「なのはの家で預かれることになったので明日病院に行こうと思いますっと……」
今日はなのはにとって大変な一日だった。
朝目が覚めたときに変な夢を見るし、放課後は蓮君たちと別れて塾へ行く近道を通っている時に自分にしか聞こえない声が聞こえたと思ったら夢で見た場所に辿りついてそこには傷ついたフェレットがいたのだからそれはびっくりした。
その後はアリサが調べた動物病院に運び診察を受けたがけがはそう大きなものではなく明日には退院できるというので家に帰ってからお父さんとお母さんを説得してしばらく家で保護する許可を得たのだ。
(はぁー今日はいろいろありすぎてちょっと疲れちゃったよ。そうだ、明日フェレットさんをお迎えに行くのに蓮君たちもついてきてもらおうかな)
アリサとすずかにフェレットを飼えることを報告し一息ついたなのはが考えたのは幼馴染たちの事だった。
あの個性的すぎる幼馴染たちとなのはは不思議と馬が合った。初対面の時こそ少し人見知りしたが柔らかい物腰のギルはなのはの警戒心を刺激しなかったし、一護はその明るい性格からすぐに打ち解けた、どちらかと言えば打ち解けさせられたというべきかそして一番仲良くなるのに時間がかかったのは蓮だろう、根は優しいのだが若干ぶっきらぼうな彼はギルや一護のように自然に相手との距離を詰めることができず出会った時のなのはに対してもどう接すればいいのか困っているところがあった。しかしそれでも蓮はなのはに対してどうにか仲良くなろうと努力したし初めて出会ったときになのはと一緒に遊んでくれたことをなのはは忘れていない。
その甲斐あってか今のなのはにとっては蓮は三人の中でも一番仲がいいのは誰かと問われれば蓮の名前を挙げるだろう。
明日になったら蓮たちを誘ってみよう
なのはがそう決心し明日に備えて寝ようとしたときだった
(誰か僕の声が聞こえていますか)
昼間なのはをフェレットの元に導いた声が頭の中に響いた
(誰か僕の声が聞こえる人がいるなら僕に力を貸してほしいんです)
その声の主はよほど切羽詰った状況にいるらしく何度も必死に訴え続ける。
なのはにはこの声の持ち主が誰かは分からなかったが真剣に助けを求めていることだけは分かった。
そしてここまで困っている人を見捨てるということがなのはにはできるはずもなく直観に従って昼間フェレットを預けた動物病院に向かって夜の街を走りだすのだった。
あまり運動が得意でないなのはだがそれでも必死に足を動かし動物病院に辿りついたそこで見たのは
「もう来たのか、案外早かったな」
「あまり夜遅くに出歩かせたくなかったんですけどね」
「夜遅いからまた明日ってわけにもいかないんだからしょうがないだろ……」
「よかった、僕の声が届いたんだね」
そこには先ほどまで考えていた幼馴染と言葉を話すフェレットがいたのだった。
「なんなのこれ……」
そしてなのはのこの言葉がなのはの心情をもっとも率直に表していた。
なのは達と別れた後俺たちは家に帰ってから早速夜の為に準備を始めていた、今回は今までのように臨機応変という名のぶっつけ本番ではなく初めて入念な計画を立てたミッションだ。
まあそれが成功するかどうかは俺らのメイン偵察兵である一護にかかっているんだがな。
「でも一護君にはいつも貧乏くじをひかせてしまっていますね」
一護に持っていく夜食を王の財宝の中に入れていたギルがそうこぼす
「そうだな、でも仕方がないんだよな今の俺たちの年齢で外で歩いてたら補導はされるわ、そこらのサラリーマンのおっちゃんにも声かけられるわで張り込みもできねえ」
「その点一護君は霊体にさえなってしまえばリンカーコア持ち以外には見えなくなりますからね、隠密スキルなんかない僕たちにとっては少しうらやましいですよね」
一護には前回の士郎さんの時と同様に霊体状態でユーノが入院しているであろう動物病院を見張ってもらっている。
原作知識によって今夜ユーノがジュエルシードの暴走体に襲撃されるのは分かっているので今回は先手を取ることで被害を減らす作戦だ。
まぁ一護だけだと暴走体を抑えられないと思うので俺たちもこれから援軍として向かうのだが、不測の事態が起きないよう一護には学校から帰った時点で見張りを頼んでいる、なんだかんだ言って一番重要な働きをしている一護である。
「よしっと、じゃあ僕らも行きますか」
「はいよ、じゃあ気合い入れていきますか!」
俺とギルが一護に合流すると一護は死覇装を着た霊体の状態で本当の幽霊みたいに電柱の影から動物病院を見張っていた
「おい、怖いぞお前」
「地縛霊みたいですね一護君、自分に魂葬した方がいいんじゃないですか?」
「目立たないようにしろって言ったのはお前らだろ!」
俺とギルの感想に対して一護の突っ込みが冴えわたる、ボケだけでなく突っ込みもこなせるとは流石一護だ。
「なぁ蓮、なんか変なこと考えてないか」
「いや、そんなことないけど?」
「はいはい、ふざけるのはいいですけど少しは緊張感持ってくださいね。それで一護君、なのは達は来ましたか?」
「ああ、それはばっちり確認済みだ。夕方あたりにユーノを連れてきてたぜ」
一護が言うには夕方あたりになのは達が動物を抱えて病院に入っていくのを目撃したそうだ、ユーノには魔力があるので病院内に入っての確認まではしていないらしいがタイミング的に言ってここにユーノが入院しているのは間違いなさそうだ。
なのは達の塾の場所から考えてこの病院に連れてくると予想していたがそれが間違っていなくてよかった。
「そうですか、じゃあ後は待つだけですね」
「そうだなー。そういえば最初のジュエルシードってどんなんだっけ?」
「あーなんだっけ、ほらスライムっぽいやつ」
「純粋なジュエルシードだけの暴走体ですね、アニメで見たきりなのでどれくらい強いかはよく分からないですけど」
「でもあれだろ、現地の生物を取り込んでないから弱い方なんだろ?」
「そういう設定ですね、でも弱いと言っても体当たりでコンクリくらいなら普通に壊してますけどね」
アニメでは結構でかくて怖かったイメージがあるんだが大丈夫なんだろうかと少し不安に思っていると。
「そのくらいなら蓮もギルもできるだろ……はっ!つまり蓮とギルがジュエルシードの暴走体の可能性が……」
「ねーよ」
「ないですから」
「少しはネタに乗ってくれてもいいじゃねえか、せっかくの俺のウィットに富んだジョークが」
「ハハハッ、ナイスジョーク」
「おい、蓮。お前思いっきり鼻で笑いやがったな」
「むしろそれ以外にどんな反応を期待してたんだよ」
「おい蓮、久しぶりにキレちまったよ。屋上行こうか」
「二人ともそのくらいにして下さい、本命が来たみたいですよ」
ギルの言葉と同時に俺たちの頭の中に直接言葉が語りかけてくる。
(誰か僕の声が聞こえていますか)
その言葉が聞こえてくるのと同時に病院の方に二メートルほどの毛玉のような姿をした化け物が向かっていた。
暴走体が向かっているのを確認すると同時に一護が飛び出していく、その手には原作の一護が初めて死神になった時に持っていた自分の身長ほどもある斬魄刀が握られていた。
「とりあえず先手必勝!」
その掛け声とともに一護は暴走体に向かって横薙ぎに斬魄刀を一閃する、すると自分に向かってくるとは思わなかったのか暴走体は避けようとするそぶりも見せずに真っ二つになったかと思うとそのまま爆発して体がバラバラにあたりに散らばる。
「なんだ?勝手に爆発したぞ。これで終わりなのかよ」
あまりにもあっけなく暴走体が散り散りになったので一護があっけにとられたようにつぶやくが
「いや、まだみたいですよ油断しないでください」
ギルが言うとおり散らばった暴走体の体の破片が一つの場所に集まり始めていた。
「なんじゃこりゃ気持ち悪いぞ!」
体の破片から触手のようなものが伸びて段々と大きくなっていく様子は確かに見ていて気味が悪く、しかも中々再生するスピードも速かった。元の黒い毛玉に戻るのに数秒ほどで戻り今度は一護に対して触手を振り回して攻撃してきた。
不規則に振り回される触手は一護を狙うが一護は危なげなく触手を避け斬魄刀で打ち払っていく、しかし斬魄刀で切り払ってもすぐに再生していくために一護にも決め手がなく千日手になる。
「やれやれ、一護君だけでも対処できると思ってましたけどこれは相性が悪いかもしれませんね」
一護が突っ込んで行ってから黙っていたギルが俺の横に並ぶとそう言ってきた。その腕の中にはいつの間に病院から連れ出してきたのか一匹のフェレットが抱かれていた。
「おい、いつの間に連れ出してきたんだよ」
「いえ、一護君が突っ込んでいった時点で保護しておいた方がいいかと思いましてちょこっと窓から侵入させてもらいました」
さらっと不法侵入宣言されてもな、いやどっちにしろ連れてこなきゃいけなかったんだけど……
「あのう、あなたたちは一体……それにあのジュエルシードの暴走体と戦っているあの人は誰なんですか?」
俺がギルの行動力に頭を抱えていると腕の中のフェレット―ユーノ―が俺たちに声をかけてきた。
「僕たちはあなたの声を聴いて駆けつけてきたものですよ、急に助けを求める声が聞こえてそれを頼りに駆けつけてみればあの化け物と遭遇したというわけですね」
ギルがあらかじめ考えておいた設定を話す。
「それであの化け物はどうすれば倒せるんですか?このままだと一護君が危ないのですが」
「それはこれを使って封印を施せば」
そういってユーノは自分の首にかかっている赤い球をギルに差し出す。
「僕の言葉を繰り返してください」
ギルにそれを渡しユーノは起動パスワードを唱え始める
「我、使命をうけしものなり」
それに続いてギルも言葉を続けていく、それを見ていても暇なので俺は一護の方を見守ることにした。
相変わらず一護は触手の攻撃をよけながら隙あらば本体に切りかかっているが傍目に見ている限りでは一護の攻撃は効いているようには見えない。
「がんばれよー、今ギルが恥ずかしいセリフ唱えて頑張ってるからもう少しの辛抱だぞ!」
「お前も見てないで少しは手伝え!だんだん触手が増えてきてるんだぞ!」
俺の応援に一護が怒鳴り返す、確かに最初の時よりも触手の数が増えているような気がする。
というより一護が触手を切り飛ばすと再生する時に数を増やしているみたいだな、このままだと一護のキャパを超えそうなので援護することにする。
まずは
「一護!援護するから射線に被るなよ!」
そのまま球にした
形成位階にまで達した身体能力は水の上を走れるほどになっている、それほどの身体能力を全力で発揮した俺の投球は文字通り目にもとまらぬ速度で暴走体に向かっていきそのまま暴走体にぶつかっても速度を落とすことなくその体を抉り取りながらそのままどこかに飛んで行った。
「よっしゃ初めて試したけど案外うまくいくもんだな」
「いきなり何すんだよ!俺の真横すり抜けていったぞ!」
「ちゃんと当たらないようにしろって注意しただろ」
「いってから投げるまでが早すぎるわ!」
「蓮君も結構無茶しますね」
一護の言葉に反論しているとレイジングハートを起動しているはずのギルが話に入ってきた。
「ギル起動できたのか?」
「それがですね僕には適性がないとかで失敗しちゃいました」
「おい、じゃあどうすんだよこのままじゃあ決め手に欠けるぞ」
暴走体が先ほどの魔球でのダメージを回復しようと止まっているうちに合流した一護がどうするか聞いてくる。
「こうなったら誰か適性のある人が来ることに賭けるしかないでしょう」
ユーノがいる中でなのはのことを堂々と話すわけにはいかずギルが言葉を濁しながらそう言ってくる。
「じゃあ、とりあえずあれを動けないように捕獲する方向で行くか。どれだけ叩いても封印しなきゃ意味ないんだろ?」
「それなら蓮君の得意分野ですねフォローは僕がするので頼みますよ」
「任せろ。俺の
「死亡フラグやめろ」
原作のシュピーネさんのようにしゅぱぱぱと捕縛することは俺にはまだできないのでギルにフォローしてもらうことにする。
まずは再生しきり触手で攻撃しようとしてくる暴走にギルが王の財宝でけん制する、先ほどからの行動パターンから暴走体は一定のダメージを受けるとまず再生を優先することが分かっているので暴走体が攻撃をやめ再生しようと動きを止めた瞬間ギルが暴走体を囲むようにして宝具を突き刺す。
俺はその宝具を起点にして
こうすることで暴走体は再生していくにつれて自分で自分を締め付けていく、その上で爆発されないよう追加で糸を巻きつけていく。
こうしてあっさりと暴走体は俺の糸でできた繭にとらわれ文字通り手も足も触手も出ない状態にされた。
(うまくいってよかった)
俺が山場を越えたことに一息ついいていると俺の戦闘の緊張感から鋭敏になっている聴覚が人がこちらに向かって走ってきている音を捉える。
そして俺の過敏になっている感覚が俺にその人物がよく知っている人のものだと教えてくれる。
「おい、来たみたいだ」
「もう来たのか、案外早かったな」
「あまり夜遅くに出歩かせたくなかったんですけどね」
「夜遅いからまた明日ってわけにもいかないんだからしょうがないだろ……」
「よかった、僕の声が届いたんだね」
その人物は俺たちを見て目を丸くした後一言
「なんなのこれ……」
こうして真の主人公を加えて物語は幕を開けた。
戦闘描写が難しい……うまく伝わっているとうれしいです。
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