「第三十二回チート能力対策会議~異世界転生は突然に~を開催します。
今回の議題は主に一護君の抜け駆けについてです」
「はい!議長!」
「検事蓮君なんですか?」
「被告の罪は明確だと思われます、我々に黙ってチートで俺TUEEしようとしたこの罪は許されるものではないと検察からは主張させてもらいます」
「なるほど、では検察からの求刑は?」
「死刑で」
「では、判決を申し上げます、被告オリ主一護、『かーっ、チートなんか持ってないわー、全然持ってないわー』罪で死刑」
この間三秒、無駄にある身体チートを使っての高速寸劇である
「おい!ちょっと待て、理不尽すぎるだろ!あとギルてめえみさわやめろぶん殴りたくなる!」
何か被告人がわめいているが聞き入れる気はない…ギルのみさわがむかつくのには同意するが…
「まあ、おふざけはここまでにしておきますか、それで一護君本当のところどのくらいまでチートを使えるんですか?」
一通り茶番がすんで真面目な雰囲気に戻りギルが一護に問う
「ああ、今のところ一回幽体離脱が成功しただけだからな、感覚的にはあと数回繰り返せば自由に死神になれるところまでは行けると思うぜ」
「そうですか、なら死神状態で現世に与える影響とかを調べないといけませんね、それ次第では今度の計画に変更を加えないといけませんから」
「そうだなあ、一護のチートが使えるもんならテロ対策がだいぶ楽になるしな、斬魄刀の能力で便利なのあったっけ?」
「あー、それなんだが斬魄刀はまだ使えねえぞ」
計画に必要なことをまとめ始めてた俺とギルは一護の言葉で話はまだ終わってないことに気づいた
「斬魄刀が使えないってどう言うことですか?」
「いや、正確には始解ができねぇ」
一護自身が持っている一本の斬魄刀にブリーチの斬魄刀の意識がごちゃ混ぜになっているらしい、その為斬魄刀の名前が分かっていてもまず、その斬魄刀の意識を探し出さないと始解の為の対話ができないらしい。
一護曰く「ハガレンのホーエンハイムみたいなもん」らしい
説明が進むにつれてこの仕事の雑さ具合に「ああ、またこのパターンか」的な顔で一護を見ていた俺とギルの憐れみに満ちた視線にいたたまれなくなった一護が半泣きになるアクシデントもあったがまぁこれは蛇足だろう。
一護の説明が一段落したところでふとギルが一つの疑問をもった
「そういえば、一護君のあの悲鳴はなんだったんですか?」
そういえば、そうだったそもそもあの悲鳴を聞いて俺たちは一護の異変に気づいたんだ
「ああ、あれは俺が幽体離脱する際に使ったもののせいでな」
そういうと一護は冷蔵庫からハンバーガーを取り出してきた
ただ普通のハンバーガーと違うところはパンに挟まれているのがハンバーグではなく生魚であると言うところだろう
「一護君、それはまさか…」
そのやたらと生臭いハンバーガーをギルは知っているようだった、その顔は恐怖にひきつっておりその反応からもそのハンバーガーがただ者ではないことがうかがえる
「ギルは知っていたか、そう!これこそが某漫画に登場した幽体離脱用アイテムチーズあんシメサババーガーだ!」
チーズあんシメサババーガーとは某漫画に出てきた架空の幽体離脱用アイテムらしい、一護は今日のスーパーで鮮魚が安売りだった為、この方法を試してみることにしたらしい。
「なんでそんなんで成功するんだよ…、リリカルな世界のはずじゃなっかったのかよ」
「そこらへんはもう気にしてもしょうがないでしょう、僕たちの能力もこれレアスキルとかで言い訳できるか怪しいですよ」
もう、ほんとこの世界やだ。
俺はこの世界に転生してギルや一護たちと出会えたことには本当に感謝しているがこの所々に見え隠れする
このままだと原作に突入するともっととんでもないものが出てきそうですごく恐ろしくなってくる。
そんな俺の心情はよそに一護は淡々と自分の能力の確認を済ましていく。
結果わかったのは、一護の死神モードは純粋な霊体ではなく霊体の外側を魔力で鎧のように覆っており、一定以上のダメージを受け、魔力の鎧が破壊されると、霊体は元の体に戻るようだ、このことから、俺たちの能力は一応レアスキルの範疇に収まるように調節されているのではないかという仮説をギルが立てていた。
そこから時間がたつのは早かった、この騒動が起こったのがテロの数日前だったのである程度の一護の能力の検証が終わった時点で一護のポジションをどこに配置するかを決めなければならず、一護の斬魄刀との対話に十分な時間が取れなかった為、一護には霊体の隠密性を活かし、俺たちでは簡単には入れないところの見回りを担当してもらうことになり、本番中は万が一に備え、ステージ上で待機、その後は俺たちと共に士郎さんについていき、そしてあの最後のテロリストの爆弾を一護が俺たちを庇った士郎さんの上から更に庇うことで士郎さんも大きな怪我もなく終わった。
事前の検証で魔力を介さない物理的衝撃ではほとんど傷つかないことは分かっていたが、それでもあのとっさの状況で行動した一護のことを素直に尊敬している。
「しかし、すいませんね、今日のお見舞いまで周囲を警戒してもらって」
一護のチート抜け駆け事件からの下りを回想していた俺にギルの言葉が耳に届く。
既に俺たちは士郎さんのお見舞いから帰って今は居間でいつの間にか定位置になっている席に座ってくつろいでいるところだ。
ちなみに、一護と俺は二人で三人掛けのソファーの両端に座っており、ギルは一人掛けのソファーがお決まりの位置になっている、原作対策会議も基本的にここでお菓子と飲み物を用意して行っている。
「まぁ、このタイミングで俺がしゃしゃり出るのも不自然だからな、それに次に行くときは紹介してくれるんだろう?」
「はい、士郎さんも一護君の話をしたら会ってみたいと言っていましたしね、次はやっと三人全員で行けますよ」
「なら問題はねえよ、そういや肝心のなのはの方はどんな感じなんだ?リンカーコアを持っていると俺の姿を見られかねないと思って病室にまでは行けなかったからな、見てないんだよ」
「それなら、蓮君の方が僕より適任だと思いますよ、なのはちゃんとは蓮君の方がよく話していましたからね」
一護の疑問に対してギルが俺の方に話題を振ってくる
「んー、第一印象としては引っ込み思案な女の子で話して感じた印象としては普通の女の子って感じだな、第一位印象に関しては、美由希さんや恭也さんもいたからかもしれないな、無意識に甘えてたんじゃないか?」
それに対して自分の考えを二人に告げる
「じゃあやっぱり原作みたいな性格にはなりそうもないか?」
一護がこのタイミングで介入するにあたって一番の心配であったことを口にする
今回の士郎さんの入院のイベント(こういう言い方をすると不謹慎だが)をつぶすにあたって一番の心配はまさにそれだった、本来の原作だと士郎さんの入院によってなのはの家族が全体が忙しくなり甘えたい盛りのなのはが不可抗力とはいえ一人で留守番することが増え、なのはが『親の手を煩わせない良い子』であろうとするというのが原作でも大きく扱われていた。
しかし、今回介入することで原作開始時においてのなのはの性格がどう変化するかは予想がつかなくなるのだ、最悪の場合、魔法少女になることを拒否し、原作自体が無くなってしまうかもしれない。
それを危惧した一護の言葉だったが
「そうだな、でもたぶんだけどやっぱり根っこの部分では俺たちの知っている『高町なのは』だったと思う」
そう、今日話したなのはの印象は普通の女の子だが、その根っこの部分人間の芯とでもいうべきか、そこにはまだ幼くはっきりとは定まってはいないが確かに原作の『高町なのは』のように相手のことを想い、そして自分の信念を貫く強い意志の片鱗が見えた気がするのだ。
所詮は俺程度の感じた感想なので、ただの原作との共通点を探そうとしているだけなのかもしれないが……
「そうか、蓮がそういうならそうなんだろ」
一護の返答は俺の想像に反して軽いものだった
「なんか、軽くないか?一護も結構心配してただろ?」
「でも、お前は大丈夫だと思ってるんだろ?」
「そりゃそうだけど……」
「じゃあ大丈夫だろ、家族の言うことを信じられないようじゃいけないしな!それに何があっても俺たちで協力すりゃなんでもできるさ!」
一護は大きな声でそう断言した
「そうですね、僕たちなら今回みたいにうまくやりますよ」
ギルもそんなことを言って一護の言葉に同意する
「とりあえず、次のミッションは一護君を士郎さんたちに紹介することですかね」
「そうだな、いい加減俺も幽体以外で会いたいしな、バーガーはまずいし」
「まだ、バーガーなしじゃ幽体になれないのかよ」
そんことを言い合いながら俺たちの対策会議は今日も続いていく。
前書きにも書いた通りこれで第一章完ですね、区切り的にも、正直この後一気に原作まで行くかそれとも閑話的なものを挟むかで迷っています、なので次回は少し遅くなる可能性がありますが見捨てないで頂けると嬉しいです
あと感想で誤字報告やルビ間違いなど大変助かってます、感想ページでもかきましたがここでも改めましてお礼申し上げます
いつもありがとうございます<m(__)m>