劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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達也至上主義者が増えたな


IFデートルート 三高女子編

 自分たちが三組目だということが少し気に入らないが、愛梨は達也とデートできるということでその不満に蓋をした。

 

「本当ならば一番に達也様とお出かけしたかったのですが」

 

「仕方ない。司波深雪のくじ運は凄かった」

 

「深雪嬢の達也殿への情の深さなのかもしれんの」

 

「それだったら私たちだって負けていないはずよ! やっぱり、くじは狙って引くと良いことないのね」

 

「ですが愛梨、三番目とはいえ十分早い順番です。最後になって悶々と過ごすより、このくらいのタイミングの方がちょうど良かったのかもしれませんよ?」

 

「そうじゃの。あまり早すぎても楽しみがあっという間に終わってしまうし、遅すぎるとまだかまだかと焦れてしまいそうじゃし、このくらいがちょうどかもしれん」

 

 

 香蓮と沓子に諭され、愛梨は渋々ではあるが納得した表情を浮かべる。前の二組は待ち合わせをして出かけたのだが、愛梨たちは最初から新居で達也と合流することになっている。

 

「ある程度落ち着いてきたとはいえ、達也さんがしなければいけないことは多い。こうしてデート出来るだけでも満足しなきゃ」

 

「それは言われなくても分かっています。ですが、司波深雪より後というのがやはりどうしても……」

 

「結局九校戦では司波深雪に勝てなかったから仕方ないのかもしれないけど、何時までも気にしてたら結婚した後問題がでてくる」

 

「け、結婚……」

 

 

 高校を卒業すれば、いよいよ婚約者たちは達也と結婚する。とはいえ、籍を入れるだけなので、さほど変わることはないかもしれないが、結婚すれば司波姓に変わることができるので、嬉しさは一入だろうと愛梨は思っている。

 

「司波愛梨……良い響きですわ」

 

「いずれは四葉になるのじゃろうが、真夜殿が達也殿に正式に当主の座を譲るまでは、司波姓を名乗ることになるじゃろうからな」

 

「それに、卒業すれば達也さんと『そういうこと』ができる」

 

「べ、別にそれを楽しみにしているわけではありませんわよ! というか栞さん、さっきから表現が直接過ぎやしませんこと?」

 

「オブラートに包んだからと言って、意味が変わるわけじゃない。だったら直接的な表現の方が誤解されない」

 

「愛梨さんはそう言うことを言っているのではないと思いますが……」

 

「そうなの?」

 

 

 少しズレた栞に、香蓮がツッコミを入れる。この四人の関係は昔からこのような感じなので、今更どうにかしたいとは思わないが、もう少し進歩して欲しいと、香蓮はここ最近愛梨や栞の態度を見てそう感じていた。

 

「そろそろ達也殿が下りてくる時間じゃ。お主らも何時までも浮かれておる場合ではないぞ」

 

「そういう沓子が一番浮かれてる。さっきから空のカップを何度口に運んでるの?」

 

「む、むぅ……」

 

 

 まさか栞に指摘されるとは思っていなかった沓子は、複雑そうに呟いて空のカップをテーブルに戻す。ちょうどカップをテーブルに置いたタイミングで達也が共有スペースに下りてきたので、四人は立ち上がって達也を出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二十八家、百家の人間として、それなりに外食の機会はあったが、ここまで楽しい外食は初めてだったかもしれないと思えるくらい、今日の食事は楽しめた。気の置けない相手との食事、ということもあるのだろうが、一番の要因は達也と一緒だったからだと、愛梨は誤解しなかった。

 

「達也様と御一緒に食事できて、これまで我慢してきた甲斐があったと思えましたわ」

 

「愛梨はずっと達也殿がこちらに帰ってこないと不貞腐れておったからの」

 

「それは沓子も。もちろん、私や香蓮も達也さんがこっちに来られないのは残念だったけど」

 

「達也様が立ち上げたプロジェクトのことを考えれば仕方ありませんし、私たちではお役に立てないと分かっていたのですが、やはり心のどこかで達也様のお役に立ちたい。達也様の御側に居たいと思ってしまっていましたね」

 

「寂しい思いをさせたと思っている。これからはなるべくこちらにも帰ってくるつもりだ」

 

「それは嬉しいのですが、くれぐれもご無理はなさらないでくださいね? 達也様にもしものことがあったら……」

 

 

 そこで愛梨は例のパフォーマンスのことを思い出し、思わず顔を伏せる。あの事故が四葉家が仕組んだことだと知らされてはいるが、それでも血だらけの達也を見たショックは拭い去れなかったのだ。

 

「あのようなことが何度もあるとは思わんが、くれぐれも気を付けてくだされよ? 深雪嬢だけではなく、愛梨やワシらだってあんな達也殿をもう見たくないんじゃから」

 

「分かっている」

 

「ところで、吉祥寺が馬鹿正直に達也さんが共同開発者だって発表した一条の魔法だけど、何処まで達也さんが創ったの?」

 

「栞、それは今聞かなければいけないことではないと思うのですが……」

 

 

 やはり少しズレた質問を投げ掛けた栞に、香蓮がツッコミを入れる。だがあまり効果は無く、栞の好奇心をねじ伏せるには至らなかった。

 

「根幹は俺が創ったが、一条個人に合わせた設定を施したのは吉祥寺一人だ。だからアイツ一人で創ったと言っても問題なかったんだがな」

 

「達也様の御考えを吉祥寺如きが理解できるとは思えませんわ」

 

 

 愛梨の言葉に残りの三人が力強く頷く。達也はこの場にいない吉祥寺に、少し同情的な気持ちを懐いたのだった。




同郷の吉祥寺より達也な女子たち

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