レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

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11・返り討ち

一方、私は寮の談話室で、チョコレートをかじりながら、マグル学のレポートと格闘していた。

書くのに時間がかかるから、ハリー、ハーマイオニー、ロンには付き合えなかったんだ。

 

だって羊皮紙と羽根ペンって、本当に書きにくいんだよ!

でも、学年末試験の時は、専用の羽根ペンと羊皮紙を使うらしいから、そうも言ってられない。

青龍学院では、マグルのノートとシャープペンシルを使ってよかったんだけどね。

 

そこへ、フレッドとジョージが疲れきった顔で、よろよろと談話室に入ってきた。

2人とも何故かお腹を痛そうに押さえている。

「ああぁ、ルーピンには参ったぜ」

「ああぁ、まったく困ったもんだ」

そしてあろうことか、2人とも頭から、私の書きかけのレポートの上に倒れこんできた。

 

ガッシャン!

 

テーブルの上のインク瓶が派手に倒れ、みんなの視線が、いっせいにこっちに集まる。

気づけば、私のレポートの上に黒いインクが広がっていた。

「うわああ、あと10cmまで書けてたのに!!」

 

チョコが無事だったのは、不幸中の幸いだ。

 

「「あ、レイ、ごめんよ……」」

双子は体をノロノロと起こし、インクだらけの顔で謝った。

 

「レイ、インクをなんとかする」

ジョージが杖を振った。

羊皮紙一面に広がっていた黒いインクは消えた。

 

というよりも、羊皮紙自体が完全に真っ白になった。

げ、文章まで消えてる!?

 

「うわああ、レポートが!!」

私が叫ぶと「ゴメンやり直しだ」と、今度はフレッドが杖を振る。

ようやくレポートは、元の書きかけの状態に戻った。

 

「で、ルーピン先生がどうしたの?」

私は話を元に戻す。

闇の魔術に対する防衛術の授業で、何か問題でもあったんだろうか?

まさか父さんに限って、ヘマはやらないと思うんだけど。

 

フレッドが話をしだす。

「我らは、ルーピン教授に元気が足りないと考えた。だから、強力な『元気が出る呪文』を掛けて差し上げたのだ」

 

「ところが、奴は恩を仇で返したのだ!」

「おかげで、我らの腹筋は崩壊寸前なのだ」

 

え……腹筋?

 

「「おのれ、ルーピンめ」」

双子は怒りの表情を見せるけども、インクだらけの顔なので、あまり迫力がない。

 

「え、話がよくわからないよ?」

私がそう言うと、話を聞いていたジニーが解説する。

「あのねレイ。ルーピン先生は、フレッドとジョージが掛けた呪文を……」

そこまで言って、ジニーはぷぷっと吹き出した。

 

すると、奥で本を読んでいたパーシーが、クスクス笑いながら続きを教えてくれた。

「先生は見事な『盾の呪文』で、呪文を跳ね返し、2人を返り討ちにしたそうだ」

 

すると双子は恨みがましい顔で、パーシーを見た。

「「笑うなパース! コッチは授業の間ずっと笑いが止まらなくて、大変だったんだ! いまだに腹筋が痛くてたまらないんだ!」」

「お前達が自分達でまいた種だ。ルーピン先生に減点されなかっただけでも、感謝しろ」

パーシーはピシャリと返す。

 

アハハハ、父さんに挑戦するなんて、20年早いよ!

元・悪戯仕掛け人を見くびってもらっちゃ困るね。

などと思いつつ、私はチョコを一口かじった。

 

「それにしても、ルーピンの実力はホンモノだな」

「うん、今年の闇の魔術に対する防衛術は期待できるな。けど、次こそアイツをギャフンと言わせてやろう!」

双子は肩を組んで、男子寮へ上がっていった。

 

金曜日の放課後、寮に向かって歩いていると、マクゴナガル先生に呼び止められた。

「ミス・キサラギ。ミスター・マルフォイがケガをした時、応急処置をしたそうですね?」

「あの……もしかして、何か問題でも?」

マルフォイは、まだ痛がっているという噂だ。

あいつが「私の手当が下手なせいだ」って言ってたら、嫌だな。

 

「いいえ。貴女の応急処置が非常によくできていたと、マダム・ポンフリーが褒めておられました。ですから、グリフィンドールに10点与えましょう」

先生はそう言って去っていった。

 

ああ、良かった。

とりあえず、私の手当には問題無しとお墨付きがもらえた。

それに点数もゲットしたし!

 

編入から1週間がたった。

私はようやくホグワーツの生活に馴染んできた。

最初こそ、編入生の私は珍しがられた。

だけど、今では前からココにいたように、みんな普通に接してくれる。

 

青龍学院と比べて、ホグワーツの授業や先生達はかなり個性的だ。

一番気に入ったのは、吹けば飛ぶような小柄なフリットウィック先生が教える呪文学。

授業が実技メインでとてもわかりやすい。

 

逆に一番苦手だと思ったのは、ゴーストのビンズ先生の魔法史だ。

眠い、眠い、眠すぎる。

あの授業を録音して眠れない時に聞いたら、きっといい睡眠薬になるに違いない。

もっとも私は日本にいた時から、魔法史だけは苦手で、父さんに残念がられていたけどね。

 

そういえば、魔法薬学と、父さんの闇の魔術に対する防衛術の授業は、まだ受けてないんだよね。

 

まわりのみんなに聞けば、魔法薬学担当のスネイプの評判は最悪だ。

スリザリンを贔屓しまくりで、他の寮からガンガン点数を引きまくるんだって。

特にあいつにとってハリーは天敵らしく、いつも目の敵にされるそうだ。

 

逆に父さんの評判は上々だった。

フレッドとジョージを返り討ちにしたのも、ポイントが高かったみたい。

上級生は口を揃えて「やっとマトモな先生が来た」と言っていた。

 

なんでも、今までの先生達がかなり酷かったらしい。

しかも、闇の魔術に対する防衛術は呪われているという噂があって、毎年のように先生が変わっているらしい。

 

でも、父さんならきっと大丈夫。

持病さえバレなきゃ、きっと問題なくやっていけるハズだ。


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