「やだ、断る」
と、ハドラーの勧誘を一蹴した。だってお前それ、あの有名なセリフ……
今更力量(レベル)1からってのはごめんだぞ?流石にそんな事はないとは思うが、まぁ一応な。今更だけどハドラーの格好ってあの魔王にそっくりだな。
「ほう……即答しおったか……」
あれ、なんか怒ってない?ってか、こんな子供引き入れたって大した得もないんじゃないか――いや、もしかして。
「勇者と闘う時のために人質にするつもり、とか?」
一番それっぽい理由を言ってみた。が、ハドラーは呆れと怒りが混ざったような表情になって、
「そんな卑怯な真似をするものか、この戯けが。そんな手段を取っては魔王としての誇りに傷が付く……どうした、その間抜けな表情は」
ぽかんと口が空いた顔の俺をハドラーが鼻で笑う。
「いや、そういう誇りとかお前にもあったんだな、と」
「オレの地獄の爪(ヘルズクロー)に貫かれてみるか?」
勘弁してください。
「ハァ……単純にお前の腕を評価したんだがな。もういい、さっさと帰れ」
帰れ、とまで言われたら帰らないわけにはいかない。素直に出ていこうとして……本来の目的を思い出した。
ブルーメタル、まだ集まってないじゃないか。懐を探ると、既に入手した二つがあり……そのうちの一つに穴が空いていた。多分最終的には溶かすだろうから、大した問題ではないのかもしれない。しかしあの短い時間の間でもロンの職人気質が感じ取れた辺り、少しでも不備があれば怒号が飛んできかねない。正直ロンは絶対に敵に回したくない。いろんな意味で。
「帰りたいんだが帰れない……悲しいなぁ」
「ブツブツと何を言っている?」
溜息を吐きながらハドラーに向き直る。
「俺、ブルーメタル集めないといけないからまだ帰れねぇわ」
「「……」」
バルトスとハドラーが固まり、俺と少年は首を傾げる。何かマズイ事でも言ったのか?
「キサマ……ブルーメタルが何に使われているか知っているのか?」
鋭い眼で睨むハドラー。考えてみれば地底魔城で採掘するんだから、ハドラーも使ってたのかな?
「剣や防具は基本だろ、他には何に使うのかよく知らんが」
ロンに教えられてはいたが、正直な所、鍛冶職人でもなければ何かを作成するような性格ではない俺にはさっぱりだった。
仕方ないだろ、癒しの力が云々言われても、とりあえず装備してると傷が治りやすいぐらいにしか理解できなかったわ。
「……キラーマシンのボディはどんな見た目だった?」
「どんなってそりゃ……あ」
……あ。
「ブルーメタル……」
「キラーマシンのボディはブルーメタル製だ、戯け」
あー……そうだった。確かに自分でもアレをブルーメタルと認識してたっけ。
ってことはつまり。
「キラーマシンの製造に使う、と」
「その通りだ。だから――」
挑発的な笑みを浮かべて、ハドラーは言った。
「欲しければオレよりも早く奪い取れ!」
結局そうなるんだな……
「分かった。では、見つけたらガンガン採っていくし、攻撃されたら容赦なく反撃してやるからな。いっそここのブルーメタルを掘り尽くさんぐらいにな」
「ハッハッハ!やれるものならやってみるがいい!」
そうしてひとまず、地底魔城を脱出し、近隣の森にて夜を越すことにした。
明日からは毎日地底魔城に潜り、ブルーメタルを採掘、そして勝てる相手とだけ戦って経験を積む。帰るまでにウンと強くなって、ロンの奴を驚かせてやりたいものだ。
いずれはハドラーやロンを相手にしても遜色ないくらいになりたいものだ。そのためにもまず、今日の闘いで負った傷を癒さねば。