レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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12・グリフィンドールの天敵

いよいよ、スネイプの魔法薬学の授業を受ける日がやってきた。

 

魔法薬学の教室は地下にあった。

教室は薄暗くひんやりしていて、いかにもスネイプにはお似合いだ。

まあ、薬品っていうものは直射日光を避けて、暗く涼しい所に保管するのが基本。

だから、教室が地下にあるのは、一応理にかなってるんだけどね。

 

授業の課題は「縮み薬」だった。

私はハーマイオニー、ネビルと同じテーブルになった。

横で見ていると、ハーマイオニーの調合はとても手際がいい。

材料の切り方、鍋の混ぜ方は、全て教科書どおりで完璧だ。

 

一方、ネビルの調合はとても危なっかしかった。

スネイプの目が気になるのか、ビクビクしてて作業に集中できてない。

 

「ネズミの脾臓は1つ、ヒルの汁はほんの少しだ。量を間違えれば、薬は毒となる」

スネイプは、黒板に調合の注意点をいっぱい書いていた。

 

授業も半ばを過ぎた頃、右腕に大げさな吊り包帯をしたマルフォイが現れた。

そして、わざわざハリーとロンがいるテーブルに着席した。

こいつ一体、何を企んでいるんだか。

 

「先生、僕、雛菊の根を刻むのを手伝ってもらわないと、こんな腕なので」

マルフォイが言うと、スネイプはその作業をロンに命じてやらせていた。

 

はぁ、それがマルフォイの狙いだったのか。

まったく嫌な奴だ。

 

私が萎び無花果(しなびいちじく)の皮をむいていると、隣のネビルが鍋に大量のヒルの汁を入れようとしている。

わわ、ちょっと待て!

 

「ネビル、ヒルの汁が多いよ!」

私が横から教えていると、スネイプがやってきた。

 

「キサラギ、私語をするな」

スネイプは不機嫌全開で怒った。

えー、ネビルが失敗しそうなのを止めただけじゃん。

 

少しムッとしながら、私はイモムシを自分の鍋に入れ、左回りに2回かき混ぜる。

そして、刻んだ雛菊の根も入れた。

 

よし、材料は全部加えたから、あとは煮込むだけだ。

私の鍋の薬は、少しずつ明るい黄緑色になってきた。

 

しばらくしてから、またスネイプはやってきた。

奴は私の鍋をチラッと見て、フンっと鼻を鳴らす。

 

うっわ〜、感じ悪っ!

でも、スネイプは何も言わなかったから、薬はちゃんと出来ているってことだよね?

もし問題があれば、アイツのことだから、絶対に嬉しそうに嫌味を言ってくるだろうから。

 

それから、スネイプはネビルの鍋を覗き込み、中身を柄杓ですくって見せた。

明るい黄緑色になるはずの薬がレモン色になっていた。

 

あれは、もしかして鼠の脾臓の入れ過ぎかな?

あの色だと、2つぐらい入れちゃったかな?

 

「ロングボトム、我輩はハッキリ言ったはずだ。鼠の脾臓は1つでいいと……」

 

どうやら、私の予想は正しかったらしい。

 

スネイプが嫌味ったらしくネビルをネチネチ責める。

ネビルは震えていた。

 

見かねたハーマイオニーが「手伝う」と言いだした。

けど、スネイプは「出しゃばるな」と冷たく言って、他のテーブルを見に行く。

 

しかし「出しゃばるな」と言われて、素直に引き下がる私とハーマイオニーじゃない。

 

スネイプが立ち去った瞬間、私はネビルの鍋に皮を剥いた萎び無花果を3つ放り込む。

ハーマイオニーがそれを見て、すかさずネビルに指示を出した。

私もコソコソとアドバイスをしていく。

ネビルはふうふう大汗をかきながら、なんとかハーマイオニーと私の指示をこなしていく。

 

こうして、どうにかネビルの縮み薬は成功した。

ネビルの使い魔のヒキガエルに試したら、ちゃんとオタマジャクシになったんだ。

 

グリフィンドール生は歓声をあげ、私とハーマイオニーは顔を見合わせてニヤリとする。

 

「手伝うなと言ったはずだ、ミス・グレンジャー、そしてキサラギ。グリフィンドール10点減点」

スネイプの目は誤魔化せなかったらしい。

ていうか、私達が手伝ったのはバレバレだったみたいだ。

 

でも、納得いかない!!

何で私達が怒られるんだよ!!

 

そしてスネイプは授業を終わらせた。

 

ムカついた私は、道具を片付けながら呟く。

「《何だよスネイプの奴。薬は完成したんだから、減点することないじゃん。ムカつく! だいたい、生徒が調合に失敗しそうになってたら、普通は止めるでしょうが!》」

 

「レイ、今、何て言ったの?」

ネビルに言われて、今の呟きが日本語だったことに気づいた。

 

「あ、ごめん。いや、減点が納得いかないなって、思ったんだ」

ネビルが「ごめん、僕のせいで……」と申し訳なさそうに謝った。

 

「いいよ、次に同じ失敗をしなければさ」

私が慰めるとネビルは少し笑う。

 

「ネビル、あなた頑張ってるわ! スネイプなんかに負けちゃダメよ」

ハーマイオニーも一緒になって、ネビルを慰めた。

 

「それにしても、レイ。どうしてあそこで、萎び無花果を入れるっていう判断ができたの?」

ハーマイオニーが尋ねた。

 

「ネビルはネズミの脾臓を入れ過ぎていたでしょ? だから、それを中和する材料を入れるべきだと考えたんだ」

「でも、どうして3つなのかしら? まさか勘じゃないわよね?」

「よくぞ聞いてくれました! あれはね、薬の色の濃さで判断するんだ。縮み薬はネズミの脾臓を入れれば入れる程、黄色が濃くなるから」

ハーマイオニーは私の解説に感心し、ネビルはあっけにとられていた。


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