ハイスクールD×D/Re:Zext Night   作:有栖川アリシア

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第二十話 グレモリーvsライザー フィナーレ

士郎は校舎の裏手から侵入し廊下を走り、屋上を目指す。それから階段を駆け上がると屋上の扉が見えてくる、休む暇なく士郎は屋上の扉を勢い良く開け放つ。

すると、そこには対峙する部長とライザーの姿があった。しかし、部長は辛そうに肩で息をしている。綺麗な紅の髪も乱れ、制服もボロボロだ。

「すいません、遅くなりました!!」

屋上に聞こえるような声を張り上げる。

「士郎!」

「士郎さん!」

部長とアーシアが歓喜の声を上げてくれる。

「来たか、丹羽士郎!」

悪態をつくライザー。そして、やや焦った表情で言う。

「リアス、投了(リザイン)するんだ。これ以上はほかの場所で見られている君のお父上にもサーゼクスさまにも格好がつかないだろう。君はもう詰んでいる。こうなることは既に読んでいたことだ。――チェックメイトだ、リアス」

諭すようにライザーは言う。だが、部長は睨むだけだ。

「黙りなさい、ライザー。私は諦めない!読んでいた?詰んだ?まだ『王』である私は健在なのよ?」

不敵に笑う部長。そんな中、士郎は、部長の前に出る。

 

「ふっ、なにが"詰んだ"だ――怖気ついて、俺を不参加にさせやがって」

「――ッ!!」

目の前で堂々と言ってのける士郎。

「勝てないからハンデをくれ、その代りに10日間の期間をくれてやるか、随分と舐めた真似をしやがって」

「お、おい――」

ライザーの額に汗が浮かぶ。無理もない、ライザーに向けられているのは、悪魔でも人間でもないもっとおぞましい深紅の瞳だ。

「おまけに武具の使用制限をかけやがって、全力で戦いたいなら――全力でやらせろよ鳥野郎!!」

「うるせぇんだよぉぉお!!」

ライザーが、焔をを纏ったこぶしで殴ってくるが――

 

「――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

ギィィンッ!

七つの花弁がライザーの攻撃を止める。

 

「部長、勝負は続行ですよね?」

「え、ええ」

部長は諦めていなかった。とはいえ

「(こいつ、意外に厄介な奴だな――)」

士郎は、思考をめぐらす。無理もない。このゲームに参加する条件として、不死性を無効できるハルペ―および戦略級武具、およびスウィンドルになり兼ねない武器は、使用不可なのだ。

 

「(天地乖離す開闢の星、約束された勝利の剣などは使用不能か――下手すりゃ、取り出した時点でアウトだろうな、刺し穿つ死棘の槍も限りなくアウトに近いだろうな)」

ライザーの方は本陣まで攻め込まれている、一方これといった決定打がない状況だ。王である部長もボロボロだ。

「(となると、あれか――)」

ふと脳裏に考えが過る。

 

「士郎、一緒にライザーを倒すわよ!」

「はい!」

部長の言葉と共に、シールドを解いて、特攻しようとする。同時に身体に膨大な魔力を流し、力を練り始めるが、体が急激に重くなり、全身の機能がほぼ停止に近い状態にまでなる。

「なっ――!!」

『おぬし、回路を酷使しすぎじゃ!!』

ジルニトラに言われる士郎。そして、それを見たライザーは

「貴様の力はな!想像以上に宿主を疲弊させるんだよ。そんな力を使っている自体、異常すぎることなのさ。体への負担は他の神器(セイクリッド・ギア)に比べると段違いに高い!この戦場を駆け回り、オレの下僕たちと戦いながら、その能力を使い続けた!!つまり、おまえはもうとっくに限界なんだよ!!」

今にも高笑いしそうなライザー。士郎の横で部長が哀しそうな顔をしている。

 

「部長、いきましょう!」

そんなことは気にせず、顔色一つ変えず士郎はライザーへ突っ込んでいく。しかし、

「――ぐはっ!」

士郎を激痛が襲う。だが、不思議と魔力が枯渇した感覚はない。

「(あいかわらず、かっこ悪いぜ・・・けどな、まけるわけにもいかないんだよ)」

ドゴンッ!

ライザーの拳が士郎の腹に深く突き刺さり、さらに抉りこませるように拳を回転させてきた。

「ゴホッ!」

士郎の口から血が吐き出される。

 

ブシュッ!

士郎の右肩と口、そして、瞳から流れる

 

「ハハハハ、ハハハハ」

ライザーの笑い声がこだまする。士郎はゆっくりとライザーに歩み寄る。そして

 

ザシュッイ!

再び、ライザーのはらわたを剣が貫く。その手には、最後の力を振り絞って投影した絶世の名剣(デュランダル)が握られていた。

「こ、この餓鬼ぃ!」

ライザーが士郎を突き飛ばし、ライザーが炎攻撃を容赦なく仕掛けてくる。

ゴォォォォォオオオオ!

ドガッ!!

吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる士郎。だが、士郎はさらに立ち上がり

「うぉおおおぉぉおっ!!」

ありったけの魔力を拳にのせ、一気に加速し殴り合う。

ガスッ!!

ライザーも殴ってくる。

「やれば、出来るじゃなぇか!!こんな勝負をよ!!」

「はっ、言ってくれるぜライザー!!」

壮絶な殴り合いが目の前で繰り広げられる。

「…まだ、やる気がありそうだな――」

「はっ、言わせてくれるぜ」

血反吐を拭いながら立ち上がる士郎。

「ライザー!もうや――」

部長が遮ろうとするが、士郎は最後まで戦い続ける。動かしているのは、ここで負けるわけにはいかないという執念だ。

ライザーの無敵とはいえ、その身体に着実にダメージを与えていっている。

「――いい動きだ丹羽士郎、」

ガスッ!!

だが、ライザーは拳に炎を纏わせ士郎とすれ違い様に拳を一閃する。すると

ドサッ・・・

士郎はその場に倒れこんだ。そして、不意に過る最悪な状況。

 

「(負ける・・・のか・・・)」

これでライザーが勝ってしまえば、リアス部長はライザーの下に行ってしまう。そしたら、部員たちはどうなってしまうだろう。答えは明確だ。

「(いやだ…こんなところで……負けてたまるか――)」

士郎は立ち上がろうとするが、体は意に反し動かない。目の前では勝ち誇った様子のライザー。見ててイラつかせるものだ。

「(力さえ…あいつをぶん殴れる力さえ…)」

自分の不甲斐なさを無力さ、悔しさを再び悔やむ。だが――

 

『無情じゃ――もう、終わりじゃよ』

「うそ…だろ」

ジルニトラの言葉と共に崩れ落ちる士郎の身体。

 

「――ありがとう、朱乃、祐斗、小猫、アーシア……イッセー、士郎、不甲斐ない私のために、よく頑張ってくれたわ」

そして、士郎の聴覚が最後に捉えたのは――

「私の負けよ――投了(リザイン)します」

それは、敗北――初めての敗北であった。

 


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