劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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今回からはこの三人


IF四葉三人娘ルート その1

 同じ立場として顔を合わせているのに、三人には険悪なムードが漂っていた。

 

「深雪お姉さまは、達也さんと長い時間一緒に生活してこられたのですから、少しくらい私たちに寛容になるべきだと思いますわ」

 

「同感ね。兄妹だったから諦めてたところもあるけど、従兄妹なら話は別よね。本当なら同居してる時点で文句を言いたかったところだけど、通学などを考えたら仕方ない部分は確かにあったわ」

 

「お二人がどのように仰られても、私と達也様が同居を解消する事はありません。そもそもこの事は、叔母様から許されている事ですので、亜夜子ちゃんや夕歌さんにとやかく言われる筋合いはありませんわ」

 

 

 深雪が達也と同居していることに対して、亜夜子、夕歌が異議を申し立て、それに対して深雪は正当な権利だと主張しているのだ。

 

「深雪様、少し落ち着かれた方が」

 

「亜夜子も、少しヒートアップし過ぎ」

 

「「水波ちゃん(吉見さん)は黙ってて!」」

 

「付き添いに当たるなんて、まだまだ二人とも子供なのね」

 

 

 自分には付き添いがいないので、夕歌は二人に厭味ったらしくそう告げる。

 

「そもそも深雪さんは候補の時にも同じような事を言われているのだから、少しくらい離れて寛容さを見せるべきだと思うのだけど」

 

「片時も離れたくないという意思表示ですので。本来なら他の婚約者など認めたくなかったのですが、その辺りは私がとやかく口を挿める問題ではありませんでしたので」

 

「あの……達也さまがお戻りになられました」

 

 

 三人が言い争っている中に、争いの元である達也がやってきたのだが、達也がこの場に現れただけで、三人は先ほどまでの険悪なムードをしまい、表面上は仲良く見れるように振る舞った。

 

「まだ言い争っていたんですか……別に順番など気にする事ではないと思うのですが」

 

「そんなことないわよ。誰が一番初めに達也さんとデートするかは、私たちにとっては重大な問題なの」

 

「そうですわよ、達也さん。達也さんは順番など関係なく全員とデートする、とお思いかと存じますが、私たちの中では大問題なのですわ」

 

「そんなものか……」

 

「達也さま、お茶をお持ちしました」

 

 

 こめかみ辺りを押さえている達也に、水波はお茶を差し出す。これは三人を出し抜こうとかそう言う事ではなく、彼女の長年にわたり叩き込まれたメイドとしての所作である。だが、それを理解してなお三人は悔しそうに水波を睨みつけていた。

 

「ところで、何故吉見さんも?」

 

「付き添い」

 

「そうですか」

 

 

 それ以上の興味を失ったのか、達也は視線を吉見から逸らしてお茶を啜る。

 

「年齢順にすればいいんじゃないか? 亜夜子が先か、夕歌さんが先かはじゃんけんで決めればいい」

 

「達也様、私は」

 

「どちらからにしろ、深雪は二番目と言う事になるな」

 

「……達也さんがそうおっしゃられるのでしたら、私に異存はありませんわ」

 

「年上に譲るつもりは無さそうね」

 

「こればかりは、年功序列というわけにはいきませんもの」

 

 

 火花を散らす二人の横で、達也は視線を遠くに向け身体を休めていた。

 

「達也さま、もう一杯如何でしょうか」

 

「いや、もう結構だ」

 

 

 水波にそう告げて、達也は二人の勝負の行方を見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず順番が決まったので、今日のところは亜夜子も夕歌もそれぞれの住まいに帰っていった。

 

「少しは仲良く出来ないのか?」

 

「申し訳ありません、達也様。ですが、深雪が一番達也様の事を想っているのですから、他の二人には少し自重してもらいたいと思いまして……」

 

「同じ婚約者で四葉縁者なんだから、多少の譲歩は考えてくれ」

 

「達也様の婚約者として認めてるだけ、深雪は最大限譲歩しているつもりです」

 

「そうか……」

 

 

 深雪の想いに、達也は眩暈を覚えた。妹として過ごしていた時から、自分に対する態度は一般的な妹が兄に向けるものではないと感じていたが、その枷が外れた所為か、更に過激になっているのだった。

 

「本来なら二番目など、屈辱の極みですが、達也様がお決めになられた事ですので仕方ありません。ですが、亜夜子ちゃんにも夕歌さんにも、深雪は負けるつもりはありません」

 

「深雪様、どうか落ち着いてくださいませ。食事中に立ち上がるのは行儀がよろしくありませんので」

 

「ごめんなさい、水波ちゃん。でも、これだけはどうしても譲れないのよ」

 

「深雪様のお気持ちは重々承知しておりますが、これはご当主様がお決めになられた事ですので、あまり我を通すを婚約自体解消されてしまう可能性もございますので」

 

「……そんな恐ろしい事になったら、私は生きていけないわ」

 

 

 万が一にもありえないと信じたいが、ただでさえ自分は周りから色々と言われ続けたのだから、これ以上反感を買うと何かしらの措置を取られてしまうと考え、深雪は大人しく着席した。

 

「達也様、くれぐれも気を許し過ぎないようにお願いします」

 

「そう言われてもな。重婚を認めるにあたり魔法協会から言われたのは、平等に接しろだからな。深雪だけを特別扱いするわけにはいかないんだが」

 

「ぐっ……分かりました。ですが、亜夜子ちゃんや夕歌さんにすることを、深雪にもしてくださいね」

 

 

 最大限の譲歩をした深雪は、血涙を流さん勢いで拳を握り、魔法が発動しないように自分を律したのだった。




三分の二にお付きが……

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