ハイスクールD×D/Re:Zext Night   作:有栖川アリシア

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第三十三話 王女のお誘いと宴

夜:ロンドン

 

二人が帰ると、あたりはすっかり夜になっていた。

 

Brrr-!!

「あぁ~夜だわね~」

街中を街灯の光が鮮やかに彩っていた。それを見てなにか思いつめるアルビス。

「すまんな、到着が遅くなって」

「あら、私は全然そんなこと思ってないわよ?」

「それで、夕食はどうするの?」

「適当にそこいらで食べて、そうだな――俺はビジネスホテルにでも泊まるさ」

と言葉を交わしながらバイクを走らせていく士郎。その後ろにはアルビスが乗っている。

 

それから、彼女をバッキンガム宮殿まで送って行くと。

「本当に帰るの?」

なにやらうっすらと悲しげな表情を浮かべる彼女。士郎は状況が呑み込めない中。

「アルビス?」

ゆっくりとこちらに寄ってきて、士郎の袖をつかむ。

「いいわよ、泊まっていって」

「へっ?」

「だから、泊まっていきなさい、ここに」

士郎の腕を握り締め強引にバッキンガム宮殿に連れ込むアルビス。

「(い、いいのか・・・俺)」

少し戸惑いながらも宮殿の中に入っていくのであった。

 

 

宮殿

「――それで、俺はどうすればいいんだ?」

「そうね~一応、もうすでに話は通してあるから、色々と"問題ないわよ"」

「(問題ないとはなかなか恐ろしいな)了解っと、それで俺は何処で過ごせばいいんだ?」

「ん?あぁ、こっちよ?」

そういうと、畳4畳半くらいの部屋に案内された。狭いものの士郎一人なら十分問題ない。

「ここ?」

「えぇ、ちょっと狭いけどそこは許して?」

「ん、気にしないからいいさ」

士郎はそこに寝っ転がる。そんな中

「あぁ~疲れた~」

アルビスも横になってくる。

「(ちょ・・・)」

ワイシャツの第一ボタンを緩め、こちらに顔を向けて寝っ転がってくるアルビス。そして、士郎に近づき、後ろから手を回して、まるで抱き枕のように腕や足を絡めてくる。

「(――!?)」

あまりにも大胆な行動に士郎の体がこわばるが

ツンッ・・・

「ヒャウッ!?」

突如脇腹をつつかれ、あられもない声を出してしまう士郎。と同時に、こわばっていたからだの力が一気に抜けた。

「これよ、これ、この感覚がいいのよ」

「(・・・えっ?)」

若干、危ない言葉が聞こえたが、気にせずいること数十分。ゆっくりとしていると

スー・・・スー・・・

背中に当たる柔らかな寝息に少し反応する士郎。見なくても、アルビスが完全に寝ていることがわかった。

ギュッ…

後ろから抱きしめる力が幾分か強くなる。

「(寝ちゃったよ…)」

冷や汗が士郎の頬に流れる。そんな中

 

「う~うんっ・・・」

目覚めるのかと思ったら、アルビスは、スーツのジャケットをおもむろに脱ぎ始める。しかも寝っころがりながら。そのジャケットを放り投げると、再び抱きついてくる。先ほどとは違いアルビスの柔らかい肌などが、布一枚越しでその感覚が士郎を襲う。

「(・・・)」

そのやわらかさに思わずこちらも抱きしめたくなる。そんな時だった

 

「失礼しま~す」

メイドの人がやってきた。

「・・・ど、どうも」

若干、死刑申告がされたんじゃないかなと冷や汗を垂らしながら引き笑いをしながら思っていると

「あらあら――大変ですね、あなたも」

「・・・まぁ、あの、いいんですか?この状況?」

「えぇ、むしろ嬉しいことですわ、なにせ、アルビス様がこういうふうなことをされているなんて、よっぽど心を開かれた証拠ですから」

「・・・そうなんですか」

「では、女王陛下のこともありますので、ごゆっくり~」

そういうと、ドアを閉めて帰ってしまうメイドさん

「(え・・・えぇぇぇぇ!!!)」

若干、驚きながらも―――ドッとのしかかるような疲労感とともに士郎は瞳をつぶった。

 

 

 

翌日――

 

「・・・」

朝日が窓から入ってきた。目を覚ますと同時に、不意と感覚神経がそのことを告げる。

「――やっぱりか・・・」

しかし、なんか違う。士郎は周りを見てみると。そこは、豪華な天蓋付きのベットの上だった。

「(・・・あれ、俺の部屋だよな?)」

メイドさんがきてあのあと寝落ちしたのはわかっているが、そもそもあの部屋にこんなものはなかった。となると、移動された可能性が高い。士郎は周りを見渡してみると、、そこには高級そうな家具の調度品ばかりが並べられたまさに王室にふさわしい部屋だった。

士郎はゆっくり起き上がってみると

「(・・・ねぇ、これってもしかして人生詰んだ?)」

となりではいつの間にかのパジャマ姿のアルビスがすやすやと寝息をたてて寝ていた。流石に朝だということを伝えるために、士郎はアルビスの肩に手を置いて少し揺すると

「あ……おはよ、士郎」

「おはよう、アルビス」

眠気眼を擦りながら、こちらを蕩けた目で見てくるアルビス。服の裾を引っ張ってくる。

「う~あと30分」

「ダメだって、ちゃんと起きなよ~」

「なら、こうさせて~」

まるで芋虫が這うかのようにこちらに体をくねらせてのしかかってくるアルビス。そして、後ろに倒れこむ士郎。そんな中

コンコン…

「はーい」

「アルビス様、朝食の用意が出来上がりましたので、食堂までいらしてください」

「わかったわ、お母様は?」

「食堂にいらっしゃいます」

「そう、わかったわ」

目を覚ました状態のアルビスは、こちらを見て。

「行くわよ?」

「どこに?」

「どこにって、決まっているじゃない?食堂よ?」

異論を言わせないアルビスの気迫に士郎は従い。一度、アルビスの寝室に向かった後、食堂に向かうのであった。

 

 

食堂――入口

「士郎、食事を済ませてくるから、ここで待ってなさい?」

「了解」

そういうと、食堂のすぐそばのところまで行く。士郎は、壁に寄りかかりながら目をつぶっていると

「あの、すいません?」

「はい?」

目を開けると、そこにはメイド服の従者がいた。

「どうされました?壁側で瞳をつぶって?」

「ん、アルビスを待っているんですよ?」

「あぁ、そうでしたか、すいません――いっつも見慣れないもので」

「そうですか、ここはお気にせず」

そういうって、メイドの人が立ち去った時だった。

「おい、そこの君」

「はい、なんでしょう?」

黒いスーツの女王直属ボディーガードがやってきた。

「女王陛下がお呼びだ、食堂の中に」

「はい」

そういうと、少し崩れていた身なりを整え、食堂の中に入っていく士郎。

 

入っていくと、食堂の中は荘厳な雰囲気に包まれていた。英国女王ソフィア=ウィンザー=クロイツェフに向き合う形でアルビスが座って食事をしている。

「・・・!?」

無言だが、女王直属のボディーガードに連れられやってきた士郎に驚いているアルビス。そして、食堂に入ると女王と目があった。

女王は、こちらの瞳や顔つきをまるで自分の子供のように見て、あの厳し目だと思われた顔から、木漏れ日のような暖かい表情に変化していった。若干、それに戸惑う士郎。そんな時だった。

「貴方が、丹羽士郎君ね?」

「はい、そうです」

士郎は相手の目を見つめて応えると、更にその表情を崩し。

「ちょっと、待っててね」

そういうと、近くにいたボディーガードに何やらスケジュールをチェックさせた後。

「そうね、今日主催のパーティー、招待客として参加しなさい、少しあなたとお話したいわ」

半ば強引に決められるスケジュール。

「・・・わかりました」

その女王の意図を探りながらも了承する士郎。その一方で、アルビスは、完全に食事の手を止めて驚いていた。女王は、視線をボディーガードに向けると、ボディーガードの男性が、こちらに一枚の招待状を渡してくる。

「どうも」

「必ず来てね?」

「行きますよ」

少し微笑む士郎に、その微笑みを見て懐かしそうな表所をする女王。士郎は受け取った手紙を、大切に胸ポケットにしまう。それから、沈黙の時間が数刻続く。そして

 

「行くわよ」

「ん」

士郎は、アルビスに連れられその部屋を出た。それから、ついていくこと数分。着いたのは、アルビス自身の寝室兼クローゼットルームだった。

 

「さてと・・・」

部屋に入ると、入口の扉の鍵をおもむろにしめるアルビス。士郎は、近くの壁に寄っかかると。

 

「あぁ~今日は天気がいいわね~」

「ん~そうだな~」

片目を半開きにしながら言う士郎。そんな中、ぐいっとアルビスが士郎に迫ってくる。

「な、なんだよ」

すると、腰に手を当てて士郎に小悪魔っぽく見つめてくる。吸い込まれそうな瞳がこちらを舐めるようにみる。

「ねぇ、実はさ――今日パーティーなんだけど、その前にドレス買いに行きたいんだけど?どう、こない?」

「こないって?公務はどうすんのさ?」

「大丈夫よ、今日はパーティーの準備日だからね」

「けど、そう安々と王女様が外に出ていいのか?」

「まぁ、そういうのもあるけど、堅っ苦しいこと言わないの、それに堂々と出て買いに行ったらそれこそ騒ぎものよ、それにカタログとかっていうでしょうけど、こういうのも自分の目で見て買いたいのよ?」

「確かにな、んじゃあ、行ってみますか?」

「えぇ、じゃあ――待ってなさい、すぐ着替えてくるから」

「ん――」

そういうと、クローゼットルームに入っていくアルビス。士郎もその場でスーツから私服姿に着替えた。

 

数分後――

「お待たせ~っておぉ~」

「おぉ~」

顔を合わせて、お互いの私服姿に驚く二人。士郎は、灰色の薄手のスーツジャケットに襟が蒼い白いシャツに長袖のジーンズというシンプルな格好だが、士郎のかっこよさを引き出すには十分なものだった。そして、アルビスはベージュのニット帽に、サングラス、ブラウンのジャケットに白いシャツにタンクトップ。そして、しましまニーソックスに斜めがけのポーチという格好だ。その格好は士郎を驚嘆させるのに十分だった。

「んじゃあ、行くわよ?」

「おぉ~」

それから、二人は色々と人の目を欺いて、宮殿の外に出たのであった。

 

 

そして、バイクの二人乗りで士郎とアルビスは、イギリス市街に繰り出したのであった。

 

 

市街地――

「う~ん、いいわね~この雰囲気が」

「賑やかだな~」

思いっきり背伸びをするアルビス。その一挙手一投足がサングラスを隠しているといえど、可愛らしさを目立たせ、同時に周囲の男性たちの視線を集める。それと同時に、まるでSPのように後ろに居る士郎にも並々ならぬ視線が注がれている。

「それで、どうするんだ?」

歩きながら言う士郎。

「どうしましょうかね・・・そっちはどうしたい?」

「どうもこうも、お任せするよ」

「そ、ならついてきなさい、ちなみに、飽きさせる暇なくまわるわよ?せっかくのお暇だもんね」

そういうと、士郎を先導して歩き出すアルビス。そして、二人で通りの様々な洋服店やドレスの店などを見ていく。そして、アルビスのドレスとかを見て、気に入ったのがあったら買ったりする。

 

 

それから数分後:服屋

 

「――んで、なんで、こういうことに?」

「いいじゃないの、せっかく紳士服の店があったんだから、流石にパーティー服ないからといって、あれで出られると困るな」

「まぁね・・・おっ、この黒さはなかなかだな」

士郎は近くにあった黒い刺繍の施されたネクタイを手に取る。

「あら、この赤いネクタイなんてどう?」

赤いネクタイを勧めてくるアルビス。士郎はそれを白いワイシャツと合わせるが

「少し派手じゃね?」

「あら、白いスーツとかないの?」

「そんな明るいのはないよ、基本的にあるのは紺と灰色、それに黒だ」

「それってほとんど任務用じゃない、けど、紺色は違うんでしょ?」

「まぁな――」

「けど、まぁ、黒でもいいかしらね、あ、さっきの赤いネクタイは灰色のスーツにでも合うわね」

少しため息をつきながら言うアルビス。その手には、アルビス自身のドレスと士郎の黒いスーツのジャケットとズボンがある。

「・・・う~ん、ってことは、黒かしら?」

「そうなるな・・・」

そんな中、周りを見渡すアルビス。そして、ネクタイ売り場で、少し店員と言葉を交わすと、店員は、驚いた表情をした後、黒を基調とした金色の刺繍をしたものを持ってきた。

「お、なんか高そうだな」

「こんなもんじゃないの?」

それを合わせてくると、なかなか士郎に似合っていた。

「まぁ、こんなところかしらね?」

「お、これでいいのか?」

「えぇ、ばっちしよ」

胸をはって自信満々に言ってくるアルビス。どこか誇らしげにもしているのであった。

 

 

 

 

夕刻:バッキンガム宮殿――

 

 

いつにもまして、バッキンガム宮殿の周囲は、女王陛下主催のパーティーだけあって、厳戒態勢が敷かれていた。経済界、政界や国民的アイドルや英国貴族なども招待され、一同に介するこのパーティーもちろん、こちら側、主に英国清教の重役幹部たちや、いつもは騎士団の任務に就いている騎士団長なども今宵は招待されている。士郎は特に変わったこともなく中に入ってすぐに、受付のところに向かい、招待状と同時にバッジを見せ、手荷物検査を受ける士郎

 

「受付をお願いします」

受付嬢に指示されるまま受付表に記帳していく士郎。それにしても、女王主催のだけあって検査場であったバルコニーみたいなところはとても広かった。下には赤い絨毯が引いてあり、やっぱり城みたいだ。しかし、先程から気になる視線、無理もないだろう。ここにいるのは大半は英国人。東洋の人間などほとんどいない。いわば、身内だけで固めたようなものだが、士郎はそんなことを気にせず中に入る。

長い黒い髪いゆったりした髪が周りの目を引いている。それに加え、アルビスの選んだスーツやネクタイが士郎のかっこようさと凄絶なまでの美しさを兼ね備えたものを引き出していた。ロビーで談話中の英国人と思われる夫婦が、思わず声を上げる。そんな二人に向けて、士郎は微笑み、軽く会釈をする。士郎は、ロビーからパーティー会場に入り、怪しまれないように周りに溶け込む。そんな中

 

「失礼ですが、招待状を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」

白いひげが印象的な初老の男性が話しかけてきた。

「えぇ」

士郎は胸元から招待状を取り出すと

「ありがとうございます、私は、エドワード・マクレーンと申しまして、女王陛下の執事をやっているものです、貴方を特別会場にご案内いたしますので付いてきてください」

「(・・・特別会場?)いいですよ」

「では、こちらへ」

少しその男性の様子を伺いながら、士郎は案内されついて行くことにした

 

 

それから歩いていくこと数分後

 

ギイイィィィィイイ~

重そうな扉が開かれ、中に入っていく士郎。中では盛大なパーティーが行われていた

ガヤガヤガヤガヤ・・・

「(・・・結構位の高い連中だな)」

扉を入って見渡すと、各省庁の大臣や参事官、それにトップアーティストなどが楽しそうに談笑していた。士郎もその中に溶け込む。どうやら、立食形式みたいだ。ビュッフェ形式の料理を眺めながら士郎は周りを歩いていると

「一杯、如何ですか?」

「お酒かな?」

「いえ、ジンジャエールです」

ウェイトレスが勧めてくる。

「もらおうかな」

「こちらです」

「どうも」

士郎はお洒落なグラスに入ったそれをもらい、再び歩き出す。そして、歩き回っていると

 

「あっ、いたいた」

明るそうな声がした。士郎は振り返ってみると、こちらに歩いてくる金髪の少女に思わず見蕩れてしまう。確かに、洋服屋で見たが、この場の雰囲気と相まってその華麗な華のような可愛さと美しさを更に引き出していた。周りの男性や女性もその姿に若干見蕩れてる者も多かった。少しぼけっとした表情をしながら見蕩れていると

「あら、私の目は狂いなかったわね――似合っているわよ、スーツ」

その言葉で目を覚ます士郎。見れば後ろからSPもきていた。

「先を越されちまったな、そっちもにあっているぞドレス」

ニッコリと笑いながら言う士郎に、思わず顔を赤らめるアルビス。牽制するように士郎とアルビスの間をSPが入ってくる。しかし、アルビスは士郎に近づいてくる。

 

そんな中、後ろから

 

「アルビス~」

大人っぽい声と共に、これもまた大勢のSPを連れたアルビスと同じ髪色をした女性がこちらにやってきた。だが、その女性はアルビスと圧倒的にちがった。なぜなら、英国女王クイーンレグナント本人だからだ。体から放たれるオーラがちがった。それに、通ろうとするところの人物が道をどけ、両脇に立ち、道ができているのだ。まさに、威厳というものが放たれていた

 

「あっ、お母様!?」

気づいたように頬を赤くするアルビス。これもなかなかに可愛らしい。

 

「アルビス、全く~あんまり遠くに行ってはなりませんよ?」

「はい、ごめんなさい」

「(この年になって、これですか・・・)」

そんな中、士郎とアルトリアに気づいたように微笑みかける英国女王(クイーンレグナント)

 

「改めまして、英国女王(クイーンレグナント)のソフィア・クロイツェフですわ、アルビスの母親です、以後、お見知りおきを」

「丹羽士郎です、こちらこそよろしく、女王陛下、今日はパーティーに招待してくれてありがとうございます」

少しではなく、ものすごく緊張してしまう

「あらあら、そんなかしこまらなくていいわよ、友達のお母さんと接する態度でいいわ」

「はい」

そういうと、楽な姿勢になる士郎

 

「士郎くん、アルビスから話はいくつか聞いてるわ。ちょっと、今後のことで気になることがあるから、後で少しいいかしら?」

「構いませんよ」

「ありがとう、その時は、アルビスも一緒に来て頂戴?」

「えぇ、構わないわ、けど、パーティーは?」

「少し、SPに頼んでスピーチの時間を早めてもらうわ」

そういうと、SPに耳打ちするとあちらも耳打ちする。

「あと30分くらいで、スピーチだから、そのあと3人でお話しでいいかしら?」

「私は問題ないですわ」

「はい、問題ないです」

そういうと、なにやら少し急いだ足取りで、スピーチの演台の方に向かう英国女王クイーンレグナントだった。

 

「30分、どうする士郎?」

アルビスが行ったのを見計らって話してくる。

「う~ん、特に決めてないな」

「なら、一緒に回る?」

「おぉ、いいね、なら、エスコートして頂戴」

「エスコートは騎士の役目、及ばずながら努力いたします、さあ、どうか」

そういうと、士郎はアルビスに手を差し出す、それにつかまり歩き出すアルビスだった。

 

そして、仲良く一緒に回り始める士郎

といっても、ビュッフェスタイルなので、料理を取りに行ったりするだけなのだが、まぁ、その手間もSPがやってしまったりするので、特にやることもなく手持ち無沙汰にしていた頃

 

「これはこれは、相変わらずお美しいお姿で」

金髪の少し太めの男性がアルビスに話しかけた。所作からみて典型的な貴族と思われる人物だ。

「あら?ペンシルヴェニア卿、どうも、楽しんでいるかしら?」

「えぇ、女王陛下主催のパーティーなので、楽しくないわけではありません――しかし、そちらにいる男性はどなたですか?」

敵意の眼差しを向けてくる男性。嫉妬しているみたいだ。そんな中、アルビスは片手で士郎を牽制する。

「えぇ、彼は丹羽士郎よ」

「丹羽士郎・・・失礼ですが、爵位は?」

「あぁ~ないけど"バッジ"は持っているわ、それがどうかしたかしら?」

「――なんですと!?」

驚いた視線で見られる士郎、その視線はしっかりと胸辺りについているバッジに向けられていた。

 

「それにしても、ペンシルヴェニア卿、士郎がどうかしましたか?」

「えっ、いや、その、貴方様の隣にいる方が気になりまして、お声をおかけしただけです」

「あら、そう、では、パーティーを楽しんでちょうだいね、士郎行くわよ」

「了解」

そういうと、その場から振り返らず立ち去る士郎とアルビス。

 

そして、今度はガヤガヤと話している自分たちと同じような年齢の集団の少女たちに声をかけられた

「あら、アルビス」

「カトレア、どう?楽しんでいるかしら?」

「えぇ、色々と交流ができてとてもためになるわ、それにしてもどんぐらいいるの?」

「さぁ、お母様の招待だから、把握はしていないわ」

「あれ、付いてまわらなくていいの?」

「お母さんは、お母さんで交流があるのよ」

と年齢にふさわしい会話をしていると、自然と士郎の話題になった。

「それで、その隣にいる色男はなんなのよ?お気に入り?」

カトレアという女性はニヤリと笑いながら聞いてくる。

「あぁ、士郎ね、私のお気に入りよ、いいでしょう~?」

腰に手をあて堂々と自慢げにいうアルビス。

「あらあら、羨ましいわ~」

「どうも、あぁ、士郎挨拶なさい」

「丹羽士郎です、よろしく」

笑顔で挨拶する士郎。

「カトレア・ベンドウィッジよ、こちらこそよろしく、小さなナイトさん」

微笑み返してくる。

「んじゃあ、私は挨拶回りするから、少し後でね」

「えぇ、そうしましょう、そうね、アーサーやメアリーでも探しているわ」

「あら、彼女たちも来ているの?」

「そうよ、んじゃあ行ってるわね」

「ん」

そう言ってその場から立ち去るカトレアさん。それを見送った後再び歩き出した。

 

「――それにしても、結構人来てるんですね」

「まぁね、関係のある人は国籍に関係なくきてるからね~」

それにしても、一介の男子高校生がここに来ていいのかと思う

そんな中、

 

「殿方に付き添われて、こんな風に歩くのは、とても楽しいわね」

「こんな私ですが、事足りましたか」

「非の打ち所もなかったわ。今日のあなたはとっても素敵なナイトだわ」

「光栄です、姫」

 

そんな中

「本日は、英国王室主催の~~~」

英国女王クイーンレグナントのスピーチが始まった

演台の上にたって堂々とした姿でスピーチをするソフィアさん、その姿はものすごく立派だ

 

そんな中、SPが気づいてないのだろうか、女王に近づくひとつの人影

 

「(――!)」

それを見たとたん、直感・第六感による危険回避のスキルである"心眼(偽)"が唐突に発動した。

士郎は、アルビスから離れて、そっと自身の気配を消す能力"気配遮断:S"を使って、彼に近づく

行動や周囲の警戒の仕方から見て、フリーの傭兵みたいだ、しかも、魔術で気配をを消していた。さしずめ、追跡封じ(ルートディスターブ)の強化版といったところだろうかと推測する士郎。

しかし、ここで大事を起こすわけにもいかない、そうなると少人数で内密に処理したほうがいいそう判断する士郎

 

「(さて・・・ここにきてまでか・・・まったく平和じゃないな)」

極めれば天地と合一し、姿を自然に透け込ませる(透明化する)ことが可能になるスキル"圏境"を使い、相手に近づく士郎

そして、瞬間的に線や点を切ることで生命そのものを直接削ることができ、命を削られた対象がそのまま死に至ることはないが、行動する気力を大幅に削がれ、動けなくなってしまう"偽直死の魔眼"を使って、相手の行動気力を根こそぎ削った。その場にゆっくりと倒れこむ男性。

 

「(――仕事完了かな)」

そして、近くにいた護衛のSPにあと(暗示で連行)を任せ、士郎はアルビスのところに戻った

 

そして戻ってみると

「あっ!どこ行ってたの!?」

ご立腹の様子のアルビスがいた。

 

「うん?あぁ、すみません、少し手間を裂くようなことがありまして・・・」

「少しって、何してたの?」

「あのSP見えるでしょうか?」

「えぇ、それがどうかしたの?」

「少し、母君をお守りしていたところですよ」

「お母様を!?」

「少し、不肖な輩がおりましたのでね・・・」

よく考えたら、なにか言葉がおかしくなっている、アルトリアの影響だろうか、それから数分後、英国女王クイーンレグナントのスピーチが終わり、こちらに戻ってきた

 

「アルビス~」

普通の母親らしく自分の娘の名前を呼ぶソフィアさん

「あっ!お母様~お疲れ様」

「どうもありがと、アルビス」

こっちも娘らしく自分の母親に駆け寄っていく。その光景を微笑ましく見ている士郎。それから二人揃ってこちらにやってきた。

 

「そちらも挨拶回り終わったかしら?」

「えぇ、終わったわ、そっちは?」

「もちろん、終わったわ」

言葉を交わす二人。そんな中

「まぁ、今すぐにでも話したいけど、こうも賑やかな状態だと、おちおち話せないわね」

周りを見ながら言うソフィアさん。

「そうですね、なら、私に気にせずパーティーに参加してくださいよ、私は色々と見てまわっていますから」

「あら、貴方にも予定があるんじゃないの?」

「いえいえ、そのくらいは自分で折り合いを付けますよ」

そういう士郎。アルビスとソフィアさんは互いに顔を見合わせ、こちらをみる。そして、一礼したあと士郎は、パーティーを一人で周り始めた。

 

 

 

 

数時間後

 

 

「丹羽士郎様ですね?」

「はい――ッ!?」

振り返ってみると、そこに、アルフォード・バルムンクがいた。

「そんな驚かなくていいだろ?こう見えても腕は立つからね」

「え、えぇ、それでバルムンクさんどうかしましたか?」

「女王陛下がお呼びだよ――こちらへ」

そう言うと、頷いて宮殿の奥に向かって歩き出した。

 

歩いて数分

宮殿の一角にある、なにやら秘密の部屋みたいなところに着いた。その部屋の前にいた英国女王(クイーンレグナント)であるソフィアさんが隣にいたバルムンクさんに向かって軽く指示を出す。

そうすると、士郎はアルビスに連れられ、その部屋に入る。もちろん、ソフィアさんもだ。

バルムンクさんは入ってこなかった。この部屋は彼女も入ってくることができないプライベートルームみたいだ。多分、聞かれたら困ることを話すことを話すところだと思われる。

 

 

部屋に入り、円卓の椅子に座る士郎。

 

「士郎くん、ミルクティー飲める?」

「えぇ、問題ないですよ」

英国女王(クイーンレグナント)は、黙々と紅茶を入れてくる。。どうでも良いことが、紅茶を入れる姿がとてもよく似合っている。

それから、ティーカップに紅茶を淹れて、こちらに出してくるソフィアさん。

「さてと、初めに、バルムンクを治したのは、あなたかしら?」

いきなりの直球質問に思わずむせそうになる士郎。とはいえ、黙り込むのもしゃくなので

「えぇ、少し自分自身の能力を使いました」

「そう、発作の時ってところね」

「ッ!?」

「驚かなくていいわよ、私も彼女から聞いているから」

「そうですか」

「んじゃあ、こっから少し真剣な話をしていいかしら?」

空気が一変したので、士郎も雰囲気を変える。

「・・・どうぞ」

「近々、私設部隊を立ち上げるんだけど、士郎君、来ない?」

「私設部隊ですか?」

「名前は特務3課、表向きは普通の公務員だけど――裏は"国家に害なす魔術師と戦うための秘密部隊"よ」

「・・・結構でかい組織ですね」

「えぇ、上は私と特別顧問のサファイアだけ、階級なしの実力主義、最優先ライン、犯罪の芽を探し出しこれを除去する、私が心から望んでいた攻性の組織ね、質はあなたたち次第だけどね」

それに驚愕する士郎。

「攻勢の組織ですか・・・サファイア・ハインリッヒ・マルコシアスさんですよね?」

「貴方たちラウンズのトップね」

「兼用ですか・・・」

「いえ、実際なことを言えば、ほぼ私の手の中だけどね」

とんでもないことを暴露するソフィアさん

「まぁ、そういうことだから、覚えていてちょうだい――悪い話ではないでしょうから、どうかしら?」

「ヘッドハンティングなら喜んでお受けしますよ」

「なら、貴方にいくつか書類を渡すわ――それにサインして持ってきてちょうだいね?」

「えぇ、了解しました」

その後、いくつか言葉を交わす士郎。それから、書類を貰いアルビスと一緒にその部屋を後にした。

 

「さてと・・・どうするのよ?士郎」

アルビスが聞いてくる。

「あぁ、勿論Yesだな」

「だと思ったわ――なら」

そういうとアルビスはくるりとこっちを向き

「楽しみにしているわよ?士郎」

「おう」

力強く言う士郎であった。

 


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