ハイスクールD×D/Re:Zext Night 作:有栖川アリシア
暫くして、森の中を歩いていると士郎の千里眼と気配感知のスキルが敵を捉える。どうやら、動きからして相手は気配を消しているつもりだが、士郎にとっては、バレバレだった。最大限の警戒しながら、士郎は、野球部のグラウンドに出て行く。
「――現れたか」
士郎の視線の先には、甲冑を装備した女性が堂々と立っている。
「豪胆なその態度は、尊敬してやる――俺は、リアス・グレモリーの眷属『兵士』丹羽士郎、貴様は誰だ?」
「私は、ライザー様に仕える『
と剣を構えてくる。そんな中――
ザッザッザッ――
後ろの茂みから、凛とした空気を纏った、金髪の髪を後ろで結い上げ、青と銀の甲冑を着た見目麗しい少女剣士が現れた。その手に握られているのは、剣身のない柄だけの剣だ。
「その清澄な闘気・・・
「その通り――そういうお前も
「いかにも、我が名は、カーラマイン――貴様は?」
「アルトリアだ」
お互いの名乗りが終り、緊張した空気が流れる。
「『騎士』同士の戦い―待ち望んでいました。手加減は無用です。では、死力を尽くして始めましょうか!」
「それは、私もだ」
「それでは・・・いざ」
カーラマインが構えを取る。アルトリアもまた魔力をほとばしらせる。
「どう出るかわからない、気をつけてくれ――アルトリア、この俺に勝利を」
「はい、必ずや」
そして、カーラマインが踊るように斬撃を繰り出した。火花を散らし、剣と剣がぶつかり合う。おたがいの動きが神速の域まで到達する。目では追いきれない剣戟 二人とも高速で消えたり、つばぜり合いで現れたりの繰り返しだ。
士郎は、アルトリアにこの場を預け、グラウンドから離脱する。
それから、林の中を歩いていると
「ヒマそうだな」
「ヒマじゃないよ、これからチェックメイトをかけに行くところさ」
振り返ると顔半分にだけ仮面をつけた女性がいた。その後ろには、西欧のお姫様みたなドレスを着た、頭の両側に縦ロールをした、お嬢様って感じの少女がいた。
「あなたが、丹羽士郎?」
「そうだ、それがどうした?」
士郎は問答無用で構えると
「私、あなたのお相手はしませんわよ、イザベラ、あなたがお相手してあげたら?」
イザベラと呼ばれた仮面の女性が一歩前に出てくる。ドレスを着た女の子は、その場から一歩身を退いて離れた場所からこちらを見守り出す。
「お互い手持ち無沙汰なら戦い合おう」
「いいだろう」
そういうと、士郎は構える。すると――
ゴワァァァアアアアアア!!
ものすごい熱波が叩きつけられる。士郎は間一髪のところで
「カーラマインめ、味方が近くにいることを忘れいてるのか!」
苦々しい顔をするイザベラ。そして、地面から、黄金色のこと霊のようなものが現れる。
「っ!?」
士郎の直感スキルがこの場にいてはならないと告げる。
「――まさか!?」
直後、熱風と巨大な光の帯が黄金のフレアとなって空を貫いた。その余波を
ゴオオォオオオォォンッ!!
その余波は、防御していなかったイザベラを容赦なく吹き飛ばす。士郎の直線の真後ろにいたツインテールの彼女は、すぐさま士郎の近づき、その余波を受けなかった。
「―― 一体…なんなのですの?」
周囲一体の景色は、黄金のフレアで一変していた。先程まで森林の静かな冷たさはもうそこになく、あるのは暴力的な熱だけだ。
「(アルトリア――確かに、任せたが…ここで対城宝具を使うとはな――)」
あたりには瓦礫が散乱している。
「おい、あんた大丈夫か?」
「状況は最悪ですわ――」
「うちの『騎士』がド派手なことをやったらしいな……」
「随分とド派手なのですわね」
「まぁな、あいつも本気だったって――あるいは、尊敬の意を表してなのかってところか」
がれきをどかして歩き出す。
「ついて行っていいかしら?」
「無論だ、ただし、自分の身は自分で守れ」
校舎の方を見ていると、あの新校舎の3分の2が消し飛んでいた。それから、士郎は彼女を後ろにして歩いていく。それから、ギリギリ残った、校舎の一角に肩を下ろす。熱気も収まり、水も出たのでそれで喉を潤す。
「随分と、余裕なのですね」
「戦場においては、攻撃も防御も然ることながら、補給も重要なモノの一つだ、疎かにしてはならないから」
敵の真正面で補給を行う士郎。
「そういえば、あんた名前はなんなんだ?」
「私の名前は、レイヴェル・フェニックスですわ、よろしく」
「レイヴェル・フェニックス、ってことは、ライザーの従姉妹といったところかな?」
「お兄様とは、兄妹の関係ですわ」
「そうか」
と話しながらも肩を休めている。
「それにしても、あなたの眷属は実力だけみれば尻込みしてしまうような方々ばかりですわ、けれど、あなた方の相手は『不死鳥』です、どんなに絶対の力を持っていても不死身が相手ではどうしようもありませんわよ?」
「確かに、相手はフェニックスだけあって、不死身だな――とはいえ、精神がやられるまで何度も倒す、あるいは神クラスの力で一撃必殺っていうのがあるだろ」
「――そこまで知ってて、どうして・・・まさか?」
「どうやら、ただのお嬢様っていうわけじゃなさそうだな――そのとおりだ、俺の武器の中には神クラスの一撃を秘めたものもある」
そして、士郎の目が変化し濃密な殺意をまとったようになる。
「どちらにしろ、ライザー・フェニックスにはここで死んでもらう」
「えっ・・・?」
その一瞬の言葉に耳を疑うレイヴェル。何とも言えない奥底の恐怖を孕みながら、レイヴェルは、士郎の後をついていき、新校舎の屋上――ライザーのいるところに向かった。