劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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この三人はそれ程負担は大きくなさそう


IFデートルート 雫・ほのか・エリカ編

 複数人でだが、達也とデートできるということで、ほのかは朝から浮かれていた。そんなほのかの姿を見て、一緒に出掛ける予定の雫とエリカは若干引きつった表情を浮かべている。

 

「ほのか、嬉しいのは分かるけども、ちょっと浮かれすぎじゃない?」

 

「その気持ちはあたしも分かるけどさ。でもちょっとほのかは分かりやすすぎよね」

 

「そ、そんなに浮かれてないもん! そんなこと言って、雫とエリカが浮かれてるんじゃないの?」

 

「うん。達也さんがこっちに戻ってこられるってだけで嬉しい」

 

「……こんなあっさり言えたら楽なのかもしれないわね」

 

 

 ほのかの切り返しは、雫の正直な気持ちによって撃退され、エリカにもダメージを与えた。この二人と違って自分の気持ちを正直に表現できないエリカは、雫を羨ましがった。

 

「おっと、そろそろ出ないと遅刻しちゃうわね。ほら二人とも、行くわよ」

 

「達也さんを迎えに行くなんて、なんか新鮮だよね」

 

「普段は私たちが達也さんにお迎えしてもらってるもんね」

 

 

 達也は今、所用でFLTに顔を出しており、三人には時間を指定している。その時間が迫ってきているので、エリカは二人を急かして新居からFLTに向かおうとして――玄関ロビーで真由美たちと遭遇した。

 

「あら、エリカちゃんたちはお出かけかしら?」

 

「えぇ。これから達也くんとデートなんです」

 

「そういえばそんな話をしていましたね。順番とはいえ、羨ましいことこの上ないわね」

 

「真由美さん、大人げないです」

 

 

 真由美を窘めるような態度の鈴音ではあるが、内心は彼女もエリカたちを羨んでいるのだ。デートの順番は公平に決めたとはいえ、同じ空間で生活している人間が先にデートをするのは我慢出来ない――なお、深雪たちは別の場所で生活している為、それ程羨ましいとは感じなかった。

 

「先輩たちだって後程出かけられるんですから、そんなに気にしなくてもいいのではないですか? むしろ後の方がわくわくが続きますし」

 

「でも、ほのかだったら楽しみにし過ぎて倒れそう」

 

「そ、そんなことないもん!」

 

 

 雫にからかわれ、ほのかは顔を真っ赤にして抗議する。ただそんなほのかの態度が雫の推測を肯定しているように見え、真由美たちはほっこりとした気持ちになっていた。

 

「私たちのことは良いから、そろそろ行ってあげたら? 達也くんのことだから、早めに仕事が終わってるかもしれないし」

 

「そうですね。では先輩方、行ってきます」

 

 

 真由美と鈴音に一礼して、ほのかと雫は浮かれ気味に、エリカはからかわれたのが気に入らないのか、少し不機嫌な雰囲気で新居からFLTへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約束の時間より少し早く到着した三人は、研究員の一人に声をかけて中に入れてもらった。ここでは達也の名前は絶大な効果があるのか、研究員は終始低姿勢だったのが気になったが、そのことは深く考えないようにして。

 

「待たせたな」

 

「いえ、私たちが少し早く着いちゃっただけですから」

 

「それより達也さん。巳焼島じゃなくてFLTに何の用事だったの?」

 

「トーラス・シルバーを解散したとはいえ、俺はここの関係者だからな。ちょっとした相談を受けたりはしているんだ」

 

「まぁ、達也くん以上に魔法の知識がある人なんてなかなかいないでしょうしね。それより、早いところ出ましょうよ。研究施設って、なんか落ち着かないのよね」

 

「それはエリカが智将ではなく武将だからじゃないの?」

 

「否定するつもりは無いけど、表現が古くない?」

 

「ほのかは今、そういうものにハマっているから」

 

「リーナに付き合ってたら、興味がわいてきただけだよ」

 

 

 またしてもからかわれ、ほのかは顔を真っ赤にして否定するが、それがますます弄られる要因になっていることには気付けなかった。

 

「達也くん、ちょっと服を見たいんだけど付き合ってよ」

 

「別に構わないが、それで良いのか?」

 

「うん。だって、達也さんの服を私たちが選ぶんだもん」

 

「俺の?」

 

「達也さんってここ最近制服かスーツしか着てないみたいですから」

 

「そんなことはないと思うが……」

 

「だって今も、スーツでしょ?」

 

 

 FLTに寄る前に本家への連絡もあったのでフォーマルではあるが正装している達也は、ますます高校生には見えない恰好だった。

 

「一度着替えてから出かけてもいいんだが」

 

「時間がもったいないからって、あたしたちがそれでいいって言ったんだもん。まぁ、さすがにそのままの格好であたしたちと一緒にいたら、警察が声をかけてくるかもしれないけど」

 

「特にほのかは、悪い大人に騙されてるとか思われそう」

 

「何で私!? 雫じゃないの!?」

 

「それは、私が子供っぽいって言いたいの?」

 

「べ、別にそんなこと言ってないよ。というか、雫が先に私のことをバカにしたんでしょう!?」

 

「ほらほら、何時もの漫才は良いから。早く達也くんの服を選びに行くわよ!」

 

 

 一番浮かれているのはエリカだと、達也はこの瞬間に見抜いたが、それを指摘したら不貞腐れるのが目に見えているので黙っていた。その後、三人が代わる代わる持ってくる服を試着し、その都度女性店員たちを魅了させていたのだが、達也はそのことに気づくことはなかった。




達也がスーツ姿で高校生だと見抜ける人はいるのだろうか

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