ハイスクールD×D/Re:Zext Night   作:有栖川アリシア

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第十五話 士郎の道

イッセー達が敗北を味わった頃――士郎は士郎で別のところにいた。

 

 

深夜:東京都江東区青海埠頭――

 

本来なら、この時間この貨物埠頭には、人通りは全くない"はず"なのだが、その夜は大勢の影があった。

 

『青海埠頭にテロ組織禍の団(カオス・ブリゲード)の集団を探知、即座に殲滅せよ』

専用回線の無線を通じて届くサファイアの指示。

「まぁ、ここが格好の隠れ蓑兼儀式場ってところか」

「そんなところでしょうね」

軽く言葉を交わしながら、足の回転を速める士郎とサツキ。二人の手には、刀がある。

本来なら、20分はあるだろうという距離を軽口を交わしながらわずか3分で到着する二人。二人は、もちろん人ならざるものだからだ。

 

「人数不足そうも言ってられないか」

「仕方ないわよ」

そういいながら、高さ10mはあるであろうその貨物の壁を飛び越える二人。そして、眼下には天使・堕天使・悪魔といった禍の団(カオス・ブリゲード)の集団。貨物を蹴り、放物線を描くような軌道と同時に次々と刀で面々をなぎ倒す。

士郎のすぐ後ろで、サツキも幻惑な空中軌道を描きながら面々を制圧していく。

お互い挟撃の形で制圧していく。そのすぐ横では――

 

「行け!!天輪金騎(マグナ・カルタ)!!」

小柄でフリルまみれのドレスを着た少女、リアナ・ヴォルティズロワが天輪金騎(マグナ・カルタ)と呼ばれる黄金の鎧に身を包んだ騎士を縦横無尽に操り敵を制圧していっている。

 

「士郎、あのコンテナを制圧するわよ」

「了解!!」

サツキに言われ、サツキの視線の先のかなりの人数で守られた小型艇の上に載せられたコンテナに目をやる。

そういうと、士郎とサツキは相手の使ってくる銃火器に捉えられないように幻惑的な軌道を描き、周囲を制圧しながらそのコンテナに一気に駆け抜ける。

 

「なっ、あいつら!!」

どうやらそう簡単に制圧させてはもらえないらしく敵さんは、こちらが動いた瞬間、小型艇を走らせ始める。士郎は偽・螺旋剣(カラドボルグII)の照準を定めると

 

「まかせるにゅ!」

すぐ横から小さな結晶の塊が矢となって飛んでいき、見事小型艇の機関部を撃ち抜いた。飛んできた方向を見れば、そこには水色の長い髪に小さな青い髪止めレイ・マトリーナ・ローレライがいた。

「さすが」

「とっとと、制圧するにゅ」

「おう」

そういって、士郎は漂い始めた小型艇に跳び移る。同時に、着艇と共にサツキが操舵室をまっ二つに切り裂く。そして、中に突入する。それから、船室にあった鍵を頂戴し、コンテナのカギを開ける。

 

ギィィンッ…

コンテナの鍵が開かれコンテナの中身を確かめる。あったのは、ギターケースほどの大きさの箱だった。

「コンテナの中に箱、わざわざといったところだな」

周囲をサツキに見張らせながら、その箱の封印を解き、中身を確認しはじめる。

「――ッ!?」

中身を確認すると同時に、士郎は絶句する。

「(エミヤ、アルトリアすぐに来てくれ、聞きたいことがある)」

そういうとすぐさま士郎の隣に、エミヤとアルトリアが現れた。

「どうしましたか、士郎?」

「ちょっと、めんどくさいことになってな、これを見てくれ」

士郎は二人に箱の中身を見せる。すると、士郎同様、アルトリアとエミヤも驚いた顔になる。

「これは!?」

「そんな、まさか…!?」

士郎はまさかとは思い、サファイアさんに連絡をつなげる。

「サファイアさん――少し聞きたいことが」

『何かしら?』

「英国大英博物館に不審者が入ったという情報は?」

『不審者も何も1週間前、強盗によりツキノワグマとシーラカンスのはく製が盗まれたわ、それ以来蜂の巣をつついたように厳重警戒中よ』

大英博物館(アーセナル)――から」

『士郎、単刀直入に教えて頂戴、何があったの?』

禍の団(カオス・ブリゲード)の逃走部隊を補足殲滅――制圧した小型艇のコンテナから、霊装"カーテナ"と思わしきものを発見しました」

『"カーテナ"ですって!!?』

通信機の向こうから驚いた声がする。

「えぇ、形状からして、カーテナ、あるいは、そのレプリカと思わしきものです」

『わかったわ、状況が完全制圧できるまでその場に待機、いいわね』

「わかりました」

通信が終わり、その場で待機していると

 

「ちょっと、サツキどうしたの?」

沖合に停泊しているのが不審だと思ったのか、雪のように白い肌と青い瞳が綺麗な白金髪(プラチナブロンド)の美少女、アルビス・ウィンザー・クロイツェフが現れた。

「ん、これが見つかってな」

「これは…なんで、ここに!?」

カーテナを守護していたアルトリアが、アルビスに対して目礼をする。

「(知り合いか?)」

と考えていると、彼女はカーテナを手に取る。

「ちょ、おい」

「問題ないわよ、暴発するわけじゃないし」

腰に手を当てながら、軽々と振る彼女。まるで手に馴染んでいるようにだ。そんな中――

 

ギャオオオォオオォォンッ!!

突如、不快な叫び声と共に海を裂くようにして、クラーケンのような海魔が現れた。

「これまた、でっかい図体の奴だ」

「そうね、けど――ちょうどいいわ」

彼女はカーテナを構え

神器(セイクリッドギア)――暁の聖城塞(セイント・キャッスル)!!」

彼女の身体が光だし、一瞬にしてドレスと重厚な鎧が合わさったものに身を包む。その手には、黄金色に光るカーテナ。まるで、姫騎士のような姿だ。

「(おいおい、マジかよ…王族関係者か!?)」

士郎は、唖然とした顔で彼女の方を見る。

「ま、見てなさい――」

そういうと、一気に飛び出していく。彼女の通った後には黄金色の粒子。そして、カーテナがより一層黄金色に光りだすと

「――聖者の一撃(ライト・ギャリバー)!」

約束された勝利の剣(エクスカリバー)に極めて近い光の斬撃が海魔の身体をたやすく切り裂いた。

 

 

『敵部隊殲滅を確認、状況終了――みんな上がっていいわよ』

サファイアさんの状況終了の言葉に少し安堵する士郎であった。

 

 

 

 

帰り道――

 

仕事が終わると、ちょうど日の昇る時間だった。夜と朝が交わる時間の中、朝靄の川沿いを二人は、歩いていた。

周囲には人通りは無く、この川沿いにいるのは、二人だけだ。あたりを静寂が支配している。

 

「――久しぶりだね」

先に口を開いたのはサツキだった。

「あぁ、久しぶりだな、サツキも健康そうでなによりだ」

「士郎も、元気そうでなによりだよ、それで、士郎は今どこに住んでいるの?」

「駒王さ、ちなみに学校は駒王学園な」

「へぇ、駒王か、上手くやれている?」

「まぁ、上手くやれているさ」

「よかった」

ニコリと笑うサツキ。

「そういえば、士郎の家って、新築の家なんでしょ、うらやましいな」

「そりゃ、まぁ、新しいほうだからな」

そう士郎の家は築2年の新しいほうの家だ。そんな中、サツキはいきなり士郎の前に出て手を合わせて、申し訳なさそうに頭を下げてこういった。

「ごめん、士郎!士郎の家に住まわせて!」

「えっ…?えっ?えぇぇえええええええ!?」

早朝の川沿いに士郎の驚いた声が轟いた。どうやら話を聞くと、親元を離れ独り暮らしのために物件を借りているのだが、あまりいいアパートではなく、それに加え、水道もたまに止まったりする所謂おんぼろアパートらしく、若干うんざりしていたらしい。

それで、渡りに船といったところに士郎と出会ったということらしい。

 

「そういうことね」

理由を聞いて納得する士郎。

「そうなのよ、ごめんね?」

「気にしないよ、あのころと一緒だろ?」

「そうね」

それから、士郎は自分の家に足を向けた。こうしてまさかの同棲生活が始まるのであった。

 

 

 

 

丹羽邸宅

 

「ここだよ」

「えっ、ここって――」

「昔とほとんど変わらないっていうのがコンセプトさ」

「ふぅーん」

「遠慮すんな、入れ」

「お邪魔しまーす」

「「………」」

二人とも中に入る。あいかわらず家は静かだ。といっても、誰もいないのだから無理もない。しかし、相変わらずサツキは妙に緊張している。

「ただ、泊りに来たって感じでいいよ、やましいことなんてしてないんだから堂々としていろ」

「う、うん」

「とりあえず、サツキはソファーで寛いでな」

「ありがと」

士郎は私室に戻り、部屋着に着替え終わり、バスタオルなどを持ってリビングに降りる。すると、タイマー通りお風呂が沸いていたみたいだ。

「サツキ、先に風呂いっていいぞ」

「あっ、でも」

「気にすんなって――ほれ、バスタオルと着替えだ」

士郎は、サツキにふかふかのバスタオルを渡す。

「じゃあ、使わせてもらうわね」

「ごゆっくり」

なぜか、顔を真っ赤にしながらお風呂場に向かっていくサツキであった。

 

『ふぃ~いい湯だ~』

と猫撫で声を風呂場で上げるサツキ。その間にゲストルームの掃除を終わらせる。それから、お風呂上りで士郎の渡した服を特にためらうことなく着ているサツキ。そして、風呂入ったことにより、心が大きくなったからなのか、寛ぎ始める。

 

「ふへぇ~ふかふかだぁ~」

クッションを抱えながら、ソファーに寝っ転がりながら言うサツキ。その顔が彼女が寛いでいることを物語っている。

「ほれ、緑茶だ」

「ありがとう」

ゆっくりと二人の間の時間が流れる。

「――士郎、ここで寝ていい?」

「眠いのか?」

「うん、疲れてね」

「ゲストルーム、貸すからそこで寝な」

「あるの?」

「まぁな」

そういうと、彼女を8畳ベット付きのゲストルームに案内する。

 

「今日からここを使いな」

「ここ!?」

あまりの広さに驚いているみたいだ。と言っても、一人暮らしをするのに十分な広さだ。

「狭いか?」

「いんや、かなり広いから驚いている」

「そうか」

そういうと、部屋のベットに寝そべるサツキ。そして、布団を被ると

「士郎~」

「ん、なんだ?」

「なんか、抱き枕みたいなものない?」

「ないな――(そういや、コイツ抱き付き癖があったな)」

と過去を思い出す。映るのは、いっつも大きなぬいぐるみを抱えて寝ている彼女の姿。

「そう・・・なら、こっちに来て」

「ん?」

士郎は、椅子をもってそっち行こうとするが

「椅子なんていらないよ、ほらほら」

と言ってくるので、士郎は立ったまま駆け寄ると

「えいっ!」

突如、体勢を崩され士郎は彼女の寝ているベットに倒れこむ。

「ちょ――サツキ!?」

こちらに考える時間も与えずに、サツキは士郎を抱きしめてくる。

「なければ士郎が抱き枕なんだよ」

「えっ…」

そういうと、すぐさま寝息を立て始める彼女。そして、安心しきった寝顔でぐっすり寝始める。

「(まぁ、信頼されているってことか――)」

同棲初日にしては、中々過激な一日目となったのであった。士郎も、彼女のことを多少気にしつつ瞳を瞑った。相変らず背中の感覚は刺激的なものであった。

 

ライザー・フェニックスとの決戦三日前。

 

深夜:駒王学園旧校舎屋上

 

決戦の前ということもあって面々の特訓により一層力が入る中、士郎は部長に呼ばれて屋上に向かってた。

「(話ってなんだろうな?)」

『(さぁな、本人に聞けばわかるじゃろ)』

「(ま、正論だな)」

『(とはいえ、いやな気配がするがな)』

「(いやな気配――これまた珍しい)」

『(こういう身になればいやでもわかるもんなのじゃよ)』

「(そういうもんかね)」

とジルニトラと言葉を交わしながら士郎は、屋上の扉を開けて、屋上に出る。

すると、そこには、部長のほかに、グレイフィアさんがかなり重たい表情でいた。

「お疲れ様です、部長――どうしましたか?」

「よく来てくれたわ、大事な話があるのよ」

「大事な話ですか――それでその大事な話とは?」

士郎が聞くと、部長はその重たい口を開けて言った。

 

 

「あなたの、ライザー戦への参加が取り消されたわ」

 

 

「なにッ!?」

士郎は、余りのことに驚くしかなかった。そんな士郎を後目に、グレイフィアさんが一歩前に出て説明を始めてくる。

「本来なら、眷属全員の参加だったのですが、丹羽様が行ったさきのレーティング・ゲームにより、一人でライザー様を制圧してしまったということから、グレモリー家、およびフェニックス家の両代表は、ゲーム不成立という結論に至りました、これでは、一方的なことになってしまい、後味が悪いと――」

「待ってください、レーティングゲームで決着をつけるという約束であの試合だけで、いきなりの眷属使用制限とは、それは、挑戦してきた相手が勝てないからハンデをくれといっているようじゃないですか――それに、ライザーはまともな試合、いや全力の試合をするために10日間のハンデを渡してきた、ってことは、優位性があるのはあちら――たかが一回の試合で優位性が変わったからと言ってそれは筋が通りませんよね?」

言葉を遮って正論を述べる士郎。その言葉を受けて、気まずそうな顔をするグレイフィアと部長。それを気にせず、士郎は言葉をつづける。

「確かに、あの試合はお遊びで片づけられるレベルじゃなかった、それをふまえると、つまり、ライザーのいやフェニックス家の強さを誇示するような試合を代表側は、求めている、ということだな?」

「「――ッ!?」」

「馬鹿馬鹿しい――とはいえ、これは、当事者同士の意向で決着をつけるのがいいだろう」

本音を見抜かれ、面々に緊張が走る。しかし、態度を軟化させる士郎。

「いいのですか?」

「いいもなにも、これは、フェニックス家への貸しだ――万が一のことがあったらその場で俺がやる、どっちにしろ、結婚はできない、それだけですよ」

そういうと、何も言わずその場を立ち去るのであった。その後姿を申し訳なさそうに見るリアスであった。そして、決戦当日を迎えたのであった。

 


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