劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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真由美と摩利は相変わらずの展開に……


三人の関係

 生徒会室に向かう途中で、真由美はふと気になった事を達也に尋ねる事にした。

 

「深雪さんたちは忙しそうなのに、達也くんはお仕事しないの?」

 

「俺の分はもう終わっています。手伝おうにも、深雪もほのかも水波も泉美も頑なに手伝わせてくれないものでして」

 

「そうなの? 前に泉美ちゃんが『司波先輩は自分の分の仕事を終わらせたらさっさとどこかに行ってしまう』って文句を言ってた気がしたけど」

 

「そ、それはまだ司波先輩の力量を測り損ねてた時の事です! 今になってようやく中条先輩の意図していたことが理解出来ましたので、私も自分の分はしっかりと自分でしなければと思っただけです」

 

 

 達也にあれもこれもと任せていたら、達也が長期にわたって学校を休まなければならなくなった時に生徒会が立ち回らないという理由から、あずさは達也に必要以上に仕事を任せる事をしなかった。それは会長が深雪に代わってからも同じで、達也は自分の仕事が終わったら比較的時間を持て余しているのだ。

 

「相変わらず優秀なようだね、君は。去年の九校戦でも三高を手玉に取ったらしいじゃないか」

 

「大したことはしてませんよ。精々『カーディナルジョージ』の精神を掻き乱したくらいです」

 

「……性格の悪さも相変わらずのようで安心したよ」

 

 

 笑顔が引き攣ってるのを自覚しながらも、摩利は達也に皮肉を言わなければ気が済まない様子だった。

 

「あぁ、そう言えば今、生徒会室にはエリカが遊びに来てますよ」

 

「何っ!? あっ、いや……」

 

「摩利のエリカちゃん恐怖症は相変わらずね」

 

「別に恐れてなどいない! ただ、シュウでも頭が上がらない相手だし、剣術ではエリカに敵わないからな……良いように小突き回された挙句に床に倒される未来しか見えないんだ……」

 

「魔法を使えば勝てるんじゃないの?」

 

「魔法勝負なら勝てるかもしれないが、エリカと対峙するときはどうしても剣術の要素が強いからな……達也くんのように蹴り倒す自信もないし」

 

「別に蹴り倒してませんし、あれは剣術の勝負ではなくお遊びのようなものです」

 

 

 自分が勝てない相手に簡単に勝っておきながら、それをお遊びと表現する達也に、摩利は複雑な思いを抱いたのだった。

 

「ところで司波君は進学するのですか?」

 

「まだ決めかねてますね……してもいいのですが、家の事情とかもありますし」

 

「魔法大学ならその辺りは自由よ? 私も十文字くんもいるし」

 

「司波さん、北山さん、光井さんなど、主だった婚約者の方は魔法大学に進学するでしょうし、司波君も魔法大学に進学すればいいのではないでしょうか」

 

「防衛大学に進む人もいますし、その辺りの折り合いも考えなければいけませんので」

 

「大変だな、そういうのを考えなければならないというのは」

 

「……十文字先輩だって、他人事ではないと思いますが」

 

「俺は今のところ決まった相手はいないからな。七草は司波に取られたようなものだし」

 

 

 別に達也から婚約を申し込んだわけではないので、克人の表現は正しいとは言えないが、特に反論する理由も見いだせなかったので流すことにした。

 

「それにしても、初めて見た時から只物じゃないと思ってたけど、まさか達也くんがねぇ~」

 

「戦術であの服部を沈めただけの事はあるな」

 

「それとこれとは話が違うと思いますが」

 

「先輩方の関係も相変わらずなんですね」

 

 

 達也のツッコミに、三人はそれぞれ別の反応を見せた。真由美は当然だという感じに、摩利は複雑な思いがありそうな感じ、そして鈴音は少し恥ずかしそうな感じに笑みを浮かべた。

 

「摩利やリンちゃんとはこれからも仲良くしてくつもりだし、リンちゃんとは同じ人のお嫁さんになるわけだしね」

 

「私は嫁というよりも司波君の研究のお手伝いをしていきたいという思いもありますけどね」

 

「なら何で婚約を申し込んだんだ? 研究者として四葉に認めてもらえばよかったじゃないか」

 

「それはその……私も一応女ですし」

 

「そう言う摩利はどうなのよ? 千葉家に嫁入りする準備は出来てるの?」

 

「そ、そう言う事を言うな……恥ずかしいだろ」

 

「自分が言われて恥ずかしい思いをすると分かってるなら、人に言わないでください」

 

 

 女子三人のやり取りを、克人は一切動じずに眺めている。その隣では、泉美が姉の恥ずかしい部分を見たという感じの表情を浮かべていた。

 

「十文字様、姉はこんな感じだったのですか……」

 

「割と何時も通りだな」

 

「十文字くん!? 私だって、何時もこんな感じなわけじゃないのよ!」

 

「いや、お前は何時もこんな感じだろ」

 

「そうですね。真由美さんは何時も通りですね」

 

「寄ってたかって酷いわ! 達也くん、お姉さんを慰めてちょうだい」

 

 

 するすると達也との距離を詰め、腕にしがみつこうとしたタイミングで、生徒会室から深雪が現れ真由美と達也との間に割って入った。

 

「泉美ちゃん? まだお仕事が残ってるわよ」

 

「は、はい! 深雪先輩」

 

「それから、先輩方は応接室を取っておきましたので、そちらでおくつろぎください。水波ちゃん、先輩たちを案内して差し上げて」

 

「かしこまりました、深雪様」

 

「何だか女王様みたいだな、君の妹は」

 

「従妹ですけどね」

 

 

 いきなり現れてテキパキと指示をする深雪を見て、摩利がそのように零し、達也も見当外れなツッコミを入れたのだった。




リンちゃんも大人びてますがね……ちょっと崩れ始めてる気が……

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