ハイスクールD×D/Re:Zext Night 作:有栖川アリシア
士郎は校舎の裏手から侵入し廊下を走り、屋上を目指す。それから階段を駆け上がると屋上の扉が見えてくる、休む暇なく士郎は屋上の扉を勢い良く開け放つ。
すると、そこには対峙する部長とライザーの姿があった。しかし、部長は辛そうに肩で息をしている。綺麗な紅の髪も乱れ、制服もボロボロだ。
「すいません、遅くなりました!!」
屋上に聞こえるような声を張り上げる。
「士郎!」
「士郎さん!」
部長とアーシアが歓喜の声を上げてくれる。
「来たか、丹羽士郎!」
悪態をつくライザー。そして、やや焦った表情で言う。
「リアス、
諭すようにライザーは言う。だが、部長は睨むだけだ。
「黙りなさい、ライザー。私は諦めない!読んでいた?詰んだ?まだ『王』である私は健在なのよ?」
不敵に笑う部長。そんな中、士郎は、部長の前に出る。
「ふっ、なにが"詰んだ"だ――怖気ついて、俺を不参加にさせやがって」
「――ッ!!」
目の前で堂々と言ってのける士郎。
「勝てないからハンデをくれ、その代りに10日間の期間をくれてやるか、随分と舐めた真似をしやがって」
「お、おい――」
ライザーの額に汗が浮かぶ。無理もない、ライザーに向けられているのは、悪魔でも人間でもないもっとおぞましい深紅の瞳だ。
「おまけに武具の使用制限をかけやがって、全力で戦いたいなら――全力でやらせろよ鳥野郎!!」
「うるせぇんだよぉぉお!!」
ライザーが、焔をを纏ったこぶしで殴ってくるが――
「――
ギィィンッ!
七つの花弁がライザーの攻撃を止める。
「部長、勝負は続行ですよね?」
「え、ええ」
部長は諦めていなかった。とはいえ
「(こいつ、意外に厄介な奴だな――)」
士郎は、思考をめぐらす。無理もない。このゲームに参加する条件として、不死性を無効できるハルペ―および戦略級武具、およびスウィンドルになり兼ねない武器は、使用不可なのだ。
「(天地乖離す開闢の星、約束された勝利の剣などは使用不能か――下手すりゃ、取り出した時点でアウトだろうな、刺し穿つ死棘の槍も限りなくアウトに近いだろうな)」
ライザーの方は本陣まで攻め込まれている、一方これといった決定打がない状況だ。王である部長もボロボロだ。
「(となると、あれか――)」
ふと脳裏に考えが過る。
「士郎、一緒にライザーを倒すわよ!」
「はい!」
部長の言葉と共に、シールドを解いて、特攻しようとする。同時に身体に膨大な魔力を流し、力を練り始めるが、体が急激に重くなり、全身の機能がほぼ停止に近い状態にまでなる。
「なっ――!!」
『おぬし、回路を酷使しすぎじゃ!!』
ジルニトラに言われる士郎。そして、それを見たライザーは
「貴様の力はな!想像以上に宿主を疲弊させるんだよ。そんな力を使っている自体、異常すぎることなのさ。体への負担は他の
今にも高笑いしそうなライザー。士郎の横で部長が哀しそうな顔をしている。
「部長、いきましょう!」
そんなことは気にせず、顔色一つ変えず士郎はライザーへ突っ込んでいく。しかし、
「――ぐはっ!」
士郎を激痛が襲う。だが、不思議と魔力が枯渇した感覚はない。
「(あいかわらず、かっこ悪いぜ・・・けどな、まけるわけにもいかないんだよ)」
ドゴンッ!
ライザーの拳が士郎の腹に深く突き刺さり、さらに抉りこませるように拳を回転させてきた。
「ゴホッ!」
士郎の口から血が吐き出される。
ブシュッ!
士郎の右肩と口、そして、瞳から流れる
「ハハハハ、ハハハハ」
ライザーの笑い声がこだまする。士郎はゆっくりとライザーに歩み寄る。そして
ザシュッイ!
再び、ライザーのはらわたを剣が貫く。その手には、最後の力を振り絞って投影した
「こ、この餓鬼ぃ!」
ライザーが士郎を突き飛ばし、ライザーが炎攻撃を容赦なく仕掛けてくる。
ゴォォォォォオオオオ!
ドガッ!!
吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる士郎。だが、士郎はさらに立ち上がり
「うぉおおおぉぉおっ!!」
ありったけの魔力を拳にのせ、一気に加速し殴り合う。
ガスッ!!
ライザーも殴ってくる。
「やれば、出来るじゃなぇか!!こんな勝負をよ!!」
「はっ、言ってくれるぜライザー!!」
壮絶な殴り合いが目の前で繰り広げられる。
「…まだ、やる気がありそうだな――」
「はっ、言わせてくれるぜ」
血反吐を拭いながら立ち上がる士郎。
「ライザー!もうや――」
部長が遮ろうとするが、士郎は最後まで戦い続ける。動かしているのは、ここで負けるわけにはいかないという執念だ。
ライザーの無敵とはいえ、その身体に着実にダメージを与えていっている。
「――いい動きだ丹羽士郎、」
ガスッ!!
だが、ライザーは拳に炎を纏わせ士郎とすれ違い様に拳を一閃する。すると
ドサッ・・・
士郎はその場に倒れこんだ。そして、不意に過る最悪な状況。
「(負ける・・・のか・・・)」
これでライザーが勝ってしまえば、リアス部長はライザーの下に行ってしまう。そしたら、部員たちはどうなってしまうだろう。答えは明確だ。
「(いやだ…こんなところで……負けてたまるか――)」
士郎は立ち上がろうとするが、体は意に反し動かない。目の前では勝ち誇った様子のライザー。見ててイラつかせるものだ。
「(力さえ…あいつをぶん殴れる力さえ…)」
自分の不甲斐なさを無力さ、悔しさを再び悔やむ。だが――
『無情じゃ――もう、終わりじゃよ』
「うそ…だろ」
ジルニトラの言葉と共に崩れ落ちる士郎の身体。
「――ありがとう、朱乃、祐斗、小猫、アーシア……イッセー、士郎、不甲斐ない私のために、よく頑張ってくれたわ」
そして、士郎の聴覚が最後に捉えたのは――
「私の負けよ――
それは、敗北――初めての敗北であった。