劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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この二人なら仲良く共有出来そうですしね


IF親友ルート

 ほのかのマンションで達也と同棲を始めた雫は、ほのかと一緒に達也が帰ってくるまでの間を過ごしていた。

 

「達也さん、毎日こんなに朝早くから起きてたんだね」

 

「毎日ではないみたいだけど、大抵の日はあの時間に起きて、体術の特訓に出かけてたらしいよ」

 

「そう考えると、深雪って凄いんだね」

 

「達也さんが出かける日は、大抵早起きして見送りをしてたみたいだからね」

 

 

 春休みになり、時間的余裕が出来ているからこそ、ほのかも雫も達也を見送ることが出来ているが、もし学校がある日だったら、自分たちにそれが出来るかどうかは微妙だと考えていた。

 

「達也さんは、気にしなくていいって言ってくれてるけど……」

 

「私たちは、ちゃんとお見送りしたいもんね」

 

「嫁の務め」

 

「雫……表現がダイレクト過ぎるよ」

 

 

 嫁という単語に、ほのかは恥ずかしそうに頬を押さえる。雫の方も言っておいて恥ずかしかったのか、少し俯き加減だ。

 

「こうして二人とも選ばれたからよかったけど、私はほのかに幸せになってもらいたい」

 

「私だって、雫には幸せになってもらいたかったから、二人とも選ばれて良かったよね」

 

「私はそこまで独占欲は無かったから、複数人でも問題ないけど、ほのかは正直一人占めしたかったんじゃない?」

 

 

 雫の意地の悪い質問に、ほのかは少し困ったように答える。

 

「これが深雪と、とかだったら嫉妬したかもしれないけど、雫なら別だよ。雫は、私の親友なんだから」

 

「うん」

 

「そうだ! 今日三人でどっか出かけようよ。確か達也さんも今日は時間あるとか言ってたから」

 

 

 ほのかの申し出に、雫も嬉しそうに頷く。

 

「達也さん、一緒に住んでみて分かったけど忙しすぎだもんね」

 

「仕方ないよ。四葉家次期当主で世界的企業の研究員で軍属なんだから」

 

「生徒会役員でもあるからね」

 

 

 そう考えると、達也に時間的余裕がある事自体珍しい事だと思い、二人は何処に出かけるかに想いを馳せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を済ませ、雫とほのかに誘い出された達也は、若者向けの服が並ぶ店に連れられてきたのだった。元々深雪や水波とこのような場所に来ることもあったので、場所自体に何かを思うことは無かったが、いきなり連れてこられて、少なからず疑問は抱いていた。

 

「いきなりこんな場所に連れてこられたが、何か欲しいものでもあるのか?」

 

「違います、達也さん。ただ私たちは、達也さんと一緒にお出かけがしたかっただけなんです」

 

「達也さん、普段服装に無頓着だから、私たちがコーディネートしてあげる」

 

「無頓着というわけではないんだが」

 

 

 達也は普段から着飾る事をしないだけで、必要とあらばちゃんとした服装をする。とはいっても、最低限のドレスコードを満たす程度のスーツしか持っていないのも確かなのだ。

 

「達也さんは見た目が良いんだから、ちゃんとした服を着ればもっとカッコよくなるよ」

 

「でも雫、これ以上カッコよくなられたら、他の人が寄ってくるかもしれないよ?」

 

「……その可能性は考えてなかった」

 

 

 失念していた可能性に気付かされ、雫は少ししょんぼりしたのだったが、すぐに立ち直り達也のコーディネートを始めた。

 

「達也さんなら、黒いタキシードとか似合うと思う」

 

「黒もいいけど、白の方が良くないかな?」

 

「白も捨てがたいけど、私的には黒の方が似合うと思う」

 

「確かに黒も似合うと思うけど、私は白の方が良いな」

 

 

 色でもめている二人を他所に、達也は二人に似合いそうなドレスを見繕い、隙を見て購入していた。

 

「達也さん、白と黒なら、どっちが好き?」

 

「どっちも好きだが、選べと言われたら黒かな」

 

「ほら、達也さんも黒が良いって」

 

「いや、白も好きだが」

 

「それじゃあ二着とも買えばいいんだよ」

 

「でも、ほのかお金あるの?」

 

「えっ? ……何でこんなに高いのよ」

 

 

 大富豪の娘である雫は兎も角として、普通の女子高生であるほのかには手が出しにくい値段だったのだ。ほのかは値札と自分の財布の中を交互に見て、ガックリと肩を落としたのだった。

 

「今回は二人で一着にしようよ。今度もう片方を買えばいいから」

 

「うん、そうだね……」

 

 

 一人暮らしで何かとお金が必要だったほのかと、実家で生活していた雫とでは、やはり所持金にも差が出てきてしまうのだった。

 

「何なら俺が払うが」

 

「「それじゃあ意味がない(ありません)!」」

 

「あ、あぁ……そうか」

 

 

 二人の剣幕に圧され、達也はそう答えるしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻り、さっそく達也にタキシードを着せた二人は、あまりにも似合っていたのでついつい見とれていたのだった。

 

「お返し、というわけではないが、これは二人に」

 

 

 そう言って差し出されたドレスに、雫とほのかは自分たちも着替えて来ると言い残し別室へ消えた。

 

『こっちが雫のだね』

 

『こっちがほのかの……分かってたけど、あまりにも理不尽』

 

『何処見てるの!?』

 

 

 乙女たちの会話が聞こえてきても、達也は動揺することなく窓の外を眺めていた。

 

「お待たせ」

 

「どう、ですか?」

 

 

 白のドレスを着た雫と、黄緑のドレスを着たほのかが部屋から現れ、達也は彼にしては珍しく息を呑んだ。

 

「二人とも綺麗だよ」

 

「じゃあ、今度この衣装で写真を撮りましょう」

 

「賛成。お父さんに腕利きのカメラマンを紹介してもらう」

 

「気が早くないか?」

 

 

 既にその時の光景を夢想して盛り上がる二人に、達也は苦笑いを浮かべながらツッコミを入れたのだった。




ドレス姿の二人、見てみたい

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