ハイスクールD×D/Re:Zext Night 作:有栖川アリシア
士郎は特に走る様子もなく、校舎に向かう。ゆったりとした足で校舎の正面から堂々と侵入し、廊下を歩き、屋上を目指す。
屋上の扉が見えてきた。士郎はその扉を躊躇う事もなく蹴破り屋上に出る。
屋上も先ほどの攻撃の余波で途中から消えていた。
「来たか、丹羽士郎」
「名前を覚えてもらって光栄だ――チェックメイトだ
「……ふざけるな、こっちもフェニックスの看板を背負っているんだ――安々と
豪炎を纏い威嚇してくるライザー。
「交渉決裂だ――」
対する士郎は、その身に黒い魔力を身に纏う。ライザーは、お構いなしに豪炎で殴りかかる。鋭い拳だ。だが、怪力のスキルを行使して、あっさりと相殺する。
「なにっ!?」
相殺されたことに驚くライザー。だが、ここで終わる士郎ではない。しかし、士郎はライザーにわざと攻撃の隙をつくり、攻撃させる。
「クソッ!!なんで!?」
悪態をつきながらも炎弾を飛ばしたり、殴ってきたりなどその攻撃の手数は多い。しかし、その全てが相殺或いは、よけられる。
「――もう一度警告するぞ、
「ふざけるな、これ以上他の場所で見ている人達に、格好がつかないんだよ!!」
「そうか――なら、その格好、壊してやろう…」
「
士郎の後方の空間が歪みだし、中から
「っ!」
剣を振り上げ、ライザーを宙に浮かせる。そして、雷を三回浴びせてから、剣で地面に叩きつける。止めと言わんばかりに剣を突き立てようとするが、間一髪のところでライザーが手から炎を噴射させ、回避する。
ズドンッ!!
士郎は、そこめがけて、空中から閃光を落として攻撃する。
「このやろう!!」
閃光を避けるライザー。そして、士郎に殴りかかってくるが、それでも攻撃は通らない。先ほどと同じように炎弾を放つが――
「――なに!?」
士郎の
「――秘剣・燕返し!」
三つの異なる剣筋が同時に(わずかな時間差もなく、完全に同一の時間に)ライザーを襲い、完全に首を跳ね飛ばす。
――が、すぐにそれが再生される。
「やはり、
「このやろう!!」
豪炎を撒き散らすライザーを身一つで交わし、
「
クー・フーリンが師匠スカサハから授かった魔槍をカウンターキックで地面に倒れ込んだライザーの眉間に突き立てる。
パアッン!
炸裂音と共にライザーの頭が吹き飛ぶ。消し飛んだ部分から炎が消し飛び、形を形成していく、炎が次第に顔となり髪となり、ライザーの頭部は下の状態に戻った直後
パアッン!
再びの炸裂音と共にライザーの頭が吹き飛んだなぜ、こうなるかお分かりだろうか、簡単なことでライザーは動けなく、その上、ちょうどライザーの頭部を貫くように
こうしている間にもライザーの頭はまた一回また一回と吹き飛んでいく
士郎は、その場でただ見ている。その目はどことなく冷徹な目をしていた。その頃、観覧席はというと
観覧席――
「あいかわらず、容赦ないわね」
リアス部長がモニターを見ながらそうつぶやいた
「えぇ、容赦ないですわ」
後ろではイッセーにしがみつくようにアーシアが見ていた
「戦術無視の徹底排除、士郎君の
木場が心配そうな目線でモニターを見る。そんな中、部長であるリアスは、後方を一旦みると、そこには沈んた面持ちのイッセー
「どうしたの、イッセー、随分顔色が悪いけど」
「いや、そんなことはないですよ」
「少なくとも、いつもっていうわけじゃないけど?
予想したであろう答えにあまり否定のない言葉で返す。
「チョッと、恐ろしさを感じたんですよ」
「恐ろしさ?」
聞き返すリアス。
「えぇ、俺たちとは違う場数を踏んでいる――それで少し自信がないんですよ」
「場数ねぇ、踏めばなんとかなるわよ」
「そうですが、なんていうのか…士郎は――俺が言うのもなんですが、あれは殺ってます」
「ヤってる…ねぇ」
「殺人というより、実戦ってことかしら?」
「えぇ、知り合いにアメリカ帰りの軍人がいたんですけど、雰囲気が、こう殺気の質が違う――そのアーシアの時知っていますか?」
「えぇ」
「――実はあの時、自分と木場と小猫ちゃんは、あいつの本性を見た気がします」
「本性?」
「俺の感覚でさえも、何倍もの濃密な殺気をコートでも着込むように身に纏っていました、なんで士郎が高校生をやっているのかが不思議なくらいです」
「経験イコール年齢ってわけじゃないってことかしらね?」
再びモニターを眺めるリアス。視線の先には、炸裂音とともにライザーの頭が何度も炸裂する映像が壊れたテレビのように流れていた。
「っ!!」
ズバァンッ!!
ライザーの右腕が跳ね飛ばされる。ライザーは一方的な負け戦を強いられていた。
無理もない、『
士郎も加えた7人の一体波状攻撃に為すすべもない。
ディルムッドとクーフーリンの槍術を辛うじて避け切るが、背後から襲いかかるガウェインとアルトリアの無慈悲な剣戟。それを何とかしても、エミヤとメディアの中遠距離爆撃が待っており、そこに士郎の全距離が合わさる。全距離に対応した攻撃により、刻一刻とライザーのその身の炎が小さくなっていく。だが、攻撃の手は止まずに、士郎は剣を片手に果敢に攻め立てる。そして、ライザーと距離を取り――
「チェックメイトだ――
再び、同じような言葉とともに士郎の後方の空間が歪みだし、一本の剣が現れる。
「「――っ!?」」
ライザーとレイヴェルの二人は、その剣を目にした途端、直感で底しえぬ恐怖に襲われる。それが二人の表情にでる。
士郎が取り出したのは、メソポタミア神話における神の名を冠した剣――乖離剣エアだ。
天地開闢以前、星があらゆる生命の存在を許さなかった原初の姿で地獄そのものだ。それは語り継がれる記憶には無いが、遺伝子に刻まれているものが、二人を恐怖させているのだ。
本能的恐怖により、ライザーの動きが鈍る、いや止まる。
「――祈れ、せめて命あることを」
乖離剣の刀身が回り始め、士郎の赤い魔力が一気に臨界まで凝縮される。
「――
士郎が振りかぶると同時に、無銘にして究極の剣から放たれる空間切断攻撃が、文字通りライザーを貫いた。
士郎の攻撃の余波だけで、レーティングゲームの空間がひび割れていき、破壊されていく。
『ライザー様、戦闘不能―これにより、丹羽公爵の勝利です』
消えかかる空間の中、ライザー陣営にとっても無情なアナウンスが流れた。