オリ主ハウス   作:朝苗

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前回の話を投下後、一気にお気に入り登録や感想が増えました!ありがとうございます。
作者は単純なのでモチベーションがかなり上がりました、これからもがんばっていきますのでよろしくお願いします。

それと今回、試験的に視点変更を試しています、分かりにくいやこうした方が良いなどのアドバイスがありましたらまたよろしくお願いします。


第九話 オリ主だって甘いものが食べたい

 その日、オリ主の住む家は朝から騒がしかった。

三人の子供が住んでいるが、精神年齢はすでに大人な三人である、普段は特に騒ぐことなく思い思いに時間を過ごしているのだが、その日は勝手が違った

 

 「おい、喫茶店に行くのに手土産がお茶菓子っておかしくないか?」

 

 「そうだな、しかも相手は桃子さんだぜ、ぜったい桃子さんの作ったものの方がうまいだろ」

 

 「今更そんなこと言うわないでくださいよ、それに一応それはパリの著名パティシエの新作を取り寄せたんですから邪険にしないでください」

 

 「でもなー、お前らはいいけど俺は初対面なんだぜ、いろいろ気をつかっちまうよ」

 

 「そんなこと気にしなくても大丈夫でしょう、一護君は普段通りにしていた方がいいですよ、それに士郎さんと桃子さんには一護君の人となりは伝えてあるんで猫かぶっても無駄ですし」

 

 「おい!なんだよそれ初耳だぞ!」

 

 「言ってませんでしたっけ?」

 

 「聞いてないぞ、わざと言わなかっただろ!」

 

 「もうなんでもいいから行こうぜー、約束に遅れちまうだろ」

 

 「そうですね、少し急ぎましょうか」

 

 そう、今日は三人そろって翠屋に遊びに行く日なのだ。

士郎さんの怪我も完治し、今日から翠屋が営業再開すると聞いて俺たちは営業再開のお祝いとそのついでに一護のことを士郎さんに紹介することにしたのだ。

 

 三人であーだこーだ言い合いながら商店街にある翠屋につき、中に入るとお昼時のピークは避けるようにしたのだが、いくつかのテーブルは埋まっていた。

 そして、入店した俺たちにむかって

 

 「いらっしゃい、ギル君、蓮君それともう一人は噂の一護君かな?」

 

 士郎さんがカウンターの向こう側から声をかけてくる

 

 「どうも士郎さん、退院と営業再開おめでとうございます」

 

 「こんにちは士郎さん、早速お客さん入ってますね」

 

 俺とギルは士郎さんに軽く挨拶をし、一護は

 

 「初めまして、どんな噂かは知らないですけど俺が一護です。よろしくお願いしますね士郎さん」

 

 「ああ、よろしく一護君、知っているみたいだけど一応自己紹介しておくと俺が高町士郎だ。」

 

 …こいつが敬語使ってるとなんか違和感あるな

 

 隣のギルも同じ感想なのか、微妙な顔をしている

 

 そんな俺とギルをみて士郎さんが

 

 「はっはっは、もっと砕けた話し方でもいいんだよ、一護君、ギル君も蓮君も渋い顔してるしね」

 

 その言葉で俺たちの方を向いた一護が

 

 「おい、なんだよその顔、俺だって敬語くらい使うっての」

 

 「いや、違和感しかなかったですよ一護君」

 

 一護の不満げな言葉にギルが間をおかずにこたえる

 

意外なのは確かだったが、一護だって見たままの年齢ではないのだ、敬語の一つや二つ使えて当然なのだろう。

そう思い直し、一護のことを馬鹿にしすぎていたなと反省していると

 

 「あら、ギル君たちもうきたの?」

 

 カウンターの奥、恐らく厨房に繋がっているだろう通路から、桃子さんが顔を覗かせた

 

 「ええ、こんにちは桃子さん、営業再開おめでとうざいます、こちら、つまらないものですがお祝いの品を用意させていただきました」

 

 「あら、ご丁寧にありがとう。でも、そんなに気を遣わなくてもいいのよギル君」

 

 「いえ、もうこれは性分みたいなものですから」

 

 「それなら、ありがたくもらっておきますね。ありがとうギル君。

そっちの子は初めましてね、私の名前は高町桃子です、あなたは?」

 

 桃子さんがギルとの挨拶を終えると一護の方に目を向け、一護が

 

 「どうも、初めまして黒崎一護です、ギルと蓮とは友人で今回は無理を言って連れてきてもらいました、よろしくお願いします桃子さん」

 

 ……今さっき一護のことを見直したばかりだが、やはり一護が敬語を使っているのを見ると背中がむず痒くなってくるな

 

 

 「おい、蓮、何か言いたいことがあるならはっきり言え」

 

 またもや微妙な表情をしている俺に向けて一護がそう言ってくるので俺が端的に

 

 「お前が敬語を話してるの見てると気持ち悪いな!」

 

 はっきり言ってやると

 

 「よし!ケンカ売ってんだな、いいぜ買ってやるよ!」

 

 はっきり言えというからこれ以上ないくらいはっきり言ってやったのに一護は俺に向かって殴りかかってきた

 

 俺と一護がじゃれあっていると、桃子さんの出てきた厨房の方からなのはがやってきた

 

 「蓮君いらっしゃい!あれ?そっちの人は?」

 

 俺とじゃれていた一護もなのはの事に気づき居住まいを正して

 

 「俺の名前は一護っていうんだ、よろしく!」

 

 さすがになのは相手だと敬語は使わないらしく、それでも普段よりは少しだけ固く挨拶をした。

今日は翠屋というホームであるせいなのか、それとも一護の気さくな雰囲気にあてられたのか、なのはも俺と初めて会ったときよりも人見知りをせず

 

 「よろしく、一護君!なのはのことはなのはって呼んでね、一護君は蓮君のお友達なの?」

 

 「どっちかっていうと兄貴分かなー、いつも蓮のことを面倒見てやってるし」

 

 「ふえー、そうなの?蓮君はなんだかしっかり屋さんって感じだけど」

 

 「いやいや、家じゃ結構抜けてるからな、俺とギルがいろいろ面倒見てやってるんだよ」

 

 「そうなんだー、じゃあ一護君は蓮君のお兄さんみたいなものなんだね!」

 

 「そういうことだな!」

 

 

 「そういうことだな!じゃねえよ、なんで俺がお前に世話になりっぱなしみたいな話になってるんだよ」

 

 「いや、現になってるだろ、つい昨日もさぁ」

 

 「あれは元はと言えばお前が発端だろ!」

 

 「二人とも喧嘩はだめだよ!ほらあっちでお話しよ!」

 

 

 また俺と一護のじゃれあいが始まろうとしたところでなのはからストップがかかり俺と一護はなのはに連れられて空いているテーブルに移動することになった。

 

 

 

 一護君と蓮君がテーブルに移動してなのはちゃんと会話しているのを横目で見ながら僕はカウンターに座って士郎さんと会話を楽しむことにした

 

 「すいませんね、蓮君と一護君が騒がしくして」

 

 「いや、構わないさ子供は元気なのが一番だからね、それよりもギル君は向こうに混ざらなくてもいいのかい?」

 

 「ええ、後で混ぜてもらいますけど今は士郎さんといろいろお話させていただきたいなと思いまして」

 

 「ふふ、こんなおじさんと話していてもつまらないだろうに」

 

 「いえいえ、そんなことはありませんよ、こうして美味しいコーヒーも入れていただけることですし」

 

 そうして、士郎さんが入れてくれたコーヒーを一口啜る。

士郎さんはあまり苦みの強くない銘柄を選んでくれたようだ、子供の姿になってから舌が幼くなっているのでこの配慮はとてもありがたい。

 

 「ギル君にそう言ってもらえるとうれしいね、なんせSPとしてならともかく喫茶店のマスターとしてはまだ若葉マークなものでね」

 

 「若葉マークでこの味でしたらこれから繁盛間違いなしでしょうね」

 

 「まだまだ桃子のデザートと一緒に出すと負けてしまうからな、そのうちデザートだけでなくコーヒー目当てのお客さんを呼べるように努力するさ」

 

 「それなら、僕がまず立候補しましょうかね、一発で士郎さんのコーヒーのファンになってしまいましたよ」

 

 「あら、ギル君は私のデザートのファンにはなってくれないのかしら、おばさん寂しいわ」

 

 僕と士郎さんが会話を楽しんでいると、厨房から桃子さんが手にシュークリームの乗った皿をもってカウンターに現れた

 

 「桃子、厨房の方はいいのか?」

 

 「ええ、お昼時は過ぎたし、いったん休憩ね。よければ私もお話に入れてもらえる?」

 

 これはサービスよ

そういって僕の前にシュークリームの皿を置いてくれる、士郎さんとの会話に夢中で気付かなかったが、桃子さんは蓮君たちのテーブルにケーキを差し入れた後こちらに来たようだ。

子供席からケーキに対する歓声が上がっているのが今更ながら聞こえる

 

 「もちろんです、桃子さんともお話ししたいと思っていましたし」

 

 桃子さんの言葉に返しながら、いただきますと、ひと声かけてシュークリームを口に運ぶ

しっとりとしたシューに歯を立てると中から甘い匂いを漂わせながらたっぷりと入ったカスタードクリームがあふれてくる、甘さはあるものの胸焼けするような、しつこさはなくつい、もう一口、と手が伸びてしまうようなまさに士郎さんが言った通りに絶品という評価が正しいものであった。

 

 そして、シュークリームを食べきった後に、士郎さんのコーヒーを一口飲み、ほぅ、と一息つくと桃子さんに感想を述べる

 

 「さっきの言葉を訂正しますね、士郎さんのコーヒーのファンではなく、士郎さんのコーヒーと桃子さんのシュークリームのファンになってしまいました」

 

 そういうと、二人はうれしそうに笑ってくれた。

 

 

 

 桃子さんからの差し入れのケーキを食べながら俺たちは話を続ける、カウンターでは士郎さんと桃子さんの大人組がギルと何やら話しているが、ギルの年齢詐称疑惑はいつもの事なので、みんなスルーしている

 

 「一護君と蓮君は普段何して遊んでるの?」

 

 まず話を振ってきたのはなのはだった、目の前のタルトを味わいながら俺たちに質問を投げてくる

 

 「俺たちか?そうだなー、最近やったのはトランプくらいか?」

 

 「あー、一護がどっかから見つけてきたやたらと本格的な奴か」

 

 「おう!あれいいだろ、なんか俺の机の中に入ってたんだけど、ラスベガスのカジノでも使ってるやつなんだよ」

 

 「本格的なんだねぇ、なのはのお家はお母さんが買ってきてくれた猫さんのトランプなんだよ」

 

 「俺はトランプなんてそんくらいでいいと思うんだけどなぁ、確かにシャッフルはしやすかったから、流石だとは思ったけど」

 

 「蓮は分かってねえな、そのシャッフルをどれだけスマートにできるかがトランプの楽しみなんだろ」

 

 「いや、それはおかしい」

 

 そんな風に一護となのはと談笑をしているとなのはがぽつりとつぶやいた

 

 「二人は本当に仲が良くていいね」

 

 その言葉になのはを見ると笑っているのだが、、その笑顔はどこか寂しそうで、泣きそうなのを我慢しているようで俺も一護も何も言えず黙っていると、なのはが言葉を続ける。

 

 「なのはのお家も皆仲はいいんだけどね、なのはまだ小さいからお父さんとお母さんのお手伝いもできないし、お兄ちゃんとお姉ちゃんは学校が終わったらお手伝いしてるのに、だからいつも一人でお留守番してるんだけどやっぱり少し寂しいんだ……」

 

 士郎さんの入院が原作よりも短くなったので、なのはの孤独感も解消されたかと思っていたが、翠屋が忙しいのには変わりがなく、当然桃子さんたちも気を付けているのだろうが、手が回らないのだろう、そう思うと俺は

 

「じゃあ、なのはが寂しい時は俺がそばにいてやるよ」

 

 声が自然に出るというのはこういうことを言うのだろう、なのはの話を聞いてにそう言っていた

 

 「え……」

 

 「だから、なのはが寂しい時とか、困った時とかは俺が助けてやるよ、約束な!」

 

 それは俺にとって掛け値なく本気の言葉だった、子供が寂しいって親にも言えずに我慢するなんてあっていいわけない。

それくらいは俺にだってわかる、そして当然そう思っているのは俺だけではない

 

 「おいおい、蓮だけでかっこつけるなよ、今日初めて会ったからって遠慮しなくていいんだぜ、俺だって助けてやるよ」

 

 そう、こんな時に一護が黙っているはずがない、口には決して出さないが一護の事も、ギルの事も信頼しているし、それは向こうも同じだと確信している。

 

 そんな俺と一護の言葉が予想外だったのか初めは目を丸くしていたなのはだが俺たちの言葉を理解するにつれて頬が興奮で赤く染まり、目は涙が浮かんでいたがそれでも、先ほどの泣きそうな顔よりよほど可愛い笑顔で

 

 「じゃあ、寂しくなったら、一緒に遊んでくれる」

 

 そういったなのはに俺と一護が何て返したかはもう言う必要もないだろう。

 

 

 

 その後は特に何事もなく、途中からギルがこっちのテーブルに合流してきたこと以外は取り立てて変わったこともなく、初めての翠屋訪問は終わった。

 

 最後に、桃子さんからお土産にシュークリームを四つもらい俺たちは帰宅することにするのだった

 

 「今日は楽しかったよ、また来てくれるとうれしいね、今度はギル君だけでなく蓮君と一護君にもコーヒーをごちそうするよ」

 

 「そうね、またいつでも来てね、私も美味しいケーキをたくさん作って待ってるわ」

 

 士郎さんと桃子さんが店の前にまで出てきて見送ってくれる、お土産はすでにギルの手の中である。

なのはも士郎さんたちに並んで俺たちのことを見送ってくれ

 

 「また、遊ぼうね!今度はなのはが蓮君たちのお家に遊びに行くね!」

 

 「いつでもいいぞ!約束したからな」

 

 なのはの言葉に俺がはっきりと答える、横ではギルもうなずいているし、一護もサムズアップで答えた。

 

 それを見たなのはも今日一番の笑顔で答えてくれた。

 

 

 「それで、蓮君も一護君もずいぶんなのはちゃんと仲良くなったみたいですね」

 

 家に帰りいつもの定位置で一服ついているとギルがそんなことを言いだした

 

 「おう、そうだな、やっぱりいい子だな、すぐに打ち解けてくれたよ」

 

 「俺のときは仲良くなるまで苦労した覚えがあるんだけどな…」

 

 一護が気楽に返すが、反対に俺は初めてなのはにあった時を考え暗くなる

 

 「まあまあ、今日は一日仲良くしていたんならよかったじゃないですか、ちゃっかりと次はこの家に呼ぶ約束をしていたみたいですし」

 

 「俺がなのはを連れ込もうとしているみたいに言うな、あれはなのはが自発的に言い出したことであって俺は何も関与してないぞ」

 

 そう、あれはなのはが自分から言い出したことで、俺がなのはを連れ込もうとしているなど、風評被害もいいところである。

 

 「でも、お前なのはが一人で寂しいって言った時、真っ先に反応したよな」

 

 一護はいつもいらないことを言うのである。

 

 「ほー、それは興味深いですね、詳しく話してくれますか?一護君」

 

 こいつもここぞとばかりに要らないことを突いてくる

 

 「あー!もう!この話は終わり!ほら、無駄話していると翠屋のシュークリーム俺が一個多く食べるぞ!」

 

 「おい!蓮それはずるいぞ、俺だって狙ってたんだからな!」

 

 「そうですよ、ここは平等にじゃんけんで決めるべきだと思いますよ!」

 

 「ほう、お前らが俺に勝てると思っているとは、その思い上がりを正してやろう」

 

 「おいおい、蓮、あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ…」

 

 「一護君こそ何を大物ぶっているんですか?この世のすべてのものは僕のものであるということで決着はついているんです、ゆえにシュークリームも僕のものです」

 

 「おいおい、何言ってんだよ二人とも、お前ら俺が最初に所有権を主張したんだから俺が食うにきまってんだろ、異論は認めん、断じて認めん、俺が法だ、黙して従え」

 

 全員が言いたいことを言いあった後、今日最後のイベント、シュークリーム争奪じゃんけんが始まる。

 

 オリ主の一日は騒ぎに始まり、騒ぎに終わるのであった。

 

 

 




一応、今回はほのぼの回なんですが、ちゃんとほのぼのできているかわかりませんね(-_-;)
話を書くたびに自分の足りないところが明らかになってきて、これからも頑張らないといけないという気になってきます。

誤字報告・感想ありましたらいつでもお待ちしておりますのでどうかよろしくお願いします。

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