レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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23・箒

ハッフルパフ戦でニンバスを暴れ柳に壊されたハリーには、箒がない。

そこで、彼が新しい箒を手に入れるまでの間、私は自分の箒(空龍H4)を貸すことにした。

私は補欠だから、クィディッチの練習は学校の箒を使えばいいからね。

 

「レイの箒、乗りやすいね。どこのメーカーだい?」

ハリーは空龍が結構気に入ったらしい。

 

「日本の東郷飛行具社っていうところだよ。しかもこの箒、『縮小スイッチ』がついてて、小さくできるんだ。ほら!」

 

私は空龍の縮小スイッチを操作する。

箒は一瞬で縮んで、手のひらサイズになった。

わーっと、チームのみんなから歓声が上がった。

 

「でもこれ、飛んでる途中に縮んだりしない?」

アンジェリーナが尋ねた。

「大丈夫。飛んでる時は安全装置が働いて、勝手に縮まないようになってるからね」

「「へぇ、すごいなあ」」

フレッドとジョージが見事なユニゾンで感心した。

 

箒の自慢をしていて、ふと気づいた。

東郷飛行具社と言えば……あ、フミの実家じゃん!

何ですぐ思い出さなかったんだ、私!?

 

「そういえば、青龍学院にいた時、東郷飛行具社の社長令嬢と友達だったんだ。良かったら、箒のカタログを送ってくれるように頼んでみようか?」

 

すると、オリバーがやってきて言った。

「そうだな。先日の試合を見たが、レイが使っていたトーゴーの箒は、あの悪天候下で抜群の安定性を発揮していた。それに『縮小機能』はかなり便利なようだな。ハリー、検討する価値はある。レイ、ぜひカタログを送ってもらってくれ」

 

というわけで、私はフミこと東郷史子に手紙を書いた。

ヒキャクに手紙を渡すと【任しとき! 実は俺、一度、日本に行ってみたかったんよ!】と、かなり張り切っていた。

 

そして1週間後。

朝ごはんの席で、ヒキャクは巨大な包みを持って戻って来た。

「ありがとう、ヒキャク。ご苦労様」

【レイ。アンタの友達、ええ娘さんやね! 俺に高級ベーコンをたくさんくれたばい! あげなウマいベーコン、食べたことなかよ!!】

長旅にもかかわらず、ヒキャクは羽をパタパタとさせ、ご機嫌だった。

 

「ヒキャクにとっては、ベーコンやハムさえくれりゃ、誰でもいい人なんじゃないの?」

ヒキャクはベーコンとハムが大好物なんだよね。

 

【お友達が、レイにヨロシクっち言いよったぞ。そんじゃ!】

ヒキャクはそう言って、皿の上のハムエッグをかっさらって行った。

 

「《あ、こらっ! ヒキャク、ハムエッグ返せ!!》」

私は思わず日本語で叫んだけど、ヒキャクは無視して飛んで逃げた。

グリフィンドールのテーブルで、爆笑が起きる。

 

気を取り直し、フミからの包みを開けてみた。

中には、箒の1993年版カタログ(英語版)と、箒手入れセットの試供品、そして手紙が入っていた。

 

とりあえず、カタログと箒手入れセットはハリーに渡し、私はフミからの手紙を開いた。

それにしても、日本語の文章なんて久しぶりに読むなあ。

 

伶、元気にしてる?

青龍のみんなは元気でやってるよ。

私、9月からポジションがチェイサーから、シーカーに変わったんだ。

キャプテンの河口先輩が私に「宮田先輩は頼りないから、お前がやれ」って言ったんだけど、 シーカーはけっこう難しくて苦労してる。

けど、この前、玄武呪術学園との練習試合で、私がスニッチ取って勝ったんだよ。

ところで伶、イギリスでの生活はどう?

ホグワーツの授業はけっこう難しいって聞いたよ。

でも、青龍で1年の時からずっと学年トップだった伶なら、きっと大丈夫だよね。

それにしても、あのハリー・ポッターと友達になるなんて、伶はスゴイなあ。

あ、そうそう。

頼まれてた英語の箒のカタログ最新版を送るね。

うちの箒はとっても丈夫だから、ぜひハリー・ポッターにも使ってほしいな。

というわけで、箒の宣伝よろしく!

寒さがきびしくなるから、カゼ引かないようにね。

ルーピン先生にも、よろしくと伝えておいてね。

東郷史子より

 

フミの手紙は相変わらずの丸っこい字で、なんだかとても懐かしかった。

 

それにしても、入学した時からチェイサー一筋だったフミが、シーカーになったのには、驚きだ。

けど、確かに前のシーカーだった高等部1年の宮田先輩は、あまり上手くなかったもんなぁ。


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