒らせたのが悪いんだから! 」

 

(お店を滅茶苦茶にした私達はあれからお店の人たちに物凄く叱られて店内器物を破損したから当然弁償するはめになって、至急連絡して駆けつけた博士に事情を話して弁償金を支払ってもらい。その事で“ご免なさい”と謝罪すると

『別に気にする事はないんだよルイズ。自分で過ちに気づいて反省しているなら、良いんだよ。次から気をつけてもらえば良いことだからね』

とすこし笑ってそう言って赦してくれた博士だけど……私は今も申し訳なさで心がいっぱいなのに、コイツときたら朝から自分は被害者で何も関係有りませんって顔して少しも反省していないわね! )

 

ルイズは昨日の出来事に対してこれっぽっちも自分は関係ないといった態度の才人には血が沸騰するくらいの怒りを感じていた。

 

(昨日はやり過ぎたと思って少し心配していたのに、こんな事ならもっと徹底的にすれば良かったわ! )

 

そう思うとルイズは急に不機嫌になって、奥秩父へむかう電車の車内で才人とギャアギャアと言い合いを続けて、周囲の迷惑も考えていない昨日の事もまったく反省していないほど。うるさい二人だった。

 

目的地の駅に到着しても、まだ不機嫌だったルイズは、才人を連れて奥秩父の名所を散策して歩きまわってお昼頃には秩父の名物料理を食べ始めた頃に、ようやくルイズの機嫌もなおってきていた。

 

食後のデザートを食べて店を出た二人は目的場所の敷島博士の別荘めざして歩いていく。春先のまだ少し寒い中を木漏れ日の陽射しを浴びて歩き、小道近くに流れている小川のセセラギを聴きながら歩いていると、小さな坂道を登るとすこし先に周りを緑豊かな景色に囲まれた、普通よりすこし大きくて瀟洒な建物が見えてくる。それが敷島博士の別荘であった。

 

「へぇ~此処が敷島博士の別荘なのかぁ~」

 

「そうよ、ステキなところでしょう」

 

別荘を見た才人の率直な言葉にそう言って、前よりもほんの少し僅かばかり成長したまだまだペッタンコの小さい胸を張ってルイズは誇らしそうにしていた。

 

 

(ムムウ………何処からか非常に失礼な物言いされた気がするけど、きっと気のせいね……)

 

ルイズが才人を伴って暖炉を備えている広いリビングへ足を踏み入れ、フカフカのソファーに二人仲良く座ると才人が………。

 

「スゲーなぁ、敷島博士の別荘は~歩くたびに沈む絨毯なんて俺初めて体験したよなぁ……このソファーだってこんなにフカフカだしなぁ~」

 

才人は初めて訪れた博士の別荘の内装のすごさに感心していた。

 

「そうよ! スゴいでしょう。別荘の建物自体は博士が設計図を引いて、それを国内の一流メーカーが建てたのよ」

 

実は博士は建築士の免許も所持していて、それで設計図も自分で引くことが出来たのである。

 

「内装はヨーロッパの一流有名インテリア・デザイナーに頼んだのよねえ……暖炉を筆頭に家具や寝具、キッチン、照明なども北欧の一流メーカーから輸入したんだから~良いでしょう。それにお風呂はもっとスゴいのよ~」

 

そう言ってまたもやペッタンコの胸を張って、別荘の事なのか博士の事なのか解りにくいけど、ルイズは物凄く自慢していた。

 

(………また、物凄く失礼なこと言われた気がするわね! )

 

それからルイズは才人を連れて別荘内を案内してまわり、それが終るとリビングにきてふたりでゆっくりお茶を飲んで午後のひと時を楽しんでいた。

 

お茶を飲み干したあと、ルイズと才人はイロイロな話をしていた。

 

「ねえ、サイト……今日の私の装い見て、どんな感じするのかしら? 」

 

ルイズは自分がいま着ている服装を遠回しな言い方で、才人に褒めてもらいそこから突破口を開いてめくるめく魅惑の遊びを誘おうとしていたその目論見はアホでバカで鈍感なにぶちん少年の次の一言ですべて台無しになっていた。

 

「………何かいつもより随分お子ちゃまに見えるぜ……」

 

才人の本心は今日のルイズはいつもより数段もきれいに感じていたけど………そこは恥ずかしさが先行して素直に恋人の装いを上手く褒められない不器用な少年が照れ隠しで、つい心にもない事を言ってしまっても、仕方は無かったが……段取りを崩された美少女からすると予定通り進まなかったことよりも、恋人の前でせっかくきれいに着飾った乙女心を粉々に砕かれたほうが、かなりショックであった。

この後、しばらくしてショックから立ち直って当初の予定を押し進める行動に移そうとしていた。

 

(……もう何をしてるのよ! 私ったら此処まできながら、のんびりお茶飲んでたり、どうでもいい話ばかりしている場合じゃないのに! あと一歩の勇気が出ないなんて……)

 

ようやく此処までのお膳立てを自分でしときながら、まだ最後の決心ができないルイズだった。

 

(……もう、サイトったら! 何時もは私が嫌がるほど、しつこいくらいにキスしようとしたり、身体を抱きしめてこようとする時やアソコの匂いまで嗅ごうとしてくるクセに! 肝心なときに行動起こさないなんて“あんたそれでも○○○○ついてるの”って言いたくなるくらい、ヘタレ何だから………それにさっきから顔を赤らめてモジモジして! 意気地が無いのよ! 男のくせに! )

 

才人のあまりのヘタレぶりにルイズの心の中に強風が吹き荒れようとしていたが……。

 

(……このままじゃ何時まで経っても進展無さそうで埓もあかないから、しょうがないし……サイトはヘタレだから、ここは私の方からアプローチするしかないわねえ……)

 

ルイズは才人のヘタレぶりを考えて、自分から積極的に誘うしかないと思えて、最終決断を下すと。女の子としてとても恥ずかしい事を告げ始める。

 

「…………ねぇ、サイト~お、おおおおお、お風呂にに、二人で一緒に、は、入らない? ど、どどど、どうかしら」

 

ルイズは頬を朱に染めて恥ずかしくて今にも倒れそうになるくらいの気分で、才人にそう言って誘いの言葉を告げていた。

 

あまりの突拍子もないルイズの女の子として非常識なくらい大胆な発言に対して才人は

 

「………………」

 

考えもしなかったルイズの言葉にびっくりして、しばらく無言を貫いた後にこう言う返事をする。

 

「ほほほ、本気ですか、ルル、ルイズさん? 」

 

顔を真っ赤にしてルイズに聞き返す根性無しのヘタレ才人であった。

 

「ここここここここ、こんな恥ずかしい事、お、おおおおお、女の子の方から二度も言わせるつもりなの? い、いいいいいい、一緒に入るのが嫌なら、べ、別、別に良いのよ、わ、わわわ、私としてわね? 」

 

 

恥ずかしくて今にもこの場から走り去りそうになるくらい羞恥心Maxのルイズは何とか我慢して勇気を振り絞り才人に一緒にお風呂に入ろうと再度述べていた。

 

そのルイズの言葉にヘタレの才人はこれを躊躇するともう絶対誘われるチャンスが二度とこないと、男の勘で解ったていたのか。ここは素直に相手の好意を受けとることに決めた。

 

「いえいえ、自分ごとき卑しい僕に対してのご好意を受けとりまして、有り難く二人一緒に仲良くお風呂へ入らさせて戴きます。ルイズ様」

 

才人がへり下った言動を示すとその後は仲良く手を繋ぎ合っていた。こうして二人はようやく風呂場に向かって歩き出していった。

 

もしもこの場に第三者が隠れて視ていたら、必ずこう言うだろう

 

「やれやれ、これだから処女と童貞のカップルは………」

 

と、そう言って呆れ果てるハズだろう。

 

 

続く。

 





 丁度区切り良いところで今回終えました。

ではあとがきショート劇場の始まりです。

「ねぇ、サイト。何であの時、私の装い褒めてくれなかったのよ! そんなに私きれいじゃ無かったの? 」

「バッキャロー……男が軽々しく恋人の着飾った姿みて、褒めれるもなかぁ! ……でも……」

「でも、本当は私の事、きれいだって思っていたのよねえ……サイトは」

「そう、思っていても中々口に出来ないのが、男がシャイなところ何だよ! 」

「あれ~その割にはお風呂場じゃ大胆な行動してくれたわよねえ」

「わぁぁぁ、此処でそれ言っちゃダメだろう、ルイズ。その時の詳しい詳細はR-18じゃないと語れないんだよう」

「ふう~ん。それが今回のオチなのねぇ……」

では、次回でまたお逢いしましょう。


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