レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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3・いざ、イギリスへ

8月もあと1週間と少しとなったある日。

私はイギリスのヒースロー空港に降りたった。

時差ボケで、少し頭がぼーっとする。

 

[脱獄囚シリウス・ブラックを見かけたら、ロンドン警視庁へご連絡を!]

ロビーのあちこちに、そんなポスターがあった。

まさか、スコットランドヤード(ロンドン警視庁)もブラックを追ってるとは思わなかったな。

もっとも、マグル向けのポスターだから写真は動かないけどね。

 

ロビーを見渡すと、杖をついた老人がいた。

隣には、風船ガムのようなショッキングピンクの短髪をツンツンさせた若い女性もいる。

 

老人はマッド・アイ(本名はアラスター・ムーディ)。

元・凄腕闇祓いで、父さんとお祖父ちゃんの古い知り合いだ。

昔、死喰い人との戦いで、口が歪み、鼻と左目を失くした為、かなり迫力のある顔だったりする。

しかも、左目には、ぐるぐる回る魔法の義眼が入ってるし!

小さい頃は、怖くてマトモに顔が見られなかった。

ついでに言うと、左脚は義足だ。

いや、怖いのは見た目だけで、実は結構いい人なんだけどね。

 

「久しいな、レイ。しばし見ぬ間に背が伸びたか?」

マッド・アイは目を細める。

「お久しぶりです、マッド・アイ。お元気でしたか?」

私も挨拶をしたけど、ところで隣の女性は誰?

 

「レイ、紹介する。彼女はニンファドーラ……」

マッド・アイの言葉に、女性はツッコミぎみに言う。

「トンクスよ! トンクス! ト・ン・ク・ス!! トンクスでいいから。よろしく、レイ」

彼女が握手を求めてきたので、私も慌てて手を出す。

「如月伶です。よろしくお願いします」

「レイ。彼女はこう見えて闇祓いの見習いだ。そそっかしいが、なかなか見どころがある」

 

そう言ってから、マッド・アイは付け加えるように私にこっそり耳打ちした。

「レイ。彼女はファーストネームを呼ぶと、機嫌を損ねる。苗字で呼べ」

どうやら、彼女は自分のファーストネームが気に食わないらしい。

ニンファドーラって、カワイイ名前なのになぁ。

 

何故、私を元・凄腕闇祓いと闇祓い見習いが空港まで迎えにきたのか?

実は、私のお祖父ちゃんは世界的に有名な魔法薬学者で、現職の日本の魔法大臣なのだ。

一応、私はVIPの身内なので、ブラックが逃亡中の今、安全を考えてこうしたらしい。

わざわざ魔法を使わず、飛行機で移動したのも、セキュリティ上の理由だそうだ。

 

それから、私達は地下鉄でロンドン中心部へ出た。

途中、マッド・アイが切符を買うのに手間取っていた。

見かねたトンクスが、テキパキと券売機を操作し、3人分の切符を買ってくれた。

実は、彼女のお父さんはマグル生まれだそうで、地下鉄には慣れているらしい。

 

漏れ鍋に着くと、マスターのトムに挨拶して荷物を預け、財布だけを持って出た。

 

買い物の前にグリンゴッツ銀行で日本円を両替する。

グリンゴッツでは、たくさんの小鬼が忙しそうに働いていた。

日本だと、魔法界とマグルは同じお金を使っているんだ。

けど、イギリスだとマグルと魔法界のお金は違う。

それにイギリス魔法界のお金は、すっごくややこしい。

確か、29クヌート銅貨が1シックル銀貨で、17シックルが1ガリオン金貨だっけ?

どうしてこんなにキリが悪いのか、いまだに意味不明だよ。

 

さて、ホグワーツで使う学用品なんだけど、杖・鍋・薬瓶・真鍮の秤は持っている。

箒は3年生だから、持ち込みOK。

ちなみに、私の箒は「縮小スイッチ」がついていて、小さくして携帯できるスグレモノだ。

メーカーはもちろん、史子の実家、東郷飛行具社だ。

買わなきゃいけないのは、制服と羊皮紙・羽根ペン・インク、あとは教科書ぐらいかな。

 

両替が済むと、まず制服を買いにマダム・マルキンの店へ行く。

ずんぐりむっくりの優しそうなマダムが、ニコニコしながら採寸してくれた。

私が制服のローブを仕立てている間、マッド・アイは外で退屈そうにしていた。

けど、トンクスは楽しそうに店内を見て回っていた。

 

それから文具店で羊皮紙・羽根ペン・インクを買った。

文具店を出たあと、トンクスが私に尋ねた。

「ところで、ホグワーツには、梟・猫・ヒキガエルなどのペットの持ち込みができるけど、レイは何か飼わないの?」

梟が欲しいと言うと、マッド・アイとトンクスは、イーロップふくろう百貨店に連れて行ってくれた。


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