劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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原作での出番はあるのだろうか


IFルート  スバルとエイミィ

 エリカや雫たちから達也の偽情報を聞き、スバルとエイミィはとりあえず安心した表情で共有スペースで一息入れることにした。

 

「達也さんが襲われたのはショックだったけど、命に別条がないだけでもホッとできるね」

 

「そうだね。僕たちもお見舞いに行きたいところだが、僕たちにはヘリを手配するなんて出来ないからね」

 

「本当は雫たちについて行きたかったけど、あまり大勢で押しかけるのは良くないし……」

 

「まぁ、あの深雪が泣きじゃくってる姿が放送されたんだ。衝撃は計り知れなかっただろう」

 

 

 他人事のように言っているが、スバルも相当なショックを受けている。それだけ船が突っ込むという映像はショッキングであり、血塗れの達也を見て深雪が泣き崩れる映像は婚約者一同に衝撃を与えたのだ。

 

「そもそも何で達也さんが襲われたんだろうね? もしかしてUSNAからの工作員が紛れ込んでいて、達也さんのプロジェクトを妨害したかったのかな?」

 

「だが今回の航行、達也さんはUSNAに技術協力をしに行くはずだったんだろ? USNAの工作員が妨害する理由があるのだろうか?」

 

「それじゃあ、ディオーネー計画に参加しなかったことに対する報復?」

 

「表面だけ見れば、ディオーネー計画だって人類の未来に必要なものかもしれないが、エイミィはあの計画の裏を知っているだろう? 今達也さんを襲撃すれば、ディオーネー計画に何か裏があるのかと疑念を懐かれる可能性がある。そんな危険を冒してまで達也さんを襲うとは思えない」

 

「じゃあ、スバルはどうして達也さんが襲われたんだと思ってるの?」

 

 

 エイミィはいくら考えてもスバルが何を考えているのか分からなかったので、素直に問いかける。スバルの方も聞かれたら答えるつもりだったので、はぐらかさずに答えた。

 

「僕は、達也さんの邪魔をしたかった人間はUSNA側ではなく日本側にいたんじゃないかと思っている」

 

「どういうこと?」

 

「達也さんの技術を、USNAに知られたくなかったんじゃないだろうか。だから達也さんを航行不能にし、USNAへの技術提供を阻止した」

 

「でも、それだけならあそこまで派手にやる必要は無いよね? 精々船を壊す程度で十分だったはず。それなのに達也さんを血塗れにして、実行犯たちは自決。何かもっと違う理由があるのかもしれない」

 

「確かに……僕たちには理解が及ばない何かがあるのかもしれないな。だが、雫やほのかたちは何も聞かされていないようだし、それは七草先輩も同様のようだし、あのメンバーが何も知らないのなら、僕たちには知りようがないさ」

 

「そうだね……」

 

 

 まさか今現在達也が巳焼島ではなくUSNAの基地にいるなど微塵も思っていない二人は、とりあえず達也が退院したら真実を聞こうということで納得し、互いの部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也が退院し、新居で真実を知らされた二人は、驚き過ぎて暫く何も言えなかった。それだけ想像以上の出来事が起こっていたということもあるのだが、まさか大掛かりなパフォーマンスだなんて微塵も思っていなかったのもあるだろう。

 

「……つまり、水波君を取り戻す為に、君はUSNAへ向かう必要があったと?」

 

「そうだ」

 

「国防軍からの横槍が入るのを見越して、先手を打っただけなの?」

 

「簡単に言えばそう言うことだな」

 

「……あそこまで大掛かりにする必要はあったのかい? 何をどうやったのかは分からないが、正式な旅券があったんだろ? 君を止める事などできなかったんじゃないのか?」

 

「何か理由を付けて妨害してくる可能性は十分にあった。そんな茶番に付き合ってる暇は無かったので、少し大掛かりだったがああいうことをしたんだ」

 

「少しどころじゃないと思うけど……」

 

 

 まして達也が乗っていた船のクルーには今回の件は伝えていなかったと聞かされ、スバルもエイミィも驚きと呆れから何も言えなくなってしまった。

 

「そりゃ君の魔法があれば死者など出すことなく済んだのかもしれないが……」

 

「というか、深雪の演技の所為で、達也さんの魔法のことすっかり忘れてましたよ」

 

「深雪曰く、演技ではないそうだがな」

 

「どういうことだい?」

 

 

 達也から深雪の気持ちを聞き、スバルは納得したように頷き、エイミィは「深雪らしいなぁ」と呟いた。

 

「ちょっと待ってくれ。もしかして雫たちは君が巳焼島にいないということを知っていたのかい?」

 

「深雪が事情を話しているはずだから、知っているだろう」

 

「じゃあ何で私たちに嘘を吐いたんですか?」

 

「嘘を積極的に流したら疑われるが、近しい人から信じ込ませれば嘘だと気づく人間は減るだろう。だから真実を伝える人間を絞ったということだろう。その辺のことは俺は知らないから、知りたいのなら雫たちか、もしくは深雪に聞いてくれ」

 

「イマイチ納得できないが……まぁ、君が無事だっただけでも善しとしようか」

 

「やっぱり私は納得できないよ! 心配してた時間を損した気分……」

 

 

 自分の気持ちに折り合いをつけて納得したスバルと、納得できずに憤慨するエイミィ。対照的な二人を見て達也は申し訳ない気持ちと、面白がっている気持ちが綯交ぜになったような表情で二人を見詰めるのだった。




損した気分になる気持ちは分からなくもない

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