自分たちはこの世界にどれだけの影響を与えているのだろう
原作の開始まではまだまだ時間があり、最近は修行も打ち止め感が出ていたので動きの精度を高めるためにネットなどで適当に見つけた武術の型を反復している今日この頃、暇になった時はそんなことをよく考えるようになった。
俺たちの介入の結果士郎さんの怪我は軽くなった、それは間違いないしそれが間違いだったとも思わないが、それでもなのはの孤独感は解消されなかった。
確かに入院している士郎さんのお世話がない分だけそれもましなのかもしれないがだからと言ってまだ幼いなのはにだから我慢しなさいとは言えないだろう。
この世にはバタフライエフェクトや歴史の修正力といった相反する言葉も存在する、これから時間が経過するとともに俺たちの介入する場面も増えるだろうし、そうすると原作との差異もどんどん出てくると思うんだがそれに関しては全員その都度臨機応変に対応していくしかないってことで意見は一致している。
まぁとにかくつらつらと何を考えているのかというと、リリカルなのはの世界は俺たちが元々いた世界と同じ歴史を辿るのかが気になる、俺たちがいるせいで本来の歴史から外れることが怖いって思ったんだ。
そして、どうして今さらそんなことが気になるのかというと。
「あー蓮君また先に見始めっちゃってる!なのはも一緒に見たいって言ったのに!」
翠屋に行った日から昼ご飯を食べた後に俺たちの家に遊びに来るのが日課になったなのはの叫びが居間に響く。
「おう、なのは遅かったな」
「遅かったな……じゃないよどうしていっつもなのはのこと待ってくれないの!なのはだってドラちゃん見たいのに!」
やっぱドラえもんは大山のぶ代さんだな!っていうことだ。
この世界の大体は元の世界と変わりはないようでやっているテレビ番組に関してもそうであった。
流石の俺もまさか昔のドラえもんを転生先で生で見れることになるとは思わなかった。
そのことが分かった時にギルも若返りの薬を使ったらずっとこのメンバーで続くんじゃ……とか怪しいことをつぶやいていたがそれに関しては全力で阻止をした。
そんなこんなで最近のマイブームは懐かしアニメ鑑賞(主観)なのである
「でも蓮君本当にドラちゃん好きだよね、なんで?」
なのはが拗ねるのでまた初めから見直していたところそんな質問がなのはからきたので
「後数年たつと声が変わっちゃうからかな」
そう、さらっと答えたんだが
「えー、うそだー」
それが嘘じゃないんだなと思いながらこの貴重な時間を過ごしていく。
ちなみに今日は一護もギルも忙しいらしく朝から顔を見ていない。
ギルはもう言うまでもなく仕事だろうし、一護は一護で最近何かこそこそと練習しているみたいだ、そういうときはネタが割れると面白くないので気づかないふりをするのが暗黙のルールとなっている。
「なんだかお腹すいてきちゃったね」
ドラえもんからのクレヨンしんちゃんというゴールデンタイムを満喫し、その後でポケモンに繋げるという涙腺直撃コンボを食らっている俺に対してなのはがそんなことをつぶやいてきた。
その言葉に時計を見るとちょうど時間は三時を指しており、おやつに何か食べるにはいい時間だった。
「じゃあなんかおやつでも食べるか?」
なのはにそう提案すると二つ返事でうなずいたので台所を物色してみる。
結果発見したのは、既製品のお菓子はなく、小腹を満たせるようなものもなし。
あるのは小麦粉くらいというありさまだった。
「そういえば昨日三人で闇鍋した時にあるもん全部突っ込んだんだっけ……」
昨日何かの漫画でも呼んだのか異様にテンションの高い一護によって企画された闇鍋は家にあるものを片っ端から突っ込みその上でギルが王の財宝から取り出した出展不明の目隠しを三人でつけるという無駄に本格的なものであった。
肝心の闇鍋の味だが、俺の語彙ではとても表現できるものではないということだけ言っておこうと思う。
ただ、恐らく一番被害を受けたのは戸棚の奥に隠してあった秘蔵のロマネコンティを勝手に入れられていたギルであるのは追記しておこう
「じゃあ翠屋に行く?今の時間ならお客さん少ないかもしれないよ?」
なのはがそういって翠屋に行くことを提案してくれるが今は結構がっつり行きたい気分なのだ。
「……というわけでどうしたらいい?」
「というわけも何もスーパー行けばいいじゃないですか」
困った時のギル頼みということでなのはを台所に置いて部屋で書類整理していたギルに知恵を借りに行ったところ返ってきた言葉はそんな身もふたもないものだった。
「それがめんどくさいんだけどなぁ、何とかならないか?」
「多少は材料が残っているならやりようもありますけど、小麦粉と調味量しか残っていないとなるとさすがにどうしようもないですよ。うどんでも打ちますか?」
そんなことしてたら夕飯になるんだが……
「あ、そういえば昨日の倉庫整理でいいものがありましたからそれを使いましょうか」
「いいもの?」
最近、王の財宝の中身を確認する作業が倉庫整理扱いに格下げになっている現実を見ながら返事をする。
「ええ、たこ焼き器ですよ」
そういいながらギルは後ろに展開した王の財宝からたこ焼き器を取り出してくる。
「なんでそんなもんが入ってるんだよ……」
「僕も知らないですよ、将来たこ焼きの英雄でもできるんじゃないですか?」
どんな英雄だよそれ。
「まあ他に候補もないから仕方ないか、今日のおやつはたこ焼き祭りにするわ。
ギルも参加するか?」
「ええ、こっちがひと段落したら顔を出します」
ギルはそういいつつ視線を書類に戻し作業を再開しだしたのでたこ焼き器を両手に持ち台所に向かう。
「おーい、なのは!ギルがたこ焼き器くれたからタコ買いに行ってたこ焼き祭りしよーぜ」
「え?たこ焼き?ギル君そんなものもってたの?」
「大阪の人はみんな持ってるっていうくらいなんだからギルが持っててもおかしくないだろ」
「そんなことないと思うんだけどなぁ」
うん、言っていてなんだが俺もそう思う。
しかし、そうは言っても仕方がないわけで俺はなのはとタコを買いに行くためにスーパーへと出発した。
スーパーの鮮魚コーナーでシメサバに対して微妙な気分になりながらタコの細切れを買い、ついでにネギ・天かす・ソースを買い足していく
(んー、ついでに晩飯も買っていくか)
そんなことを考えながらなのはと二人で欲しいものをどんどんカートに積んでいく。
「ねえねえ蓮君、たこ焼きにチーズとか入れたらおいしいかな?」
「お!トッピングか!チーズとかも入れようぜ」
雑談しながら買い物を進めていくとカートの中身では何を作るつもりなのか予想できないラインナップになっていっているが気にすることもないだろう。
食材なんて案外使い切れるものだというのをこの世界に来てから思い知った、なんせ住んでいる住人の半分が既に人間やめているようなものなのだ食中毒にかかるのなんか一護くらいのものだがあいつに関してはチートとか関係なしに体が頑丈だから心配ないだろう。
「さて!材料はそろったことだし調理を開始するぞ!」
「おー!」
作り方はいたってシンプルに
①ボウルに溶いた卵・だし小麦粉を入れだまにならないようにかき混ぜる
②たこ焼き器を使い焼く
③ソースをつけて食べる
「簡単すぎるだろ」
「粉もんなんてそんなもんですよ、おやつ感覚でさくっと作ってさくっと食べるもんです」
あまりにも簡単すぎて驚愕している俺に二階から降りてきたギルのツッコミが刺さる。
「おいしーね、次はなのはもくるくる回してみたい!」
たこ焼きの第一陣は俺とギルとなのはによってあっさりと全滅し、なのはが第二陣を焼きたいと言ってくる。
「それはいいけど晩飯が食べられるように考えて焼けよ」
「わかってまーす、次はいろいろトッピングも試してみるね!」
桃子さんの娘だけあってなのはも料理に興味があったのかもしれない、うれしそうにたこ焼き器に生地を流し込むなのはを見ながらそう思った。
「あ、そういえば蓮君にちょっと手伝ってもらいたいことがあるんでした」
俺と一緒にたこ焼きを焼いているなのはを眺めていたギルがそんなことを言ってくる。
「うん?どうした?」
「いえ、ちょっと僕たちの戸籍関連で蓮君にも何枚かサインをもらわないといけないところがありまして…」
「ああ、そんなことか。じゃあ今のうちに終わらせようぜ」
今なのはが使っているたこ焼き器はギルが出してきただけあって謎の安全性があり鉄板に触れてもやけどをしない不思議なたこ焼き器だ、ここでなのはを残していても問題ないだろう。
そう考えた俺はなのはにひと声かけてギルの部屋に行くことにした。
「で、どれにサインすればいいんだ?」
「ええ、こっちとの太枠とここに印鑑ですね」
「了解っと……でも実際俺たちの戸籍とかどうするつもりだったんだろうな神様連中は」
「さぁ?それは僕にも何とも、ただ……」
「ただ?」
「このことに気付かないままだったら僕たちが小学校に入学する年に聖祥から入学のお手紙が届いていたかもしれませんよ」
……あり得そうだから困る
そんな何とも言えない雰囲気になりつつも書類の数枚はすぐに片付き俺とギルはもう一度たこ焼きを食べに台所に向かう。
するとなのはの姿は見えず机の上には焼きあがったばかりであろうたこ焼きが皿の上に盛り付けられて置かれているだけだった。
「あれ?なのはがいないな」
「お手洗いでしょうかね?まあ僕らに一言もなかったということはすぐに帰ってくるでしょうから待っていましょう」
「それもそうだな」
そう話しながら席に着くと置かれているたこ焼きにソースと青のりをかけてなのはを待つことにする、すると予想通りにすぐになのはが帰ってきたのだが。
「あれ、蓮君たちがいる。お用事は終わったの?」
「おう、すぐ終わるって言ったろ。それより一人でたこ焼き焼けたんだな、偉いぞ」
「にゃー、そんなことないよ……ってもしかしてソース掛けちゃったの!?」
「そりゃたこ焼きにはソース掛けるだろ、出汁で食いたかったのか?」
「そうじゃなくて……おやつ用にしようと思ったから結構いろんな物入れちゃったんだけど」
「いろんなもんってなに入れたんだよ」
「それは、チョコとかマシュマロとか……」
これはダメなパターンですわ。
百歩譲ってそのままなら食べられるだろうけどソースも青のりもかけてしまってはもはや見える地雷と化したこのたこ焼きもどきを前に俺たちは立ちつくすしかなかった。
しかし見た目は良くできている。パッと見ではどう見ても美味しそうなたこ焼きにしか見えない、これをそのまま捨ててしまうのはあまりにももったいない。
「見た目は美味しそうなんだよな…」
「ええ、見た目はいいんですよ」
「普通のたこ焼きにしか見えないの」
「誰かが食べてるのが見たいよな」
「それは面白そうですね」
「えっと、それはちょっとひどいんじゃないかなー?」
一人ほど反対意見はあるようだが俺とギルの中ではこれを処理する人物は決定している。
「おーい!一護!なのはがたこ焼きつくたっけど食べるよなー!」
おそらく一護もそろそろ修行が終わりだったのだろう俺が声をかけるとすぐに返事を返してきた。
「たこ焼き?ラッキーちょうど腹減ってたんだよ!」
ぱたぱたと音を立てて小走りで台所に入ってくる。
「はい、一護君、爪楊枝ですよ」
「サンキュー、あれギル達は食わねえの?」
「ええ、僕たちは先に頂きましたから。これは一護君が全部食べてください」
「なんか悪いなー。本当に全部もらっちまってもいいのか?」
「ええ、その代りに残さないでくださいね」
「当たり前だろ!」
ギルが流れるように一護から言質取ったんだが。
しかもたこ焼きに意識が言っている一護とまだ付き合いが浅いなのは達は気づいていないが俺にはギルの表情に愉悦が浮かんでいるのが分かる。
あいつ絶対に闇鍋のこと根に持ってるだろ
「じゃあ、いただきます!」
一護はそう言うとたこ焼きを一つとり口に運んだ。
そして口に含んで咀嚼していくうちにどんどん表情がゆがんでいく
「おい、なんか甘いんだけど」
「どれどれ?ああチョコ味ですね」
「なんでチョコ味なんか混ざってるんだよ!」
「いやー、ちょっと些細な行き違いがありまして、まだまだあるのでいっぱい食べてくださいね」
「あのーいやだったら残してもいいよ」
一護がギルに文句を言っていると製作者であるなのはが責任を感じてそんなことを言ってくるがなのはにそう言われてじゃあ無理だから残すとは言えないのである。
「いや!せっかく俺のために作ってくれたんだから残すわけにはいかないだろ!」
「えー別に一護君のために作ったんわけじゃ……」
なのはの発言にも気づかずに一護はどんどん口にたこ焼きを詰め込んでいく。
「じゃあなのはちゃんもそろそろお家に帰った方がいいですよ」
「そうだな、もういい時間だし。送っていくわ」
「え、でも一護君放っておいても大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫ですよ」
「そうだな、一護だし。腹は壊さないだろうから気にするな」
「うーん、本当にいいのかなぁ」
釈然としない様子のなのはを強引に説き伏せて家に送っていく。
その後ろではチーズマシュマロ味にあたったらしい一護がうめいていたがチーズあんシメサババーガーよりどう考えてもましなので放置することにした。
余談だが今日の事がきっかけでなのはが本格的に桃子さんから料理を教えてもらうことにしたそうだ。
学園祭が終わったので週一ペースに戻していきたいですね。
それともう十話なのにまだ原作に入れていないという(-_-;)
ちょっと頑張らないといけないですね
誤字脱字・感想待ってますのでよろしくお願いします