餓狼 MARK OF THE DRAGONS   作:悪霊さん

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PCの不調により中途半端に斬って投稿。
キーボードが動かなくなるわ、ネットに繋がらなくなるわ……散々でした
( ◇)<どうでもいいですが昨日初めてブレイブルーをプレイしました


第17話 テラン

 カインに連れられて街を出て、西の森に向かう道中、オレはカインと何も言葉を交わさずに歩いていた。静かに怒っていたカインは、オレを虐めていた大人達よりも怖く見えた。同時に、凄く格好よく見えた。とてもオレと同年代とは思えないぐらいに。

 カインには、人……というより、魔族を引き付ける何かがあるんじゃないか?無意識にそう考え、そんな人間がいるのかと首を捻った。

 人と魔族の中間、どちらかというと魔族寄りに立っているように見える彼は、一体何を見据えているんだろうか。

 

 

 そう考えている間に到着したようで、小さな魔物と機械が出迎えた。

 

「随分遅かったニ、何かあったのかニ?」

 

「あぁ、長くなるからまずは飯食おうぜ。とりあえずパン買ってきた。アベルは肉食うっけ?」

 

「いや、ボキは肉はあまり食べないから大丈夫だニ」

 

 

 

 三人でのんびりとパンを食べながら、さっきの事をアベルというらしい魔物に話していると、アベルもカインと同じように怒った。

 

「弱者を虐げる事で満足しようとは言語道断だニ。根性叩き直してやるニ」

 

「あの手の連中は何言ったって無駄さ。自分達が正義だと盲信する奴ほど、面倒臭い奴はいない」

 

「さり気にボキの悪口言ってないかニ?」

 

「自覚があるって分お前は良い奴だよ」

 

 話を終え、月明かりが見えてきた頃、カインがおもむろに訊ねてきた。

 

 

 曰く、一緒に来ないか、と。

あんな奴らに怯えて過ごすより、共に旅をして強くならないか、と。強くなれば同じような境遇の者を助けられるし、大事な人を守れると。

 自分なんかがいて迷惑じゃないか、足でまといになるに決まってる、そう言ったら、

 

「誰だって最初はレベル1だニ。そこから先に進む一歩を踏み出すかどうかが運命の分かれ道だニ」

 

「俺だって今のレベルになるまで、ハドラーや色んな奴と戦って強くなったんだ。俺にできてお前に出来ないってこたぁねぇだろ……自信過剰は良くないが、俺なんてーとか言わずに自信を持つことも大事だぞ」

 

 そう真顔で言われては返す言葉がない。本当は、是が非でも一緒に行きたい。

けど、ダメなんだ。

 

「オレは、父さんと母さんの墓を守らなきゃいけないから、無理だよ」

 

 そう俯いて言うと、カインはこんな事を聞いてきた。

 

「墓って遺骨とかは棺桶に入ってるか?」

 

「え?あ、あぁ勿論……」

 

「ならもっと静かなところに眠らせてやろうぜ。またあいつらにやられるのも癪だろ?」

 

 なんという事を言い出すんだこの男は。それが出来たら苦労はしない。

声を荒らげようとしたが、カインが指を一本ピッと立てて先んじてこう言った。

 

「テランという国は自然が多く、また人口も比較的少ない。魔物もあまり出ないようだし、盗賊も滅多にいない。稼ぐ相手がいないからな。代わりに、カンダタ義賊団という奴らがいる。ちょっとした顔見知りなんだが、そいつらに頼めば多少の無理はなんとかしてくれる。腕も立つから心配はない。墓守も引き受けてくれるだろう。それにあそこの国王は温厚だと聞く。事情を話せばどうにかしてくれるかもしれん。まぁ、全部希望的観測に過ぎないが……」

 

 そこで言葉を切り、片手をオレに向けて続けた。

 

「この手を取るか、それとも切るか。それはお前が選ぶ事であり、俺が選ぶ事じゃあない。どうなったとしても、それはお前の選択の結果だ。どうなろうと責めはしないし、止めもしない。それを踏まえた上で問おう」

 

 

「ラーハルト。私達と共に来ないか」

 

 

 オレは、僅かに逡巡した。墓の事も大事だ。でも、オレはこの手を払いたくない。掴みたい。見失いたくない。やっと差し伸べられた手を、掴み損ねないように。

 

 

 オレは、がっしりとカインの手を掴んだ。

 

「歓迎するよ、ラーハルト」

 

「仲良くやろうニ」

 

「よろしくな、二人共!」

 

『宜シクオ願イシマス』

 

「うわっ、喋った!?」

 

 楽しげな笑い声が夜の森に響いた。

一頻り笑った後、カインがゴロンと寝転んで空を眺め始めた。

 

「どこの世界でも満天の星空というのはいいもんだな……で、いつまで隠れてるつもりだ?」

 

「え?」

 

「おや、バレちゃいましたか」

 

 そういって、昼間のアバンという人が木陰から出てきた。一体いつからいたんだ?全然気づかなかった。

 オレの視線に気づいたようで、ついさっき来た所だと話していた。本当か?

 

「でもなんで気づいたんですか?完璧に気配を消していたと思うんですが」

 

「簡単なことさ」

 

 気障ったらしく髪をかきあげながら、カインは気だるげに言った。

 

「適当言っただけだ」

 

「「「……」」」

 

「外れたら外れたでよし、当たったら向こうから勝手に出てきてくれるしな。現にアンタはそうだろ」

 

「……アッハッハ、これは一本取られちゃいましたねぇ」

 

「おいアバン、のんびり話してていいのか?」

 

 そう言って今度は年老いた爺さんが出てきた。どことなく下世話に見えるのは気のせいだと思いたい。

 

「そうですね、さっさと本題に入りましょう。ロカ達に留守番頼んでこっそり抜け出てきましたし……では改めまして、私はアバン。こちらは大魔導師マトリフさんです」

 

「カイン・R・ハインラインだ」

 

「アベルニ」

 

「ラーハルトです」

 

『ロビント申シマス』

 

 ロビンが喋ったところでマトリフという爺さんは片眉を上げて、ジロジロとカインを無遠慮に眺めた。が、すぐにやめ、真面目な顔付きをしてこう言った。

 

「話は聞かせてもらったが、カンダタ達に任せていいのか?本当に大丈夫なんだろうな。えぇ?アバンよ」

 

「ふーむ……あの時の彼らには私の言葉が届いていたように感じましたし、それにカイン君が言うなら大丈夫なんでしょう。じゃなきゃ、街であんな事するぐらい怒ってた子がお友達を任せるはずもないでしょう」

 

「フン……一理あるな。だがな、ラーハルトって言ったか?自衛の手段はあるに越したことはない。それは当然だが、墓守に何かあったらってのは考えてるのか?」

 

 考えてなかった。

 

「それについちゃあ俺にちょっとしたアイデアがあるんで、そこは任せてもらおう。アバン、アンタはラーハルトと一緒にテランに行ってそこの国王とカンダタ達に事情を話しておいてほしい。これがカンダタ達のアジトの地図だ。その間に俺達はこっちの用事を済ませる」

 

「承知しました。では、ラーハルト君。私達に付いてきてください。マトリフさん、ルーラお願いします」

 

 カインが地図を手渡し、アバンがオレに手招きをする。踵を返して移動しようとするアバンにカインが、

 

「ああ、その前に悪いんだが、キメラのつばさはないか?あったら二つ譲って欲しい」

 

 と、頼み込んだ。行きと帰りの分だ、と呟きながら。

 

「それぐらいならお安いご用です。はい、どうぞ」

 

 悪いな、と言いながらカインがキメラのつばさを受け取る。キメラのつばさを使うぐらい遠い所なんだろうか。

 

「善は急げだ。頼むぞ」

 

「ええ、お任せを。では……」

 

 マトリフ爺さんの呪文で、俺達は空に舞い上がった。

 

 

「さて、俺達も行くぞ」

 

「行くってどこにだニ?」

 

「着いてからのお楽しみってな」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 キメラのつばさを使ってどこへ向かったのかと言うと。

 

「ここは……」

 

「魔王ハドラーの住む、地底魔城さ」

 

 若干懐かしく感じる、地底魔城だった。

 

「成程……ラーハルトが迫害される原因を直接叩く訳だニ?」

 

「全然違う。掠ってすらいない」

 

 ずこー、とアベルがすっ転ぶ。そもそも何故その発想に至ったんだお前。

 

「じゃあこんな所に一体何の用だニ?」

 

「墓守も必要だが、墓の手入れする奴も必要なんじゃないかと思ってな。とりあえずお前は大人しくしてろよ」

 

 

 地底魔城に入ってすぐにハドラーを見つける事ができた。手間が省けたな、と思いつつ事情を話すと、

 

「事情は分かったが……それで何故ここに来たのだ?あとそのプチヒーローはなんだ」

 

「ちょいと入用の本があってな。で、こいつだが」

 

「ボキは弱きを助け強きをくじく、みんなのヒーロー……そう、人はボキを……勇者と呼ぶニ」

 

 ハドラーは 微妙な顔をしている!

 

「お前を倒すのが目標なんだと。適当に相手してやってくれ」

 

「……バルトスに任せよう。おい、ちょっとバルトス呼んで来い」

 

 近くの魔物を呼び止め、バルトスを連れてきてもらうと、アベルはまた口上を述べ、バルトスに挑みかかった。

 俺はロビンを連れてハドラーの部屋に向かう事になった。

 

「悪いバルトス、任せたわ」

 

「ウム、後でゆっくりと話そうではないか」

 

 アベルが吹っ飛ばされる音を聞きながら暫く歩き、部屋にたどり着くと、書斎に案内された。

 

「で、どの本だ?」

 

「確か……お、あった」

 

 手に取ったのは、『メイドさんロボの作り方』という、どっかの爺さんが書いたおかしな本。

 それを見てハドラーは首を傾げながら、

 

「お前そういう趣味だったのか?」

 

「ジェノサイドカッター」

 

「ぐほっ」

 

 華麗な蹴り技で、ハドラーが吹っ飛ばされていく。……ん?

 あ、出来た。何だ、無意識に任せた方ができるのか?とりあえずハドラーを吹っ飛ばしながら、モーションを思い返していると、ハドラーが抗議しようとしたので投げておく。

 

「墓の手入れとかするんだったらこういうのを作って置いとけばいいんじゃないかと思ってな、決して俺の趣味じゃあない。断じてない」

 

「何故お前はいつも口より先に手が出るんだ……まぁいい、それを作ればいいんだな?勿論お前にも手伝ってもらうが」

 

「当然。ついでにロビンのAIとか更新したいからそれも手伝ってくれ。始めるぞ、ロビン」

 

『了解』

 

 作業工程は割愛する。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 殴ったり投げたりしながらメイドロボは一応完成した。キラーマシン程ではないが、それなりの武装を備えており、そこらの魔物程度では相手にもならないだろう。ミサイルとかレーザーとか装備してるのはご愛嬌。どこぞのメカな翡翠さんっぽい造形なのはきっと気のせい。

 

「お前の趣味が多分に入ってないか?」

 

「気のせいだ」

 

 断じて俺の趣味ではない。あれ、俺の趣味ってどんなんだっけ?

 

「まぁいいや、ロビンも色々更新できたし、そろそろ行くよ」

 

「ウム、またいつでも来い。外まで見送ってやろう」

 

 

 談笑しながらアベルを迎えに行くと、

 

「フッ……な、中々やるじゃないか……ニ」

 

「お主こそやるではないか……ぐっ」

 

 何故か剣を捨てて殴り合っていた。暑苦しいわお前ら。

 

「フフ……良い勝負だったニ。だが、次に勝つのはこのボキだニ」

 

「言ってくれる、ワシも息子に格好をつけたいのでな、負けてやれんよ」

 

「盛り上がってる所悪いがもう終わったから行くぞ。思ったよりも早く終わったしな」

 

 ガクッと脱力する二人。ハドラー達は楽しげに笑っているが、俺としてはさっさとテランに行きたかったので、すこしばかり急かす。

 

「仕方ないニ。バルトス、いずれ決着をつけるニ」

 

「いいとも、その時は手加減しないぞ」

 

「え、手加減してたニ?」

 

 バルトスが目を逸らし、アベルがガックリと倒れこむ。しょうがないのでロビンの中に放り込んで外に向かう。

 

「じゃあな、ハドラー、バルトス。今度来るまでに倒されるなよ?」

 

「フッ、誰に向かって物を言っている」

 

「カインも気をつけてな」

 

「ああ、それじゃあな」

 

 

そう言ってキメラのつばさを放り投げ、俺達は地底魔城を後にした。

あ、メイドロボの名前どうしよ。

名前考えとくか。ついでに後でジェノサイドカッターの練習もしよう。アベルはまだロビンの中に入っている。いい加減出てこい……あ、無理か。

 ラーハルト達、随分と待たせてしまったな。自力で空飛べりゃあいいんだがな……と、ようやく到着した。

 さて、とりあえずはカンダタの所に行くか……

 




前回書き忘れたカイン・R・ハインラインの周囲(?)の人物とか色々。
※興味がなければスルー推奨


ギース・ハワード:カイン・R・ハインラインの義理の兄。カインの姉が妻。

ヴォルフガング・クラウザー・フォン・シュトロハイム:ギースの義理の弟。幼少時にギースを殺しかけた。

ロック・ハワード:カインがラスボスを務める餓狼MOWの主人公。ギースの息子。

グラント:本名はアベル・キャメロン。カインの親友。この小説のプチヒーローの名前の元ネタの人。

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