ハッフルパフ戦でニンバスを暴れ柳に壊されたハリーには、箒がない。
そこで、彼が新しい箒を手に入れるまでの間、私は自分の箒(空龍H4)を貸すことにした。
私は補欠だから、クィディッチの練習は学校の箒を使えばいいからね。
「レイの箒、乗りやすいね。どこのメーカーだい?」
ハリーは空龍が結構気に入ったらしい。
「日本の東郷飛行具社っていうところだよ。しかもこの箒、『縮小スイッチ』がついてて、小さくできるんだ。ほら!」
私は空龍の縮小スイッチを操作する。
箒は一瞬で縮んで、手のひらサイズになった。
わーっと、チームのみんなから歓声が上がった。
「でもこれ、飛んでる途中に縮んだりしない?」
アンジェリーナが尋ねた。
「大丈夫。飛んでる時は安全装置が働いて、勝手に縮まないようになってるからね」
「「へぇ、すごいなあ」」
フレッドとジョージが見事なユニゾンで感心した。
箒の自慢をしていて、ふと気づいた。
東郷飛行具社と言えば……あ、フミの実家じゃん!
何ですぐ思い出さなかったんだ、私!?
「そういえば、青龍学院にいた時、東郷飛行具社の社長令嬢と友達だったんだ。良かったら、箒のカタログを送ってくれるように頼んでみようか?」
すると、オリバーがやってきて言った。
「そうだな。先日の試合を見たが、レイが使っていたトーゴーの箒は、あの悪天候下で抜群の安定性を発揮していた。それに『縮小機能』はかなり便利なようだな。ハリー、検討する価値はある。レイ、ぜひカタログを送ってもらってくれ」
というわけで、私はフミこと東郷史子に手紙を書いた。
ヒキャクに手紙を渡すと【任しとき! 実は俺、一度、日本に行ってみたかったんよ!】と、かなり張り切っていた。
そして1週間後。
朝ごはんの席で、ヒキャクは巨大な包みを持って戻って来た。
「ありがとう、ヒキャク。ご苦労様」
【レイ。アンタの友達、ええ娘さんやね! 俺に高級ベーコンをたくさんくれたばい! あげなウマいベーコン、食べたことなかよ!!】
長旅にもかかわらず、ヒキャクは羽をパタパタとさせ、ご機嫌だった。
「ヒキャクにとっては、ベーコンやハムさえくれりゃ、誰でもいい人なんじゃないの?」
ヒキャクはベーコンとハムが大好物なんだよね。
【お友達が、レイにヨロシクっち言いよったぞ。そんじゃ!】
ヒキャクはそう言って、皿の上のハムエッグをかっさらって行った。
「《あ、こらっ! ヒキャク、ハムエッグ返せ!!》」
私は思わず日本語で叫んだけど、ヒキャクは無視して飛んで逃げた。
グリフィンドールのテーブルで、爆笑が起きる。
気を取り直し、フミからの包みを開けてみた。
中には、箒の1993年版カタログ(英語版)と、箒手入れセットの試供品、そして手紙が入っていた。
とりあえず、カタログと箒手入れセットはハリーに渡し、私はフミからの手紙を開いた。
それにしても、日本語の文章なんて久しぶりに読むなあ。
伶、元気にしてる?
青龍のみんなは元気でやってるよ。
私、9月からポジションがチェイサーから、シーカーに変わったんだ。
キャプテンの河口先輩が私に「宮田先輩は頼りないから、お前がやれ」って言ったんだけど、 シーカーはけっこう難しくて苦労してる。
けど、この前、玄武呪術学園との練習試合で、私がスニッチ取って勝ったんだよ。
ところで伶、イギリスでの生活はどう?
ホグワーツの授業はけっこう難しいって聞いたよ。
でも、青龍で1年の時からずっと学年トップだった伶なら、きっと大丈夫だよね。
それにしても、あのハリー・ポッターと友達になるなんて、伶はスゴイなあ。
あ、そうそう。
頼まれてた英語の箒のカタログ最新版を送るね。
うちの箒はとっても丈夫だから、ぜひハリー・ポッターにも使ってほしいな。
というわけで、箒の宣伝よろしく!
寒さがきびしくなるから、カゼ引かないようにね。
ルーピン先生にも、よろしくと伝えておいてね。
東郷史子より
フミの手紙は相変わらずの丸っこい字で、なんだかとても懐かしかった。
それにしても、入学した時からチェイサー一筋だったフミが、シーカーになったのには、驚きだ。
けど、確かに前のシーカーだった高等部1年の宮田先輩は、あまり上手くなかったもんなぁ。