劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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オリキャラを出そうか思案中です


揺れる乙女心

 達也が指導室に呼ばれた理由を聞いて、雫は妙に納得してるように頷いていた。

 

「雫、如何して頷いてるの?」

 

「先生たちが達也さんを呼んだ理由に納得が行ってね。先生たちより達也さんの方が色々と知ってるからやり難いんだと思うんだ」

 

「だろうな。だからかは知らないが、転校を勧められた」

 

「転校?」

 

「ああ、四高はウチよりも技術分野に力を入れていて、俺には向いてるんじゃないかって」

 

 

 達也が転校するかも知れないと言う事で、慌てる少女たちが若干名居る……

 

「達也さん、転校しちゃうんですか!?」

 

「そんな……」

 

「せっかく仲良くなれそうだったのに」

 

「如何するの、達也君!?」

 

「断ったよ。善意からの言葉だったのかもしれないが、もしそうだとしても余計なお世話、独善と言うやつだな」

 

 

 達也の答えに胸を撫で下ろした四人だが、同時に怒りがこみ上げてきた。

 

「やっぱりさー先生たちは達也君の事を邪魔だと思ってるのかな? 下手すればさっき雫が言ったように達也君の方が色々知ってるから」

 

「ですが、達也さんは一高の生徒なんですよ!? 先生たちの判断で転校させるなんて…!」

 

「そもそも前提が間違ってる。四高は確かに技術方面に力を入れているけど、別に実戦魔法を疎かにしてる訳じゃ無い」

 

「雫さん、良く知ってますね」

 

「……従兄が通ってるの」

 

 

 美月に褒められて少し気恥ずかしそうに雫が答えた。そしてその事でまたエリカが怒り出す。

 

「やっぱ先生たちは達也君を如何にかして追い出したいようね! まったく、私たちの先生を追い出そうとするなんて!」

 

「……エリカ、俺は別にお前たちの先生じゃないんだが」

 

「誰かに相談してみるってのは如何だ? 遥ちゃんとかにさ」

 

「実は昨日、小野先生から呼び出しの事は聞いていたんだ」

 

 

 帰り際に呼び出されて試験結果の事で職員室が揉めていたと遥から聞かされていたと、達也は特に気にした様子も無く言う。

 

「何それ、使えない先生ね」

 

「まぁそう言うな。もとより新米カウンセラーにそう大した権限がある訳じゃないだろうし」

 

「エリカちゃんもですが、達也さんも結構酷い事言ってますね……」

 

「本人も言ってたから気にする事無いんじゃないか」

 

 

 美月がつぶやいた事を拾い達也が気にするなと言う意味でサラリと言う。その事で美月も気にしてた様子では無くなったようだった。

 

「それで達也さん、手を抜いていたって疑惑は晴れたの?」

 

「一応はな。その場でもう一度試験と同じ事をやらされたが、それで納得してくれたのなら徒労では無かったな」

 

「まぁ転校しなくていいのなら良かったけど」

 

「珍しくまともな事言ってら」

 

「五月蝿い!」

 

 

 持っていた冊子を素早く丸め、レオの頭目掛けて振り抜いた。

 

「痛ってなー! 俺の頭は太鼓じゃねぇんだから、ポンポンと叩くんじゃねぇよ!」

 

「アンタがおかしな事言うからでしょ!」

 

 

 エリカとレオを生暖かい目で見守りながら、美月が気になってた事を達也に聞いた。

 

「達也さん、魔法理論ではトップだった達也さんは、実技では何位だったんですか?」

 

「下から数えた方が早いだろうね。何度も言ってるように、俺は実技が苦手だから」

 

 

 実際の達也の順位は、二科生の中で半分より少し下、もう少し出来ていれば一科生に転籍してもおかしくは無い成績だった。

 

「達也さんが九校戦に出てくれたら、絶対に優勝だと思うんだけどなー」

 

「エイミィ、それは無いだろ」

 

「ですが、ウチが優勝候補筆頭なのは間違い無いんですよ」

 

「うん、でも油断は出来ない。今年は三高に一条の御曹司と一色の令嬢、それにナンバーズも多数入学してるから……」

 

「十氏族に師補十八家か、それは確かに厄介だな」

 

「うん……でもウチには七草会長や十文字会頭、それに渡辺風紀委員長が居るから、殆ど負けないとは思うけどね」

 

「新人戦次第って事か、俺は行けるか如何か分からないが、頑張ってくれよ」

 

 

 達也の応援に、ほのかも雫もエイミィも力強く頷いた。本当なら達也にも参加してもらいたいと思ってるのだが、如何しても実技試験の上位者を選出するので一科生からしか参戦出来ないのだ。

 

「おっ、漸く見つけた」

 

「委員長? 何か御用でしょうか?」

 

「ほら、試験前に頼んだだろ。試験が終わったら頼みたい事があるって」

 

「そう言えば言ってましたね……今からですか?」

 

「ああ、出来れば夏休み前には終わらせたいからね」

 

 

 今日を含めて夏休みまで残り一週間弱、どんな仕事を任されるのかまったく聞いていない達也としては、出来る事なら楽に終わる仕事であってほしいと言う気分だった。

 

「それじゃあ達也君を借りてくぞ」

 

「悪いな、また明日」

 

 

 摩利に引っ張られてくように連れて行かれる達也を、未練がましく見ていたメンバーだったが、ふと雫が思い出したように言った事で現実に引き戻された。

 

「そう言えば、この前三高の女子がこの近くに居たのを見た気がする」

 

「それって本当!? 視察かな?」

 

「分からない……でも、達也さんの事をジッと見てた気がする」

 

「達也さんを? もしかして知り合いなのかな?」

 

「そもそも三高の生徒がこっちに来る用事って何だろうねー?」

 

「さっきほのかが言ったように敵情視察じゃないの?」

 

 

 何時の間にか会話に参加していたエリカがあっさりと言い放つ。三人は一瞬レオの事が気にかかったが、床で伸びている彼を見て少し同情してすぐさま会話に戻った。

 

「視察って言っても、簡単には校内に入れないし、それに見かけたのは駅の近くだった」

 

「どんな感じだったの?」

 

「キョロキョロと辺りを気にしてたと思ったら、達也さんを見かけた途端に視線が固定されたようだった」

 

「ふーん……もしかして達也君に一目惚れでもしたのかな」

 

 

 エリカの冗談に、肩をピクッと動かした一科生三人、美月も若干気にしたような雰囲気を醸し出したが、冗談を言ったエリカの方が美月より動揺しているようだった。

 

「達也さんならありえそうですね。優しいですし、何よりカッコいいですから」

 

「美月も気になってるしね?」

 

「ふぇ!? え、エリカちゃん!? 別に私は異性として気になってる訳じゃ……」

 

 

 からかわれたのだと途中で気付き、美月は頬を膨らませてエリカに抗議の念を込めて肩を叩く。その光景を見ながらも、一科生三人とエリカはその三高の女子生徒が何の目的で此処まで来たのかが気になっていた……




書いてから気付いたのですが、一色さんたちのキャラ設定が分からなかった

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