レイ・アルメリアの物語   作:長月エイ

10 / 43
10・条件反射?

次は、マクゴナガル先生の変身術の授業だ。

授業開始ギリギリになって、ハリーとロン、そしてどういう訳かハーマイオニーまで一緒に駆け込んできた。

ハリーは一番後ろの席に座ったけど、何故かクラスのみんなは、ハリーのことをチラチラ盗み見ていた。

 

授業が始まった。

マクゴナガル先生が、みんなの前で動物もどき(アニメーガス)の実演をしてくれることになった。

うわー、ラッキー!!

まさかこんなに早く、彼女の変身が見られるなんて!

 

先生がオホンと咳払いをして目を閉じると、みるみる体が縮む。

そして、トラ猫の姿に変わった。

目の周りにメガネと同じ形の模様がある。

私がパチパチと拍手をすると、すぐ先生は元に戻った。

「おや何故ミス・キサラギ以外、誰も拍手をしないのですか?」

 

あ、本当だ。

私以外、誰も手を叩いていないぞ!

 

するとハーマイオニーが、占い学でハリーが死ぬという予言をされたことを話した。

 

変だな?

ハーマイオニーは私と一緒にマグル学に出ていたはずだ。

なのに、どうして占い学で起きたことを説明できるんだろう?

 

するとマクゴナガル先生は、占い学のトレローニー先生が最初の授業で生徒の死を予言するのは、毎年の恒例行事なのだと説明した。

 

それからマクゴナガル先生は言った。

「ポッター、私の見るところ、貴方は健康そのものです。ですから、今日の宿題は免除したり致しませんからそのつもりで。ただし、もし貴方が死んだら、提出しなくても結構」

私とハーマイオニーは、同時に吹き出した。

 

お昼を食べながら、ロンはまだハリーの死の予言を心配していた。

するとハーマイオニーは、占い学そのものがいい加減だと言い出した。

 

「レイ、あなたは占い学を取らなくて、正解だわ。あんな不確かなもの、学問とは呼べないわ」

 

「トレローニー先生は君にまともなオーラがないって言った! 君ったら、たったひとつでも、自分がクズに見えることが気に入らないんだ」

ロンがそう言うと、ハーマイオニーが教科書をガン! とテーブルに叩きつけた。

 

ハーマイオニーは「占い学なんてクズだ!」とか言って、大広間を出て行ってしまった。

 

次は魔法生物飼育学で、外での授業だった。

失礼少年マルフォイが、お供のゴリラ(クラッブとゴイルというらしい)といるのが見えた。

どうやら、スリザリンと合同授業になるようだ。

 

生徒がそろうと、ハグリッドは、みんなを放牧場に連れて行った。

「イッチ番先にやるのは、教科書を開くこった」

ハグリッドの言葉にマルフォイが気取った声で、「どうやって?」と尋ねる。

周りを見れば、みんなはあの怪物本をベルトで縛ったり、スペロテープでグルグル巻きしたり、大きなクリップではさんだりしていた。

 

そんな中、私、ハリー、ロン、ハーマイオニーの4人だけは、教科書をさっと開いて見せる。

すると、ハグリッドは嬉しそうに「お前さん達、どうやった?」と尋ねた。

私が背表紙を撫でたと答えると、ハグリッドはますます嬉しそうだった。

「そう、撫ぜりゃーよかったんだ」とハグリッドは言った。

 

放牧場の向こうには、馬と鷲を足したような巨大生物がいた。

「ヒッポグリフだ!美しかろう」

ハグリッドが自慢顔で言った。

確かに、鷲のような貫禄たっぷりな頭や、灰色、栗毛、赤銅色などの毛並みはキレイだよね。

 

「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らねばなんねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは、絶対、侮辱してはなんねぇ」

ハグリッドは、ヒッポグリフについて解説する。

 

その後、ハリーを指名して、バックビークという名の灰色のヒッポグリフを連れて来た。

ハリーはハグリッドに言われるとおり、バックビークにお辞儀した。

すると、バックビークが、お辞儀を返してきた。

ハグリッドは大喜びで、ハリーにクチバシを撫でさせた。

 

それから、ハグリッドは、ハリーに背中に乗るように言った。

ハリーがバックビークの背中に飛び乗ると、ハグリッドは勢いよくバックビークの尻を叩く。

すると、4mはありそうな巨大な翼でヒッポグリフは空へ舞い上がった。

ハリーを乗せたバックビークは、辺りを一周すると、ドシンと着地した。

 

ハリーの成功を見て、私達もヒッポグリフに挑戦だ。

私は赤銅色のヒッポグリフと対面した。

 

まず、瞬きせず目をじっと見つめる。

それからお辞儀をして、「よろしくお願いします」と挨拶だ。

すると【うむ、良かろう】という声が聞こえた。

 

驚いて顔を上げると、ヒッポグリフがお辞儀を返しながら言った。

【そなた、拙者の言うことが理解できるとみえる。もしや『鳥語聞き』では?】

「ええ、そうです。でも、まさかヒッポグリフとも話ができるとは思いませんでしたが」

【鳥語聞きの娘よ、拙者のクチバシを撫でるが良い】

などと、 私がヒッポグリフと話していると「ヒィーっ!!」とマルフォイの悲鳴が聞こえた。

 

【この無礼者!『醜いデカブツの野獣』などと、我を愚弄(ぐろう)しおって!!】

鋭い鉤爪が、マルフォイの腕を切り裂く。

どうやらマルフォイはハグリッドの注意を無視して、バックビークを激怒させたらしい。

ハグリッドは、慌ててバックビークをなだめ、首輪をつける。

 

私はチッと舌打ちして、マルフォイに駆け寄った。

あの馬鹿!

ハグリッドが「侮辱するな」って注意したのに!

 

マルフォイの腕には、深い長い裂け目ができていて、赤黒い血がドクドクと流れ出ている。

ありゃりゃ、こりゃ太い静脈を切ったかな?

 

「僕、死んじゃう。見てよ! あいつ、僕を殺した!」

男のくせにピーピー騒ぐな。

動脈は切ってないんだから、簡単に死ぬわけがない。

 

「うるさいな。騒ぐと出血が酷くなるよ。Episkey!」

私はマルフォイの腕をガッとつかんで、治療呪文をかけた。

マルフォイは、ギャーギャー泣いてたけど、無視だ。

 

呪文のおかげで、傷口は浅くなったけど、まだ少し血が出ていた。

一応、包帯も巻いておくか。

私は再び杖を取り出して「Ferula!」と唱えた。

 

「君はハグリッドがあれだけちゃんと『ヒッポグリフを侮辱するな』って注意したのに、まともに聞いてなかった。そのケガ、はっきり言って自業自得だね」

私はそう言い捨て、ハグリッドにマルフォイを医務室へ連れて行くように頼んだ。

マルフォイは唇を噛み締めて私を睨んでいた。

 

マルフォイがケガをしたことで、スリザリン生は、ハグリッドをクビにすべきだと騒ぎだした。

「マルフォイは大丈夫かしら?」

さすがにハーマイオニーも心配していた。

するとハリーが校医のマダム・ポンフリーの腕なら、あれぐらいのケガを治すのは楽勝だと言う。

 

ロンが私に「マルフォイなんか助けることなかったのに!」と言った。

「ああ、アレは条件反射みたいなもんだね。ケガ人をみると、放っとけなくてさ」

私は苦笑いした。

 

それよりも、むしろハグリッドの方が心配だ……。

というわけで、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ハグリッドの小屋へ様子を見に行くことにしたようだ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。