ハイスクールD×D/Re:Zext Night 作:有栖川アリシア
夜――
街灯の光が道を照らしている時刻。士郎たちは、教会の近くに来ていた。
『制圧部隊配置完了です、人の出入りはありません』
士郎は、念話でハサンたちの状況を確認していた。近くには、木場とイッセーと小猫がいて、その先には銃火器を持ったハサン達。
「了解、今から聖堂内に突入を開始する、それ迄に先回りして聖堂内に照準をつけろ、射殺を許可するが、人質の救出が最優先事項だ」
「わかりました」
そういって、一旦念話を切る。
「木場――図面を」
そういうと、路面に教会の図面を広げる。
「相手の陣地に攻め込むときのセオリーだよね」
「さすがだ――んで、怪しいのは、聖堂だろうな」
士郎は図の聖堂を指差す。
「宿舎は無視していいってことか?」
「あぁ、この手の組織は聖堂に細工を施しているんだよ、おそらく地下で怪しげな儀式を行うんでしょうね」
「どうして、なんだ?」
「神への冒涜といったところだろ?」
「そうだね、憎悪の意味を込めてわざと聖堂の地下で邪悪な呪いをするんだよ――」
「だな、さてと、入口から聖堂までは目と鼻の位置、一気に行けるだろうな、問題は本丸の中だな、地下への入口と刺客の排除だな」
「どうする?」
「多分――聖堂内いることは確かだ、そいつは俺がやる地下はそっちで片付けろ」
「わかった、行こう!」
そういうと、入口に潜り込み、一気に聖堂まで走り抜ける。そして、扉の前に到着し、士郎は意識を広げて存在を探る。
「(柱の後ろに一人といったところか――)」
士郎は素早く手信号で後方のハサンたちに準備をさせる。そして、勢いよく両開きの扉を開け放ち、聖堂の中へ足を踏み入れる。長椅子と祭壇があり、普通の聖堂だ。とはいうものの、十字架の磔になっている聖人の彫刻は、その東部が破壊されている。
そんな中、突然聖堂内に鳴り響く拍手――敵意を瞬時に察した士郎
「撃て!!」
「なっ!?」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
聖堂内の柱のピンポイントに向けて機関銃の一斉掃射が行われる。
「――この糞が!!」
柱の陰から現れたのは、イイ感じにイカれた感じの白髪の神父。
「くそっ!?聞いてないぞ、イカれてやがる!――このクソ悪魔どもがよおぉおおおぉぉおお!!」
懐から拳銃と柄だけの剣を取り出すが
「第二射!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「この外道があああああ!!」
「逃げれると思うなよ――」
ほぼ無限に近い弾丸の雨をくらい、それを避けるのに必死な神父。そんな中、いつの間にかコルトパイソンを構えていた士郎が神父に向けて弾を放った。
バンッ!!
ドスッ!!
士郎の弾が神父の左肩に命中する。
「クソがぁぁああああっ!!殺――うがああああああ!!」
言葉を言いかけた時点で、怒声が呻き声に変わる。無理もない、士郎が放ったのは魔弾だ。この弾丸は、魔術回路を循環している魔力を本来の経路を無視して暴走させ肉体を破壊する弾丸なのだ。
「これは、ピンチってやつですかね――クソが…」
瞬間、目くらましでその場から離脱する。
「逃げたか――最後に捨て台詞を吐かなかったってところから、相当ヤバかったんだろうな」
イッセーがそういう。周囲には相変わらず硝煙の匂いが立ち込めている。
「好都合だ、行くぞ」
弾痕残る聖堂の中を歩いていく。そして士郎は祭壇を脚力で蹴飛ばし、床下に現れた階段を降り始める。
それから、奥へ進むと、大きな扉が現れる。
「あれか――」
「おそらく、奥には堕天使とエクソシストの大群が存在すると思う――」
「全員、覚悟はいいなっていいたいところだが、俺が殿を務める――下がってな」
そう言うと、再び意識を広げて存在を探る。同時に、アーシアの存在も探る。
「(存在数は、数えるのはめんどくさそうだ、だが、わかったぞ――)」
士郎は、煙幕を撒き散らすとともに扉を蹴破ると、銃火器を持ったハサン達が再び機関銃を掃射する。
「撃て!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「ちょ、えっ!?そんなっ!?」
堕天使レイナーレの動揺する声。無理もない、魔術で攻めて来ると思ったらバリバリ現代戦で相手が攻めて来たのだ。
部屋にいた神父たちはあまりのことに対応できずに、その場に立ちすくすが、容赦なく襲いかかる弾丸。硝煙の匂いがあたりに満ち、血の生臭い匂いも儀式場に充満する。士郎の視線の先の十字架には貼り付けられたアーシアという少女。その前いる堕天使レイナーレも肩に数発銃弾を受けている。
「助けに来たぞ、アーシア・アルジェント」
「アーシアァァ!!」
それから、周囲の親父たちが軒並み死体になったところで、士郎たちはアーシアたちの方を向く。
「随分と、手荒いわね」
「知らんな、ここを制圧しろ――そう言われただけだ」
「感動の対面だけれど、遅かったわ――いま、儀式が『ジャラララララララララ!!』――えっ?」
意識外からの鎖により、四肢を鎖で縛られ貼り付けにされるレイナーレ。
「
「こんな鎖にこの私が!!――そんなっ!?」
必死に鎖に抗うレイナーレだが、その鎖は決して離れることはない。無理もない数少ない「対神兵装」のひとつで"神を律する鎖"だ、堕天使に対してその威力は計り知れない。
「遅いんだよ、堕天使レイナーレ、全体を把握しろ」
――ズドンッ!!
冷徹な視線の士郎に、何かを察したのか、レイナーレが後方をみれば今まで儀式をしていた彼女がそこにいない。みれば、アーシアはイッセーに抱えられていた。そして、鈍痛を感じたレイナーレは、自分の胸元を見てみる。彼女の胸元は鮮血に染まっていた。
振り返って見てみると、そこには、一丁のコルトパイソンが握られている。そして銃口からは硝煙が出ていた。
「いやぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
儀式上に断末魔が響く。士郎は再び魔弾を使ったのだ。堕天使にとっては最凶ともなり得る弾丸だ。
そして、それを証明するかのように、彼女の羽が散り散りになっていく。
「(マジかよ――)」
流石に、堕天使に使ったのは初めてだが、ここまでの威力に半ば少し怖くなる士郎。
「(さすがにあれかな――)」
そういうと、士郎はゆっくりと腕をかざすと、冷気が手に収縮していき、それを放つと一瞬にしてレイナーレが凍結される。
それを
「おせぇぞ、士郎」
「あぁ、すまんな――」
声のする方を見てみると、そこには小猫と木場、それにイッセーとリアス部長がいた。
「さすが、あなたたちなら倒してくれると信じていたわ――それで、無事に勝ったようね」
「えぇ、といってもご覧の有様ですけどね」
「えらいわ、さすが私の下僕くん」
と鼻先をつんと小突かれる。
「あらあら、教会がボロボロですわ、部長、よろしいのですか?」
何やら困り顔の朱乃さん
「――大丈夫でしょ、見た感じ不法占拠という形だし」
「そうね、捨てられた教会だったわ、小競り合いってところで処理できるわね」
と言葉を交わす。
「さてと、こいつはどうしますか?」
氷漬けにされ鎖で繋がれたレイナーレを見せる士郎。みれば生々しい弾痕すらも凍結されている。
「これは…」
「解凍します」
そういうと、魔術を解除する士郎
「ゴホッ!!ゴホッ!!」
咳き込んで目覚めるレイナーレ。それを見下ろす部長。士郎は、万が一に備えてコルトパイソンを構える。
「ごぎげんよう、堕天使レイナーレ」
「……グレモリー一族の娘が」
「はじめまして、私はリアス・グレモリー、グレモリー家の次期当主よ、短い間でしょうけど、お見知りおきを――」
笑顔の部長に対して、部長を睨みつけるレイナーレ。
「してやったりとおもっているんでしょうけど、残念、今回の計画は上に内緒であるけれど、私に同調し、協力してくれる――」
部長は、懐から三枚の黒い羽を取り出す。
「カラワーナ・ドーナシーク・ミッテルトの彼らは消し飛ばしたわ」
「そんな…嘘よ!!」
「嘘ではないわ、これは同族のあなたなら見ただけでわかるわね?」
羽を見て、レイナーレの表情が一気に曇る。
「俺が目覚めてからちょこまかとうるさいカラスがいると思ったからな――調べてみたら軒並みビンゴ、お前らの敗因は俺とこのリアス部長に目を付けられたものだな」
「それで、お話に言ったら独自計画だと履いてくれたわ、どうやら、協力すると地位を約束してくれるらしいとか言ってたわね」
「ここまで読み通りとは、心底恐ろしいぜ、俺の能力も」
「読みという線では一番活躍したのは、士郎かもね」
「どうも、それと前言撤回だ、お前が負けたのはあとひとつある」
「なにっ!?」
「仮に、俺が屠れたとしても――待ち構えているのは、イッセーだ」
「えっ!?」
そういうと、全員の視線がイッセーにいく。
「――『
「そういえば、そうだったわね」
部長の言葉を聞いて驚くレイナーレ。
「じゃあ、最後の仕事でもしましょうかね――」
途端に、部長の目が鋭くなり、冷酷さを帯びる。部長はレイナーレに近づく。すると怯え出す彼女。
「消えてもらうわ――堕天使さん」そうとすると部長の手がレイナーレに向けられる中、一気に殺そうとすると?
「俺、参上」
あいた壁から人影が現れるが――
バキュンッ!!
「カハッ――!」
「部外者は、黙ってろ――」
銃声とともに、周囲に再び硝煙の匂いが立ち込める。
「ちょ、士郎――」
部長は士郎を静止しようとするが、士郎は間髪いれず引き金を引く。数発の弾丸が再び神父に命中し、悶え苦しみ出す神父。
「くそがっ!!――テメェら悪魔はこの俺が直々に殺してやる!!」
レイナーレは、仲間の神父に裏切られる。そして、士郎たちに吐き捨てるようにいう神父。
「さて、下僕にも捨てられた堕天使レイナーレ、哀れね」
視線がイッセーに行く。途端媚びたような目をしてくるので――
「黙れよ」
ひどく冷酷な視線な、彼女に突き刺さる。彼女の周囲には、無数の剣の剣先が向けられている。
「イッセーくん、私を助けて!」
その声は、ひどく媚びたものだ。そして、士郎は、部長に目で合図する。次にイッセーに合図し
「グッバイ、俺の恋、部長、士郎、もう限界ッす……頼みます―――」
それを聞いた途端、堕天使は表情を凍らせる。
「――
「私のかわいい下僕に言い寄るな、消し飛べ」
士郎の剣と部長の魔力の一撃により、跡形もなく堕天使レイナーレを吹き飛ばした。そして、教会に黒い羽が舞い散った。
「――
士郎は、目の前のアーシアに回復魔法をかけていた。
「あなた、なんでもできるのね?」
「えぇ、まぁ――」
とはいうものの、かなり危ない状態だ。
「部長、バイタルはかなり危険な状態です――例のアレを具申しします」
「わかったわ――」
そういうと、部長はポケットから血のように紅いチェスの駒を出す。
「それは?」
「これは、イッセー『
「へ?」
「まぁ、説明はあとだ――簡単に言うとだ、彼女を転生させるのさ、シスターから悪魔にね」
イッセーが驚いて間抜けな声を出すが、それを一旦無視してアーシアの下にかけよる。そして、部長の体を紅い魔力が覆い
「我、リアス・グレモリーの名において命ず、汝、アーシア・アルジェントよ、いま再び下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ、汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!!」
駒が発光して、アーシアの胸へ沈んでいき、部長はゆっくりと息を吐く。
士郎は、成功したことを悟り、
「んじゃあ、感動のご対面ってところだ――野暮な俺は後処理でもしてくるよ」
そういって、士郎はイッセーとアーシアから離れ、処理に向かった。少しして、アーシアの瞼が開き始めたことがわかった。
理由は簡単だった。後ろから、イッセーがアーシアと呼ぶ声が聞こえたからだった。
『全く、お主も素直なやつじゃないのぅ』
「あれでいいのさ――」
『まぁ、アレはあれでよいのかの』
「あぁ、彼女のことはイッセーに任せればいい――そういうことだ」
士郎はそう言いながら、空間を閉鎖し地下の儀式上に向けて火を放った。