オリ主ハウス   作:朝苗

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もうサブタイトルのネタバレ具合がひどいです


第十一話 小学生ころとかもう覚えてないよ…

「本日はお日柄もよく……」

 

 ある四月の良く晴れた日に校長の声が体育館に響く、それを聞いているのは新品の制服に袖を通した多くの児童。

言わずと知れた入学式の光景である、現代の日本に生きている人ならば必ず一度は体験するこの行事である。

かくいう俺も前世で一度既に体験済みであるし、それは一護にしてもギルにしても同じであるが。

 

 (やべぇ、死ぬほどつまらん)

 

 前世で感じた昂揚感が全くない、新生活に対する期待もこれから行われる授業に対する一抹の不安も何もない。

こんなしょうもないことで既知感を感じるとは思わなかった。そりゃ司郎もあんなアッパーになるわ……いや、それがなくてもあの作品の登場人物は頭おかしいわ。

 

 「……入学おめでとうございます」

 

 そんなどうでもいいことを考えていたら校長の長話という入学式最大の難関が終了している。

この後はクラスごとにHRを行い今日の予定は終わりだ。

 

 整列して退出する時にちらっとこれからのクラスメートの方を見るがさすがリリカルな世界というべきなのだろうか、髪の色からして前世とは違っているのが分かる、さすがにアニメほど露骨な蛍光色な髪色の児童はいないが全体的に色素が薄く、なのはのような栗色や光の加減で茶髪に見える程度はざらにいるみたいだった。

しかし、こうして集団に紛れていると殊更目立っているのが、ギルである。

顔立ちからしてアジア系ではなく髪は完全に金髪、瞳は深紅とか見慣れている俺でもどこのラノベのキャラだよと言いたくなる、まぁ実際エロゲのキャラの容姿なのだが――このことを詳しく考えると俺たち全員にブーメランで帰ってくる――

 

 しかし、そんな俺たちに負けず劣らずド派手なのが一人座っているのも見える、なまじ名前が近いからなのかギルのすぐ近くにもう一人きれいな金髪をした少女が座っている。

 

 (あれがアリサかな?)

 

 はっきりと顔までは確認できなかったがおそらくはそうであろう、ギルの近くに座っているということは同じクラスの可能性が高い、もしかしたら全員同じクラスだったりしてとかテンプレなことを考えながら教室に移動していく。

 

 教室につくと担任から入学のお祝いの言葉と明日からの予定の簡単な説明があり、HRはすぐに終わり、家に帰ることになるのだが。

 

 「ギル、終わったし帰ろうぜ」

 

 「そうですね、その前に士郎さんたちに挨拶だけしましょうか」

 

 「ああ、そうだな。おーい!なのは!士郎さんたちに挨拶したいし一緒に帰ろうぜ」

 

 「いいよー。そういえばお父さんが今日入学のお祝いしてくれるけど蓮君たちも一緒にどうですかって言ってたよ」

 

 「おや、でもお邪魔になりませんか?」

 

 「そんなことないよ、ギル君たちが来てくれたらうれしいよ」

 

 「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな。ギルもいいだろ?」

 

 「そうですね、じゃあせっかくなので」

 

 三人で楽しく会話を交わしながら教室を出て士郎さんと合流しようと歩き出す。

 

 「おい、なんで俺のことを置いてこうとしてるんだよ」

 

 教室を出たところで一護がそう言って声をかけてきた

 

 「だって、なあ?」

 

 「そんなこと言われてもですねえ」

 

 「言いたいことがあるならはっきりと言えよ」

 

 言葉を濁す俺とギルに一護はそう詰め寄る、あまりはっきりと言い切るのは一護がかわいそうだと思いできるだけ触れないようにしていたのだが、あえてはっきりと言ってやるのが一護のためなのかもしれないと思い直し俺は一護にこう告げた。

 

 「だってお前だけクラス違うじゃねえか」

 

 「ぐはっ!」

 

 そう、俺もギルもなのはもまだ話しかけてもいないがすずかもアリサも同じクラスだというのに一護だけが隣のクラスなのだ。クラス表を確認した時の一護の顔があまりにも絶望していたので触れてやるのが気の毒だったのだが本人から話を振ってきたところ実はいじってほしかったのかもしれない。

 

 「そうですよね、まさか狙ったかのように一人だけ違うクラスとか予想もしてなかったですよ」

 

 「だよなー、いつかは違うクラスになるかも知れないとは思ってたけどさすがに一年目は同じだと思ってたよな」

 

 「なのはちゃんまで同じクラスなのに一護君だけですからね、あ、寂しくなったらいつでも遊びに来てくださいね」

 

 「おう、クラスは違っても俺たちは親友だからな!便所で飯食うくらいなら俺らのクラスに来いよ!」

 

 ここぞとばかりに全力で一護のことを煽る、おもしろいことがあれば全力を出すのが礼儀である。

 

 「もうその話はやめてください……」

 

 一護からギブアップの声が上がりさすがにこれ以上はかわいそうなのでこのくらいで勘弁してやることにする。

 

 「でも実際の話、一護君だけ別のクラスというのは寂しいですね」

 

 「いやーでもそうでもないぞ、こっちのクラスも面白いやつがいそうだしな、せっかく小学校に入ったんだから知り合いを増やすのも悪くない」

 

 ギルが一護を心配するが本当のところ一護はあまり気にしていないようだった。

最初に落ち込んでいたのは本心からだろうがそこからの切り替えは本当に早い、一護のこういうところはかなり尊敬している。

 

 「そうですか、では友達ができたら僕たちにも紹介してくださいね」

 

 「任せろ!なんてったって目標は友達百人でおにぎりだからな!」

 

 四人で話しながら歩いていると校門で士郎さんと桃子さんが出迎えてくれる。

 

 「四人とも入学おめでとう」

 

 「写真を撮ってあげるから校門に並んで並んで」

 

 桃子さんは開口一番にお祝いを言ってくれ、士郎さんは手に持ったカメラをこちらに向けて話しかけてくる。

校門の前に置いてある入学式の看板の前に全員で並ぶ。なのはを中心にして右隣に俺と一護、左隣にギルが立ちカメラに向かいポーズを決める。

 

 翠屋の片づけがあるらしい士郎さんと桃子さんといったん別れ、俺たちも制服から私服に着替えた後でなのはの家で遊びながら高町家の面子の帰りを待つことにする。

 

 「初めての学校の感想はどうだった?」

 

 大きなイベントも終わり一息ついたところでなのはに今日の感想を聞いてみることにした。

 

 「えっとね、緊張したけど楽しかったよ!」

 

 「仲良くなれそうな子はいましたか?」

 

 「まだ全然おしゃべりしてないからわからないけど、いっぱいお友達ができるとうれしいな」

 

 なのはの反応を見ながら自分が小学生だった時のことを思い出して懐かしくなる。

俺たちの昨日の会話はひどかったから余計になのはの純粋な反応がまぶしく感じる、ギルと一護の方を見ると二人とも同じ感想を持ったのかなのはを見る目が完全に保護者のそれになっている。

例えるなら妹分の成長を見守る近所の兄ちゃんのような……ってそのまんまか。

 

「ただいまーってギル君たち来てたんだ」

 

 「お帰りなさい美由希さん、お邪魔しています」

 

 四人で遊んでいると美由希さんが帰ってくる、話を聞いてみると美由希さんも今日は入学式なのでいつもより早く帰ってこれたのだという。

その後恭也さんも帰ってきて六人で遊びながら士郎さんと桃子さんを待つことになる。

 

 「そういえば一護は剣道に興味があるんだったな」

 

 会話の中で恭也さんがふとそう言った。

 

 「そうっすね、一度どこかで正式に習ってみたいとは思ってます」

 

 それに対して一護は少し崩した敬語で答える、前に俺たちがさんざんいじったせいか一護の敬語はどこか体育会系のものになっている。

 

 「それなら父さんの知り合いが剣道道場を開いているから紹介してもらったらどうだ?」

 

 「え、いいんですか?」

 

 「ああ、一護ももう小学生なんだそろそろ本格的なものはまだ早いが真剣にやるなら基本を身に着けるのは早ければ早い方がいいだろう。父さんに言いづらいなら俺からとりなしてやってもいいぞ」

 

 「いや士郎さんには俺から直接頼んでみます。ただのお遊び気分じゃないってところもちゃんと見せて」 

 

 恭也さんの言葉に一護は喜びながらも浮かれることはなくはっきりとそう言い切った。

 

 一護は今でも毎日霊体になって斬魄刀を振ってはいるが中々斬魄刀に認められるレベルに達していないのが現状である。

そこでいったん斬魄刀の始解は置いておいて刀自体の扱いに習熟することを目指すらしい、その一環としてどこかできちんと基本の型を教えてもらえるところを探していたのだが恭也さんはそのことを覚えていてくれたらしい。

 

 正直な話、一護以外の俺とギルも特典に関してはある意味打ち止め感が出ている。

俺の渇望もこのまま普通に暮らしていくぶんにはこれ以上は望めないだろう、ギルも宝具の射出までは集中すればこなせるようにはなったがそれでも原作のように剣群が雨のように降り注ぐ飽和攻撃には程遠い弾幕も薄く弾速も遅い俺ならば見てからよけれる程度のものでしかなかった。

ここから先は単純な特典の力ではなくそれをどう活かすかでしか大幅な向上は望めないだろう。

だからこそ一護は斬魄刀の能力を頼むのではなく基礎を固めるために剣道を習う道を選んだ。幸い士郎さんの知り合いの剣道道場ならばその実力も折り紙つきだろうからこの提案は一護にとっては渡りに船であろう。

 

 「俺が強くなったら恭也さんも試合してくださいね!」

 

 「ああ、その時は手加減してやろう」

 

 「そこは全力で行くぞっていうところでしょう」

 

 恭也さんの冗談に一護が苦笑いをしながら返す。

 

 「恭ちゃんには負けるけど私だって結構強いんだけどなー」

 

 二人だけで盛り上がっているのが寂しかったのか美由希さんも会話の輪に入る。

 

 「もちろん美由希さんの事も忘れてないですよ」

 

 「本当かなー?」

 

 「本当ですってば!」

 

 今あっちに関わるとめんどくさいことになる予感がするので美由希さんと恭也さんの事は一護に任せてこっちはこっちで楽しむことにする。

そろそろ士郎さんと桃子さんが帰ってくる時間らしいのでせっかくだから折り紙で飾り付けでもしようということになりそれの作成に忙しいのだ。

 

 

 「ねえ蓮君こんな感じでいいのかな?」

 

 細長く切った折り紙を丸めて糊をつけるという単純作業に刺身にタンポポを乗せるバイトを思い出しながら作業を進めていた俺になのはが声をかけてくる。

その手には俺の赤一色の折り紙リースとは違う配色を考えたカラフルなものが握られていた。

 

 「いや、お前のそれにどうアドバイスしろっていうんだよ」

 

 「でもでも、ここのところとかちょっとずれちゃったんだけど大丈夫かな?」

 

 「全然わからんから気にするな」

 

 「そうかな……」

 

 「そんなに時間もないから細かいことは気にするな、そもそも今日の主役はなのはなんだから堂々としていればいいんだよ」

 

 「そっか、そうだね!」

 

 俺のフォローが効いたのか元気を取り戻したなのはは機嫌よく飾りつけを再開する。

その様子を見ながら俺はさっきのなのはの態度を思い返す。

最近は頻度が減っているがやはりなのはには今もどこかに良い子でいなくてはならない思っている節があるように感じる。これが俺の原作知識からくる自意識過剰ならいいのだがあまり楽観視できることでもない。

なのはがよく俺たちの家に入り浸っていたことから原作よりも孤独感は解消されただろうし、俺たちも肉体的にはともかく精神的には年下のなのはだ、幼少期特有の性差による排他なんかするはずもなくずっと仲良く遊んできたし、ギルと一護はもちろん自覚はないが俺もなのはのことは妹分のように思ってかなり甘やかしていたように思えるが時折周りに対する気遣いが年不相応な気がする。

 

 (まあ小学校で人間関係の経験を積めば何とかなる範囲か)

 

 いろいろと不安要素は絶えないが俺たちにできることは限られているのだ、ならばとりあえずは今日を楽しむしかないだろう。

 

 飾りつけが終わるころに士郎さんと桃子さんが帰宅し、桃子さんは手製のケーキを作ってきており夕食後に全員で切り分けて食べた。

一護は改めて士郎さんに剣道道場を紹介してもらうように頼んで今度釣れていいてもらうようだ。

 

 これから原作まで自分たちに何ができるかはわからないができる限りのことをやっていこう、そう決心しなおした一日だった。

 




しばらくはさらっと流して原作に入ろうかなと思ってます。

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