レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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16・許可証

薬草学の次は変身術だった。

授業の終わりに、マクゴナガル先生がホグズミードの許可証を提出するように言ってきた。

ハロウィンの日が、第1回目のホグズミード休暇らしい。

 

そういえばハリーは、結局、保護者に許可証のサインをもらえないままだった。

ハリーは、寮監のマクゴナガル先生に許可を下さいってお願いしていたようだけど、ダメだった。

まあ、サインできるのは「親か保護者」ってルールだもんね……。

 

って、私もまだサインをもらってなかったじゃん!

放課後、父さんの部屋に直行だ。

 

「ゴメン、伶。僕もバタバタしていたから、すっかり忘れていた。そうそう、ホグズミードに行けるのは3年生からだったね」

「あ〜、私もマクゴナガル先生に言われるまで忘れてたから気にしないで」

私は無事に許可証にサインをもらうことができた。

 

それから、ハリーが許可証にサインをもらえなかった話をした。

 

「父さんお願い。ハロウィンの日、もしもハリーが暇を持て余してそうなら、ここに呼んであげて。私はハーマイオニーやロンと一緒に、ホグズミードに行く約束をしちゃったから」

父さんは、わかったとうなずき、ため息をついて下を向く。

 

「ハリーは何とかしてあげたいけど、娘の伶と違い、僕はサインをする権限を持ち合わせてない。他に頼める人は……」

 

そして、父さんはしばらく黙り込んでから呟く。

 

「いや、奴は絶対ダメだ。いくら名付け親、後見人だからといって…………」

「え、ハリーに名付け親なんていたの?」

私が尋ねると、父さんがビクッと顔を上げた。

表情はとても厳しい。

 

「シリウス・ブラック、それがハリーの名付け親だ」

深いため息とともに、父さんは言った。

「ええっ、そんな!!!」

マズイ、私こと如月伶、全力で地雷を踏んづけたようであります。

 

現実は残酷過ぎる。

まさか、自分の名付け親に命を狙われるなんて。

これは口が裂けても言えないな。

特にハリーには。

もし彼がこれを知ってしまったら、ショックでどうにかなるに違いない。

ブラックは、ハリーのご両親を裏切ったんだから。

 

コンコンコンコン。

その時、絶妙なタイミングでドアがノックされた。

「おや、ミス・キサラギ。来ていたのですね」

マクゴナガル先生だった。

 

「あの、先生。私、席を外しましょうか?」

私は立ち上がりかける。

「いいえ。貴女なら、居ても構いませんよ」

そう言って、マクゴナガルは本題に入った。

 

話は父さんが「持病」で授業を休んだ時の代講についてだった。

そういえば、満月が近い。

 

「今度のグリフィンドールとレイブンクローの5年生の授業は、私が代わりに行うつもりです。リーマス、授業の進度はいかがですか?」

「おおむね計画どおりです」

そう言って、父さんはマクゴナガル先生にシラバス(授業計画)を見せる。

 

「では、5年生は今、失神術を教えているところでしょうか?」

先生がシラバスに目を通しながら尋ねる。

 

「ええ。ただ、どちらのクラスも前回、呪文を教えたばかりですから、充分修得出来ていない子が多いと思います。ある程度、失神術を練習をさせて、気付けの呪文を教えようと考えています」

「わかりました。そのように致しましましょう。では、私はこれで失礼します」

マクゴナガル先生はドアへ歩いていく。

 

「あ、マクゴナガル先生! 待ってください!」

私は慌てて引き留めたら、先生はどうしたのかと振り返った。

 

「すみません。ホグズミードの許可証です」

 

私が書類を渡すと、彼女は文面を確認した。

[ 私、リーマス・ジョン・ルーピンは、伶・アルメリア・如月・ルーピンの父親として、ここに週末のホグズミード行の許可を与えるものである。]

 

「ええ、確かに受け取りました」

マクゴナガル先生は微笑んで、出て行った。

 

ハロウィン前夜、私とハーマイオニーは寮の部屋で、明日の計画を立てていた。

 

「もちろん『ハニーデュークス』で、ハリーへお土産よね。それから『三本の箒』で、バタービールを飲んでみたいわ。それから『叫びの屋敷』も外せないわ」

「え、叫びの屋敷…………」

 

正直あまり気が進まないな。

黙り込んだ私をハーマイオニーが心配した。

 

「もしかして怖い? だったら、やめてもいいわよ?」

「いや、大丈夫。君とロンが一緒なら平気だと……思う」

怖くはないけど、何というか、ちょっと辛いだけだ。

 

その時、外からコツコツと音がした。

うちの伝書梟ヒキャクが、部屋の窓をつついている。

【レイ、レイ。ちょっと開けちゃらんやか?】

「あれ、ヒキャクどうしたの、こんな夜遅くに?」

しかもよく見ると、ヒキャクは手ぶらだ。

 

【親父さんから伝言。『お茶の葉を買ってきて欲しい』っち言いよった】

私は「了解」と言って、ヒキャクの頭を撫でた。

私は鳥語聞きだから、簡単な内容なら梟に伝言するだけで済む。

我ながら便利な能力だよね。

 

「良いわよね。レイは自分の使い魔と話が出来て。私なんて、クルックシャンクスがどうしてスキャバーズを襲うのか、聞きたくても聞けないもの」

ハーマイオニーは、ため息をついた。

 

主(あるじ)の心、使い魔知らず。

クルックシャンクスは、のんきにベッドの上で眠っていた。


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