レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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17・ホグズミード休暇

今日はハロウィン。

そして初めてのホグズミード休暇。

ハーマイオニーもロンも、ホグズミードに行けないハリーを気の毒そうに見ていた。

「僕のことは気にしないで」って、ハリーは強がっていたけど、私達を見送る目は寂しそうだった。

 

ホグズミードは、本当にいろんな店があった。

ダービッシュ・アンド・バングズ魔法用具店には、東郷飛行具社の「空飛ぶ座布団」があった。

東郷飛行具社といえば、青龍学院時代の友達、東郷史子の実家だ。

フミ、元気にしてるかな。

 

文具店ではインクと羊皮紙を購入した。

羊皮紙にもいろんな種類があった。

中には「外国語学習に最適!翻訳魔法防止加工の羊皮紙」なんていうのもあった。

何かの役に立つかもと思って買ってみたよ。

 

郵便局は、鳥語聞きの私にとって、うるさくてかなり疲れる場所だった。

何しろ、200羽以上の梟が、ワイワイガヤガヤしゃべりまくってたからね。

ハーマイオニーとロンは楽しそうだったけど。

 

郵便局を出ると、痩せこけた黒い巨大な犬がいた。

そして、犬は何故か私の顔をじっと見つめてきた。

 

「死神犬グリムだ! 大変! 見たら死んじゃう!」

ロンが騒ぎ出すと犬は「ワン!」とひと吠えして、走り去った。

 

「ロン、あれはタダの野良犬よ」

ハーマイオニーがロンをたしなめる。

「そうだよね。私もそう思う」

私は占いや迷信なんて信じてないので、そう言った。

 

「じゃあ『叫びの屋敷』に行くわよ」

ハーマイオニーが張り切って地図を広げた。

私とロンは彼女についていく。

 

しばらく歩き、村外れの丘にやってきた。

そこには荒れ果てた建物がポツンと立っていた。

周りは雑草だらけ、壁はヒビだらけで、窓という窓には板が打ち付けられている。

 

ここが「叫びの屋敷」なのか。

噂によると「イギリスで最も呪われた場所」と言われている。

それは夜中に怪物の叫び声が聞こえるからだと言われている。

けど、この場所は、本当は心霊スポットなんかじゃない。

 

何故なら叫び声の正体は、うちの父さんだからだ。

叫びの屋敷は、父さんが学生時代に満月を過ごした場所だ。

父さんが入学する時に、ダンブルドアが用意してくれたそうだ。

狼になった時、他の生徒を襲わずに済むように。

この屋敷で、狼になった父さんは、人を襲いたいという衝動を抑える為、自分で自分を噛んだり引っ掻いたりしてやり過ごしたらしい。

その傷は、今でも父さんの体じゅうに残っている。

それを隠す為、真夏でも父さんは長袖のシャツを着るのだ。

 

そんなことを考えていると、胸が締め付けられる気がした。

 

「大丈夫、レイ?震えてるわよ?」

ハーマイオニーの声で我に返る。

「レイ、『叫びの屋敷』が怖かったのかい? それともやっぱりさっきの犬、グリムなんじゃ……」

ロン、犬は関係ないよ。

「レイ、ごめんなさい。付き合わせて。まさか、あなたがこんなに怖がるなんて」

 

「ハーマイオニー、ロン、怖くないってば! 心配いらない。大丈夫」

きっと事情を知らない君達には、ただ私が強がっているようにしか見えないんだろう。

でも、私は怖いんじゃなくて、いたたまれないんだ。

 

気をとりなおし、三本の箒へ行く。

名物バタービールを飲むと、少し元気が出てきた。

「あれ、『人食い鬼』じゃないかしら?」

ハーマイオニーが、私の肩越しに店内を見て言った。

「「え、どこどこ?」」

私とロンの声が重なる。

2人でキョロキョロ探すけど、見つからない。

するとハーマイオニーが「もう行ってしまったわ」と笑った。

 

「いらっしゃい! 新製品の試食はいかがですか~!」

ハニーデュークスの店先では、新作ヌガーの試作品を配っていた。

 

店内はお菓子であふれていた。

大きな樽に百味ビーンズが詰まっていたり、食べると火が吹ける黒胡椒キャンディがあったり。

 

ドルーブル風船ガムや爆発ボンボン、ゴキブリ・ゴソゴソ豆板など、日本では見たことがないようなお菓子もあった。

 

さあ、ハリーへのお土産を選ぶぞ!

 

「これなんかどう?ナメクジ・ゼリー」

私が言うと、ロンは「なんかイヤだ」と却下した。

そしてロンは、オエっと吐きそうな顔になって、店の奥に行ってしまった。

 

「え、何で?」

「レイ、きっとロンは『ナメクジの呪い』がトラウマになってるんだわ」

ハーマイオニーによると、ロンは去年マルフォイと喧嘩した時、彼にナメクジを吐く呪いを掛けたそうだ。

けど、その時ロンが使っていた杖が壊れていたため、呪いが逆噴射した。

そして、逆にロンがナメクジを吐きまくるハメになったらしい。

 

ハニーデュークスの後は、私のリクエストで紅茶専門店に寄った。

茶葉を品定めする私を見て、ふとロンが尋ねる。

「レイ。君、お茶の葉なんか買って、占いでもする気かい?」

「ロン、馬鹿なこと言わないで! レイはトレローニーの占い学なんか取ってないでしょ!!」

お茶の葉占いと聞いて、ハーマイオニーがロンに食ってかかる。

 

それにしてもハーマイオニーがあれだけ毛嫌いするトレローニーって、一体どんな先生なんだ?

 

「ハーマイオニー、お茶の葉は父さんに買って来て欲しいって頼まれただけだよ」

私がなだめると、ハーマイオニーは少し落ち着いた。

 

とりあえず、私はたくさんあるお茶の中から「新製品人気No.1」のセイロンティーを買った。

これで父さんからのミッションはクリアだ。

 

私達は、夕方までホグズミードを楽しんで、寮に戻った。

さっそくハリーにどっさりのお土産を渡した。

 

一方、ハリーは父さんのところに行っていたそうだ。

父さんにハリーを呼ぶように、お願いしといて正解だったなあ。

 

ハリーが父さんと話しているところに、ちょうどスネイプが脱狼薬を持ってきたらしい。

それを見たハリーには、彼が父さんに毒を持ってきたように見えたようだ。

 

「ルーピンがそれ、飲んだ?マジで?」

ロンも大口を開けて驚いていた。

 

いやいやいやいや、その薬は飲んでもらわないと、困るんだ!!

万が一、飲み忘れたりしたら、父さんはホグワーツに居られなくなるんだから。

 

「ロン、心配しないで。大丈夫だからさ」

私は事情をよーく知っているので、軽く言った。

 

そんな話をしていると、宴会の時間が近づいてきて、私達4人も大広間へ行く。

 

もっともハリーとロンは、まだスネイプを疑っているようだったけどね。

ていうか、スネイプは日頃の行いが悪過ぎる。

ハリーやロン……いや、グリフィンドール全体に対して、印象が悪い。

だから、2人に疑われるんだよ。

それに脱狼薬って、見た目が結構毒々しいもんなぁ。


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