とりあえずさっさと今までの分を載せていきますので、よろしくお願いします。
「くっ……!ラッドローチにV.A.T.Sをやるとこうなるのか!今更気づいたわ!」
ゾワゾワと鳥肌が立つ身体をそのままに、テレビ画面を食い入る様に見てゲームしている男がいる。というか俺なんだけれども。
「ふぅ、ラッドローチは俺の天敵だ……」
俺は一旦ゲームを止めて一息つく。俺こと如月耕也は現在大学二年の二十歳だ。この二十年間で特に特筆すべきことは全くもってない。どこぞの小説の主人公の様に容姿がベラボウにいい訳でも、どこかの武術をやってる訳でも、波乱万丈の人生を送ってシリアスな心の傷を負ってる訳でもない。
本当に普通に過ごしてきた。そりゃ悲しい事や苦しい事もあったが、人並みであると自負している。とにかく、良くも悪くも普通な何処にでもいる人間というのが俺なわけで。
「で?あなた誰?」
「お?やっと区切りがついたかの」
真横でゲーム見てたダンブルな校長みたいなじいさんに知り合いはいないのだ。というかいつの間にか横にいたんだわ。何をするでもなくゲーム見てるだけだったから、とりあえずゲーム区切りが良いとこまでやろうとやってた。
「ふむ、いきなりじゃがワシはお主ら人間の言うところの神様での。たまたま下を見てみれば、何やら面白そうなゲームをやっとるお主がおるではないか」
「で、見に来たと?」
「うむ。そのゲームワシ持ってないし」
なんてこったい。神様ゲーマーですか……ってか神様という事を軽く信じてる自分にビックリだ。何で騒いだりしないんだろ。不法侵入だぞ?
「そこら辺は騒がれると面倒だから神様パワーで何とかしたわい。で?そのゲームは?」
「セコいな神様パワー……まぁいいや。このゲームはフォールアウト3と言ってだな」
神様パワーからか、長年の友人に説明する様に落ち着いて話し出す俺。
このゲームはもし全面核戦争が起きてたら?な世界だ。何処かの世紀末よろしく世界は核の炎に包まれ、荒廃したアメリカが舞台のかなりの自由度を誇るゲームである。その中で主人公は父を探すため、Vault-Tec社が作った核シェルターの一つ。Vault101から出る。ウェイストランドと呼ばれる血と暴力の蔓延し、放射能により変異した凶悪なモンスターと腐った人間達が多く存在する土地で、主人公はどう生きていくのか……。
「大体こんな感じかな?まぁ詳しくは説明書見て」
「む、むむむ……!欲しい!このゲーム欲しいぞ!」
ネタバレをなるべくせずにざっと説明し終えるといきなり吠え出す神様。気持ちはわからんでもないが……俺は軽く二年ハマり続けている。中毒性がヤバイですよ。お陰で武器防具アイテムや雑貨はあり得ない位の数をメガトンの家のロッカーに入れてある。
三週目にして問答無用で詰め込みまくったから特定の物を探すのが大変になるのがたまに傷だが。ちなみなカルマはDLコンテンツを含めたので善人プレイをしまくって救世主だ。
「じゃあ神様作れば?神様ならその位出きるんじゃね?」
俺の気持ちを抑え込む何てワケわからん事が出来てるし、何より神様だから出来るでしょ?お陰で抑揚の無い地の文だよ。
「馬鹿もん!こういうのは直接自分で買いに行ってこそ意味があるのじゃろうが!」
「わからいでか!」
まただが気持ちは物凄くわかる。買いに行くまでのワクワクと、買った帰りのワクワク……これに勝るものはない!やってみて自分に合わなかったらテンションがた落ちするが……。
「「……同志!!」」
俺と神様はガッチリと握手した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから俺達は和気あいあいとゲームショップに行き、フォールアウト3のソフト(もち新品)を買った。DLコンテンツに関しては本編をガッツリやってからやりたいとの事なので、追加のソフトも買った。そしてなんと、最近PS3が仕事しないからと、部下に破壊されたらしいのでどうせならと最新版を購入。
ここまで来ると、初めてのフォールアウト3パックとも言えるんじゃないかと思う。ちなみに神様金持って無かったので全額支払いました。そして今は家に戻って来た所。
「うぅむ……すまんのぅ。何から何まで。何とお礼を言えばよいやら……」
「いやいや、同志が増えたのは嬉しいし、いいよ」
このゲーム知り合いに知っているのが誰もいなかったので、これは素直に本音。だが、予想外の出費だし……今月ピンチだな。
「むっ!閃いたぞ!お主!異世界トリップしたくないかの?」
「え?マジで?」
神様の言葉にかなり驚いた……と言っても抑えられてるから微妙だが。……さっきは神様テンションヤバかったから一時的に外れたんだと思う。
「うむ。閃いた瞬間にお主の人生ざっと見たがの……普通過ぎて面白味が欠けすぎてるわい!それに凄みと面白味を加えようではないか!お礼も兼ねるのでいろいろオマケ付けたるぞい!」
最後らへんは演説っぽく言ってくる神様。一度は夢見た異世界トリップ……やろうじゃないか!
「勿論行くに決まってるじゃないか」
声に抑揚が出ない!この心の奥底にあるテンションのヤバさが全く出ないよ!
「うむ!そう言うと思っておったぞ!ちなみに世界は……おぉ、良かったの。フォールアウト3に色々混ぜた似て非なる世界じゃ。馬鹿なワシより下の階級の神が他の世界の国々やら魔物やらを連れてきたようでの。舞台のアメリカ以外他の大陸がその影響で無くなっておる。すなわち……」
「すなわち……?」
神妙な顔つきをしだす神様に思わず息を飲む。
「……すなわち剣と魔法と銃の世界じゃな。それにスーパーミュータントやらは何故かそのまま健在じゃ」
マジかよ……それってヤバくね?銃じゃ魔法とかに役立たないっしょ?
「まぁ安心せい。元来その世界におったウェイストランドの血筋の人間は別だが、魔法界の人間は幸い科学が発展しとらん。しかも何故かミュータント共には魔法が効きにくいようでな。軽く捻り潰されておるわ」
うわぁ、パねぇな。ならフォールアウト対策しとけば何とかなるか?
「さて、耕也よ。願いを聞こうか」
「ん。ならまずは絶対に壊れなくて重量制限の無いPip-Boy3000、それと中に俺の今まで集めてきた物を全部入れてくれ。使うための技術も頭にぶちこんどいて。あと肉体はゲームの俺のキャラに。スキルは全部マックスでPerkは善と中立側のやつだけ全部くれ。カルマ下がるのはいらん。あ、あと魔法耐性と身体能力を結構上げといてくれ」
いや、何て言うか。我ながらチートですね?スキルとPeakだけで万能人間なのにね?
ちなみにPip-Boy3000とは腕に付ける小型のコンピュータみたいなやつだ。どうやってか知らないが、いろいろ物を入れる事が出来る。しかもオートマッピング機能に時計、体調管理や武器等のニコイチ修理。終いにはラジオも聞けるというなんとも便利な道具だ。
「う、うむ。わかったぞ。肉体の方は向こうに行けば作り変わるから安心しなさい。そんでホレ、お主のPip-Boy3000じゃ。中々に骨が折れたが、全部入れといたぞい。あと、家にあった医療キットやヌカ・コーラの販売機とかの器具も入れておいたから、向こうで家でも出来れば使うと良い。肉体の魔法耐性も上げておいたし、戦闘技術や生きるためのノウハウはお主のキャラクターが一番知っておったからそれを基盤に弄っておいた。少なくとも人間に負ける事はそう無いはずじゃ」
「わかった」
「うむ。では、送るからの。向こうで頑張ってこい。あ、詰まったら聞くからの~!」
Pip-Boy3000を腕に付け、その言葉を最後に、俺の意識はなくなった。