劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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映画で活躍するみたいなので、ここでは相変わらずのポンコツっぷりを発揮してもらいましょう


IF深雪VSリーナ編 その1

 ミアを引き連れて司波家を訪れたリーナであったが、家の中に人の気配は無い。春休みだから家にいるだろうと勝手に思い込んで遊びに来たのだが、当てが外れてしまったのだった。

 

「何処に行ったのかしら……」

 

「だから事前に連絡を入れた方がと言ったんです……」

 

「結局はミアだって電話しなかったんだから同じよ」

 

「リーナがしなくていいと言ったんじゃないですか……」

 

 

 元上官であるリーナに自分が逆らえるわけがないと主張するミアではあったが、リーナにはその理屈は通用しないようで、彼女も同罪であると決められてしまったのだった。

 

「仕方ない、ミユキに電話してみましょう」

 

「達也さんじゃないんですか?」

 

「だって、恥ずかしいじゃない……」

 

「リーナがミスするのは今に始まった事ではないですから、別に恥ずかしがる必要は無いと思うのですが?」

 

「何よそれ! って、その恥ずかしいじゃないわよ! てか、誰が恥ずかしいって!!」

 

「散々ミスした挙句に達也さんにフォローしてもらったのは何処の誰でしたっけ?」

 

 

 パラサイト事件の際、リーナは宿主を殺しまくった挙句、自由になったパラサイトの始末を達也にしてもらうという失態を犯している。だからミアは今更恥ずかしがる必要は無いと言ったのだが、リーナが意図した恥ずかしいは、どうやら別の理由だったのだ。

 

「電話越しでもダーリンの声を聞くのは恥ずかしいじゃない」

 

「じゃあ会わずに帰りますか?」

 

「それは嫌よ! せっかく会いに来たんだから」

 

「電話越しは恥ずかしいのに、直接なら恥ずかしくないんですか?」

 

 

 ミアの当然ともとれる疑問に、リーナは力強く頷く。どうやら彼女の中では、顔さえ見えれば恥ずかしくない、という理屈が成立しているようだった。

 

「なかなか会えないんだし、直接会う分には問題ないのよ」

 

「はぁ……」

 

 

 ミアが納得したと判断して、リーナは深雪に電話を掛けたが繋がらなかった。

 

「何処にいるのかしら……ちょっとキョウコにお願いして現在位置を調べてもらおうかしら」

 

「親戚の方、でしたっけ……ですが、リーナと違って忙しいのではありませんか?」

 

「何よそれ!? ワタシが暇してるみたいじゃない!」

 

「違うんですか?」

 

 

 ミアの態度に、リーナは絶句した。確かにUSNA軍を辞め、日本に帰化したはいいが、特にすることも無い現状は暇してると捉えられても仕方ないが、リーナは断じて認めようとはしなかった。

 

「今真由美さんに確認して、達也さんたちは沖縄にいるそうです。今日の昼頃にこちらに戻ってくるそうなので、どこかで時間を潰しますか?」

 

「何でマユミが知っててワタシに連絡が無いのよ」

 

「真由美さんも聞いた訳ではなく調べたらしいです。そもそも、達也さんたちに連絡する義務は無いわけですし、知らされてなくて当然だと思いますが」

 

「なんか釈然としないわね……そういえば、ミアはまだこの家の鍵を持ってるのよね?」

 

「一応は……何かあったら手伝いに来てほしいと深雪さんや水波さんに頼まれているので、そのまま預かっておりますが」

 

「それじゃあ、中で待たせてもらいましょうよ。掃除とかしておけばいいんでしょ?」

 

「リーナは家事一切が出来ないじゃないですか……」

 

「失礼ね! 掃除くらい出来るわよ!」

 

 

 ミアが取り出した鍵をかっぱらい、リーナは意気揚々と司波家へ入っていった。ミアは一応深雪に連絡を入れておき、後で不法侵入として騒がれないように手を打ってからリーナの後へ続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってきてすぐ、深雪はリーナに雷を落とした。

 

「それで、何をどうやればこんなに散らかるのかしら?」

 

「ミユキには分からないの? この芸術が」

 

「芸術? ゴミ箱をひっくり返してお皿を割って、挙句に椅子の脚をへし折ったこの状況の何処が芸術なのかしらね? 無知な私にリーナが言う芸術を教えてくれないかしら?」

 

 

 額に青筋を浮かべて迫ってくる深雪に、さすがのリーナも頭を下げた。

 

「ゴメンなさい……掃除くらいと意気込んだのは良かったのだけども……難しいのね、掃除って」

 

「とりあえずゴミを片付けなさい」

 

「割ったお皿とかはどうすればいいのかしら? って、あら?」

 

 

 先ほどまで散らばっていた皿の破片が無くなっており、テーブルの上には割れる前の皿が置かれていた。よく見ればへし折った椅子の脚も元に戻っており、リーナは達也に視線を向けた。

 

「やっぱり精神干渉系の魔法師なの?」

 

「細かい事を気にしてる場合じゃないわよ! とにかく散らかしたゴミを片付けてちょうだい! 勝手に家に入っていた事へのお説教はその後でたっぷりとしてあげるわ」

 

「勝手にじゃないわよ。ミアがちゃんと連絡してくれたでしょ?」

 

「それでも許可する前に入ってたら不法侵入と変わらないわよ! そもそも、何しに来たのかしら?」

 

「愛しいダーリンに会いに来るのに理由が必要かしら? ワタシはミユキみたいに毎日無条件でダーリンに会えるわけじゃないのだから」

 

「無条件で会える? 私だって無条件なわけじゃないわよ。四月からは達也様はこの家に帰ってくることが少なくなるし、学校でだってなかなか会えなくなるでしょうし……」

 

「深雪様、とりあえずアンジェリーナ様へのお説教と部屋の片づけを済ませてからに致しましょう」

 

「そうね……」

 

 

 話が長くなりそうだったので、水波が深雪にそう提案し、とりあえず部屋の片づけを済ませる事にしたのだった。




本当に活躍するのだろうか……

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