やがて馬車がホグワーツに着く。
ホグワーツへ続く石段は生徒達でごった返していた。
私達もその流れにのって、石段を登る。
玄関に着くと、私と父さんは校長室へ向かった。
しばらく廊下を歩いてから、父さんは巨大なガーゴイル像の前で立ち止まった。
父さんが像に向かって「アーモンドチョコレート」と言う。
すると、像がピョンと動き、螺旋階段が現れる。
階段に立つと、まるでマグルのエスカレーターのように階段が動いてグルグルと上に運ばれた。
「おお、リーマスにレイ。待っておったぞ」
部屋に入ると、ダンブルドア校長が出迎えてくれた。
「レイ、ホグワーツにようこそ」
校長室は広い円形の部屋だった。
壁には歴代の校長の動く肖像画が飾ってある。
そして室内には、様々な魔法道具が置いてあった。
奥には金色の止まり木があり、燃えるように紅い羽をした鳥がいた。
長い尾羽は金色で、美しく光り輝いている。
これがダンブルドア校長のペットの不死鳥かな?
【アルバス、彼女が噂のサトル・キサラギの姪っ子か?】
不死鳥は威厳たっぷりに、ダンブルドアに話しかけた。
「そうじゃよ。さあレイ、紹介しよう。わしの相棒、フォークスじゃ」
「初めまして、如月伶……伶・アルメリア・如月・ルーピンです。よろしくお願いします」
私はフルネームで自己紹介する。
「ところで、あなたは悟叔父さんを知ってるんですか?」
【ああ、知っとるとも。学生時代の彼は、我の良き話し相手であった。何しろアルバスの他に、我の言葉を解するのは、彼ぐらいしか居らなんだったからのう】
そう言って、フォークスはパタパタと羽を震わせた。
「さて、リーマス。梟便で手紙を送った件について、話を聞こうかのう」
ダンブルドアに促され、父さんは列車での出来事について報告した。
しばらくダンブルドア校長は、話を厳しい顔つきで聞いていたけど、ふと私に尋ねた。
「レイは大丈夫だったかね?」
「はい。でも、怖かったです。もし、父が乗り合わせてなかったらと思うと、ゾッとします」
報告が終わると、父さんは先に大広間へ向かい、私は寮や得点制度について説明を受けた。
その時、ドアがノックされた。
入ってきたのはスネイプだ。
「校長、組み分け帽子をお借りしに参りました」
「頼んだぞ。セブルス」
ダンブルドア校長は、スネイプに古びた魔法使いの三角帽子を渡した。
その帽子のボロさ、父さんのローブといい勝負だった。
あれを頭へ載せて寮を決めるんだな。
スネイプは私に言った。
「これから組み分けを行う。お前は編入生なので最後だ。呼ばれるまで、しばらく待機しろ」
やがてスネイプが戻ってきて、私を大広間へ連れて行った。
大広間には、4つの長テーブルが置かれていて、生徒が各寮に分かれて座っていた。
テーブルの上には何千ものロウソクが浮いている。
中央正面には、三本脚のスツールの上に、さっきの古帽子が置かれていた。
側には、髪をひっつめにした四角いメガネの魔女が立っている。
あ、ミネルバ・マクゴナガル!
20世紀で、全世界合わせて7人しかいない登録アニメーガスの1人じゃん!
青龍学院にいた時、変身術の授業で習ったぞ。
そんなすごい人が先生って、ホグワーツ恐るべし。
「今年は3年生に編入生が入ります。ミス・キサラギ、前へ」
マクゴナガル先生に呼ばれ、前に出て自己紹介する。
「如月伶です。日本の青龍学院魔法学校から来ました。よろしくお願いします」
実は、小学5年生の時、1度転校したことがある。
父さんが青龍で働くことが決まり、それにともなって学校の近くに引っ越すことになったんだ。
けど、その時よりも2倍緊張したよ。
なんといっても、1000人近い全校生徒が、私に注目しているんだから。
とにかく、私はスツールに腰掛け、帽子をかぶる。
すると、組み分け帽子がテレパシーのように話しかけてきた。
(リーマス・ルーピンとアズサ・キサラギの娘か。ほぅ、お主も「鳥語聞き」だな。さすが日本の名門、キサラギ家の子じゃ。優れた頭脳と冷静な思考力、そして魔法の才能にも恵まれている……ならば、入れるとすればレイブンクロー…………)
レイブンクローなら悪くないな。
けど、せっかくホグワーツに来たんなら、父さんや母さんと同じ寮が良いかなあ。
(ほぅ、その手があった。確かに。困った人間を見ると放っておけず、すぐさま手を差し伸べる行動力、お主にはそちらの方が向いておるかもしれぬ)
帽子は高らかに叫んだ。
「グリフィンドール!!」
グリフィンドールのテーブルから「編入生を獲得したぞ!!」と歓声が上がった。
フレッドとジョージが、ピューと口笛を吹いている。
私はハーマイオニーの隣に座った。
ちなみにグリフィンドールの寮監は、あのマクゴナガル先生らしい。
ちなみに彼女は、副校長でもあるそうだ。
「あの者達が、危害を加える口実を与えるでない。吸魂鬼に許しを乞うても、出来ぬ相談じゃ」
前では、ダンブルドア校長が吸魂鬼について、注意事項を述べていた。
その後、新任の先生として父さんが紹介されると、パラパラとやる気がない拍手が起こった。
けど、父さんの活躍を目撃したハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニー、同じ客室にいた丸顔の男の子(ネビル・ロングボトムという名前らしい)は、大きな拍手をしてくれた。
一方、スネイプは、憎々しげに父さんを見ていた。
まあ、いろいろ思うところがあるんだろうね。
次に森番のハグリッドが、魔法生物飼育学の先生として紹介されると、盛大な拍手が起きる。
「そうだったのか! 噛み付く本を教科書指定するなんて、ハグリッド以外にいないよな?」
ロンがテーブルを叩きながら叫ぶ。
「え、ハグリッドって、そういう人なの?」
私が尋ねると、ハーマイオニーが答えた。
「レイ、ハグリッドは良い人よ。けど、凶暴な生き物が大好きっていう、困ったところがあるの」
「そうそう、前にドラゴンを飼おうとして、大騒動になったんだよ」
ハリーもハーマイオニーに同意した。
「さあ、宴じゃ!」
校長が宣言すると、目の前に食べきれないぐらいのご馳走がズラリと並んだ。
漏れ鍋の食事もおいしかったけど、ホグワーツの料理は格別だ。
ホグワーツの料理、すっごくおいしい!
青龍時代の担任・高砂先生は「料理がマズイんじゃないか」と心配してたけど、杞憂だったね。
特にデザートのチョコレートサンデー!!
今まで食べてきた中で、いちばんおいしかった!
だけど、キャロットグラッセはいらない。
人参は嫌いなんだ!!
宴会が終わると、ハリー達3人は私を連れ、ハグリッドの所に行く。
「おめでとう、ハグリッド!」
ハーマイオニーが歓声を上げた。
ハグリッドは、魔法生物飼育学の先生になれたことに嬉し泣きしていた。
私はハグリッドとは初対面なので、自己紹介する。
「初めましてハグリッド教授。如月伶です。よろしくお願いします」
「おおっ、お前さんがレイか。アズサにそっくりだ! あ~、俺のことは、ハグリッドって呼び捨てで構わねえ。よろしくな」
そう言って、彼は涙でグシャグシャの顔をナプキンで拭った。
「ミス・キサラギ、ミス・グレンジャー」
マクゴナガル先生が、私とハーマイオニーを呼んだ。
「ミス・キサラギ、ようこそグリフィンドールへ。寮監のミネルバ・マクゴナガルです」
マクゴナガル先生って、真面目で厳しそうだ。
こりゃ逆らっちゃダメだな。
「ミス・キサラギは、ミス・グレンジャーと2人部屋になります。ミス・グレンジャー、貴女の荷物は新しい部屋に移動してありますので、確認なさい」
寮の部屋はなかなか快適そうだった。
ベッドは日本ではあまり見かけない天蓋付きだ。
机と小さな本棚があって、勉強もはかどりそうだね。
何よりルームメイトが、知り合いのハーマイオニーなので、ちょっと安心だった。