劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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妄想二作目です


IFルート その2

 特に用も無く学校内をブラブラとしていた達也の耳に、出来る事なら聞きたく無い声が飛び込んできた。

 

「みーつけた」

 

「……安宿先生、何か御用ですか」

 

「ううん、ただ君に会いたかっただけ~」

 

「ハァ……」

 

 

 ブランシュの一件が片付いた翌日、怜美は達也に告白したのだった。それからなるべく学校では目立たないようにするのを約束させたのだが、今日の怜美は抑えが効かないようだ。

 

「保健室でお茶しましょ?」

 

「……まぁ特に予定も無いですし、構いませんよ」

 

「それじゃあ保健室までごあんな~い!」

 

「誰かに見られても知りませんからね」

 

 

 一応深雪には伝えてあるのだが、達也と怜美が付き合ってるのは他の人には秘密なのだ。達也は学生で怜美は保険医とは言え学園勤務の教師だ。二人が付き合ってるとしれたら色々と問題があるのだ。

 

「さぁ、保健室に到着! 不在中っと」

 

「……職務放棄ですよ」

 

「良いの! せっかく君と二人きりなんだから、邪魔されたく無いもの」

 

「……我が侭な人だ」

 

 

 保健室とは本来怪我なり病気なりの生徒が訪れる場所なのだが、此処最近は健康そのものの達也以外訪れる事は無いのだ。

 

「さすがに高校生の君を夜中連れまわす訳にも行かないものね」

 

「俺は別に構いませんが」

 

「ダメダメ、君は優等生なんだから! 不良行為で停学にさせたら大変じゃない!」

 

「劣等生ですよ。じゃなきゃ二科には居ません」

 

「そうやってすぐ誤魔化す! 君の力は評価対象じゃないだけで実戦では優等生なんだから」

 

「それ、学園側には聞かせられない発言ですね」

 

 

 魔法科高校に勤めている保険医が、魔法科高校の成績のつけ方に不満を漏らしてるなど、達也は他人には聞かせられないと思ったのだった。

 

「ねぇ達也君」

 

「やっと名前で呼んでくれましたね。さっきまで『君』としか呼んでくれませんでしたし」

 

「だって聞かれたら困るんでしょ? だからああ呼ぶしかなかったのよ。『司波君』じゃ他人行儀だし」

 

「別に良かったんじゃ無いですか? 俺も安宿先生って呼びましたし」

 

「そうよ! 達也君、二人きりの時はちゃんと呼んでくれるって約束したよね!」

 

「分かってますよ。怜美、今日は我慢出来なかったのか?」

 

 

 深雪に向けるような笑みと優しさを向けられ、怜美の顔はあっという間に真っ赤に茹で上がった。

 

「だって達也君の周りには綺麗な子が沢山居るんだもん! いくら付き合ってるとは言え、会えるのは放課後の保健室か休日の限られた時間だけ…我慢も限界になるよ!」

 

「しょうがないだろ? 俺たちは教師と生徒、世間的には問題ありのカップルなんだから」

 

「それなら私、教師なんて辞める!」

 

「馬鹿な事は言うな。怜美は保険医になる為に努力してきたんだろ」

 

「だって~……」

 

 

 不満げな顔の怜美を抱き寄せ、優しく頭を撫でる達也。一瞬驚いた顔をした怜美だったが、すぐに達也の胸に頭を摺り寄せるように抱きつき返す。

 

「随分と甘えんぼな先生だ」

 

「普段は生徒に甘えさせてるんだから、彼氏にくらい甘えても良いじゃないの」

 

「別に駄目とは言わないが、せめて人の居ない場所まで我慢はしてくれよな。さっきのだって結構危なかったんだから」

 

「達也君なら大丈夫でしょ? 新人勧誘週間の武勇伝は聞いてるんだからね」

 

「あれは大した事では無いでしょ。空気弾など軌道さえ分かれば誰だって避けれるだろ」

 

「その軌道が分かる人なんてそうそう居ないんだから」

 

 

 達也の謙遜を頬を膨らませて否定する怜美。その顔が可愛いと思い達也は怜美の頬を指で突く。

 

「うにゅ~」

 

「空気が抜けてるな」

 

「何するのよ~」

 

「怜美が可愛いからつい」

 

「……バカ」

 

 

 照れ隠しの言葉である事は、言った怜美本人ですら理解出来るほどの迫力の無さだった。

 

「そうだ! そう言えば今日、達也君の誕生日なのよね」

 

「良く知ってるな」

 

「私は保険医よ、生徒のプロフィールくらい入手するのは簡単よ」

 

「悪用してるんじゃないよな?」

 

「当たり前じゃない! 男子生徒に女子生徒のスリーサイズなんて教えてないんだから!」

 

「……教えてるのか」

 

「た、ただだから良いでしょ……」

 

「金取ってたら説教じゃ済まないところだったな」

 

 

 もちろん達也は怜美がそんな事をしてる訳無いのは知っている。怜美も冗談で言ったのだが、達也が本気にしてると勘違いして、冗談だと言うに言えなくなってるのだ。

 

「怜美、冗談は相手を選んで言うんだな」

 

「……へ? 冗談だって知ってたの!?」

 

「当たり前だろ。大体そんな事してるんだったら、今すぐ別れてるさ」

 

「冗談! 冗談だから別れるなんて言わないで!」

 

「当たり前だろ。付き合ってまだ一週間くらいしか経ってないんだから」

 

 

 達也の冗談に泣きそうになりながら達也の脚に縋りつく怜美。その姿を達也は可愛いと思いまた頭を撫でた。

 

「こんなに可愛い彼女を捨てるわけ無いだろ」

 

「達也君、私一応達也君より年上なんだけど?」

 

「そりゃそうだろ。俺は高校生なんだから、怜美が年下な訳無いのは分かってるさ」

 

「それじゃあ年上のお姉さんから、達也君への誕生日プレゼント」

 

 

 座っている達也に近付き、ゆっくりと顔を近づけてくる怜美。何をされるのか分かった達也は、ちょっとしたイタズラを思いついた。

 

「何か飲みます? 俺淹れますよ」

 

「え? あれ?」

 

「隙あり」

 

「!?」

 

 

 慌てふためく怜美の唇を、達也の唇が塞いだ。

 

「大人の余裕には程遠いな」

 

「達也君!」

 

「これくらいで真っ赤になってるようじゃ、年上のお姉さんとは言えないだろうな」

 

 

 真っ赤になっている怜美とは違い、達也はまったくの素面だった。明らかに達也の方が年上ぽい。

 

「達也君、私初めてだったんだよ?」

 

「俺だって初めてですよ」

 

「え? じゃあ何でそんなに普通で居られるの!?」

 

 

 ファーストキスだった事を理由に赤面を正当化しようとしたが、達也もファーストキスだった事を知り、怜美の顔は更に赤くなった。

 

「怜美には言ったよな。俺には感情が無い事を」

 

「あっ……」

 

「奇跡的に残ってた恋愛感情だって、他の人間と比べれば希薄なものだから」

 

「ゴメンなさい……」

 

「謝る必要は無い。俺の代わりに怜美が恥ずかしがってくれてるんだから」

 

「……もう!」

 

 

 結局からかわれてるんだと気付いた怜美は、達也に殴りかかろうと近付く。だが、一歩目でその計画は頓挫する事になった。

 

「今度はもっと恥ずかしがってる怜美が見たい」

 

「!?!?」

 

 

 何を想像したのか、今日一番の赤面をした怜美だった。




今回は怜美です。次回は誰にしようかな…

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