「すいません。悪ふざけがすぎました。」
司波兄だ。今まで静観を貫いていた兄は生徒会長と風紀委員長の前にでる
悪ふざけという言葉から、この状況を有耶無耶にする腹らしい
「わるふざけ…」
しかし風紀委員長は納得がいかないようで、しかめっ面で返す
「はい。森崎一門のクイックドローは有名ですから、後学のため見せてもらだけのつもりだったんですが、あまりにも真に迫っていたので思わず手が出てしまいました」
「っ」
あまりにも白々しく嘘を言う司波兄、それもかなり強引で無茶がある言い分だ。でも、その言葉を聞きそれまで俯いていた森本が顔を向ける
その顔は、先ほどまでの青白く絶望した顔より若干だが、色を戻した印象を受ける
つか、森崎って誰?…え、もしかしてこいつ森本…じゃなくて森崎っていうの?
どこか場違いな驚愕の事実に唖然とする八幡を尻目に話は続き、司波妹も兄に加勢する形で謝罪をし最終的に
「もういいじゃない摩利?達也君本当にただの見学だったのよね」
「生徒同士で教え合うのはかまいませんが、魔法の行使には細かな制限があります。魔法の発動を伴う自習活動は控えたほうがいいでしょうね」
会長が占め、それに続き風紀委員長も
「…会長がこう仰せられることでもあるし、今回は不問にします。以後このような事がないように」
どうやら見逃してくれる様子だ、まあこのままじゃ帰るのも遅くなるしなによりだ
最後に風紀委員長と司波兄が名前を聞いて覚えておこうみたいな会話をしていたが、なんかかっこいいな
その後会長たちは校舎のほうへ、戻り一科生の奴らも各自帰宅するようだ、
そんななか、森…森崎は司波兄を呼び止め
「‥‥ありがとう。お前のおかげで助かった」
と、頭を軽く下げた
先ほどまで、緊張した面持ちだったこいつも今はどこか安心したような顔で素直に礼を述べる
それを聞いた周りは、あまりの態度の急変に驚きの表情をしたが、とうの司波兄はいつも通りに
「別にお前のためにじゃない。気にするな」
俺でも驚いたのに、こいつはクールだな。クールというかどちらかというと、無関心のような印象を持てる。本人的には森崎を助けるつもりもなく、どちらかというと俺と同じで面倒とか時間がかかるとかの理由でやった行動のように見える。
しかし、森崎本人はというと
「僕の名前は森崎 峻。森崎の本家に連なる者だ。どんな思惑があるにせよ受けた恩は必ず返す。司波 達也なにかあったら相談してくれ力になる」
随分と律儀な奴だな。まあ あいつの今さっきまで、家やあいつ本人も少なかれず、ピンチでありそれから救ってくれた司波兄はまさに恩人ということだろう
そうして、その場を後にする森崎達
残ったのは司波グループと雫たち、そんで俺だ
ここで雫たちと俺をわけたのはあくまで俺と雫たちは同じグループではないということだ。
なんせ俺はボッチだからな
さてとボッチの俺も帰るとするか。こんな状況だし一緒に帰ると空気でもないだろうしな
「あの‥比企谷さん」
俺を呼び止めたのは柴田だ。
なんか用なの?そんな上目で見られるとドキドキしちゃうんだけど
「先ほどはかばっていただきありがとうございました。おかげで大事にならずに済みました」
「ああ…別に。それに俺がしゃしゃりでなくても、エリカとかが何とかしただろ。こっちこそ悪かったな。余計なお世話しちまって」
「そんな!余計なんかじゃありません。比企谷さんが森崎君を止めてくれて本当に助かりました」
「そうだぜ。感謝されてるんだから、素直に受け取ってけよ」
柴田に続いてレオも俺に声をかける
つーか、肩組むのやめてくれない。友達だと勘違いしそうになるじゃん
しかし、感謝か…ここ数年感謝なんてされたこと小町以外になかったことで、どうすればいいか分からないんだよな‥‥
「…そんじゃそうするわ。で、そろそろ帰りたいんだけど離してくんない」
「おいおいつめてーな。なんならこの後、一緒に帰らないか?」
なんなのこいつは?俺の友達かなんかか!
フレンドリーすぎるだろ…これがリア充のコミュ力ってやつなのか
だが、生憎だがそんなコミュ力も、ボッチを極めすぎてプロボッチへ進化を遂げた俺には屁でもない
…進化じゃなくて退化のような気もするが、気のせいだなうん
「この後、予定あるし帰る方向違うんで」
予定があると言えば、いけなくて残念感を出しなおかつ、向こう側もしつこく誘うことは謀れる。その上変える方向が別ということで、今後も誘われる可能性は極端に下がる
これぞ俺がプロボッチとして培ってきた経験に基づき
「八幡さっき暇だって言ってたよね?」
雫さん!?
心の中で口上を言ってる途中、俺の言葉に反応して雫が疑問をかける
つか、そんな事言ったけ?
「ああ…そ、そうだっけかー雫の気のせいじゃ」
「帰る時教室で話してた時」
『はあー…帰って早く昼寝してー』
どうやら、雫は俺の独り言を聞いていたようだ
つかなんで聞いてるの?席とか割と離れてたよな俺ら
「それに、駅まで同じ方向だよ」
止めの一撃と言わんばかりに、補足を付け加える
事実、この学校に通う生徒のほとんどは駅から通学してくる
一校に入学するということで千葉にある家から通いやすいアパートに移り住み、一人暮らしをしている俺も、駅から通学している
ここにきて、俺の言ったことは全否定され打開策を練る時間もない
「‥‥お供します」
つまり、ここは黙って従うしかないのである。
くっ!まんまとリア充の罠にはまってしまった八幡の運命やいかに!?
つーか、光井はともかく雫は何でそんなに嬉しそうなの?
あと、そのドヤ顔やめてくんない?
その後、俺と司波一行は駅前にある某有名チェーン店にて、飲み物を購入し店外スペースにて腰を下ろしていた。
一緒に帰るって一緒に買い食いとかすることなわけ
普通に駅までついたら解散するんじゃないの?
リア充について、俺は得意の観察眼ヒッキーアイをつか奴らの、学校での生態は大方把握している。
なんせ人のコミュニケーションとは3割が言語、それ以外の7割は仕草や目の動きといったことから情報を集める。つまり、いかにボッチでも相手を見てさえいれば大体のことはわかるということだ。
だが、それは逆説的に言えば見ていなければ何も分からないということに他ならない
人知れず教室を後にし。誰にもきずかれることなくつーかきずかれないように最大限の注意を払い下校する俺にとり、リア充どもが何をするかなんて知る余地がないのである。
「じゃあ深雪さんのCADを調整しているのは、達也さんなんですか」
「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」
光井はいつの間にか、憧れの司波妹と仲良くなり兄の方は名前で呼んでいるレベルだ。
本当こいつら皆、リア充だよな。なんでこんな短時間で仲良くなれるわけ?司波グループに光井を加えた先頭集団は、和気あいあいと話をしている。
内容と言えば、大方が司波兄妹の話であり総合すると
妹のCADを兄が調整(普通はプロの業者任せ)
兄はCADの知識が豊富(パソコンを部品から組み立てるレベルのハイクオリティ)
みたいな感じだ
そんで、俺はというとその輪に入れず一人コーヒーを啜っている。
残念なことにMAXコーヒーがなかったので備え付けの甘味を一通り吟味した八幡ブレンドを制作。うん甘い。ひたすら甘くだが、そこがいいむしろいい
でもやっぱMAXコーヒーの方がいいな。小町に頼んで2ケースくらい送ってもらうか…それとも練乳を購入するかだな
と、一人好みのコーヒーについて考えている俺に周りの目が集まっていることにきずく
ボッチにとり、こういう人の視線は毒と同じであり見つめすぎると最悪命の危険すらある行為だ。よい子の皆はボッチを見つけてもじっくり見ちゃいけないよ
一定の距離を置き、最低限の会話しかせず、話すときは目を見てはいけない…あれ?これただの虐めじゃね
って今はこんな事考えてる場合じゃないな。それになんか泣きそうになるし
「…えっと、なに?」
「だーかーらー、なんでさっき私がなんかするのが分かったのか聞いてるの!」
どうやら何かを質問されていたようだ、気が付かんかった
あとさっきてなんだ?話についていけないんだが…
状況が分かっても何を答えていいかわからず、戸惑っている俺に隣に座っている雫が助け船を出した
「森崎君達との事、美月にお礼言われた時エリカがどうにかするとか言ってた」
「ああ。あれか」
「聞かれてるのに八幡、変な顔で笑ってた」
「というか、気持ち悪い顔してたわよ」
「おい、エリカ気持ち悪いってなんだよ」
まったく失礼な、俺別にそんな顔してねーだろちょっと、MAXコーヒーの事や小町の事にそれから小町の事考えてただけで‥‥してたかもな。そんな顔
「で、なんでなのよ?」
「いやだって、あん時お前なんか棒っぽいの構えてただろ。詳しくは知らんがCADだろ」
「…へーこれがCADだって分かるなんてすごいじゃん」
懐から黒い棒状のCADを取りだし、警棒のように収納されているものを伸ばす
「よく知らんがあんま見たことない形だな」
「まあね、これ刻印型の術式処理がされてるのよ」
「刻印型…?」
確か刻印型って術式を幾何学紋様化して、感応性の合金に刻み、サイオンを注入することで発動するやつだよな
簡単に言えば、サイオンでスイッチを入れる懐中電灯みたいなものか
「そうよ、だから柄以外は全部空洞なの」
「てことはサイオンを注入し続けるってことだろよくガス欠にならねーな」
「振出と打ち込みの瞬間だけサイオンを流せば、そんなに消耗しないは兜割の原理と同じよ」
さも当然のようにいうエリカに周りも唖然と息をのむ、確か兜割って奥義とか秘伝とかに分類される奴だよな
ゲームとじゃそこそこ上の必殺技でよくあるし
「エリカ兜割って秘伝とか奥義とかに分類される技術だと思うのだけれど、サイオン量が多いよりよほどすごいわよ」
周りの反応を変に思っていたエリカに司波妹が、説明をする。
剣術とか詳しくないが、やはり兜割とは相当すごい物らしい。
「もしかして、内の高校って一般人の方が珍しいのかな」
単純に疑問に思ったのだろうか、柴田は小首を傾げそう呟く
そこに雫が答える。
「魔法科高校に一般人はいないと思う」
その言葉に周りもああっと声を上げる
魔法師事態、十分珍しい物でありその育成機関に通う生徒もまた一般人ではないということだろうが、
「いやいや、俺は一般人だから」
だって、ついこの間まで普通の友達がいないボッチで、数々のトラウマを抱えて目が腐っててシスコンの一般人だし俺。これ一般人か?
「そういえばまだ、比企谷に聞きたいことがあったんだが」
と、いきなり司波兄が話を振る。なんだいきなり?
「さっきの騒動の時、魔法を発動してただろ」
確かに、あの時俺も魔法を発動していた。だが、なぜそれをこいつが知っている
本来、魔法師はサイオンを音波や光線みたいな感じに知覚することができる。
だから、先ほどエリカが使おうとした刻印魔法などの例外を除けば、種類は無理でも発動したかどうかはわかる仕組みだ。
しかし、俺の使った魔法は特徴としてそういった知覚がしにくい筈だ。なので普通の魔法師には分からないはずなんだが…
「なんで、そんなこと分かんだ?」
「………俺は展開された起動式を読み取ることができるんだ」
「な!?」
起動式って確か、基礎単一のやつでもアルファベット3万字相当の情報量があるはずあるはずだぞ…まじか
「…達也さんその話さっきもしてたよ」
と、驚いている俺に雫が語りかける。
なんか話す前に間があったと思ったらそういうことかよ
聞いてなかった…まじか‥‥
「比企谷の魔法は発動したことはわかるんだが、見たこともない魔法式だったんでな、なにを発動したかまでは分からなかった。ただ、一瞬比企谷の姿を認識できなかったんだが」
一瞬この質問に答えるか迷ったが…まあ別にいいかと思い
できるだけ簡潔にところどころ伏せて説明する
流石に出会って数日の奴らに、自分の魔法の全容を教えるのは気が引けるし、俺自体まだあんまり魔法そのもになれてないということも起因する
「それであってる。俺の得意魔法は、人の認識を外す魔法だからな」
「認識を外す?…そりゃあつまり系統外魔法ってことか?」
レオは少し考え、自分の中で出した答えを俺に聞く
系統外魔法 は、物質的な事象ではなく精神的な事象を操作する魔法の総称であり、今の説明だけならそう思っても無理はないか
「いや違う。今のは俺の説明が悪かったな。俺の魔法は知覚的な認識を外すんだ」
「えっと…どういうことだ?」
どうやら分からなかったらしいな
だが、どう説明するべきか…先に言った通り俺自体この魔法を詳しく知らないしな‥‥
「つまり、精神的事象を操作するのではなく、視覚的に姿が見えなくなる又は、何らかの誘導でほかの場所や物に意識をそらす…ということか?」
どう説明したらいいかあぐねっていた俺に代わり司波兄が、説明する。
大体それであっている、これだけの説明でそこまでわかるってすごいなこいつ
ちなみに正解は後者の方が近く、魔法を発動しても俺の姿は消えない。簡単に言うと石ころ帽子みたいな魔法なのだ
「まあ、そんな感じだ。分類でいえば、系統魔法のいくつかを複合した複合魔法だな」
「ほーなるほどな‥‥ん、でも待てよ?その魔法って要は見えなくなるってだけだよな」
レオが何かを疑問に思ったようで話を続ける
つか、だけとか言うなよ。これでも俺の一番と得意な魔法だぞ
「それって、あの場面で必要か?」
「お前みたいなタイプだと不要かもしれんが、俺は生憎腕っぷしが強くないんでな。正面切っての勝負とか苦手なんだよ。それに、ああいう時は下手に制止するより思いがけない事をして驚かした方が、効果的なんだよ」
「なるほどな‥‥お前、以外と考えてるんだな」
「意外とってなんだ意外とって」
まるで、俺が普段なにも考えてないみたいじゃないか失礼な。
これでも色々と考えてるんだぞ、今晩のメニューとか小町の事とかあとは‥‥世界平和とか考えてるんだぞ!
次回、八幡のCADと魔法の詳しい説明が入ります
CADのご要望がありましたが、私の独断で決めさせていただきます。
ご要望内容が反映されなかった方へ、謝罪申し上げます