ハイスクールD×D/Re:Zext Night   作:有栖川アリシア

95 / 100
第九十五話 狐の悲痛な叫び

翌日

 

「――んじゃあ、行くわよ皆!!」

「「「「おおーっ!」」」」

八雲と桐生がメガネをキラリと光らせるバス停を指さし、男子たちは雄叫びを上げた。若干、松田とイッセーと元浜のテンションが上がってる。二日目は、八雲の提案で八雲が京都を案内してくれる。ちなみに、もちろんアサゼル先生とロスヴァイセ先生は了承済みだ。

 

そして、京都駅前のバス停から、清水寺行きのバスに乗ることから始まる。士郎達は、京都駅でバスの一日乗車券を買うと他の生徒達と共に並びながらバスを待った。見知らぬ景色を眺めながら士郎は、清水寺のバス停に到着した。

 

それから、周囲を軽く散策し、坂を上って清水寺を目指す一行

「ここって、三年坂って言って、転ぶと三年以内に死ぬらしいわよ?」

「マジか!?」

「はぅぅぅっ!それは怖いです!」

アーシアはマジで怖がり、士郎は驚く。そんな中

「ど、どうした、ゼノヴィア?」

「……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」

イッセーが怪訝に思って訊くと表情は変えずに若干震えながらいいうゼノヴィア。イッセーは美少女二人を両脇にしながら坂を登る一方、士郎も八雲をとなりにしながら坂を登る。無論、松田と元浜から恨めしい視線を感じる。それから、坂を上り切ると大きな門が現れ、仁王門を潜ると

「見ろ、アーシア!異教徒の文化の粋を集めた寺だ!!」

「は、はい!!歴史を感じる佇まいです!」

「異教徒バンザイね!!」

教会トリオは興奮気味に失礼なことを言っている。

 

「んじゃあ、説明するわね、ここ清水寺は、法相宗系の寺院で、広隆寺、鞍馬寺とともに、平安京遷都以前からの歴史をもつ、京都では数少ない寺院の1つであるのよ」

「「「「「「「「へぇ~」」」」」」」」

八雲の完璧な説明に驚く一行

 

それから、

「にしても、そう高く感じないな?」

清水の舞台から身を乗り出し、下をみて高さに対して感想を述べる士郎

「落ちてみる?」

「ないない」

八雲の問いに応える士郎。そんな中

 

「あら、アーシアさんと兵藤くんは仲がいいわね、なら結構評判ある恋愛くじやってみたら?」

アーシアとイッセーに促す八雲。それから、くじをひくと

「大吉だって、将来安泰、俺たち、お似合いだってよ、アーシア」

かいつまんでイッセーがくじの内容をアーシアに伝えると、アーシアは頬を紅く染める

「はい!うれしいです……うれしいです、本当に……」

くじを引いて、大切そうに涙ぐみながら抱くくアーシア

「よかったな」

「ええ、よかったな」

「私もなんだか安心したわ」

横で、ゼノヴィア、イリナ、桐生が嬉しそうに頷いている。

 

一方で

「ねえ、落ちてよ?」

「だから、なんで俺なの?」

「一回やってみたいのよ、どーんって」

「やめろ、そこから火スペが始まるから」

「火スペ?」

「う…なんでもない」

思わぬ失言に言葉を失う士郎

「ねぇ~火スペってなぁ~に~?」

「う~~」

若干、いじられている士郎であった。

 

「…俺たち、蚊帳の外じゃね?」

「泣くなよ松田、ホテルに帰ったらイッセーと丹羽を殴ればいい」

男二人がどんよりとした雰囲気を醸し出しているが、そんなことも気にせず、寺を一回りし、記念品を手軽く買い、バス停に向かい

 

 

 

「んじゃあ、みんな~銀閣寺行くわよ~」

時計を見ながら八雲が先導するのであった。その足は足早だった。

 

「銀じゃない!?」

銀閣寺に到着するや否や、寺を見たゼノヴィアが開口一番に叫んだのがそれだった。

「……ゼノヴィアさんはお家でも『銀閣寺が銀で金閣寺が金、きっとまぶしいんだろうな』って瞳を輝かせて言っていたものですから」

アーシアがゼノヴィアの震える肩を抱きながらそう言う

「(ゼノヴィア、分かるぞ、その意見わかるぞ)」

心の中で同情する士郎

「一説によると、建設に携わった足利義政が死んだから銀箔を貼るのを止めたとかが定番かしらね」

八雲がそういう。それにしても、八雲は博識みたいだ。

「にしても、綺麗だな――紅葉」

「あら、いいところに目をつけているわね、綺麗でしょ?」

「あぁ、綺麗だな~」

と紅葉を眺めていると

「士郎、八雲さん――お昼行くわよ~」

桐生が声をかけてきた

「わかった~」

「は~い」

士郎は、八雲と手を繋いで昼食を食べる八雲おすすめのところに向かうのであった。それから、仲良く食べ金閣寺に向かうのであった。

 

 

「金だっ!!今度こそ金だぞ!!!」

金閣寺到着して、寺を見たゼノヴィアは開口一番に叫んだのがそれだった。先ほどとは違い、テンションが桁違いに高く

「金だぞぉォォォォォォォォっ!!」

両手を上げてゼノヴィアが顔を輝かせている。周りを見てみると、ほかの生徒たちもいてみんな撮影している。例外もなく松田や元浜やイッセー達もだった。

 

「士郎、金閣寺ってなのは、本当の名前は鹿苑寺っていうので臨済宗相国寺派の寺で建物の内外に金箔を貼った3層の楼閣建築なのよ」

「へぇ~」

「んで、初層・二層・三層のそれぞれに異なる様式を採用した特異な建築でもあるのよ、。初層は寝殿造風で「法水院」と称されており、中央に宝冠釈迦如来像、向かって左に法体の足利義満坐像を安置しているのよ。二層は書院造風(武家造)で「潮音洞」と称されていて、岩屋観音坐像と四天王像を安置してあるわ、三層は禅宗様の仏殿風で「究竟頂」で、仏舎利を安置してあるわ、屋根は椹の薄い板を重ねたこけら葺で、頂上には金銅製の鳳凰が飾られているわ、それで、金箔は二層および三層に貼られているわ」

「へぇ~」

八雲の説明に驚く士郎

 

それから、士郎も撮影していると

「…(いや、そんなわけないよな――)」

 

士郎は、写真を確認すると、そこには赤い和傘に見覚えある躑躅色(つつじいろ)の丁寧な刺繍が施された色鮮やかな着物をきた女性がいたのだ。その着物は、ある人にしか渡していないのだが、まさかここにいるとは思えない。それに顔が和傘で隠れていたため、見えなかった。

「ん、どうかした?」

「いやなんでもないさ」

八雲が覗いてきて聞いてきたが、平然を装う士郎であった。それから、少し見て回ったあとお土産を買い、休憩所――お茶屋で一休みしていると

 

「どう、金閣寺は?」

「まさに、金だわ」

「でしょ?綺麗でしょ?」

「あぁ、綺麗だな」

 

 

 

士郎は和服のお姉さんが淹れたての抹茶を和菓子を添えて持ってきてくれて、それに口を付ける。和菓子と一緒に飲むと、風味をかんじられた。

「うん、悪くないわね」

「少し苦いです」

イリナは気に入っているもの、アーシアはちょっとダメだったみたいだ

「……金ぴかだった」

興奮冷めやらぬゼノヴィア、目が爛々と輝いていて、お茶どころじゃないみたいだ。時計をみると午前二時を回っていた。そんな中、士郎は和菓子に手を付けようと見ずに皿の方に手を伸ばしたとき

 

サッ…

 

後ろの人と手が重なった

 

「あら、すいません」

「いえいえ(え、まさか)」

その人物は、あの着物をきた人だった。それに妙に聞き覚えのある声に、その長い黒髪が目に入った。

それから、気にせずお茶を飲んでいると

「修学旅行の方?」

「えぇ」

「へぇ~どこから来たの?」

その着物の人は聞いてくる

「ん、駒王学園ってところからですよ」

「へぇ~」

「実は、そこに私の知り合いがいるんですよ」

「おや、差し支えなければお名前でも教えて欲しいですな」

「えぇ、いいですよ、名前は――」

 

ふわっ・・・

風と共に再び手が触れ合った。士郎は手をどかそうと思ったとき

ガシッ・・・

手が掴まれ、その人の顔が後ろから近づき

「士郎――あなたよ」

耳元をくすぐる吐息と共に、自分の名前を呼ばれた。そして、感じは確信に変わり

 

「サツキ――!?」

士郎は、おもいっきり驚いた。というより、なぜ彼女がここにいるかという疑問が大きかった。

「なんで、ここにって思ったけど?いいんじゃないの?」

サツキのその全てを見通した言葉に少し戸惑うものの、その真意に気づき少し笑う士郎

「まぁな、ナイスタイミングだ」

「でしょ?」

少し笑う彼女。現状を考えてもかなり頼もしい。

「それで、どう?」

後ろから立って、士郎の前に立ち、袖を振ってくる。

「似合ってるよ、それはもうすっごく似合ってるよサツキ」

士郎は満面の笑みでいう

「でしょ?にあってるでしょ?」

嬉しそうに顔を赤らめながらいうサツキ。それから、お互い見つめ合っていると

 

「あっ、あーっ!?」

突然現れた和服美人に思わず声を上げるイッセー

「あら、兵藤くん達じゃない、お久しぶり」

「「「お久しぶりです」」」

イッセー、アーシア、ゼノヴィア、イリナが挨拶する。

「ねぇ、丹羽、その方誰?」

「あぁ、俺の嫁さんだ」

『ッ!?』

突然の嫁宣言に思わず戸惑う面々。

「おい、それマジかよ?」

「マジさ」

スカシた顔で言う士郎。そんな中

「あれ、士郎知り合い?」

八雲が戻ってきた。

「おう、紹介するよ、十六夜サツキ、俺の家の同居人さ」

「へぇ~八坂八雲よ、よろしく」

「十六夜サツキです、よろしく」

お互い軽く握手する。そして、こちらをちらりと見て何か言葉を交わす。

 

 

 

「お~い、集合写真撮ろうぜ~」

イッセーが声をかけてきたので

「お、いいね~」

「あ、私も~」

「私も~」

三人なかよく揃って行き、それから、仲良く揃って並ぶ。前列の真ん中に俺とイッセーが並びそれを囲むように並び

「せーの、はい、チーズ!!!」

紅葉の木々と金閣をバックに写真を撮るのだった。最初は、松田やイッセー達との集合写真。そのあと、八雲、士郎、サツキの三人で撮るのであった。

 

それから数刻後

イッセー達の方を向くと、松田、元浜、桐生や周りの観光客が倒れこむようにその場に皆倒れこむように寝ていた。周囲には、狐耳の人々ばかり。ゼノヴィアがバックから素早く聖なる短剣を取り出し、アーシアを背後に隠す。イッセーも左手を構え籠手を出現させている中。

「すいませ~ん、抹茶もういっぱい」

「は~い」

獣耳の女性が何事もなく抹茶を出してくる。それを士郎とサツキと八雲は、何事もないように抹茶を飲む。

 

「それにしても、まっこと美味であるな」

「えぇ、金閣見ながら抹茶とは贅沢だわね~宇治抹茶でしょ?これ」

サツキが獣耳の女性に聞く。

「はい、宇治抹茶でございます」

「いや~いいわ~」

「いいわ~」

完全に平和ボケした顔だ。そんな中

 

「ロスヴァイセさん!どうしてここに?」

ロスヴァイセさんがイッセーの視線の先にいた。

「ええ、貴方たちを迎えに行くようアサゼル先生に言われました」

「先生に?何が起こっているんですか?」

「停戦です、というか、誤解が解けました――九尾のご息女があなたたちにあやまりたいというのです」

士郎は、その話を流していると

「私は九尾の君に使えるあやかしでございます、先日は申し訳ございませんでした、我らが姫君をあなた方に謝罪したいともうされておりますので、どうか私たちについてきてください――我ら京の妖怪が住む――裏の都です、魔王様と堕天使の総督殿も先にそちらへいらしゃっております」

 

そう話す狐の妖怪のお姉さん

「そうです、それで士郎くんは?」

「へっ?あいつなら…」

そういって、こっちに気づくイッセー。彼が見たのは、黒髪美少女を両脇に特になにも起きていないように抹茶をすする士郎の姿

 

「「「……(なんでさ…)」」」

ゼノヴィア、イッセー、ロスヴァイセさんは一緒のことを思ったのであった。それから、特になにもないように会計を済ませ、狐のお姉さんの案内で、裏の都に向かうのであった。

 

案内で金閣寺の人気のない場所に設置してあった鳥居を潜ると、そこは、江戸時代の町並みのセットのごとく、古い家屋が建ち並び、扉から窓から通り道から妖怪が顔を覗かせている場所に出た。皆、好奇の視線を向け、イッセーと士郎たちを見ていた。

 

「ここは、妖怪の世界なんですか?」

「はい、ここは京都に住む妖怪が身を置く場所です、悪魔の方々がレーティングゲームで使うフィールド空間があると思いますが、あれに近い方法でこの空間を作り出していると思ってくれて構いません、私たちは、裏町、裏京都などとよんでおります、むろん、ここに住まず表の京都に住む妖怪もおりますが」

イッセーの質問、狐のお姉さんが応える。

 

それから、家屋が立ち並ぶ場所を抜けると、小さな川を挟んで林に入り、更に進むと巨大な赤い鳥居が出現した。

「お、来たか」

「やっほー、皆☆」

鳥居の先には相変わらず変わらない、アサゼルと着物姿のレヴィアタンさまがいた。その間には、戦国時代のお姫様が着るような豪華な着物に身を包んでいる九重がいた。

 

「九重様、皆様をお連れ致しました」

狐のお姉さんがそれだけ報告すると、焔を出現させて消えてしまった。どうやら狐火というやつだ。それから、九重は口を開き

「私は表と裏の京都に住む妖怪たちを束ねるもの――八坂の娘、九重と申す」

自己紹介したあと、深々と頭を下げる彼女

「先日は申し訳なかった、お主たちを事情も知らずに襲ってしまった、どうか、許して欲しい」

イッセー達に謝罪してくる九重、困った顔で頬を掻くイッセー

「別にもういいって、顔上げてくれよ」

「し、しかし……」

イッセーは膝をつき、九重に目線を合わせていった。

「えーと、九重でいいかな?なあ、九重、お母さんのこと心配なんだろ?」

「と、当然じゃ」

「なら、あんなふうに間違えて襲撃してしまうこともあるさ、もちろん、それは場合によって問題になったり、相手を不快にさせてしまう、でも、九重は謝った、間違ったと思ったから俺たちにも謝ったんだよな?」

「もちろんだとも」

イッセーは九重の肩に手を置き笑顔で続ける

「それなら、俺たちは何も九重のことを咎めたりしないよ」

イッセーのその言葉を聞き、顔を真っ赤にしながらもじもじながら

「ありがとう」

と呟いた。

 

「それで……咎がある身で悪いのじゃが……どうか、どうか、母上を助けるために力を貸してくれぬか?」

その場にいた全員の耳に、悲痛な叫びが聞こえた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。