ハイスクールD×D/Re:Zext Night   作:有栖川アリシア

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第六十四話 滅神の鎧

 

 

「―おいおい、手荒なまねだなぁ…」

と皮肉をこめて言う士郎

「神滅具で創りしもの、神滅具の攻撃で散る、か、霧使いめ、手を抜いたな、計画の再構築が必要だな」

聞き覚えが無い声だが敵だとは、当然のごとくわかる――視線の先には、軽鎧にマントを羽織っている

「誰…」

と部長に訊く士郎

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ、私の名前はシャルバ・ベルゼブブ、偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者だ、先ほどの偽りの血族とは違う、ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したのに―――あれ?いない?」

「ん?どうかしたかな、偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者さん?」

とかっこよく登場したシャルバを見ながら若干その行動に笑っている士郎

その姿を見て、若干キレ出すシャルバ

「さ、さて、サーゼクスの妹君、いきなりだが、貴公には死んでいただく、理由は当然――」

「現魔王の血筋を滅ぼすため?」

「そのとおりだ、不愉快極まりないのでね、私たちの真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などといわれるのが耐えられないのだよ」

と士郎が付け加えてそういった。

「不愉快も糞も無いだろ、今起こっている現実をどうして受けられない、過去の栄光にすがりたいだけだろ」

「――正論過ぎてなにもいえないな…まぁ、今回の作戦はこれで終了、私たちの負けだ、まさか、ブーステッドギアが上位クラスのディメンション・ロストに勝つとは想定外としかいえない、まぁ、今回は今後の実験ケースとして、有意義な成果が得られたら納得しよう、――私がいればヴァーリがいなくても、充分に我々は動けるからな――さて、去り際のついでだ――サーゼクスの妹よ、死んでくれたまえ」

「まぁ、卑劣なやり方だが――絶望を与えるにはちょうどいいだろうな――が」

全員が士郎の魔力変化を瞬間的に感知し、戦闘態勢に入る

 

「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン、まったくもって、グレモリーの姫君は趣味が悪い、それに、黒い汚物とその仲間も、まったく汚物同然の巫女と姫君といい醜い有様だ」

サラッとシャルバが言った言葉を、聞き流そうとする部長達だが、士郎にとってはその言葉が聞き捨てならない言葉だった。

「・・・・・・テメェ、いまなんつった・・・」

「はぁ?」

先ほど言った言葉など覚えてもいないし、覚えていたとしても気にしてないと言わんばかりの態度のシャルバ

それに、ついに士郎の一線が突破された。

「なんつったって言ってるんだよォォォおおお!!!」

激昂する士郎から噴出する荒々しい魔力に、その場にいた全員はただ事じゃないと感じる。そして、士郎の胸元の綺麗なルビーの宝石のような、深紅のペンダントが黒ずんでいき始める。そして

 

『いつだって貴様らは、滅びを選択するのだな!!』

そのペンダントから発せられた呪怨の声。そして、その直後

 

『――滅神龍皇の鎧(カタストロフドラゴンスケイルメイル)!!!』

そういうと、イッセーの赤龍帝の鎧のような黒と白の鎧に身を包み、背中から合計16枚の純白と漆黒の翼をはためかせ、まさに「終末」と呼べる姿に変貌を遂げる士郎。

「絶対・・・許さない!!」

士郎の手に握られているのは、異界文書(ザ・コード・オブ・アーカシャ)で取り出したであろう。約束された勝利の剣(エクスカリバー)と乖離剣エアだ。二つの剣とも、剣身から純白と漆黒の魔力を滴らせている。

 

「な、なんだあの荒々しい魔力は!?」

空中で立たずむ尋常じゃない士郎の形相に思わず後ずさりするシャルバ。

 

「チィッ!!」

ズババババッ!!

シャルバは、士郎に向けて、魔弾が放つ。だが、それは約束された勝利の剣(エクスカリバー)の一振りで打ち払われる。そして、シャルバの目の前まで迫り

 

「死して詫びろ!!」

超音速の空間を灼くかの如き、星屑のように煌き飛び散る白光を煌めかせ太陽コロナのように全方向から放たれる四十三の連続の剣閃攻撃が繰り出す。そこから、更にエクスカリバーとエアに膨大な魔力を乗せ、超高速の連撃を繰り出す対魔神級破壊剣技六十六連撃を繰り出し。

 

「終わりだ――!!」

空中に上がり、巨大なビームソードのようになった二つ剣で空間ごと敵を一刀両断にした。しかし、これで終わりではなかった。

 

『ガアアアァァァァァァァァァッ!!』

その荒れ狂う魔力は、士郎を完全に呑み込んだのだ。純白と漆黒の翼はもはや巨大なエネルギーの翼となり士郎は、もはや一種の魔獣と化していた。そして、敵は目の前のシャルバだった。

 

「そ、そんな・・・馬鹿な…」

あれだけの攻撃を食らってもなお息のあるシャルバ。シャルバは死力を尽くして逃げようとする。そんな中

 

コオォォォォォオオオオ・・・・・

 

その場にいた者たちは、背中にものすごい寒気を感じる。見れば、先ほどのあの二つの剣はそこになく。士郎の手に握られているのは、全く見当のつかない漆黒と純白の剣。

 

「部長逃げましょう!!」

「え、けど士郎が!」

「リアスさん!そんなことを言ってる場合じゃないわ!」

木場がそういい、それに同調するサツキ。

「アルビスさん、あなたまで!」

そう言いながらも動こうとしないリアス部長

「部長、すいません!」

「キャッ!イッセー!?」

木場からアイコンタクトをもらったイッセーが部長をお姫様抱っこで抱え走り出した。

 

そして、木場は神殿を一旦出て、聖魔剣を幾重にも創り出し、シェルターみたいなものを形作って眷属やサツキたちをそこへ避難させた。直後、無数のレーザーのような裁きの光が轟音と爆音とともに剣のわずかな隙間から差し込んだ。

 

 

 

 

 

二つの音が止み、木場はシェルターから出て神殿の方をみると

 

「――神殿がない・・・」

真っ先につぶやいたのはその言葉だった。そして次々とシェルターから出てくる仲間たち。

 

「あ、あれが士郎なの…」

その変わり果てた仲間の姿に恐る部長。見れば、近づかんと言わんばかりに周りにドス黒い魔力を噴出させ背中から巨大なエネルギーの翼を生やした士郎

 

そんな中――

 

ポツンッ・・・

何かが士郎の瞳からこぼれ落ちたのをサツキとアルビスは気づいた。

 

「部長、俺、行って士郎を――」

イッセーがいこうとしたとき

「――サツキさん、アルビスさん!?」

朱乃さんの声が聞こえ、見れば、サツキとアルビスは士郎の方に歩き出していた。

 

荒廃した地面を一歩ずつ歩いていくふたり

それから、士郎の右隣と左隣に立つ二人。士郎は剣を掲げて攻撃態勢にはいろうとした直後

「まったく、お騒がせね、士郎、落ち着きなさい」

そう言って士郎を優しく抱きしめると士郎の瞳が元に戻っていき、禍々しいオーラが減衰していく

 

ドサッ・・・バランスを崩す士郎をアルビスが支える。

「…サ……ツキ…、アル・・・・・・ビス?」

魔力を使い果たして、意識が朦朧としている士郎

 

「えぇ、そうよ?私はどこにもいかないわよ?」

「すまな……い、二人と・・・も、見苦しいところ……見せ…ちまったな……」

「いいのよ、私のために頑張ってくれたんだから、見苦しいもないわよ、ありがと、士郎」

「そうよ、今は、ゆっくり休みなさい」

「あぁ」

「けど、デート一回よ?」

「…ん」

そう言うと、士郎は二人に抱きかかえながら瞳を閉じた。彼女の瞳はどこか嬉しそうにそれも愛しい我が子を抱くような目をしていた

士郎は一瞬自我意識が戻るもののまどろみに落ちた

 

 

 

 

 

 

 

「――う、うーん?」

目が覚める士郎

隣には寝息を立てている少女、透き通るような雪のようにまぶしい白い肌に華奢な体、部長に巻けず劣らず美術品的なかわいらしい容姿の女性が二人。しかも、見る限り何も身につけていない

「(・・・全裸・・・・・・)」

士郎はそのことを頭の中で理解する。飛び起きたいところだが、如何せん体が重く飛び起きれない。まだ、魔力が本調子ではないのだろうと感じる士郎

「あ、士郎、おはよ~ふぁぁぁあ~」

「おはよう、士郎」

と小さくけのびをするサツキと眠気眼をこすっているアルビス、それから、士郎にゆっくりと抱きついていくるサツキ、柔らかい感触が直に士郎の肌に触れる

「なぜに?――」

士郎が言葉を紡ごうとしたがそれはアルビスの人差し指で止められた。

「――あなたのことが心配だったのよ?だから、こうしているのじゃない」

と耳元で囁くサツキ、その言葉に士郎の脳みそが沸騰寸前だ

「二人共・・・ほんと、迷惑かけてすまない」

「いいのよ、士郎」

二人は士郎を抱きしめる

「なぁ――」

「言わなくていいわよ、士郎」

そういうと、二人の顔と士郎の顔が重なる―士郎は、二人に押し倒される形でキスをした

 

その感触を感じたサツキ

「・・・もう、無茶しないで・・・士郎」

ポツリ・・・士郎の肩あたりに涙が一筋たれた。それはサツキのだと分かる

「――あぁ、もうしないさ」

「士郎、大好き」

「私も」

その言葉を聞いて、士郎の鼓動が一気に早まる。顔を真っ赤にするのも無理はない、柔らかい感触の上に告白までされたのだから

「あぁ、俺も好きだ」

そういうと

ぎゅっ!!

二人は、士郎を思いっきり抱きしめた。ちらりと見るとその顔は、どこか嬉しそうにしているのだった。

 


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