レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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9・再会

翌朝、私達が朝ご飯を食べに大広間に行くと、ドラコ・マルフォイが、ハリーが吸魂鬼に襲われて気絶したことでからかってきた。

ま、相手にするのも馬鹿馬鹿しいので、みんなでスルーしたけどね。

 

ご飯を食べながら時間割を確認すると、私のホグワーツでの最初の授業はマグル学となっていた。

 

それにしても、ハーマイオニーの時間割が変だった。

同じ時間に占い学、マグル学、数占い学が重なっている。

3つの授業にどうやって同時に出るんだろう?

マクゴナガル先生と一緒に決めたから大丈夫だって、ハーマイオニーは言っていたけど。

 

そして、朝食が終わると、ハーマイオニーは、ハリーやロンと一緒に占い学へ行ってしまった。

あれ?

でも、マグル学の方はどうするんだろう?

 

「伶!」

大広間を出ようとすると、誰かが私を呼んだ。

振り返ると知り合いだ。

印象的な切れ長の黒い目、スッキリ通った鼻筋、サラサラの黒髪で背が高い美少年。

 

私は日本語で返事をした。

「《晶(あきら)じゃん! ホグワーツにいたんだ!》」

 

彼は橘晶(たちばな あきら)。

父さんが青龍学院で働く前、私達は彼の家の近所に住んでいた。

私が引っ越すまで、同じ小学校に通っていたんだ。

ちなみに彼の実家は、日本では有名な魔法病院で、そこは父さんのかかりつけでもあった。

 

「《ああ、俺、1年生の最初からココにいるんだ。俺も3年生だから、ヨロシクな》」

「《3年生? 小学校の学年は1つ下だったのに? あ、そっか、ここイギリスだもんね》」

私は2月生まれで、晶は同じ年の8月生まれ。

イギリスだと9月から学年が始まるから、晶は私と同じ学年になるんだね。

 

「《しっかしお前、何でグリフィンドールになるんだよ。うちの寮だったら、一緒にクィディッチできたのに。残念だぜ》」

晶の寮はハッフルパフだそうで、ローブに穴熊の紋章がついていた。

 

「《それにしても、お前が来たのもビックリしたけど、何で、お前のお父さ・・うぐっ!》」

「《しーっ!声が大っきい!》」

私は反射的に晶の口を塞ぐ。

日本語だから良かったけど、英語なら一発アウトだ。

 

「《ゲホッ! 何すんだ、いきなり!?》」

咳き込んで涙目で睨む晶を無視し、事情を話す。

晶には、私と父さんが親子であることと、父さんの「持病」について黙っておくように頼んだ。

晶も父さんの持病を知っているからね。

 

「《ところで晶、今から何の授業?》」

私が尋ねると「マグル学」だと教えてくれた。

「《ラッキー! 他の友達はみんな占い学に行っちゃったから、知ってる人が一緒でよかったよ》」

「《俺も。周りは占い学を取る奴ばかりで、マグル学はアーニーぐらいしか居なくてさ。しかもアイツ、俺を置いてさっさと行きやがったし!》」

 

そして、私は晶と歩き始めた。

途中、動く階段とか、動く壁とかにおっかなびっくりしながら、なんとか教室に着く。

 

「レイ、こっちよ!」

晶と一緒に教室に入ると、何故かハーマイオニーが先に席に着いていた。

え、さっき君はハリーやロンと占い学に行ったんじゃ?

 

「あら。ミスター・タチバナと知り合いなの?」

ハーマイオニーが私と晶を見て尋ねると、晶が英語で答えた。

「俺と伶は幼馴染なんだよ。実は俺に英語を教えてくれたのは、伶のお父さんなんだぜ。俺、彼に憧れて、この学校に入ったんだ」

へぇ、晶がホグワーツに留学したのは、父さんの影響だったのか。

 

「あれ、アキラ。編入生の子と一緒だったんだ?」

ハーマイオニーの斜め後ろで、ぽっちゃりした男の子が晶を呼んだ。

「アーニー! よくも俺を置いてけぼりにしたな!?」

晶がジロりと睨みつけたら、男の子は「ごめん、ごめん」と謝る。

それからオッホンと咳払いをして、私に自己紹介した。

 

「始めまして。僕はアーニー・マクミランといいます。寮はアキラと同じハッフルパフです。よろしくお願いします」

アーニー・マクミランは、育ちが良さそうなおっとりとした雰囲気の少年だった。

どっかの失礼坊ちゃまとは大違いだ。

 

「如月伶です。寮は昨日組み分けされたとおり、グリフィンドール。晶とは昔からの知り合いです。こちらこそ、よろしくお願いします」

私も笑顔で自己紹介をした。

 

そうこうしていると、担当のチャリティ・バーベッジ先生が入ってきた。

まだ若くて明るい魔女だ。

彼女はクラスを見渡して言った。

 

「この授業の趣旨は魔法使いとマグルの相互理解を深めることです。マグルは、魔法を使えませんが、その代わり科学技術を駆使して様々なものを発明し、生活を便利にしてきました。ところで、マグル出身、又は身内にマグル出身者がいる生徒に言っておくわ、」

バーベッジ先生は一旦言葉を切る。

 

「簡単に単位が取れると思ったら大間違いよ。私、レポートをいっぱい書かせるの大好きだから、覚悟しといてね~!」

てへっと、バーベッジ先生は可愛く笑ったけど、言われた私達生徒は笑えないよ。

 

まあ、授業は悪くなかったかな。

今学期はマグルの生活について学ぶという。

始めに、今日はマグルの家事について講義があった。

そして、さっそく「マグルと魔法使いの洗濯方法の違いについて羊皮紙1巻半論述せよ」というレポート課題が出た。

 

授業の後、晶と別れ、私とハーマイオニーは変身術へ向かった。

 

教室の前に着くと、ハーマイオニーが言いにくそうに切り出した。

「レイ、悪いけど先に行っててくれないかしら。ちょっとお手洗いに行ってくるわ」


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