劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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脇を盛り上げてたら一話で終わらなかった……


ラブラブIFルート 真由美編その1

 一高を卒業してから、真由美は達也との時間が増えると思っていた。だが実際は講義で時間は潰れる、妹たちが達也とイザコザを起こしたりするなどで会うのが気まずくなったりして一緒にいる時間は減る一方だった。

 

「ねぇ摩利、恋人と会えない時間ってこんなにつらいものだったのね……今までからかったりして悪かったわ」

 

「別に謝ってもらう必要はないが……達也君と会えていないのか?」

 

「しょうがないでしょ。学校が違うんだし、前みたいに頻繁に会える時間も無いし」

 

「アイツは高校生だからな。大学生になった真由美とは使える時間が違うもんな」

 

 

 見た目はともかく、摩利は達也の年齢を知っているので遅い時間に連れ出すのはマズイと思っている。まぁ実際連れ出したところで、補導されるのは真由美の方だとも思っているのだが。

 

「摩利、どうやって修次さんと会えない時間を耐えてるの?」

 

「あたしは別に耐えているわけじゃないがな。元々シュウとはあまり会えないのは分かっていたから」

 

「辛くないの?」

 

「そりゃ毎日会えれば最高かもしれないが、会えない時間の分だけ、会えた時の喜びが大きいだろ?」

 

「摩利は強いのね……私は耐えられないもの」

 

「ならいっそ、達也君の家にでも住めばいいだろ。実家よりここに近いんじゃないか?」

 

 

 実際のところ大して距離は変わらないし、摩利は冗談のつもりで言ったのだった。だが真由美は、摩利のアドバイスを本気に捉え、実行しようとしたのだった。

 

「ありがとう、摩利! 早速帰って準備しなきゃ!」

 

「お、おい! 冗談だぞ」

 

「あのクソ狸親父の所為で一高生全員が嫌な思いをしたんだもの……その中には達也君も含まれてる。癒す為には私が一緒に生活するしか……」

 

「おーい、真由美さんや」

 

 

 既に自分の世界に旅立ってしまっている真由美を見て、摩利はここにはいない達也に同情したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 来客を告げるチャイムに水波が対応しているのを達也も深雪も視界の端で捉えていたし、チャイムは二人にも聞こえていた。皆無、と言うわけではないが、この家に来客とは珍しいと思っているのだろう。

 

「あの……達也さま」

 

「どうした?」

 

「七草真由美さまと名乗る女性がお目見えですが……お知り合いですか?」

 

「知り合いだが、先輩が何の用だ?」

 

「お兄様にお会いになられたのでは? 『一応』七草先輩はお兄様とお付き合いになられておりますので」

 

 

 一応にアクセントを置く妹に苦笑いして、達也は玄関に向かう。扉の向こうから確かに真由美の気配を感じ、達也はゆっくりと扉を開いたのだった。

 

「先輩、何かご用……その荷物は何でしょうか?」

 

「こんばんは、達也君。早速で悪いけど、今日から私もこの家で生活します」

 

「は?」

 

 

 あまりに急な展開なので、達也は珍しく本気で驚いている。しかし真由美にはそんな達也の反応を楽しむ暇は無かった。

 

「何故七草先輩がこの家で生活なさるのでしょうか? ここは『私』と『お兄様』の家です。水波ちゃんはともかく、先輩が入る余地などありませんが」

 

「あら深雪さん。私は達也君の『彼女』なのよ? 『妹』の深雪さんには私たちの関係をとやかく言う権利があるのかしら?」

 

「どうやら白黒つける時が来たようですね、七草先輩」

 

「そうね。どっちが正義がハッキリしましょうじゃない」

 

 

 二人がCADに手を掛けたところで、二人同時に頭部に衝撃が走った。二人揃ってその衝撃に目を瞑り、二人同時にその衝撃を与えてきた相手に噛み付く。

 

「何をするんですか、お兄様!」

 

「止めないで、達也君! これは私と深雪さんの勝負なんだから!」

 

「いい加減にしろ、深雪。先輩も、こんなところで魔法大戦でも始めるつもりですか」

 

 

 達也に怒られ、諌められて二人は同時にションボリと肩を落とす。ついついヒートアップしてしまったのを反省して――では無く、達也に怒られた事でションボリとしてしまっているのだった。

 

「とりあえず、今日はもう帰れとは言いませんが……詳しい事情はお聞かせ願いますよ」

 

「分かったわ」

 

 

 真由美をリビングに通し、水波にお茶を頼み達也は真由美の前に腰を下ろした。その隣には、当然という顔で深雪が腰を下ろした。

 

「民権党の神田議員が一高を来校したでしょ? あれはウチの狸親父が仕向けた事なの。達也君が独立魔装大隊と繋がってるんじゃないかって疑ってね」

 

「そうでしたか。あれは七草殿の謀略でしたか」

 

「気づいてたの?」

 

「ウチと七草は仲が悪い、それは先輩も知ってますよね」

 

 

 自分たちが四葉だと言う事は真由美に伝えてあるし、真由美も真夜と自分の父親の仲が悪いのは知っていた。その事も関係して達也とは会い難くなっていたのだ。

 

「本当に達也君たちには迷惑を掛けたと思ってるわ」

 

「別に先輩が悪いわけでは無いですよ。それで、今回の来訪とその事件との関係は?」

 

 

 さっさと本題に入って終わらせたい、と言うのが達也の本音だ。横から突き刺さる視線を無視するのもそろそろ限界なのだ。

 

「あの時のマスコミは、心無い言葉で達也君たちの心を傷つけた。だからその傷を癒す為に私が達也君のお世話をするの」

 

「……何故そのような――」

 

「お兄様のお世話は私がしています。先輩の出る幕ではありません」

 

「あら? 妹では出来ない事があるのよ。私は彼女だもん」

 

 

 達也の言葉を遮った深雪に対して、真由美は大人な雰囲気を醸し出して挑発した。二人同時に立ちあがり再びCADに手を伸ばしたところで、達也が盛大にため息を吐いた。

 

「深雪、張りあうのはよせ」

 

「ですが!」

 

「真由美が俺の彼女である事は事実、それはお前も分かってるだろ?」

 

「はい……」

 

「真由美」

 

「はい」

 

 

 初めて呼び捨てにされた衝撃で、真由美は既に呆けている。達也はさっさと事態を収拾させる事にした。

 

「長期滞在は認めないが、今日はゆっくりしていけ。もちろん、部屋は一緒で構わない」

 

「分かりました」

 

 

 どっちが年上なのか分からないような会話を聞いて、水波は数秒固まった後お茶を置いてリビングから出て行ったのだった。




嫁VS小姑みたいになったな……

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