劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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原作22巻、コミックス来訪者編3巻、優等生8巻、四コマ編3巻発売日です。ついでに999話みたいですね


泉美の失敗

 泉美が完成させた料理を見て、深雪と水波は表情を曇らせる。途中までは問題なく出来ていたので、その横で自分たちも調理を開始させたのだが、完成を目前にして泉美の異変に気が付いたのだが、時すでに遅し……彼女の目の前には良く分からない物体が所狭しとおかれていた。

 

「えっと……泉美ちゃん? これはいったいどういう事ですか?」

 

「申し訳ございません……深雪先輩がお料理している姿に見惚れてしまいまして……」

 

「これを達也様にお食べになってもらうつもりなの?」

 

「いえ、さすがにこれはお出しできないと自分でも分かっています……」

 

 

 いくら達也でも、これを食べて平気なわけがないと泉美も自分が作った物体がそれほど酷いものであると自覚はしている。深雪は自分たちが目を逸らしたのも原因だと受け止め、キッチンに達也とほのかを呼んだ。

 

「何かあったの? ……うわぁ、これはちょっと」

 

「申し訳ございません、光井先輩」

 

「とりあえず片づけなきゃね。今日は仕方ないよ」

 

「司波先輩も、また次の機会にでもお願いします」

 

「あぁ、それは構わないが、泉美の見た目からここまで酷いとは思ってなかったのだが」

 

「それがですね――」

 

 

 泉美の代わりに水波が説明を始めると、達也もほのかも一応は納得した。だが、表情が多少引き攣ってしまったほのかを、誰も責める事は出来なかった。

 

「達也様、本日は私たちが用意したもので勘弁してあげてください」

 

「別に怒っていないが」

 

「ですって。良かったわね、泉美ちゃん」

 

 

 最初から達也がこの程度で怒るとは思っていなかったが、あえて言葉にしてもらう事で泉美の気持ちを楽にさせようとした深雪ではあったが、泉美にはあまり効果が無かった。

 

「やはり私はキッチンに立つべきではなかったのかもしれませんね……」

 

「誰だって失敗はしますよ。あまり気にし過ぎると次に進めませんので、この失敗はしっかりと受け止め、次に成功する為の糧にしましょう」

 

「ありがとう、水波さん。でも、ここまで酷いなんて自分でも思ってませんでした……」

 

「次は私がいない方が良いかしら?」

 

「そ、そんなことはありませんわ! 深雪先輩が悪いわけではありません! 悪いのは深雪先輩に見惚れていた私ですわ!」

 

「だから、次は私ではなくほのかに教われば泉美ちゃんが料理に集中出来るのではないかと思ったのだけど」

 

「こんな失敗はもう二度と致しません! ですから、次も深雪先輩が教えてくださいませ」

 

「その言い方だと、泉美ちゃんは私に教わりたくないみたいだね」

 

「あっ! そ、そんなつもりは毛頭ございません!」

 

「分かってるよ」

 

 

 アイコンタクトで責めるようなことを言えとほのかに合図を出した深雪は、自分が狙った通りに慌てふためく泉美を見て、思わず笑ってしまった。

 

「少しは気がまぎれたようね。それじゃあ、今日はこれを片付けて終わりにしましょう。食事の用意も済んでいる事ですし、その後はみんなで食事にしましょう」

 

「はい。あの……本当に申し訳ございませんでした」

 

 

 最後にもう一度頭を下げて、泉美は水波と片づけを始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほのかの家から自宅に戻った泉美は、今日の失敗をもう一度反省してした。

 

「泉美、何かあったのか?」

 

「香澄ちゃん……いえ、ちょっと失敗してしまっただけですわ」

 

「ふーん、泉美が失敗するなんて珍しいね。書類でもひっくり返したの?」

 

 

 いくら双子でも、泉美の失敗が何なのか分からなかった香澄は、生徒会室で失敗でもしたのだろうと考えていた。

 

「いえ、今日光井先輩のお宅で深雪先輩と水波さんに料理の手ほどきを受けてきたのですが、そこでちょっと失敗してしまいまして」

 

「そうなんだ。でも、泉美だって最低限は出来るんじゃなかったっけ?」

 

「最低限では駄目だと思ったのですわ。昨日の詩奈ちゃん、今日の光井先輩と、お料理が上手だと女子力のアピールになるのだと思って」

 

「女子力? そんなもんどうでも良いんじゃない? そんなのに惹かれる男子なんて、こっちから願い下げだし」

 

「そもそも香澄ちゃんにはもう司波先輩がいるじゃないですか」

 

 

 泉美がストレートに言うと、香澄は一瞬で顔を真っ赤にした。

 

「と、ところで司波会長が一緒って事は、司波先輩もいたんでしょ? あの人も料理とか出来るのかな」

 

「深雪先輩の口ぶりでは、出来るようでしたよ。ただ、深雪先輩や水波さんがしてしまうので、司波先輩が自分で調理する事は滅多にないようですが」

 

「へー、ちょっと意外だな」

 

「もしかしたら、香澄ちゃんよりお上手かもしれませんね」

 

「それはちょっと凹むかもしれない……」

 

「でもまぁ、四葉の次期当主の身の回りの世話は侍女の方々がしてくださるでしょうし、香澄ちゃんたちが司波先輩の食事を用意する事はないのではないでしょうか」

 

「でも、今は司波会長や水波がしてる訳でしょ? だったらボクたちもする機会があるかもしれないじゃん」

 

 

 香澄の表情が引き締まったのを受けて、泉美は次回の機会には香澄も呼んだ方が良いのではないかと思った。

 

「せっかくですし、次回は香澄ちゃんも参加しては如何でしょう? 深雪先輩も水波さんも、一人増えてたところで苦にするよな腕前ではありませんし」

 

「場所は? 司波会長の家?」

 

「いえ、それだといろいろと問題があるだろうという事で、光井先輩が場所を提供してくださいました」

 

「そっか。それじゃあ次はボクも参加しようかな。どうせ司波先輩に食べてもらえる機会なんて無いんだろうし」

 

 

 その『どうせ』があったかもしれないと、泉美は心の中で呟いたのだった。




本屋三軒はしごして全部買えました



また原作とやりたい事が被った!?

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