レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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31・ブラック再び

ところがその後、事件が起きた。

真夜中にハリー達の部屋に、シリウス・ブラックが侵入したのだ。

 

グリフィンドール寮は、大騒ぎになった。

 

ブラックは、ハリーと間違えてロンのベッドを襲ったのだという。

しかも、ロンのベッドのカーテンをナイフで切り裂いたらしい。

 

ロンが叫び声を上げたので、ブラックは手が出せず、慌てて逃げたそうだ。

部屋のみんなが無事で、本当に良かったよ。

 

それにしても、ブラックはどうやって入ったのだろう?

 

そう思っていたら、なんと門番のカドガン卿が通してしまったらしい。

 

彼は、シリウス・ブラックが1週間分の合言葉が書かれているメモを読み上げて、寮に入ったと証言した。

 

カドガン卿の役立たず!

いくら合言葉を知っていたからって、イギリス全土で指名手配中の脱獄犯を通すなんて!

門番の意味が無い!

 

もちろん、カドガン卿は速攻でクビになった。

そして、太った婦人がグリフィンドール寮の門番に復帰した。

 

で、1週間分の合言葉を紙にメモしてたのは、ネビルだった。

ネビルには、マクゴナガル先生から特大のカミナリが落ちた。

彼には、ホグズミード行き禁止という罰が与えられた。

 

そして、ブラック侵入の2日後。

朝食の席で、ネビルの前に梟が真っ赤な封筒を落としていった。

梟は【大奥様がお怒りだ~っ!!】と叫びながら、もの凄い勢いで飛び去った。

 

ネビルは赤い封筒をつかみ、猛ダッシュで大広間を出て行く。

間もなく、玄関ホールから、どえらい剣幕で怒鳴る老婆の声が聞こえてきた。

「……なんたる恥さらし!! 一族の恥!!!!!」

 

【あらら、『吼えメール』を受け取ったのね】

ちょうどハリーへ手紙を持ってきていたヘドウィグが、ネビルに同情した。

 

「うわあ、吼えメールだ。それにしても、あれが噂のネビルのお祖母さんか。なんというか……強烈だね」

【『吼えメール』はできれば、私達梟もあまり運びたくないのよね】

ヘドウィグは遠い目をした。

 

「ところで、手紙を持って来たんじゃないの?」

私に言われて、ヘドウィグはハッとしたように、ハリーの手首を甘噛みした。

 

手紙はハグリッドからで、いよいよヒッポグリフの裁判の日程が決まったという話だった。

 

そしてまたホグズミード休暇がやって来た。

今回、ハーマイオニーは大量の宿題を片付ける為、学校に残ることにした。

私はハリーの訓練に使うチョコの買い出しがあるので、1人で出掛けることになった。

 

出発前、ハーマイオニーが私に耳打ちしてきた。

「気をつけて。ロンがハリーを連れ出そうとしているみたいなの。きっと『透明マント』と、あの『忍びの地図』を使うつもりよ」

 

彼女によれば、ハリーはジェームズさんの形見の「透明マント」を持っているらしい。

マントについては、うちの父さんの昔話に度々出てくるので、私も知っていた。

 

学校を出た私はハニーデュークスに直行した。

途中、大通りでマルフォイ、クラッブ、ゴイルの3人組を見かけた。

 

ハニーデュークスに着き、いつものように大きな紙袋2つ分のチョコを買って出ると、店先にロンが1人で立っていた。

 

「あれ、ロンどうしたの?」

 

ロンは、まるで待ちぼうけを食らっているみたいに退屈そうに見えた。

私は半信半疑で尋ねた。

「ロン、君1人?」

 

「僕以外に誰か見えるっていうのかい?」

ロンが口を尖らせる。

 

「レイこそ。ハーマイオニーは一緒じゃないのか?」

「ハーマイオニーは、宿題で忙しいから残るんだって」

私がそう言うと、ロンは「ふーん」と何だかうわの空のような返事をした。

 

一応、辺りを見回したけど、怪しい感じはしなかったので、そのまま私は学校に戻った。

 

そして、いつものようにチョコを父さんの部屋に届けに行く。

その途中、禁じられた森のあたりに、クルックシャンクスとあの黒い大きな犬が一緒にいるのが見えた。

あの2匹、何だかいつも一緒な気がするなぁ。

 

部屋に着いた私は、父さんにチョコレートを渡してから、一緒にお茶を飲むことにした。

 

「ところで父さん、さっきハーマイオニーの猫と大きな黒い犬が一緒にいたのを見たんだ。あの2匹、前も一緒にいたのを見たんだよね……」

 

父さんの顔が凍りついた。

「伶、今『黒い大きな犬』って言ったかい?」

 

私がうなずくと、父さんは一気に顔をしかめた。

「まさか、やはり…………。伶、聞いて欲しい。あの犬は、」

しかし、父さんの言葉は、最後まで続かなかった。

 

「ルーピン! 話がある!」

突然暖炉の火が強くなり、スネイプの怒鳴り声が聞こえてきたのだ。

 

父さんは疑わしげに、私の顔を見た。

人狼レポートの撤回騒動を思い出したらしい。

 

「え、今回は私、何もしてないよ?」

本当に身に覚えはないんだってば!

 

「伶に心当たりが無くても、何となく君も一緒に来た方が良いような気がする。これは僕の『勘』だけどね」

 

そう言って、父さんは私を暖炉に引っ張り込んだ。


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