餓狼 MARK OF THE DRAGONS   作:悪霊さん

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短い闘いだったな・・・


第6話 VSキラーマシン 決着

「ふっ……フハハハハ!所詮は子供よ、あっさりやられてしまったか!」

 

 足を一本やられた時には少し驚いたものの、キラーマシン第3の武装であるレーザーが見事に奴の胸を貫いた。粋がっていたが、所詮は脆弱な人間、殺人機械に敵うはずもなかったのだ。

 

「残念だったな、キサマの冒険はここで終わりだ」

 

 倒れ伏している人間に近づき、それを見下ろしながら嘲笑ってやる。

しかし、こんな細腕でどうやったんだか……

 まぁいい、どのみちもう終わる命だ。最後に遺言でも聞いてやるかな……ハッハッハ!

 

「キラーマシンにダメージを与えた事は褒めてやる……が、キサマの力量(レベル)は所詮その程度。くだらん結果だったなぁ?」

 

「ぐ……」

 

 呻き声がわずかに聞こえた。まだ生きているようだな。

 

「最後に遺言ぐらいは聞いてやる・・・さぁ、言ってみろ」

 

 命乞いをするか、泣き叫ぶか……さぁ、怨嗟や苦痛に満ちた声をあげるがいい!

 

 

「最後にものを言うのは……精神力だ。ただの腕力や魔力じゃなく、精神の、魂の力だ……」

 

「……なに?」

 

 死を前にして頭がおかしくなったか?くだらん戯言……と、一笑に付すには説得力がある。

 最期に真理を悟った、とか?そんなバカな。

 

「何が言いたい」

 

「俺の魂は、折れてない。だから、まだ負けてない。それに気づかない限り、お前は勇者を倒しても、勝ったとは言えんだろう」

 

「ふっ、バカな。このオレがアバンに……人間風情に劣ると言うのかぁっ!メラミ!」

 

 癇に障るガキだ、もういい、このオレのメラミで灰まで燃え尽きるがいい!

 

「ハハハハハ!このハドラー様を怒らせるからだ、愚か者め!」

 

 凄まじい熱気にガキが包まれた。ふん、断末魔もあげずに燃え尽きたか……

 

 つまらん余興だった。さて、キラーマシンの修理を――

 

 

 

「そしてもう一つ。“相手が勝ち誇ったとき、そいつは既に敗北している” ――ちょうどこんな感じにな。ヒムリッシュ……」

 

「なッ!?」

 

奴の声!??バカな、ありえん!ただの人間風情にアレが耐えられるはずが――

 

「アーテム!」

 

 天からの一条の閃光が、キラーマシンのモノアイを貫いた。

 

『ダメージ71%、索敵不可。対処ハ困難ト判断。』

 

「バ――」

 

「遅い!これで終わりだ!」

 

 破砕音が響いた。繰り出した拳が、キラーマシンの胸部装甲――動力源である、魔晶石の設置場所を正確に貫き――

 

『ダメ・・81%・動力・消失、行動、不、可』

 

 魔晶石を引きずり出し、キラーマシンは停止……撃破された。

 

「どうだ、倒したぞ……」

 

 そう言いながら、奴も倒れた。

 

 

「キラーマシンが……」

「あのガキ、マジで何者なんだ……」

 

 

……フン。

 

「バルトス!このガキの治療をしてやれ!」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

「ぐ……ここは?」

 

 目が覚めたとき目に入ったのは……ってこの言い回し何度目だ?兎も角、洞窟の中に作られた部屋のようだ。

 起き上がって辺りを見回すと、子供が描いたような絵や、玩具が置いてあった。俺の寝ている傍らには薬草が。

 そして、少年がこちらの顔をじっと見つめていて――

 

「父さん!さっきの子、目が覚めた!」

 

 せわしなくどこかへ駆けていった。

その辺の玩具などはあの子の物か?洞窟の……地底魔城の中で暮らす人間なんかいるのか?

 

「おお、よかったよかった。目が覚めたか」

 

 子供が連れてきたのは、キラーマシンと闘う前にも見た、星型の勲章を首から提げた骸骨剣士だった。なんか淒い優しそうな奴なんだけど、本当にモンスターなのか?

 

「あのままくたばってもつまらなかったのでな、治療させた。どうせならキラーマシンに殺された方が良かったのだが」

 

「げっ、ハドラー!?」

 

 なんでお前もいるんだよ……治療?

慌ててレーザーにやられた所を見ると、薬草を塗りこんだ包帯が巻かれていた。

 この骸骨剣士はハドラーの部下だろうに、何故そんな事を?

 

「聞きたいことがある、といった顔だな、お前達。質問を一人一つ許可する」

 

 え、一人一つってこの骸骨剣士と子供も?

 

「ではハドラー様、幾つか纏めてお尋ねしますが、何故彼はハドラー様のメラミを食らっても無傷だったのか、それとどうやってキラーマシンにあれ程のダメージを与えたのか、えーとそれから」

 

 一つじゃないのかよ。

 

「多いぞバルトス、そこまでだ」

 

だろうな……と思いながらハドラーが嘆息するのを眺める。

と、そこで少年が口を開いた。

 

「この人はなんていうの?」

 

「ああ、名前は聞いてなかったな。どうせ負けて死ぬと思ったから」

 

 いや、当然といえば当然だが。当然ではあるんだが!

ハドラーを半眼で睨みつけてから、とりあえず名乗った。

 

「カイン。カイン・R・ハインラインだ」

 

「偉そうな名前だな」

 

「うるせぇ!」

 

 またかよ!またその反応かよクソッ!

 

「もういいだろ!とっととそっちの骸骨剣士の質問の回答しろ!」

 

「何故そんなに怒ってるんだ……まぁいい」

 

 

「考えてみれば単純な事だったのだがな。バルトス、オレが得意とする呪文はなんだ?」

 

「火炎(メラ)系、閃熱(ギラ)系、そして爆裂(イオ)系の呪文ですな」

 

 呪文使えるのか……羨ましいぜ。ロンの奴には、才能ないんじゃないかとまで言われちまったからなぁ……

 

「では、オレに対してその系統の呪文で大打撃を与えられるか?」

 

 

「いえ、ハドラー様はその呪文を最も得意とする所、なれば並みの者のそれでダメージを食らう事は無いかと」

 

「成程、こういうことだな?俺は炎を使った闘いを得意とする、故に生半可な火炎ではこの身を焦がす事もできない、と」

 

 カイン・R・ハインラインに元々はそんな特徴はないはずだが……或いはこれも特典か何かだろうか?

 もしくはこの世界のルールの一つ、とかかもな。

 

「そして、キラーマシンを行動不能にまで追い込んだのはいかなる手段か、これも少し注視すれば分かる事だったのがな。カイン、お前が撃ちだしたあの青い玉――ヒムリッシュ・ゼーレ、とか言ったかな?アレには何を込めた」

 

 何を込めた、と言われても特に意識してなかったんだが……強いて言えば、そうだな――

 

「闘気、か?」

 

 勘で言ったが、正解だったようでハドラーは大きく頷いた。

 

「そう、闘気、すなわち――生命エネルギー!」

 

「「生命エネルギー……」」

 

「闘気は攻撃的生命エネルギー、集中させれば武器となる。あの玉はそれを直接撃ちだした物だ。そして一見ただのか弱い打撃に見えた攻撃にも、闘気が一点集中されていた。なれば如何にブルーメタルの装甲であるキラーマシンといえど、ただではいられん――以上が、キラーマシンを倒したからくりだ」

 

 闘気……全然意識してなかったが、無意識にやっていたんだろうか。これはカイン・R・ハインライン自身もやっていたんだろうか――もしかしてパワーゲージって闘気の溜まり具合とか?そんなわけないか。

 

「はぁー……流石はハドラー様。素晴らしい洞察力ですな」

 

「次にカイン、キサマの質問だが……殺すのを惜しいと思っただけではない。お前は中々高い能力を持ち、観察眼にも優れる。キラーマシンの弱い部分を瞬時に見抜いた程だからな」

 

 見たらすぐ気づけると思うんだが。

単に戦った奴らがキラーマシンを恐れてよく見てなかったんじゃないか?

 

「それだけで侵入者を助けるのはどうなんだ?」

 

「問題はない。オレが魔王、即ちトップだ。文句は言わせん。そして……カイン・R・ハインライン!キサマに一度だけ聞いてやろう――オレの部下になれ!そうすれば世界の半分を与えてやるぞ……!!」

 




いつもよりちょっと長くしました。

バルトス「ハドラー様は本当に頭のよいお方」

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