ハイスクールD×D/Re:Zext Night 作:有栖川アリシア
第一話 空の下
日本――某所
「(せっかくのGWってのに…ったく、用事がてら行ってみたら、まさかこうなるとはな)」
強い日差しが照りつける中、黒の服を着た長髪の少年は、国道151号線である遠州街道を進路を北方向に向かって歩いてた。通りには、民家もなく電話ボックスもない、おまけに携帯電話も不通だ。
太陽からの放射熱によりアスファルトが焦げ、熱さと不快さが刻々と高まる。
じっとりと汗が嫌に不快だ。たまに通る軽トラックのおっちゃんが哀れんだ目で見てくるが、それがさらにイラつかせるが、特に気にせず歩いていく。
それから、歩いていくと交通標識が現れる。
「(阿南町までそこそこか――)」
と常人なら絶望的な距離をただひたすらあるていく。その手には一本のペットボトル。その中には水が入っている。
それを一口のみ、再び歩く。無論、気を紛らわす音楽などはなく。ただ、耳元には蝉の声。そんな中
『にしても、親御に呼ばれてアメリカの次は、山の中とはな――全く退屈せんな』
「まぁ、俺も退屈していないし、高校生らしかぬ生活を謳歌してるといったところさ」
と誰もいない道をひとり譫言のように話しながら歩いていく。といってもうわごとではない。そう、自分の"体の中にいるやつ"と話しかけているのだ。
『にしても、なぜお主力を使わん、こっからひとっ飛びじゃぞ?』
「いいんだよ、目立つのはあんまりな――しかも、こんな辺鄙な田舎で"空飛ぶ人間"でも見つかったら気味が悪いだろ」
『まぁ、じゃろうな――ところで士郎、
「せっかく四季豊かな日本なんだ――使う必要ないよ」
というと、森の谷間から涼しげな風が吹いてくる。
『ま、そうじゃな――』
再び照りつける太陽によって熱されたアスファルトの上を歩いていく。
「(学校までに戻れるかな……)」
と空を見上げると、そこには雲ひとつない青空。遠い学園の事などを思いながら再び歩き出した。
某日:駒王学園――
「(ったく、長野から帰って来たっつうのに、現実は残酷なこった)」
と気怠そうな顔をしながら歩く少年。風が吹くたんびにその長い髪が揺れる。しかし、相変わらず髪の毛はボサボサで手入れしていないのが目に見える。かといって本人自身も手入れする気にはならない。
少年の名前は丹羽士郎。
「(にしても、相変わらず俺は目立つもんだな)」
と色々と噂の絶えない旧校舎の方に
今回は、どうも裏をかけたらしく人影を捉えることができた。とはいえ、本人自身虎の子を得るために虎の巣に入る技量はないので、様子見にしておこうと決める。
「(ま、いっか)」
と気だるい体を引きずりながら自分の教室に向かう。相変わらず、この学園はもと女子高だけであったのか女子の方が多く、二年生の男女比率は3:7と、どこぞのハーレム状態になっているが、そんなことを鬱陶しく思いながら教室に入る。
教室に入り、机にすぐに突っ伏すと、クラスの声が聞こえてきた。
「よー心の友よ、貸したDVDはどうだった?エロかっただろ?」
とここは一体どこなんだ、動物園なのかと思いながら限りあるエネルギーで瞳を開くと、視界には、丸刈り頭のクラスメイト松田と龍をかたどったような形をした茶髪にブレザーとワイシャツを全開にしており、赤色のTシャツがトレードマークの兵藤一誠とメガネの元浜が視界に入った。
「ふっ、今朝は風が強かったからな、おかげで朝から女子高生のパンチラが拝めたぜ」
と相変わらずわけのわからない話題で盛り上がっている三人組
「(朝っぱらから元気だな三馬鹿トリオも)」
そして、耳をすませば遠くから"きゃーきばきゅーん"などと黄色い声が聞こえてくる。そんな賑やかな声とともに、士郎は瞳を閉じてゆっくりと寝始めた。