劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ほっこりするけど、若干胸やけが……


甘々IFルート ほのか編

 春休みになり、学校で会える機会が減ってしまったので、ほのかは達也を自宅へと招待した。深雪が何か言ってくるのではないかとも思ったが、意外な事に深雪はほのかが達也を招待した事には何も言ってこなかった。

 

「深雪、本当に良いの?」

 

「言いも悪いも、お兄様が既にその招待をお受けになっているのだから、私がとやかく言える事では無いわよ」

 

 

 生徒会の仕事で顔を合わせている深雪に、ほのかが尋ねると、深雪は表面上は笑顔で答えた。もちろん、彼女の内心は自分から兄を盗るかもしれないほのかに苛立ちを覚えているのだが、その事に気づける人間はこの場にはいなかった。

 

「そうなんだ。よかった……達也さんの事だから、深雪が反対したら断ってくるかも、て思ってたから」

 

「そんな事無いわよ。ほのかみたいに可愛い女の子から誘われたら、お兄様だって断りはしないわよ」

 

 

 散々反対したのだが、最終的には達也に宥め、言いくるめられたのだが、深雪はそのような事情があるなどとはまったく感じさせなかった。

 

「どうしよう……今になってドキドキしてきちゃった」

 

「大丈夫? なんならお兄様に連絡して止めにしてもらいましょうか?」

 

「ダメ! 折角達也さんに……」

 

 

 そこで言葉を切ったのは、恥ずかしさからではなく会長のあずさが二人の事を見ていたからだ。仕事はしっかりとやっているのだが、さすがに私語が過ぎた。二人は反省しながら、残っていた仕事を片付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会の作業も終わり、ほのかは達也が来るまでの間一生懸命部屋の掃除と、自分自身におかしなところが無いかを確認していた。

 

「大丈夫だよね? おかしなところ、ないよね?」

 

 

 一人暮らしなので、当然の如くその問いかけに対する答えは無い。そんな事はほのかも分かってはいるのだが、声に出さなければパニックで倒れそうなくらい、今のほのかには余裕が無いのだ。

 

「ちゃんと可愛い下着だし……って! そんな事は気にしなくても良いのに!」

 

 

 この光景を第三者が見たらどう思うだろう。あまりの慌てっぷりに同情するか、それともコメディーを見ている気分になるかのどちらかだろう。

 そんな慌てっぷりが収まったのは、来客を告げるインターフォンが耳に届いた時だった。この時間、普段なら来客など無いので、その相手が誰であるかはすぐに分かった。

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

『俺だ……ほのか、大丈夫か?』

 

「だ、だいひょうぶれす!」

 

『……飲んでるのか?』

 

 

 あまりにも呂律が回っていないほのかに、達也はモニター越しから心配そうな顔を見せた。その顔を見て、ほのかは覚悟を決めた。

 

「大丈夫です。どうぞ入ってください」

 

 

 オートロックを解除し、達也を招き入れる。先ほどまで慌てていたからか、一度落ち着いてしまえば何ともなかったようだ。

 

「わざわざ家に呼ばなくても、外で会おうとすれば幾らでも会えたんじゃないか? あんなに慌てるくらいなら、俺もそっちの方が気が楽だったんだが」

 

「そうですけど……外で会っても、達也さんをジロジロと見る視線が気になっちゃいますし」

 

「アレの半分はほのかが俺に甘えているからだと思うのだが」

 

 

 依存癖を存分に発揮しているほのかは、室内だろうが屋外だろうがお構いなしに達也に甘え始めている。そのせいで外を歩く時、達也に胸を押し付けんばかりの勢いで抱きついているのだ。それを羨ましそうに見ている男性と、何故か嫉妬している女性の視線が多く突き刺さるので、最近では外で会う機会は減っているのだ。

 

「だって! 長期休暇になると、達也さんと学校で会えないんですから……我慢した分は甘えたいじゃないですか」

 

「雫が言ってた通りだな……まさかここまで依存癖が凄いとは……」

 

「達也さんは、私の家系の事は知ってますよね?」

 

「ああ……『光のエレメンツ』だろ」

 

「はい。ピクシーが達也さんに忠誠を誓ったのも……達也さんにこき使われたいと願っているのも、私の血筋故ですから」

 

 

 ピクシーの意志はほのかの意志。その事は理解しているし、ピクシー自身が宣言していた事なので今更驚く事では無い。だが今回は人形ではなく人間であり、他人の感情ではなく一個人の感情なのだ。さすがの達也も戸惑いは隠せない。

 

「達也さんになら、私、何をされても平気です。私以外に付き合っている人がいても、私が愛人でも平気です。私の事を多少なりとも覚えててくれるのなら、どんな事だって……」

 

「ほのか」

 

 

 自分の決意を伝えている途中で、達也に名前を呼ばれた。ほのかは怒られるのではないかと思い肩をビクッと震わせ、恐る恐る達也の方に視線を向ける。

 意外な事に、達也の表情は明るく、また慈しみの目をしていた。

 

「俺にはそこまで熱くなれるような感情は無いが、俺の感情は間違いなくほのかに反応したんだ。それ以外の相手など、いるわけ無いだろ」

 

「で、でも……達也さんを好きな人は沢山いますし……」

 

「俺を好きな人間がいくらいようと、俺が好きなのはほのかだけだ。これは一生変わらないだろう」

 

 

 恥ずかしがるでも無く、素面でそのような事を宣言した達也に、ほのかの方が恥ずかしくなってしまった。一瞬で真っ赤にゆで上がったほのかを見て、達也は自分がおかしなことを言ったのだろうかと首を傾げた。

 

「ほのか、大丈夫か?」

 

「は、はい! 問題ありません!!」

 

「……とても大丈夫そうには見えないのだが」

 

 

 その場から一歩も動いていないのだが、今のほのかの状況を表すのなら、あたふたと慌てふためいている、だろうか。足は動いていなくても上半身は忙しなく動いているのだ。

 

「あっ……」

 

 

 それを見かねた達也は、ほのかを優しく抱きしめる。それだけでほのかは落ち着きを取り戻し、そして別の意味で赤くなっていく。

 

「達也さん、私が好きと言うなら、証を下さい」

 

「証? 何をすればいいんだ」

 

「それはですね……」

 

 

 さすがに大胆かな? と思っていたが、達也はそのような知識を詳しくは知らない。フリーセックスの時代は終わっているが、本人同士の気持ちがあれば、そのような行為に及んでもおかしくは無い、とほのかは思っていた。

 ほのかに頼まれ、達也はほのかと一緒にお風呂にはいり、その後は一緒のベッドで寝た、とだけ記しておく。




来訪者編で一番攻めたのはほのかだと思う……ピクシーを含めてですが

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