餓狼 MARK OF THE DRAGONS   作:悪霊さん

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お久しぶりです。久しぶりすぎて忘れられてそうです。
詳しい事は活動報告にて。


第34話 計算

カインと無界は共に自らの肉体を武器にして戦う、いわば武闘家だ。しかし、この二人に限っては闘気による技や身体強化、更には特殊な技能を駆使して戦う、純粋な武闘家とはとても言い難いスタイルである。これが普通の武闘家かと問われれば断じて否だ。強力な格闘タイプではあるが。

 同じレベルの者が戦った時、勝敗の分かれ目となり得るのはまず経験。気迫や闘志、そして知識と情報である。彼らの場合、まず経験は二人共同程度であった。強いて言えば竜の騎士という稀代の猛将との戦闘経験が何度もある分カインに軍配が上がるか。気迫で言えば、圧倒的に無界だった。カインは常に余裕を持とうとする癖があるが、それは裏を返せば全力でないとも言える。逆に無界は、先程まで切り裂きピエロのジャックと戦闘をしていた為に戦闘時の状態が続いているのだ。情報については、カインが勝っているだろう。目の前の動く石像が、カインの知っている無界と同じような技を使うのならばだが。

 

 無界が蹴りを放つと、カインも同じように足を使った鋭い一撃をぶつける。カインが左の手刀を横薙ぎに払うと軽く飛び上がって回避し、そのまま頭を狙って蹴りをかます。それを避けつつ後方に宙返りしながら蹴り上げると、無界はそれを敢えて受けた後がっしりと左の足を掴んだ。足を掴まれたカインは、いつものように瞬間的に闘気を爆発のように放出する事で逃れようとした。

 

「イシとなれ!」

 

 しかし、無界の腕が一瞬一層黒くなったように見えた次の瞬間、今まさに闘気が放出されようとしていた左足が言葉通りに石と化したかのように動かなくなったのだ。いや、そればかりか込めていた筈の闘気さえも固まっている。カインが目を見開いている間に、無界は追撃を仕掛けた。

 

「どりゃあッ!」

 

「いっ……ってぇな、やってくれるじゃないか」

 

「フフ、このテイドか?」

 

「ぬかせ、まだまだこれからだ」

 

 肩をすくめて挑発すると、カインは歯を剥き出しにして笑いながら応じる。知ってても実際食らうと驚くな、と呟きながら。追撃の裏拳を食らった時点で、既に足は動くようになっていた。調子を確かめながら腕を振るって紫炎を飛ばすと、無界は地面を踏みつけて石柱を生み出して防御する。舌打ちしながら走り出すと、無界も姿勢を低くしながら突進してきた。靴に魔力を送って飛び上がり突進を避け、叩きつけるように腕を振り下ろす。

 

 

「……楽しそうだな」

 

「いつもあんな感じなのか、アイツ?」

 

 その光景を、ラーハルト達は会話しながら眺めていた。ラーハルトの言葉通り、カインは殴られながらも楽しそうに笑っている。昔から戦いを楽しむ癖がある事は知っていたので、別段驚きもしないが。

 

「たまにカインの動作が鈍くなっているのは何かされているからか二?さっきも足を止められていたし、そういう魔物なのか二」

 

「いんや、ありゃアイツの特技だぜ。動く石像皆が皆あんな芸当できるわけじゃあねぇ。ま、答え合わせは全部終わってからと相場が決まってる。手品だって途中でネタばらしするのはつまんねぇだろ?」

 

 ジャックの言葉には答えず、ラーハルトは戦いを眺め続けた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 我が主は聡明である。ロビンはそう思った。並々ならぬ機械の知識と技術、同年代の若者と比べたら天と地ほどの差がある。そう常々思っている。カインという主人に造られたモノとして、彼を尊敬してもいるし、同時に家族か何かのような安心感と信頼を抱いている。それは、カインに従う二機と一羽の共通認識である。最も、ロビンとラムダは尊敬していることくらいしか正確には理解していないのだが。それでも”尊敬”という心の機微が理解できるというのは通常のキラーマシン或いは機械人形にはありえないことなのだが。機械に心などない、或いは不要。主のために戦うロビンはそう思っているが、それ自体が感情或いは心というものである。

 カインが他の人間、或いは魔族と一線を画すのはどこか、と聞かれればロビンは知識と答える。魔物についての知識は言わずもがな、何よりも魔導機械についての知識はそれこそ魔王ハドラーを凌ぐだろうという確固たる思いがあった。それが自分の主の頭脳に対する自信と信頼という一種のプライドのようなものであることを彼はまだ知らない。

 

 カインという友は不思議な奴だ。ラーハルトはそうとしか表現出来なかった。まず感情の起伏が激しい。怒っていたかと思えば笑い、その逆もある。それだけならそういう性格だと納得できる。戦いにおいても普段の生活においてもそうなのだ。真面目にやるかと思えばいきなり遊びだしたり、悩んでいたかと思えば突然に身を起こして作業に取り掛かる。忙しない奴だ、そう感じるのが常であった。最早カインが大人しくしているところなど想像するのも難しい。そう思っていればまた突然静まるのだろうが。

 カインが他の人間、或いは魔族と一線を画すのはどこか、と聞かれればラーハルトはセンスと答える。様々な技を考え出したりキラーマシン系統のみならずラムダのような機械人形、果ては小型の通信機まで作り出す。そのセンスが良くも悪くも突出している、そうラーハルトは感じていた。そういったところも不思議である。理解できるところは理解できるが、できないところはトコトンできない。そういうものだ、とラーハルトは割り切っているが。

 

 カインはよく分からない奴だ、アベルに限らず、これはハドラーやロン・ベルクもよく考える事だ。何をするか想像しにくいというのもあるが、何を目的としているかが見えてこないのだ。気まぐれに何かを始めたと思えばあっという間に終わらせていたり、勤勉だと思えばゴロゴロとベッドに転がっている。のらりくらりとした態度を取ることもあれば急に真面目な顔つきになったり、かと思えば眠そうに目をこすり。そんな姿を見る度に、アベルは、魔王ハドラーは、ロン・ベルクは、首をかしげながら眉を顰め、さっきまでの態度はどうしたと思うのだ。

 カインが他の人間、或いは魔族と一線を画すのはどこか、と聞かれれば彼らは器と答える。人間、魔族、魔物、或いは機械。カインは嫌いな者以外には態度を変えるということをしない。友人には親しげに話したりするが、その友人からして魔族が多いのだ。となると当然、何故種族はおろか、言ってしまえば自分の道具のような存在の機械にも同じ態度なのか、という疑問が浮かぶ。

 ハドラーは、どの種族も纏めて対等に相手取れる器量があるのだと考える。かつて地底魔城で過ごしていた時にも、魔王の自分やその部下、果ては人間の子供であるヒュンケルとも対等に接していた。いくら当時子供だったからと言っても、明らかに異質だ。そもそも子供だったら魔王である自分や見た目骸骨のバルトスなどは恐怖の対象だろう。それが、カインは最初こそハドラーを警戒していたが、恐怖というのは抱いていなかったように見える。故にハドラーはそう考えた。

 ロン・ベルクは、種族の違いというものを認識していないのだと考える。初めて出会った時にも、カインは彼を”人”と言った。特徴的な長い耳が見えていただろうに、人と言ったのだ。ひょっとしたらアイツはそういう、種族の違いなんてあってないような場所から来たのかもしれないし、単純に本人の気質なのかもしれない。ロン・ベルクはそう考えた。

 アベルは、もっと単純に考えた。カインはそういった種族がどうのということを、面倒だから或いはどうでもいいと考えているのだと。カインは興味のない事には消極的だ。人間や魔族の間にある溝など彼にとってどうでもいいのかもしれない。いや、厳密に言えば興味がないというよりもくだらないと思っているのかもしれない。そんな些細なことを気にするよりも、戦ったり機械を弄る方が合っているのだろう、それは間違いない。種族の壁が彼に関係ないのは事実であるし、興味がないから無視している訳でもなく、ラーハルトのような者がいれば積極的に助けに行っている。だから、これはこれでいいのだろう、アベルはそう考えた。

 

 

 たった一つの事柄、たった一人の人間に対しての評や感情も、このように多岐に渡る。違う者に、例えばルミアに聞けばカッコイイ人、或いは機械好きと、バランに聞けば誠実と言えるかは分からないが大事な友人、といった具合に返答は様々だ。当然の事だが、それも感情、或いは心というものだ。

 

 では、ここで一つの疑問が浮かぶ。

 

 カインは、彼自身をどう評するのだろうか?

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 カインと無界の戦いが終わり、ジャックとラーハルトの戦闘も続けて行われた。トリッキーな動きに苦戦こそしたものの、持ち前の素早い動きで苛烈な攻めを絶やさなかったラーハルトに軍配が上がった。

 

「あんたも技術者なら分かると思うが、歯車ってのは棒なり石なりを詰め込めば動きの流れがせき止められるだろ?それと同じさ」

 

 無界の技術について尋ねようとすると、ジャックが先んじて話しだした。

 

「コイツの場合自分の闘気っていう、まぁ要するに……そうさな、不純物を相手の闘気の流れに混ぜて、動作不良を起こさせるのさ。風の噂で聞いた光の闘気と暗黒闘気ってのは互いに反発しあう……のかは知らんが、いわば相反する力らしいじゃないか。そう考えると闘気ってのは意外にデリケートらしいな。少なくとも、攻撃目的でない不純物が混ざっただけで固まっちまうみたいによ。掴まれた部分、石になったみてーに感じただろ?それがカラクリさ」

 

「ダイタイそれでアっているが、フジュンブツヨばわりはやめろ」

 

「合ってるのか二……ボキは全然分からなかった二」

 

「こういうのは考えるより感じ取った方早いぞ」

 

「とはいっても、とあるジュジュツをサンコウにしてマぜアわせたブブンもあるから、カンゼンオリジナルというワケではないがな。スクなからずマリョクもツカう」

 

 暫く談笑しながら、回復も兼ねて一行は休息を取った。食事を取ったり、毛づくろいをしたり、メンテナンスをしたりと思い思いに体を休めていた。無骨な無界、剽軽なジャックの二人はそれなりにカイン達と馬が合うようだ。

 身体をしっかりと休め、武器やロビンの手入れも終えた一行は改めて下の階層を目指す。まだ暫く休んだ後、ゆっくりと探索するという無界達と別れ、一行はまた歩き出した。

 

そしてたどり着いた95階。そこは今までのフロアと若干違う雰囲気だった。至る所に水辺や沼のようなものがあり、そこからトカゲのようなモンスターが襲って来るのだ。苦戦する訳ではないが、何分数が多い。加えてトカゲ達の身体は泥に塗れている。その泥が邪魔で上手く急所を一撃で潰せなかったり、武器にまとわりついて斬撃を阻害したりと厄介な事この上ない。おまけに数が多く、カインが当身を取ろうとしてもその前に死角から噛み付かれてダメージを負いかねない。

 

 とまぁ、これだけ書くと明らかな強敵ではあるのだが。

 

「普通に焼けば良かったのよな」

 

「ギャアアア」

 

「その炎が何の役に立つのかと思ったらこういう時にか二」

 

 炎への耐性はさほどでもないようで、カインの紫炎や極楽鳥の火炎呪文(ベギラマ)で割と簡単に撃退できている。中には多少炎耐性がある個体もいたが、そちらはアベルが氷結呪文(ヒャダルコ)を撃ち込んで凍った所を砕かれている。名工ロン・ベルク作の武器で貫けない程強靭な訳でもないので、多少面倒なモンスターの域を出なかった。

 

「どんどん焼くぜーっと。お、そこにも一匹いるか?」

 

 そう言って同じようにカインは腕を振るって炎を飛ばした。身体のどこからでも出せる炎というのは中々に便利だ。今度は耐性あるかなー、などと考えていたカインは一瞬気づくのが遅れた。

 

「……おい、その燃えてるのって人型じゃないか?」

 

「「……」」

 

 カインが炎をぶつけた相手は、人の形をしていた。どう見たってトカゲには見えないだろう、そんな意思のこもった視線をジトーっと三方からぶつけられ、気まずげに顔をそらすカイン。

 

「あー、その……あれだ、ホイミでもかければ大丈夫…………?」

 

「どうした?」

 

「いや、コイツ人型ではあるけど人間じゃないと思うぞ」

 

 訝しげな顔をするラーハルトに、カインは首をかしげながらその何かを軽く調べ、説明した。

 

「絵の具に泥を混ぜ込んだみたいな身体だ。簡単に燃えたのも多分そのせいだな。妙に油臭いし、殆ど溶けてるけど顔の形状が人間のそれじゃない。多分そういう魔物なんだろう。見たことのない奴だが……」

 

「泥状の身体の魔物か……確かに珍しいと言えば珍しいが泥人形などもいるだろう。見たこともない魔物だったらここまでにもいたはずだが?」

 

「あー、うん。まぁそうなんだけどさ」

 

 気を取り直して探索を続ける。その道中でもまた初見のモンスターが数多く見受けられた。水で出来た獣のようなモンスター、貝を人型にして鎧を着せたようなモンスターなど、全体的に水系が多い印象だった。強さは兎も角。確かに並のモンスターと比べれば多少は強いのかもしれない。特に貝のモンスターなどはそれなりだった。しかし、ここまで潜ってこられる実力の者にとっては手に負えないような強さでないのは確かだ。

 

「しかしこの洞窟ってどっからモンスター湧いてるんだかな。無尽蔵に出るんじゃないかって感じがするぞ」

 

「洞窟そのものが生み出しているか、或いはどこかに卵が大量にあったりするのかもしれないな。洞窟そのものとは言わずとも、モンスターを作り出すというのは不可能ではないだろう」

 

「迷惑な話だ二。ま、修行にはもってこいだが二」

 

「そうだな。しかしこのフロアは妙に水や泥が多いな……っと、アレなんだ?」

 

 カインが指し示した先には、扉があった。何の変哲もないただの木の扉。しかし、何故こんな洞窟の奥深くに扉などがあるのか。カインは首をかしげた。

 念の為アベル達は横に避け、扉を開けるカインもいつでも回避行動に移れる姿勢を取っていた。開けるぞ、と短く言って、勢い良く扉を開け放った。予想に反して、矢や槍が飛んでくるようなトラップはなく水と泥に囲まれた広い部屋が広がっていた。奥の方は暗くて様子を窺えない。

 

「こういう場所は宝箱かボスがいると相場が決まってるが」

 

「どうする、入ってみるか?」

 

「一応俺一人で入ってみるぞ。棺桶持っててくれ」

 

 棺桶をラーハルトに渡し、カインはゆっくりと部屋の奥へと進んでいった。少し近づいた先には階段とまたも木の扉が見える。わざわざこんな所に住んでいる奴でもいるのだろうか?そう考えてある程度の距離まで近づいた。

 

「フーム……部屋を無視して階段を降りるのも手だが」

 

「そいつは困りますね……」

 

 独り言に反応し、何者かが声を発した。それと同時、周囲の水から先程も見た魔物達が一斉に姿を現した。鉄の貝の魔物、水でできた獣、トカゲの魔物などと何度も見た顔ぶれだ。勝てない相手ではないが数が多い。

 囲まれたな、と舌打ちをすると、階段の方から重厚な足音を響かせながら、新たな魔物が現れた。

 

「ようこそ、私の城へ」

 

「城ってか部屋だろこれ」

 

「……そこを突っ込まないでいただきたい。あなたがたが来ることは既に部下からの報告で知っていました。中々にやるようですが、あなた一人なら問題ない……私の計算ではね」

 

「ほう、計算ねぇ。だったら試してみるかい?」

 

「ええ、そうさせてもらいますとも。ですが、死にゆく者に冥途の土産くらい渡さなくてはね……私はムガイン。冥途の土産に覚えておきなさい、坊や」

 

 ムガインと名乗った魔物は、泥の塊のような格好をしていた。マントを羽織り、手にはワイングラスを持っている。泥の体に似合わない白い角が目立っていた。ニヤニヤと笑みを浮かべたままやけに丁寧な動作でグラスを口元へ運び、ワインを飲み干す。それを眺めながらカインは肩をすくめた。

 

「坊やときたか……これでも俺は16になるんだが。まぁ魔物からすれば子供か」

 

「私は」

 

 ムガインが口を開いて何か言いかけた瞬間、カインは指笛を鳴らした。ピィ、と甲高い音が鳴り響き、ついで鳥の羽音が聞こえだす。何の真似か、と問うまもなく極楽鳥がラーハルトとアベルを乗せて飛来し、少し距離を空けてカインの後に降り立った。

 

「で、俺一人ならなんだって?」

 

「う、ぐぐ……まぁいいでしょう、たかが人間一人に魔族一人、おまけの魔物が二匹程度大したことはない!鉄騎貝、アクアドッグ、泥トカゲ!やってしまいなさいッ!」

 

 ムガインの命令でモンスター達が一斉に飛び掛ってきた。勝てない相手ではないとはいえ、数が多い。特に鉄騎貝と呼ばれたモンスターは比較的攻守のバランスが取れている面倒な相手だ。一体一体がやられている間に他の部下を大量にまとわりつかせ、動きの鈍ったところを一息に仕留めよう、ムガインはそう考えた。

 

「……まぁ、数の暴力で来るなら範囲攻撃するだけだけどな?」

 

 そんな声が聞こえたと思った瞬間、最初に入ってきた人間が一番早くに飛びかかったアクアドッグを両手で掴み、全身から紫の炎を激しく噴出した。その業火はアクアドッグを蒸発させ、泥トカゲを灰も残さず焼き尽くした。炎に巻き込まれずに済んだ鉄騎貝も、直後に振り払われた手刀で纏めて薙ぎ払われた。

 

 一瞬でかなりの数が蹴散らされたムガインは、僅かな間呆気に取られたもののすぐに持ち直し、攻撃を繰り出した直後の今なら仕留められる、そう思って身を屈め飛び出す体制に入った。

 その時には既に、アベル達もモンスターを仕留めにかかっていたのだ。

 アベルの氷結呪文でアクアドッグ達は氷の塊と化し、極楽鳥の体当たりで纏めて砕かれた。ムガイン配下で最強の鉄騎貝は瞬きの間に両断されていた。死角から飛びかかっていた泥トカゲは、後方からの熱戦に撃ち貫かれて落ちた。

 

 ムガインの判断は正しかったのだろう。カインは腕を振り切った直後、アベルは呪文を放つために動きを止めており、極楽鳥も体当たりを敢行した為に全員に背を向けていた。ロビンからの射撃も、ムガインの位置ならカイン達の身体が邪魔で撃てない。一太刀は浴びせられるだろう、そう考えて飛びかかった。

 

 

「遅いな」

 

 それだけ呟き、ラーハルトは槍を横薙ぎに振るった。ラーハルトが特に大きな動きをせずに鉄騎貝達を両断したのでなければ、或いは一矢報いる事はできたかもしれないが。ムガインはラーハルトの速さを見くびっていた。彼は、計算を遥かに超えて速かったのだ。彼の仲間や自分の部下達どころかこの場の誰よりも。

 

「な」

 

 最後まで言う事もできず、ムガインの泥のような身体は二つに斬り裂かれた。




ゲスト(瞬殺)
ボス戦が終わったら破邪の洞窟で出てきたものを活動報告に纏めておきます。

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