「行け、キラーマシン!徹底的にやってしまえ!」
ハドラーの声と同時にキラーマシンが剣を振りかぶって突っ込んできた。勢いに任せた単純な一撃なら、俺にも躱せなくはない。
横に軽く飛び、初撃を躱す。続く弓矢を転がって回避する。
その一連のやり取りをしている間に、ハドラーは観客席に座ってこちらを眺めていた。っておい、誰だ賭け事してるの。しかもほぼ俺の負けに賭けられてるじゃないか!
クソッ、当然といえば当然だが、やっぱりちょっとイラッと来るぜ。
命が掛かってるのもあるが、何としてでも勝たねば。
『ターゲット排除。ターゲット排除。』
今度は矢を連続で射ってきた。――が、剣なら兎も角、弓矢如きはこの炎で焼き払える。
そう判断し、腕を横に払い、炎の壁を生み出す。
狙い通り、矢は全て燃え尽き、俺に届く事はなかった。
「今度はこちらの番だっ!」
叫ぶと同時に、シュワルツ・シュトゥース――炎を纏った強烈な蹴りを叩き込む。
が、キラーマシンは僅かに後退した程度、傷一つない。
「バカめ、キラーマシンの装甲が子供の蹴り程度で砕けるものか!」
ハドラーが勝ち誇った声で叫ぶ。いや、分かりきってるよそんな事。
いくら俺だって一撃で倒せると思う程バカじゃない。でも、自信はそれなりにある一撃を目に見えるダメージもなく、平然とされては悪態の一つも吐きたくなる。
攻撃が通じない程硬いのなら、方法は限られる。装甲の薄い場所を狙うのがセオリーだろう。
『矢デノ攻撃ハ効果無シト判断。接近戦モードニ切リ替マス』
そう考え、まずは観察しようと思った矢先、キラーマシンが剣で斬りかかってくる。
防具もなにもない状態でこんなものをくらったら大怪我じゃすまされない。動きに注意しなくては・・・
装甲が薄そうなのは、左胸に位置するガラス板のような部分、それにあの足だ。
安定した体勢を取るためになっているのであろう四足は、本体部分に比べてかなり細い。一本でも折れれば、機動力をかなり削げるはずだ。
よし、まずは足をどうにかして、勝率を少しでもあげよう。
「ヒムリッシュ・ゼーレ!」
闘気を込めた玉を作り出し、モノアイに向けて撃ちだす。ヒムリッシュ・ゼーレはゆっくりと飛ぶため、撃ちだすと同時に走り出して玉を追い越し、シュワルツ・シュトゥースを向かって右前の足に叩き込む。
やはり足はボディに比べて弱いのか、機体がグラリとよろめく。が、すぐに何事もなかったように持ち直す――が、遅れて到着したヒムリッシュ・ゼーレが左胸に着弾し、再び傾く。
ガラス板にはヒビが入っており、もう一撃加えるだけでも砕けそうだ。だが俺は足への攻撃を優先した。
「まずはその足一本、貰い受ける!」
「ヌウッ!?」
ハドラーが驚いたように声をあげ、それと重なるようにして、バキリ、と破砕音が響く。
俺の繰り出した拳が、キラーマシンの足を一本叩き折ったのだ。
たかが一本、されど一本。身体の一部を失ったキラーマシンは起き上がれずにもがいている。
『機体ダメージ23%、脚部ノ一本ヲ損失。』
「バッ、バカな!?あんな子供が!」
「キラーマシンの足を叩き折りやがった!」
「あのガキ何者だ!?」
観客が驚いてるのが聞こえる。チラリと様子を見ると、ハドラーは――不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。奴め、あまり驚いてないな。
とにかく、機動力はこれで激減した。後は油断して剣に斬られないように――左胸を穿つ!
「これで終わりだ!」
そう叫び、拳を打ちつけようとした瞬間。
「――勝った!」
ハドラーの声と同時に、キラーマシンのモノアイから赤色のレーザーが放たれ、俺の胸を貫いた。