特に追加するイベントもないので駆け足です。
遅くなって申し訳ありません。
いったい何があったと言うのだろうか。目の前に広がる光景が信じられない。誰か俺が列車で寝ていた間にあったことを教えてほしい。マキアスとユーシスが行動を共にするなんて、何があったらそうなる。
「負け犬になり下がるつもりはないだけだ」
ユーシスに聞くと、そんな答えがかえってきた。まったく意味が分からない。なんで行動を共にすることが負け犬になり下がらないのか。
「B班に実習の評価で負けたくない、ということだと思いますよ。来る時の列車でそういった話をしていましたから」
その謎について考えていると、エマからフォローが入った。前回の実習の結果から、無意味な別行動は減点対象ということに思い至ったのだろうか。まあ、こちらとしても評価を下げるようなことはしたくないので助かるが、仲の悪い状態だと足手まといになる気がする。これはこれでフォローが大変そうだ。
「フン、それよりもお前と兄上の関係を教えてほしいものだな」
話を変えるかのように、ユーシスが自身の兄であるルーファスさんと俺の関係を聞いてくる。駅からホテルにつくまでに知り合いのような会話をしていたのが原因だろう。ルーファスさんにも困ったものだ。
「まあ、昔から親父の仕事でちょっと付き合いがあっただけだよ」
「フン、兄上と関わり合いのある仕事か。疑わしいものだが」
「事実なんだがな」
嘘は言っていない。何の仕事かを言っていないだけだ。ただし、仕事に関しては聞かれても、今は答えない。そのうち言う時がくるだろう。今はその時ではないはずだ。
「それよりもそろそろ実習を始めよう。今日は半日しかないんだし」
列車でバリアハートについたのは昼前だった。何時までもこうしてホテルで雑談しているわけにはいかない。B班に負けたくないのなら、なおさらこうしているわけにはいかない。もちろん話を変えるためでもあるが、みんなは気付いても追及してこなかった。誰もが聞かれたくないこと、話したくないことの1つはあることを理解しているのだ。
「そうだな。まずは職人通りの宝石店からの依頼とハサンさんからの依頼に手を付けよう。それらが片付き次第、魔獣討伐に向かって、そのまま《オーロックス砦》に報告に向かおう」
「
今日の方針を決め、俺たちはホテルを後にする。いつの間にかリーダーがリィンになっているのだが、誰も気にしていない。《Ⅶ組》の中心はリィンになりそうだ。サブリーダーはアリサかエマと言ったところだろうか。なんだかんだで《Ⅶ組》はいい方向にまとまっているのではないだろうか。あとは、マキアスとユーシスの関係だが、これはリィンが何とかしてくれるだろう。来る時の列車でもリィンが活躍したようだから、間違いはないはずだ。きっとそうに違いない。できれば俺を巻き込まないでほしい。人間関係は面倒だ。
(でも、そうなると、俺は何故こっちの班に?)
リィンにはマキアスとユーシスの仲裁やクラスの中心と様々な思惑が見て取れる。ほかのメンバーは前回の実習のまま、ガイウスは人数の都合上B班になった。ガイウスなら誰でも合わせられるということもあっただろう。なら、俺がA班になった理由は?
(考えられるとしたら、アルバレア家か)
アルバレア家は俺の仕事に関係のあった貴族。そして、マキアスという《革新派》の中心人物の子供までいるのだ、何らかのアクションを起こす可能性がある。俺にその対応をしろということか?いや、さすがに違うか。サラさんもそこまで要求することはないだろう。だとするならば、目的が全く分からない。ただの気まぐれか?
「テオさん、どうしたんですか?先ほどからずっと静かですが」
「うん?ああ、少し考え事をしてた」
エマに声をかけられ、思考に没頭しすぎたことに気付く。今考えても仕方のないことだ。放っておくのが一番だろう。
「そうですか。とりあえず、依頼されたものを取りに行きましょうか」
「へ?依頼されたもの?」
気が付くと宝石店に着いていて、依頼の話もすでに聞き終えたところのようだった。まったく聞いていなかった俺はどこに取りに行けばいいのかもわからない。それとみなさん呆れた眼でこちらを見ないでください。
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あの後、エマに今後は注意するように言われ、北の街道にで依頼された
もう一つの依頼は《ピンクソルト》を取ってきてくれというもの。これはユーシスがとれる場所を知っていたので、案内してもらうことに。方向的には魔獣討伐の依頼と同じだったので、魔獣討伐もこなすことになった。
そして、今は討伐する魔獣と戦っているところだ。両手に鋭いツメをもち、身長は俺たちより少しでかいぐらいの魔獣だ。
「悪いが、僕ら2人をアタッカーに回してもらうぞ」
「せいぜい大船に乗った気分でいるがいい」
戦闘の始まる前にマキアスとユーシスの言っていた台詞だ。正直なところ泥船の間違いではないだろうかと思ってしまった。今回の実習中で初めての《戦術リンク》を大型魔獣との戦闘で試すとは。1度、あたりにいる魔獣で試してからにして欲しいものだ。ここまでの道中も他のメンバーと《戦術リンク》と組んでいて、ユーシスとマキアスは直接リンクを結んでいない。
最終的に《戦術リンク》はユーシスとマキアス、リィンとフィー、エマと俺が組むこととなった。ユーシスとマキアスを除くメンバーで、連携が特に必要なのはリィンとフィー、俺である。俺が攻撃するときは遠目より符を発動させるだけであるので、発動のタイミングは他者と合わせやすい。そのため、リィンとフィーがリンクを結ぶことになった。
そして、戦闘が始まって少しするとマキアスとユーシスの《戦術リンク》が切れた。このフォローに俺とエマが回ることになり、リィンとフィーに多大な負担をかけている。本当に泥船だった。そろそろ決着をつけないと、前衛がもたないだろう。
「四の型『紅葉切り』」
「エマ、今だ!」
「ルミナスレイ!」
リィンが放った技で、魔獣がのけぞったことを確認した俺は、エマにアーツの指示をする。事前に準備をしていてもらったので、すぐにアーツが発動された。エマの前に光が集まり、その光が直線上に、魔獣を巻き込みながら放たれる。光が消えた後には、地面に倒れている敵がいた。
「なんとか倒せたか」
「……手強かったな」
倒れた魔獣を前に俺たちは武器をしまい、戦闘態勢を解除する。途中でハプニングを起こした2人をカバーしながらする戦闘は非常に疲れるものだった。
「どういうつもりだ……ユーシス・アルバレア。どうしてあんなタイミングで戦術リンクが途切れる?」
「こちらの台詞だ……マキアス・レーグニッツ。戦術リンクの断絶、明らかに貴様の側からだろうが」
戦闘が終わり、休憩もしないで口論を始める2人。いや、互いの胸ぐらを掴み、いまにも殴り合いを始めそうな空気を出している。今までにないくらいのひどい喧嘩になりそうだ。リィン達が必死に止めようとするが、2人とも聞く耳をを持たない。これでは止めることはできなさそうだ。
「っ!……まずい!」
気付いたときには魔獣が喧嘩をしている2人に襲い掛かるところだった。先ほど倒れた魔獣はまだ息があったようだ。そのことに気付くのが遅すぎた。俺の位置からは間に合わない。すぐさま封印を解こうとするが、今からでは遅い。魔獣の攻撃が当たる直前、リィンが2人を押しのけ、身代わりになっていた。起き上がっていた魔獣はフィーがとどめを刺し、今度こそ死んだことを確認した。
「リィンさん!大丈夫ですか!?」
しゃがみこんだリィンに全員が駆け寄る。エマがすぐに治療を始め、俺は見ていることしかできなかった。ケガを負ったところは肩だ。思っていたよりも深くはないが、すぐには治らないだろう。当分はリィンがサポートにまわることになり、前衛は俺とフィー、ユーシスで回すことになる。リィンが抜けるのはつらいが、なんとかするしかない。
「よし、そろそろ出発しよう」
治療を終えると、すぐに出発することになった。オーロックス砦に報告する時間を考えると急いだ方がいいようだ。ピンクソルトの採集も忘れてはいけない。まだ、先は長そうだ。
(それにしても……けが人が出てしまった)
前回の実習のように俺がケガをするならいい。だが、今回はリィンがケガをした。リィンが庇ってくれなかったら、もっとひどいことになっていた可能性がある。俺が力を封印していなかったら、けが人は出なかっただろう。これは俺の責任だ。やはり力を制限するのは間違っているのかもしれない。
追加イベントもないのでカットしても良かったのですが、とりあえずか書いときました。
そして、更新遅くなって申し訳ないです。少し忙しくなってきていて、更新が遅くなっています。これからも少し更新は遅いと思います。年明けまでには特別実習は終わりたいものです。