レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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18・侵入者

大広間はハロウィンモード全開だった。

カボチャをくり抜いて作った提灯が何百個もあったり、生きたコウモリが飛びまわっていたり。

料理も普段より豪華で、とてもおいしかった。

特にパンプキンパイは絶品で、3個もおかわりしちゃったよ。

 

宴会の最後には、ゴースト達の余興があった。

グリフィンドールの寮つきゴースト、ほとんど首なしニックが、しくじった打ち首(つまり自分が死んだ場面)を再現していた。

なんでも、処刑に使われた斧の切れ味が最悪で、何度やっても首が切れなかったらしい。

うわあ、逆にそれって残酷だよね。

 

夕食を終えた私達が寮に戻ってくると、入口は妙に人がいっぱいで混み合っていた。

寮のドアを守っている太ったレディの肖像画が開かないらしい。

 

「何をもたもたしてるんだ?」

後ろからパーシーが人混みを掻き分け、ドアへ歩いていく。

ドアの前に来ると、パーシーが叫んだ。

「誰か、ダンブルドア先生を呼んで。急いで!」

 

遅れて来たジニーが「どうしたの?」と尋ねた。

 

ふと見ると、いつの間にかダンブルドア校長は来ていた。

校長が肖像画へ歩いていくと、生徒達は道を開けて通れるようにする。

私達も何が起きているのか確認しようと、入口に近づいてみた。

 

次の瞬間、私は一瞬にして凍りついた。

ハーマイオニーは悲鳴をあげて、ハリーの腕をつかんでいる。

腕をつかまれたハリーは固まっている。

ロンも、ヒッと息を呑んでいる。

 

そこには、肖像画のキャンバスが、ズタズタに切り裂かれて散らばっていた。

切り裂かれた絵の中に太ったレディはいない。

 

気づけば、寮監のマクゴナガル先生、スネイプ、そして父さんが駆けつけてきたようだ。

校長は、すぐにレディを探すように命じた。

 

今度はそこにピーブズが現れた。

ピーブズは絵をズタズタにした犯人を知っていた。

 

なんと、シリウス・ブラックだった。

 

ブラックは寮に侵入しようとして、太ったレディに拒否された。

その腹いせに絵をズタズタにしたらしい。

 

13人の人間を一瞬にして木っ端微塵にした奴だ。

きっと、肖像画をズタズタに引き裂くぐらい、何とも思ってないんだろう。

 

青龍学院もそうだったけど、ホグワーツの敷地内でも「姿現し」や「姿くらまし」は使えないそうだ。

だから、校舎に侵入するには、周りを固める吸魂鬼を突破しなきゃいけない。

それをやってのけたブラックは、一体どんな恐ろしい闇の魔法を使ったんだ?

 

ハリーは命を狙っているのは、そういう男なんだよね。

 

その晩はグリフィンドールだけでなく、全校生徒が大広間に集まって寝ることになった。

けど、みんな怖いせいで興奮して寝付けずに、ブラックのことをヒソヒソ話していた。

 

あれから先生達は、夜通し校内を捜索していたようだった。

けど、結局ブラックを見つけることはできなかったという。

 

父さんもきっと捜索で大変だったに違いない。

とりあえず、ホグズミードで買ったお茶の葉とお菓子は、ヒキャクに届けてもらった。

 

翌日。

昼休みに教科書を取りに寮に戻った私は、談話室でフレッドとジョージがいるのをみつけた。

2人は額をくっつけ、何かを熱心に覗き込んでいた。

 

「フレッド、いたか?」

「いや、もう遠くへ逃げてるんじゃないか?」

「だよな。もうホグワーツには隠れてないよな」

 

双子はヒソヒソ声で話している。

何を見ているのかと思って、そっと私は後ろから覗いてみた。

 

それは羊皮紙だった。

描かれているのは、ホグワーツ全体の地図。

地図上にはたくさんの点があり、動き回っている。

それぞれの点には名前がついていた。

例えば、グリフィンドール談話室には「フレッド・ウィーズリー」「ジョージ・ウィーズリー」。

そのすぐ後ろに「レイ・キサラギ」の点がある。

 

なるほど、これが「忍びの地図」か。

小さい頃、父さんによく話を聞かされたっけ。

まさか、この2人が持っているとは思わなかったよ!

 

ここで、ちょっとしたイタズラを思いついた。

私はこっそり双子の背後にまわると、羊皮紙をツンツン杖で突ついて言った。

「イタズラ完了!」

 

地図は見事に消えた。

 

「「うわっ! レイ!? 何すんだ!?」」

双子は同時に振り返った。

 

「ゴメンゴメン。『我、此処に誓う。我、良からぬ事を企む者なり』」

杖を羊皮紙に当てながら言うと、地図が再び現れた。

 

2人は口をポカンと開けて私を見た。

 

「「君、何で『地図』の使い方を知ってるんだ?」」

見事なユニゾンで双子が尋ねる。

 

「それは私が『ムーニー』の娘だからだよ」

ニヤリと笑って答えたら、双子が「「マジで!?」」と叫んだ。

 

この地図は、父さん達が学生時代に作ったものだ。

地図の製作者は、あと3人。

プロングズこと、ハリーのお父さんのジェームズ・ポッター。

ワームテールこと、ピーター・ペティグュー。

そしてパッドフッド………。

 

「ジョージくん聞いたかね!? レイが、かのムーニー大先輩のご息女ですと!!」

「聞いたとも、フレッドくん! 何と喜ばしいことだろう!!」

 

「「お嬢様、我らと握手を!」」

感極まった2人は私に握手をねだった。

 

私が手を出すと、2人はガッチリと握ってきて、ブンブン上下に降りまくった。

慌てて「うわっ、ちょっ! ギブ! ギブ!」と私が叫ぶ。

すると「ごめんレイ。つい感動してしまって」とジョージが謝って、2人は手を離した。

 

フレッドとジョージが地図を見つけたのは1年生の頃。

フィルチの事務所の書類棚に入っていたらしい。

 

「何せ、その棚には『没収品・特に危険』と書いてあった」

「そこに入っていた代物だ。最高にクールなブツに決まってる。迷わず持ち出したさ!」

2人とも、目をキラキラさせて語った。

 

それにしても、よく使い方に気づいたなあ。

もっとも、イタズラの天才フレッドとジョージでも、解明には約9ヶ月かかったらしい。

 

ちなみに、双子は地図でブラックの居場所を探していたらしい。

 

けど、2人には言えなかった。

ブラックも地図の製作者の1人なんだって。

パッドフッドがそうなんだって。

 

それに、昨晩あれだけ先生方が探して見つからなかったのだ。

やっぱり、もうブラックは遠くに行ってしまったんだろう。


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