いきおいトリップ!   作:神山

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十二話目

あれから外に出て一晩過ごし、森に向かって進んでいった。ぶっちゃけた話、この身体は食事と水さえあれば一週間はぶっ続けで歩いていけるんだが、そこは元が俺だからということで。

 

 

「なんとも短い旅だったが……ここでお別れだな」

 

 

「ガゥ……」

 

 

そして魔物とかもヤオグアイのおかげで出てくる事なくトコトコ進み、ベルドアの森に到着。森の入口で別れるためにヤオグアイにそう告げると、頭を下げて悲しそうな鳴き声を出す。俺としても短い間だったが楽しかったし愛着沸いたが……こいつには家族がいるからな。

 

 

「そう悲しそうにするな。生きてればまた会えるさ。ほれ、これが頼まれてた分だ」

 

俺はヤオグアイの頭を一撫でしてPip-Boy3000から野球のボールをヤオグアイがくわえている果物の籠に入れる。少し大きめの籠なのですんなり入った。

 

 

「また会おう。今度近くに来たら寄ってみるから、その時は見つけてくれな?」

 

 

「ガゥ!」

 

 

俺がそう言ってヤオグアイの背中をポンッと叩くと、ノソノソと歩き始める。そして森の中に入っていく直前に、こちらに一鳴きしてから森に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「さて……これで初依頼は終了、か。次は何処に行こうかね?」

 

 

俺は肩に掛けて結局使わなかったクサンロング・アサルトライフルをPip-Boy3000に入れ、代わりにパフォレーターを出す。これはサプレッサー付きのアサルトライフルで遺物という特性上、銃声を常に響き渡らせるのは良くないと思ったからだ。そして.44口径スコープ付きマグナムも装弾数の面から見て消音器付き10mmピストルに変えた。まぁ足に付けたままのブラック・ホークについては攻撃力というのもあるが、俺の趣味というのがでかいがね。

 

 

「えっと……ここから近い所は、っと」

 

 

Pip-Boy3000を起動して地図を買ったために更新されたのを確認して、周辺地図の方を見る。現在地は『ベルドアの森』。そこの前に俺の位置を示すマーカーがあり、後ろにはバルムンクが記されている。ざっと見た限りでも周辺には村や街が点在しているのがわかる。更に言えば、このまままっすぐ行き続ければ国境を越えてヴィシュニア帝国があり、東にいくつか村や街を越えればフェルナンド魔法学院都市、かなり遠くて一切村などがないが西に行けばメガトンが……ってメガトン!?

 

 

「ふむ、まだ残ってたのか?」

 

 

声にはやっぱり出ないが、心臓バクバクでめちゃくちゃ興奮してる。まさかまだちゃんと残ってるとは……!

 

 

メガトン……それは原作にて主人公がキャピタル・ウェイストランドに出て最初に行き着く街だ。元は主人公のいたVault101に行けなかった人達が集落を作った事から始まる。街の中心に核爆弾の不発弾があるため、皮肉もこめてメガトンだ。これはある程度集落と化した時には不発弾を中心にして広がってしまったために取り除けなくなり、更には解除も出来る人がいなかったというのも挙げられる。

 

 

ゲーム内では、安全、食事、水、住居もあり、少し住民本位だが素晴らしい場所だった。しかもゲーム内で核爆弾は解除だけはしているので、ロケットランチャーやヌカ・ランチャー(小型核弾頭発射装置)をぶちこまない限りはそれに関して言えば大丈夫な場所である。俺、というか主人公の家は流石に無いだろうが……キャラ達の子孫とかがいるんだろうか?めちゃくちゃ気になる!

 

 

「でも、遠すぎるな……」

 

 

思わずため息が出てしまうが、本当にそうなのだからタチが悪い。ここから行けば間に村も何もないために危険がかなり増すだろう。それに食糧面でも確実に足らなくなる距離だ。徒歩で俺の足だと1ヶ月以上はかかるだろう。放射能汚染されたものを食うのも別に大丈夫なんだが、俺的には風呂に入れないのが死活問題となる。一週間程度なら耐えられるだろうけど、それ以上はちょっとまだ……元来の風呂好きも相まってこの世界では未だ現代人思考の外れていないのは少し考えないといけないが、こればっかりは譲れん!

 

 

「なら、距離的に見てもフェルナンド魔法学院都市か?」

 

 

一番近いのがそれで、帝国は少しばかり遠い。しかもフェルナンドから帝国に回っていった方がやや近いのだ。まずはそこに行って食料を補充し、そこのギルドで何か護衛とかの帝国行きの依頼でも受ければより早く付けるだろう。道中魔物も出るだろうからそれの素材を売りさばけば金もなんとかなるし。それに魔法というのを少し学んでくるのもいいかもしれない。メガトンを後回しにしてしまうのは後ろ髪が引かれる思いではあるけど、冷静に考えればそもそも身体は別にして旅の初心者たる俺がそんな長距離を歩いて行くのは愚の骨頂なので頭を切り替える。

 

 

「よし、まずは東だ!」

 

 

自分を鼓舞する意味も込めて声を出し、マップにある方角を見る。進む方向は森の影響か、岩山と草原が広がっていた。そして途中何か出てくるだろうことは明らかなので、パフォレータ―を両手に持ち、俺は気を引き締めて足を進めていった。




クエスト 公爵家長女と護衛騎士 [完了]


◆公爵家長女サテラと護衛騎士レオナルドをバルムンク王国公爵家まで送り届ける。


◆[オプション]レオナルドの傷を治す。


◆ヤオグアイのために果物を買い、野球のボールを渡して森に戻る。



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