餓狼 MARK OF THE DRAGONS   作:悪霊さん

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早くもサブタイのネタが切れてきた。
そしてルビの振り方が分からず……


第8話 最近は

 魔王ハドラーの居城、地底魔城のその深部。地獄門の前で、少年と地獄の騎士が相対していた。

 少年カインは、闘気を集中させ防御力を上げた腕で、騎士の剣戟を防ぐ。騎士バルトスは、6本の腕から繰り出される巧みな剣術によって、カインを徐々に壁際へと追い詰めていく。

 二人が戦っているのを眺め、はやし立てる魔物達。その一匹の肩の上で騎士を応援する少年は、父の背中を眺め、その勇猛果敢な姿に心を躍らせる。

 魔物達は、カインが勝つの、いや絶対バルトス様だの、楽しげに結果を予想しあっている。

 

 この頃の地底魔城は平和である。

 

◇◇◇◇◇

 

「いやぁ、バルトスは強敵でしたね」

 

「よく言うわい、ワシの斬撃など一太刀もまともに浴びせられんかったぞ」

 

 今日もいつものように、ブルーメタルを入手しつつ、バルトスとの勝負を楽しんでいた。

最初の頃は、(素手で武器持ちの相手なんかできるか)と思っていたが、闘気を集中させれば割と簡単に素手で弾く事ができた。少し臆病すぎたんだろうか。

 

 初日こそ大量に襲いかかってきた魔物達だが、俺がバルトスに勝ってからは「バルトス様が負けるのに俺らが勝てるわけないな」と、諦めていた。始めて潜った日から一週間が経った今ではチャレンジ精神溢れる奴ぐらいしか挑んでこず、少々力量(レベル)が上がりづらい現状である。

 今ではすっかり賭けの対象とされてしまっているが、たまに油断した俺が負けているので、オッズは中々のバランスとなっている。

 

「父さん、カイン、おつかれさま!」

 

 少年――ヒュンケルがタオルを持って駆け寄ってきた。

ヒュンケルはバルトスが拾った人間の子供で、この地底魔城で暮らしている。バルトスに大層懐いていて、俺から見ても羨ましくなるぐらい仲のいい親子だ。

 人間の子供を育てていて大丈夫なのか、とハドラーに聞いた事があったが、ハドラーが言うには“優秀故に多少の我が儘や酔狂は大目に見ている”のだそうだ。聞けばバルトスは魔王軍最強の騎士だという。成程、それならば色々戦果もあるだろうしな。

 

 

「ありがとうよ、ヒュンケル」

 

「サンキュ、ヒュンケル」

 

 ヒュンケルの持ってきたタオルで二人揃って汗を拭く。バルトスは骨だけなのに、どこから汗が分泌されているのだろうか。

 

「それじゃ俺は、ハドラーに用事あるから行ってくる。どこにいる?」

 

「ハドラー様なら、闘技場でキラーマシンの修理をしておるぞ」

 

「またな、カイン」

 

 

 

 あの時キラーマシンと戦った闘技場まで歩いてくると、俺が倒したキラーマシンと、そこにしゃがみこんでいるハドラーが見えてきた。

 

「ようハドラー、調子はどうだい?」

 

「ヌ、カインか……ぼちぼち、と言いたい所だがな、お前に倒されたキラーマシンの修理が一向に進まん」

 

 目を向けると、確かにモノアイは潰れているし、足も一本折れたまま、ついでに装甲も明らかに足りない。

 やり過ぎたか、いやいや命の危機だったのだから、とわけのわからない自問自答をしていると、ハドラーが溜息を吐いた。

 

「ダメだな、廃棄するしかないな……」

 

「直せないのか?」

 

「これ一台作るのにも相当な手間だったのだ、コイツを諦めた方が早い」

 

 理屈は分かるんだが、それはそれでなんとなく気に入らない。

何より、こんな素晴らしいマシンを諦めるというのも、俺は好ましくなかった。

 考えてもみて欲しい、改造すれば中に乗る事もできそうだ。この四足に手を加えてホバー移動できるようにすれば、川ぐらいなら渡れるだろうし、出力を上げれば乗りこんで大陸間を移動できるかもしれない。長旅の時には食料を積み込めるようにしたり、夜には安全な内部で睡眠を取れる。

 ざっと考えただけでもこれほどの可能性があるのだ、惜しいに決まっている。

故に、俺が取る行動は一つ。

 

「コイツ、もし俺が直せたら譲ってくれないか?」

 

 ハドラーは目を丸くし、ついで爆笑した。

 

「ハハッ!このオレに直せないのにキサマのようなガキが修復できるものか!よかろう、もし完全に直せたのなら、この一台くれてやる。到底無理だろうがな、ハーッハッハッハ!」

 

 ちょろい。

ともかく、ハドラーの許可を取った俺は早速修理に取り掛かった。時間はかかるだろうが、どうせブルーメタルはまだ集まりきっていないのだ、毎日バルトスや魔物、それにハドラーと戦って経験を積みつつ、少しづつ修理すればいいだけのことだ。

そう考え、ハドラーに詳しい事を訊きながら修理を始めた……。

 


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